抗凝固薬内服中の下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation;EVLA)の有効性が報告されるようになった.一方,薬剤溶出性ステント(drug eluting stent;DES)留置後の抗血小板薬内服患者が増加傾向にあり,抗血小板薬内服後のEVLAの有用性についての報告も散見されている.本検討は,後方視的にEVLAの効果について虚血性心疾患を有しDES後の抗血小板薬内服群と,心疾患のない非内服群で検討した.術後の血流遮断率は両群ともに100%で,合併症も両群間に差は認めなかった.抗血小板薬内服下でのEVLAは抗血小板薬を休薬せずに治療が可能であり,安全で低侵襲な治療であると考えられた.
76歳男性.10年来の透析患者で,透析後の左下肢の安静時疼痛で紹介受診.CTで両側膝窩に壁在血栓を伴う動脈瘤を認め,精査加療目的に入院.下肢血管造影で内転筋管遠位より膝関節面まで拡張・蛇行した膝窩動脈瘤を認めた.遠位膝窩動脈,脛骨腓骨動脈幹に狭窄はないが,前脛骨動脈は近位で閉塞していた.造影翌日の透析後に安静時疼痛が再燃し,その21時間後に動脈拍動の消失・知覚消失を確認し急性下肢虚血と判断した.静脈のドプラシグナルを聴取可能で,TASC IIb度の急性下肢虚血と評価し緊急手術を施行.大伏在静脈を用いた膝上膝窩動脈─膝下膝窩動脈バイパスおよび後脛骨動脈の血栓除去を行った.術後脛骨神経麻痺の遷延のため長期リハビリを要したが独歩退院可能であった.TASC IIbの急性下肢虚血を呈した膝窩動脈瘤患者の救肢に成功した症例を経験したので報告する.
腹部─腸骨動脈瘤は,しばしば治療に難渋する場合がある.Gore Excluder iliac branch endoprosthesis(IBE)を使用し治療し得た1例を報告する.症例は67歳男性,2013年11月に左腎盂および膀胱がんにて左腎および膀胱全摘術,および尿管皮膚ろう造設術を施行された.経過観察中に腹部大動脈から両側総腸骨にかけて動脈瘤が認められ,従来の開腹外科手術では危険性が高いと判断し,2018年3月に左内腸骨動脈はコイル塞栓,右内腸骨動脈はIBEによる再建を併用したステントグラフト内挿術を行った.腸管虚血や臀筋跛行は認めず,術後CTにて瘤の完全な血栓化および右内腸骨動脈開存が認められ,術後11日に退院した.
症例は58歳男性,主訴は心窩部痛・心肺停止.2018年某月初旬,心窩部痛・嘔吐にて救急要請した.救急車内で心室細動(VF)となりAEDによる除細動が3回施行されるもVF停止せず,心肺蘇生が継続され当院ERへ救急搬送された.気管挿管,アドレナリン,アミオダロン投与後も自己心拍再開が得られず,VA-ECMOを挿入し冠動脈造影(CAG)を施行.左前下行枝#6 100%,右冠動脈#1-2 90%を認め,引き続き#6にPCI施行,その後の除細動で洞調律へ復帰した.#1-2にもPCIを施行しTIMI 3となったが左室拡張末期圧20 mmHgと高値のため左室ベント目的にIMEPLLA 2.5を挿入した.CCU入室時脈拍触知せず,胸部X線で肺うっ血あり,心エコーで大動脈弁の開放を認めず,高度のびまん性左室壁運動低下(EF 10%)を認めた.低用量の静注強心薬も併用開始し第2病日ECMOを離脱した.CPKは最高17737 IU/L,CK-MB 702 ng/mLまで上昇したが,左室壁運動の改善を認め,第5病日IMPELLAを抜去,第6病日人工呼吸器と静注強心薬を離脱した.第14病日の心エコーではEF 47%に改善を認め,神経学的後遺症なく第31病日に独歩退院し,退院1カ月後に就労復帰した.本例はECMOによる全身循環の維持,PCIによる冠血行再建とIMPELLAによる左室減負荷により心機能が回復し救命し得たと考えられた.
症例は72歳女性.18歳時に心室中隔欠損症,30歳時に肺動脈弁狭窄症を指摘されたが特に症状はなかった.数年前に心エコーで中等度の肺動脈弁狭窄と右心系の拡大を指摘されたが経過観察されていた.今回,呼吸困難の精査にて,心エコーで右室流出路に95 mmHgの圧較差が認められ,心臓カテーテル検査でバルサルバ洞動脈瘤が指摘された.肺動脈弁狭窄と考えられていたものは瘤による右室流出路の圧排と判明した.手術の方針で当科に入院した.胸骨正中切開,上行大動脈送血,上下大静脈脱血にて体外循環を確立.大動脈切開および肺動脈切開をおいた.肺動脈弁直下に示指頭大のバルサルバ洞動脈瘤の突出がみられた.大動脈側からも右大動脈洞に瘤の入口部があることを確認した.心室中隔欠損孔は認められなかった.肺動脈側から瘤の突出部周囲にパッチを縫着し,大動脈側からも瘤の入口部をパッチ閉鎖した.大動脈弁右冠尖に対するcentral plication,および人工弁輪による三尖弁輪縫縮術を併せて行った.体外循環からの離脱は容易であった.スワンガンツカテーテルの測定にて,術後の肺動脈-右室間の圧較差は7 mmHgであった.経胸壁心エコー検査では,右室流出路に若干のモザイクフローを認めるものの圧較差は14 mmHgであった.第17病日に軽快退院した.症候性の高度右室流出路狭窄をきたした非破裂性バルサルバ洞動脈瘤に対し手術を行い良好な結果を得たので報告した.
症例は60歳代,男性.意識消失を伴う高度房室ブロックの診断で恒久ペースメーカ植込みを行った.手術中,良好な閾値がみつからず,心房リードの留置に難渋したため,心房リードを右房側壁に留置した.手術翌日に呼吸困難,酸素飽和度の低下を生じ,胸部CT検査で右肺の気胸,心膜気腫,縦隔気腫を認めたため,胸腔穿刺で脱気を行った.解剖学的に心房リードが右房壁を穿孔した可能性が高いと判断し,外科的治療を考慮したが,心房・心室リードともに感度・閾値・抵抗値に変化を認めず,バイタルは安定していたため,経過観察とした.その後は経過良好であり,脱気後1週間で胸腔ドレーンを抜去し,胸部CT検査で気胸,心膜気腫,縦隔気腫が消失していることを確認して退院となった.解剖学的に右房側壁は胸膜と近接しており,リードのスクリューが心膜,胸膜を貫通し,気胸,心膜気腫,縦隔気腫を生じたと考えられる.心膜気腫,縦隔気腫は恒久ペースメーカ植込みの合併症において比較的稀である.治療法の選択に苦慮したが,保存的加療で治療し得た症例を経験したので報告する.
下肢静脈瘤以外に既往のない53歳女性.腹部膨満感を主訴に前医受診し単純CT結果から卵巣腫瘤の疑いで当院産婦人科を受診した.術前検査でバセドウ病と診断され,チアマゾールの内服を開始し甲状腺機能は正常化していた.その1カ月後に突然呼吸困難をきたし当院外来を受診,頻脈性心房細動と左室駆出率の低下,重度の僧帽弁逆流および三尖弁逆流を認め,うっ血性心不全の診断で入院加療を開始した.ドブタミン併用下でアミオダロンおよびビソプロロールを使用し心不全コントロールを行った.1カ月後の退院時には体重が26 kg減少し,BNPも著明に改善した.心不全発症から2カ月後の心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄を認めず,左室駆出率は40%程度まで改善していた.さらに心不全発症から3カ月後の外来では左室駆出率は60%程度まで改善がみられた.退院時に内服していたアミオダロンやビソプロロールを中止後も洞調律維持し,現在は内服薬なしで経過観察している.
本症例はチアマゾール内服を開始し甲状腺機能が正常化した後に,頻脈性心房細動を契機に突然に重症の心不全を発症したバセドウ病の希少な例であり報告する.
症例は69歳女性.慢性糸球体腎炎により維持透析を導入された.導入4年後に労作時呼吸困難が徐々に増強し,心エコーにて肺高血圧症が疑われ当科紹介となった.右心カテーテル検査では平均肺動脈圧が50 mmHgと高値であった.各種検査で原因は明らかではなく,ニース分類5に相当する慢性腎不全に伴う肺高血圧症と診断した.このため在宅酸素療法を導入して退院した.自宅で酸素を外して洗面中に呼吸停止となったが,蘇生に成功し同日緊急入院となった.入院後ボセンタン,ベラプロスト,シルデナフィルの3剤を導入し,1週間後には平均肺動脈圧は26 mmHgと改善され,症状も軽快した.以降,外来でも経過良好であり,3剤併用が著効したと考えられた.維持透析患者における肺高血圧症に関して,文献を交えて,病態についての考察を追加する.
世界の肥満人口は爆発的に増加し,まさにエピデミックといわれる状況となっていることが報告されている.その急激な増加に伴って,循環器疾患が世界の死因のトップになっていることもよく知られた事実である.一方,わが国では欧米ほどの高度の肥満は少ないものの,比較的軽い肥満の増加と共に,肥満関連疾患が急増していることが観察されている.松澤佑次先生は長年に渡って動脈硬化・糖尿病・脂質代謝の研究と共に,肥満と内臓脂肪の研究を精力的に推進されてきた.現在も世界動脈硬化学会の理事長として活躍されているが,メタボリックシンドロームの提言,アディポサイトカイン特にアディポネクチンの発見は医学研究の新しい分野を拓いたと言っても過言ではない.また,厚生労働省の特定健診・保健指導制度の開始においても指導的な役割を果たされ,わが国の肥満症の概念の確立とアディポサイエンスの発端を作られた先生である.今回は内臓脂肪を中心とした研究の黎明期とその後の展開の詳細を伺った.