心臓
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19 巻, 9 号
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  • 西岡 隆文, 廣江 道昭, 日下部 きよ子, 重田 帝子, 本田 喬, 鈴木 紳, 遠藤 真弘, 関口 守衛, 広沢 弘七郎
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1057-1061
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    A-Cバイパス術(ACBG)前後において201Tl-Cl(Tl)による運動負荷心筋イメージングを施行し,Tlの肺集積度を測定して手術効果を判定した.対象は虚血性心疾患37例で狭心症12例(1群),狭心症兼心筋梗塞症15例(II群),心筋梗塞症10例(III群)の3群に分類した.また対照として健常者14例をN群とした.Tl肺集積度は肺野と心筋とのカウントの比をLung/Heartratio(L/Hratio)として%表示した.
    ACBG前では狭心症を呈する1群,II群ではN群より有意に高値であった(p<0.01).しかしIII群ではN群と有意差を認めなかった.L/HratioをN群のmean+2SDから求めた32%以上を異常値として心筋虚血とL/Hでatioの関係をみた.L/H ratio異常の有病(虚血)正診率(Sensitivity)は48%,L/H ratio正常の無病正診率(Specificity)は100%,そして正確度(Accuracy)は73%であった.
    ACBG後,III群ではL/H ratioは有意に低下し,グラフトの閉塞した1例を除いて全例正常範囲となった.III群では術後,L/H ratioは低下したが,正常範囲内での変化であった.Tl肺集積の計測は,心筋虚血の診断,狭心症に対するACBGの効果判定に有用であった.
  • 榊原 哲夫, 広瀬 一, 中埜 粛, 松田 暉, 白倉 良太, 平中 俊行, 松村 龍一, 桜井 温, 今川 弘, 川島 康生
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1062-1067
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患症例26例の冠動脈病変の重症度と運動負荷時の左室機能との関係を検討した.
    冠動脈病変の重症度をLeamanの方法に従って点数評価し,点数が0.5以上5未満の7例をG4,5以上10未満の6例をG-2,10以上15未満の7例をG-3,15以上の6例をG-4とした.また,冠動脈と心臓に異常を認めなかった13例をG-Cとした.運動負荷時の心拍数は,4群ともG-Cと差を認めなかった.運動負荷時の大動脈収縮期圧は,G吸,2,3においてG-Cと差を認めなかったが,G-4においてG-Cに比べ有意に低値を示した.運動負荷時の左室拡張末期圧は,G-1においてG-Cと差を認めなかったが,G-2,3,4において有意に高値を示した.運動負荷時の左室1分間仕事量は,G-1,2においてG-Cと差を認めなかったが,G-3,4において有意に低値を示した.
    以上の検討により,50W5分間の運動負荷時の左室機能を示す指標のうち,左室拡張末期圧は比較的軽度の冠動脈病変例より異常高値を,左室1分間仕事量は中等度病変例より異常低値を,大動脈収縮期圧は高度病変例で異常低値を示すことが明らかとなった.
  • WPW症候群手術例における検討
    三崎 拓郎, 向井 恵一, 坪田 誠, 岩 喬, 中嶋 憲一, 久田 欣一
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1068-1074
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    WPW症候群手術例30例において,ECG-Gated emission computed tomography(Gated ECT)を用いた副刺激伝導路の術前部位診断の有用性,問題点につき検討した。断層位相解析で得られる房室弁輪部レベルの最早期収縮部位と,術中マッピングで得られる最早期興奮部位を比較した.この結果28例(93.8%)で両者の一致をみた.またこの内の1例ではGated ECTの位相解析より副刺激伝導路の部位に加え修正大血管転位症の合併が診断された.ただしこの方法でも右後壁と右後中隔の副刺激伝導路の鑑別は困難であった.なお,残りの2例では心筋障害による壁運動の低下のため,最早期興奮部位と最早期収縮部位は一致しなかった.以上よりGated ECT法による断層位相解析は限界はあるものの,有力な副刺激伝導路部位診断法と考えられる.しかも,得られる像が術野と対応するため術者にとって理解しやすく,外科医にとって有用な検査法といえる.
  • 八巻 重雄, 吉田 芳郎, 加納 一毅, 鈴木 康之, 伊藤 康博, 堀内 藤吾, 尾形 寛, 加畑 治, 中村 千春, 浜田 洋一郎, 安 ...
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1075-1082
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    東北6県の12施設で経験した過去10年間の大動脈縮窄複合と大動脈弓離断症例を前半と後半の5年ずつに分け外科治療の面から検討した.大動脈縮窄複合の初回手術成績は前半51例中手術死25例,遠隔死4例で全体としての死亡率は58%であったが,後半は60例中手術死12例遠隔死3例で死亡率は33%と低下した.手術時年齢は前半の平均14.5カ月に対し後半は5.2カ月で低下を認めた.1カ月未満例は前半は全例死亡したが,後半は18例中死亡例は2例のみで成績の向上をみた.術式では前半は端々吻合が19例と最も多く,後半は鎖骨下動脈フラップ法が41例と多かった.肺動脈絞扼術は前半18例(35%),後半37例(62%)と後半で増加した.二期的根治手術の平均年齢は前半の3歳1カ月から後半は9.8カ月と低下した.
    大動脈弓離断症では前半に1カ月未満2例,1カ月以上9例の11例に手術施行したが手術生存は3例でいずれも1歳以上であった.後半の手術施行例は12例で1カ月未満の7例中2例,1カ月以上の5例中3例が生存した.後半の術式は一期根治手術が3例(2例死亡),8例が始息手術(4例死亡)であった.二期的根治手術は4例中3例に行った(1例死亡).
  • 7症例における心臓カテーテル所見
    加藤 敦, 羽根田 隆, 白土 邦男, 小岩 喜郎, 金沢 正晴, 石川 健, 大江 正敏, 橋口 良一, 神田 仁, 宗像 敬, 石木 康 ...
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1083-1087
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    過去6年間に当教室で行った心カテーテル検査症例中,甲状腺機能充進症の既往歴を有する僧帽弁逆流症(MR)7例について検討した.内訳は平均年齢40歳(28-54),男3,女4,甲状腺機能充進を指摘された年齢33歳(18-53),である.経過中のT4最高値は,21.9μg/dl(16.0-30.5),基礎代謝率は,+55%(34-77)であったが,検査時値は正常化していた.心カテーテル検査の結果,逆流の程度はSellers 2度;3例,3度;3例,4度;1例であった.血行諸量は心拍数72±15(mean±SD)bpm,左室拡張末期圧10±5mmHg,心係数3.96±125l/min/m2であり,同時期施行の他のMR例(49例)に比し,心係数は大であった.他にこれら7例では,リウマチ熱既往歴の欠如,純型MRであること,僧帽弁逸脱が4例(57%)に認められること,等が特徴的であった.以上より,これら症例のMRの病因として,非リウマチ性因子-たとえば僧帽弁組織の脆弱性など-が考えられた.
  • 異常Q波出現の臨床的意義について
    小池 清一, 遠藤 良平, 下鳥 正博, 降旗 康敬, 赤羽 邦夫, 平野 賢, 米倉 宏明, 原 卓史, 川 茂幸, 佐々木 康之, 古田 ...
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1088-1095
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    長期間の経過観察で心電図上異常Q波が出現した肥大型心筋症(以下HCM)の4症例を呈示し,異常Q波の成因ならびに臨床的意義について考察し報告する.胸痛を主訴とする症例も含まれるが,4症例とも急性心筋梗塞の既往はなく,漸次に異常Q波が出現したと思われた.冠動脈造影を施行した症例1,2,3では有意な狭窄性病変は認めなかった.しかしいずれも異常Q波の出現部位に一致して,タリウム心筋シンチグラム上の欠損あるいは集積低下を認め,左室造影上も壁運動異常を認めた.以上の所見から臨床的に心筋梗塞類似の心筋病変を合併したHCMと診断した.またV4,V5誘導を中心にST上昇を伴って異常Q波を認めた症例1,3はV1-V3に認めた症例2,4に比較して臨床的に予後の悪いHCMと思われた.HCMに認める異常Q波の出現機序として中隔性Q波が増大したとする考えが一般的であり,部位はV5,V6に多いとされている.本4例では異常Q波は経過中に新たに出現し,さらに部位も定型的でなく,画像診断所見とあわせて心筋障害による異常Q波と考えられた.文献的に類似の報告は散見され,病理学的検討がなされている症例では心筋内小冠動脈の壁肥厚を認め,そのための心筋虚血機転が心筋障害進展の原因と推定されている.HCMの一部の症例には本4例のごとく心筋梗塞類似の心筋病変が年余にわたり徐々に進展する症例があり,HCMの自然経過を理解する上で重要な症例と思われ報告した.
  • 飯尾 雅彦, 島崎 靖久, 八木原 俊克, 岸本 英文, 沢 芳樹, 桜井 温, 広瀬 修, 堀野 信子, 信貴 邦夫, 杉本 久和, 中山 ...
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1096-1101
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は生後12時間目頃より出現したチアノーゼを主訴とする女児である.他に多呼吸,肝腫大,全身浮腫を認めた.胸部X線写真にて心拡大と著明な肺血管陰影の減少を認め,心電図所見ではP波が増高し右房負荷を認めた.心臓超音波検査,心臓カテーテル検査,心臓血管造影検査にて,Uhl病,肺動脈弁閉鎖,三尖弁欠如,心房中隔欠損,動脈管開存,および左肺分画と診断した.プロスタグランディンE1の投与にても低酸素血症の改善が得られないため生後8日目にBlalock-Taussig手術を施行した.術後,低酸素血症は改善したが右横隔神経麻痺を合併し,生後19日目に呼吸不全のため死亡した.剖検にて右室壁は羊皮紙様に菲薄で心筋組織の欠損を認め,肺動脈弁閉鎖,三尖弁欠如,心房中隔欠損,および左肺分画を認めた.
    Uhl病に肺動脈弁閉鎖,三尖弁欠如を合併した症例は極めてまれで,我々が調べ得た所では,,これまでに自験例を含め8例の報告を見るに過ぎず,本邦においては我々の症例が第2例目であった.
  • 赤尾 元一, 三谷 淳夫, 轟木 元友, 徳永 皓一
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1102-1109
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    現在,欧米でのdiscrete型大動脈弁下狭窄症は,400有余例報告されているが,本邦では少なく1986年7月現在,論文として報告されているものは自験例を含めて39例である.その内,心室中隔欠損を合併している症例は欧米では3-27%で,本邦では11例の28%である.この度,心室中隔欠損に大動脈弁閉鎖不全を合併した4歳の男子のdiscrete型大動脈弁下狭窄症の治験例を得たので,その症例報告と共に,特に,discrete型大動脈弁下狭窄と心室中隔欠損との位置的関係を文献的に考察し,弁下狭窄が心室中隔欠損のaboveにあるか,belowにあるかに分けて観察することが,手術に際して大切であることがわかった.また,大動脈弁閉鎖不全の発生機序について検討し,さらに,左室流出路狭窄の進行や再発が当疾患の特徴であることから手術手技についての注意点を指摘した.
  • 小川 拓男, 望月 盈宏, 服部 和樹, 中川 浩, 荒木 登, 岡本 浩, 保浦 賢三, 阿部 稔雄
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1110-1116
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近心筋梗塞急性発症期に,PTCR(経皮経管冠動脈再疎通術)を行い,梗塞壊死部を最少限度に抑える治療が確立されてきた.我々は胸痛を主症状とした若年発症心筋梗塞患者の急性発症期にPTCRを企てたが,責任冠動脈を発見できず,慢性期の左バルサルバ洞造影にて,右冠動脈左バルサルバ洞起始異常の合併症として心筋梗塞が発症したと診断し得た症例を経験した.
    従来右冠動脈起始異常は臨床的意義は乏しいとされていたが,最近は重症度は,異常冠動脈の支配する心筋領域の広さに依存するという報告がされており,本例はその説を支持するものであると思われた.また,本例のような起始異常は極めてまれであり,心筋梗塞を合併した報告はあるものの,PTCR時にかような例に遭遇したという報告は,本邦では筆者の調べる限りではない.しかし,PTCRが普及するにつれて,かような症例の報告は増えると思われ,若干の文献的考察を加え,遭遇時の警鐘の意味を含めて報告する.
  • 多発性動脈硬化症に対するangioplastyの意義
    柳 英清, 村上 泰治, 久保 義郎, 内田 發三, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋, 永谷 伊佐雄, 平木 祥夫, 古城 猛彦
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1117-1122
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症は全身性かつ進行性病変であり,主要動脈に病変が多発することはまれではない.そこで末梢動脈疾患に対しても,術前に冠動脈造影法を施行する必要性が認識されるようになってきた.またangioplastyは飛躍的な発展を遂げつつあり,多発性病変に対する外科治療の適応・術式の選択に関して新たな展開を見せ始めている.今回,我々は閉塞性下肢動脈硬化症を合併した不安定狭心症の1例に対して,まず冠動脈病変にangioplastyをその後2期的に下肢血行建術に,バイパス術を施行し良好な成績を収めた.そこで外科治療の適応,手術の順序,ならびに術式の選択に関して若干の考察を加えたので報含する.
  • 高橋 賢二, 百川 健, 丸山 章, 相内 普, 藤田 孟, 武山 稔, 若山 茂春
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1123-1128
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    全身麻酔中に遭遇する冠動脈スパズムには,異型狭心症患者における開心術中に生ずるperioperative coronary spasmがあり治療にも難渋することがある.これに比べ一般外科麻酔中に生ずる冠動脈スパズムはまれとされる.今回我々は胃切除術中に生じた冠動脈スパズムの2例を経験した.
    症例1は63歳男性で,胃切除術中に突然ST上昇とともに多発性期外収縮,shortmnを頻発した.術後のHolter心電図でも同様の所見を認めた.誘因として麻酔中のhyperventilationが考えられた.症例2は69歳男性で,幽門狭窄を伴う十二指腸潰瘍で手術を施行.執刀直後よりVTとなり血圧が下降しショック状態に陥った.この時全身の発赤も出現した.幸いにシヨックより脱したがこの誘因としてアレルギー反応によるヒスタミン・セロトニンの関与が疑われた.
  • 梅澤 滋男, 雨宮 浩, 藤原 秀臣, 野上 昭彦, 谷口 興一
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1129-1135
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左冠動脈主幹部(LMT)にspasmを認め治療方針の決定と効果判定に核医学的検査法がきわめて有用であった1例を報告する.症例は39歳の女性,労作兼安静時の胸痛を主訴に入院した.運動負荷心筋シンチでは広範囲に冠血流の灌流異常を認めた.冠動脈造影ではLMTに75%の狭窄を認め,ニトログリセリン0.3mg舌下にて25%狭窄まで改善し,LMTのspasmと考えられた.治療方針の決定のため,nifedipine,isosorbide dinitrate(ISDN),propranololを用いてその効果を核医学的に検討した.その結果,nifedipine投与における心筋シンチでは冠灌流の改善を,心プールシンチでは壁運動の改善を認めた.ISDNの投与では心プールシンチにて駆出率の増加を確認したが,propranololについては運動負荷にて胸痛が出現し,心機能は悪化した.この結果,冠動脈主幹部の器質的病変が軽度であるため内科的治療が最も適切であると判断し,厳重な注意の下に外来観察とした.
  • 辰巳 哲也, 中田 徹男, 仁木 俊平, 井上 大介, 落合 正和, 桑原 洋史, 大賀 興一, 北浦 一弘
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1136-1142
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.約3年前より狭心痛が出現し,今回激しい胸痛が持続し心筋梗塞症と診断され当院転院となる.第4肋間胸骨左縁に連続性雑音を聴取し,心電図上,完全右脚ブロックおよびII,III,aVFに異常Q波を呈し,心臓超音波検査では下壁のdyskinesisを認めた.冠状動脈造影では左右冠動脈より肺動脈へ蛇行する異常血管があり,また左回旋枝,右冠動脈に有意の狭窄所見を認めた.左→右シャント率は10%であった.
    先天性冠状動脈痩の報告は近年冠状動脈造影の普及に伴い増えているが,心筋梗塞症を併発したという報告は少なく19例であった.心筋梗塞症併発は左冠状動脈痩に多く,中高年に多い傾向をもつ.痩の起始動脈と梗塞部位との関連性は複数の症例で認められ,自験例でも冠不全の発生に痩が関与したことが推察された.
  • 厚美 直孝, 岡村 健二, 前田 肇, 井島 宏, 三井 利夫, 堀 原一, 森 尚義
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1143-1147
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性で,35歳より高血圧を指摘されていたが,昭和60年8月17日,夜,突然胸部圧迫感と起坐呼吸が出現した.以前より健診を受けていたにもかかわらず,この時初めて大動脈弁閉鎖不全の心雑音を指摘され,精査,治療目的にて本院に入院した.大動脈造影にてSellers分類3度の逆流を認めた.大動脈弁閉鎖不全症の診断にて,手術を施行したところ,手術所見では弁尖は極めて薄く,横方向に多数の亀裂が認められた.弁輪部が脆弱であったために,弁輪より十分に離して弁を切除し,人工弁を縫着する組織を十分に残し,Björk-Shiley弁(25mm)を用い弁置換を行った.切除弁の病理組織像では,粘液様変性が認められた.本院における単独大動脈弁閉鎖不全症23例について調べてみると,粘液様変性に起因すると考えられたものは,本症例1例(4%)のみであった.リウマチ熱,梅毒が減少するにつれて,本症による弁膜症の重要性が増加することは十分に予想され,診断,治療に当っての注意が必要と考えられた.
  • 平井 淳一, 西村 昌雄, 的場 宗敏, 武田 仁勇, 明石 宜博, 嵯峨 孝, 得田 与夫, 布田 伸一, 渡部 良夫
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1148-1154
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は心悸充進を主訴とする43歳女性である.心電図上,左脚前枝領域に起源を持つ分枝性副収縮に左脚前枝ブロックと頻脈依存性右脚ブロックの合併が認められた.副収縮周期は通常1.20秒と安定し,洞性刺激の副収縮中枢侵入による周期の更新や変調はみられなかったので,高度な保護ブロックが存在すると考えられた.副収縮周期は0.31秒の日差変動幅を有し,その原因として自律神経,特に交感神経の副収縮中枢支配が示唆された.左脚前枝ブロックは左脚前枝領域に存在する副収縮中枢の保護ブロックにより生ずると考えられた.頻脈依存性右脚ブロックは洞性心拍のみならず副収縮性心拍でも発現し,右脚の有効不応期は1.05秒と著明な延長を示した.このように左脚前枝ブロックと頻脈依存性右脚ブロックを合併した分枝性副収縮は極めてまれであるので,各々の発生機序に電気生理学的考察を加え報告した.
  • 宇井 進, 中川 晋, 片山 久, 三田村 秀雄, 木村 満
    1987 年 19 巻 9 号 p. 1155-1160
    発行日: 1987/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    開心術後の合併症として,急性心膜炎様症状の出現は時々認められるが,収縮性心膜炎(以下CP)の合併はまれである.我々は,大動脈弁置換術後,わずか3週間で発症したCPの剖検例を経験したので報告した.
    症例は59歳の男性高血圧・甲状腺機能充進症・糖尿病の治療中,52歳時に左心不全出現し,大動脈弁閉鎖不全を診断された.昭和59年,弁置換術施行し,3週後より体重増加,腹水・陰嚢水腫・下肢の浮腫を認め,当院へ入院した.心エコー上,左室後壁の拡張期平担化,右心カテーテル検査上,右房圧11mmHg(y谷著明),右室圧36/12mmHg(dip and plateau),肺動雁26/13mmHg,肺動膿入圧15mmHgを認め,術後出現したCPと診断した.術後73日目に突然死し,剖検により肥厚した(4-7mm)心膜を確認した.開心術後のCP報告例は42例と思われるが,本例のような亜急性例(2カ月以内)は15例のみで,まれであるが,見逃してはならない重大な病態と考えられた.
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