症例は54歳,女性.Fabry病の家系で,41歳頃から心肥大を指摘され,心エコー図検査では肥大型心筋症の所見が認められていた.数年おきに心エコー図検査を施行していたところ,46歳の心エコー図では認められなかった左室流出路の圧較差が,5年後の51歳時の心エコーで検出された.その後,労作・安静と関係のない胸痛が出現するため,精査の目目的で入院した.検査所見上は白血球α-galactosidase Aの活性低下を認め,カテーテル検査時に施行した心筋生検では心筋細胞の核周囲を中心に平行ないし同心円状を示すlamella構造の沈着を多数認め,Fabry病と診断された.左室流出路の圧較差は平均約80mmHgであったが,ジソピラミド50mgの静注で18mmHgに低下した.また,心エコーの記録時にもジソピラミド300mgの内服で圧較差の改善が認められ,同時に胸部症状も改善した.
ヘテロ接合体の患者で多く認められる心Fabry病は,ほとんどの症例で肥大型心筋症類似の心筋肥大を認めるといわれる.しかし,左室流出路の圧較差を生じ,閉塞性肥大型心筋症の病像を示す症例の報告はまれである.貴重な症例と考え考察を加えて報告した.
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