心臓
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42 巻, 9 号
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Open HEART
HEART's Selection (心臓の微細構造異常と不整脈)
HEART's Original
基礎研究
  • 宮川 隆, 朝倉 健文, 中村 友美, 佐藤 由樹, 岡田 浩美, 岩城 壮一郎, 藤井 聡
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1153-1158
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    心血管疾患の危険因子が集積するメタボリックシンドロームの一因に, 酸化ストレスの増加が考えられる. 一方, メタボリックシンドロームではインスリン抵抗性により高インスリン血症となり, 線溶系の主要な阻害物質であるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1) の血中レベルが上昇し血栓を生じやすい状態にある. インスリンがPAI-1分泌にどのようにかかわるかをヒト肝臓由来HepG2細胞を用い解析した. PAI-1 mRNAレベルはreal-time PCRにより, PAI-1蛋白質産生はWestern blottingにより調べた. ルシフェラーゼアッセイによりPAI-1遺伝子のプロモーター領域および3'非翻訳領域の活性を調べた. インスリン刺激によりPAI-1遺伝子のプロモーター活性, 3'非翻訳領域の活性, PAI-1 mRNA, PAI-1蛋白質レベルは増加した. インスリン刺激により酸化ストレスは増加し, 抗酸化作用がある低分子ポリフェノールのオリゴノールで減少がみられた. インスリンは肝細胞で酸化ストレスとPAI-1産生を増加させ, PAI-1発現と酸化ストレスがリンクしている可能性が推測された. この現象に関与する因子を同定することは新規治療薬の開発につながると考えられる.
Editorial Comment
基礎研究
  • — 単施設による検討
    保坂 文駿, 太田 吉実, 田中 嗣朗, 水野 雅之, 保坂 元子, 本田 淳, 阿部 知二, 野田 真由美, 遠藤 康弘
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1161-1165
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    ST上昇型急性心筋梗塞(ST elevation myocardial infarction; STEMI) の再灌流治療は, 心筋サルベージの点から発症から治療までの時間が重要である. そこで, われわれは, 2008年にSTEMIで入院となった90例を対象に発症から再灌流までの時間を計測し問題点を検討した.
    方法: 対象は2008年にSTEMIで入院した90例(男性65例, 平均年齢64.6±13.4歳). 発症から再灌流までの時間(onset to balloon time; OBT), 入院から再灌流までの時間(door to balloon time; DBT), 発症から入院までの時間(onset to door time; ODT)を計測し, 救急搬送群26例(28.9%)と紹介群64例(71.1%)を比較した.
    結果: OBTは339.5±232.3分, DBTは67.9±17.4分, ODTは271.6±232.1分であった. 救急搬送群と紹介群の比較では, OBTは救急搬送群がより短く(151.1±30.3分 vs 417.3±235.0分, p<0.05), DBTは同等であり(65.8±15.0分 vs 68.8±18.3分, p=ns), ODTも救急搬送群がより短かった(85.3±23.9分 vs 348.5±235.9分, p<0.05). 院内死亡率5.6%(5例)はすべてOBTが長い紹介群であった.
    考察: 救急搬送群と紹介群ではOBTに約2.8倍の差があり, 紹介元経由が時間延長要因であった. また, 救急搬送群のODT延長要因はpatient's delayであった. 総虚血時間2時間以内の達成には, 救急搬送だけでなく, patient's delayをなくす努力が重要であると考えられた.
臨床研究
  • 藤原 由紀子, 町田 治彦, 田中 功, 福井 利佳, 平林 望, 白石 くみ子, 岸田 弘美, 森 恵美子, 増川 愛, 上野 惠子
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1166-1172
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    背景および目的: 64列multidetector-row CT(MDCT) 心臓検査は, 非侵襲的に冠動脈の詳細な形態評価が可能であるが, 放射線被曝による発癌リスクの増加が問題視されている. これに対し, 被曝低減技術の活用と画質劣化の回避のため, しばしば, β遮断薬経口投与による心拍数の低減が図られる. 今回, われわれは, 本検査の安全性の評価と合理的なワークフロー確立のため, β遮断薬投与後の心拍数の経時的変化と検査前後の血圧変動について検討した.
    方法: 対象は, β遮断薬経口投与下に64列MDCT心臓検査前を施行した連続551例. 投与前, 投与後15~90分, 撮影直前の心拍数と投与前と撮影直後の血圧を測定し, 投与前心拍数に応じた最低心拍数到達時間, 心拍数, および血圧低減率, ならびに心拍数40bpm以下の高度徐脈, 急激な血圧低下に伴うショックなどの重篤合併症の出現頻度を検討した.
    結果: β遮断薬投与後, 心拍数は経時的に低下し, 最低心拍数到達時間は, 投与前心拍数80bpm未満で60分, 80~89bpmで75分, 90bpm以上で90分であり, 心拍数低減率(最低心拍数)は, 投与前心拍数70bpm未満で16.4%(54.9bpm) , 70~79bpmで20.3%(58.2bpm), 80~89bpmで24.4%(62.9bpm), 90bpm以上で27.7%(69.5bpm)であった. 血圧低減率は, 収縮期血圧において, 80bpm未満で4.3%, 80~89bpmで5.0%, 90bpm以上で4.8%, 拡張期血圧においては70bpm未満で0.7%, 70~79bpmで1.5%, 80~89bpmで1.0%, 90bpm以上で2.8%であった. また, 本剤投与による重篤な合併症はなかった.
    結論: β遮断薬経口投与下MDCT心臓検査は安全に遂行可能であった. また, 投与前心拍数に応じた心拍数の経時的低減効果が判明し, 検査の流れの予測が可能となった. 今後, これらを踏まえ患者の不安の軽減や待機時間の短縮などに生かしていきたい.
Editorial Comment
臨床研究
  • —抗癌薬で心筋重量が増加する
    荒尾 正人, 北原 康行, 説田 浩一
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1174-1182
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    目的: 抗癌薬投与後の心臓の変化を観察し, 薬剤投与量との関係を分析検討.
    対象: 連続20カ月間に初回化学療法(シクロフォスファミド, エピルビシン, 5-FU)の3者併用療法(CEF)を終えた乳癌患者連続137例.
    方法: CEF数クール施行前後に心エコーを施行し, 左室内径[left ventricular end-diastolic diameter(LVDd)/ left ventricular end-systolic diameter(LVDs)], 左室容量[(left ventricular end-diastolic volume(LVEDV)/left ventricular end-systolic volume(LVESV)], 中隔壁厚(interventricular septal thickness; IVST), 後壁厚(posterior wall thickness; PWT), 左室駆出率(left ventricular ejection fraction; LVEF), E/A比, Tei index(T-I), 左室心筋重量(left ventricular mass; LVM), 左室心筋重量係数(left ventricular mass index; LVMI)を算出し抗癌薬投与前後での変化を分析. LVMIおよび相対的壁厚(relative wall thickness RWT)の関係から心筋重量変化の内容を分析. さらに, 抗癌薬総量(ΣCEF), 体表面積あたりの抗癌薬総量(ΣCEF/BSA)および左室単位心筋あたりの抗癌薬総量(ΣCEF/LVM)と, ΔLVMの変化率(ΔLVM)(%)の相関を分析.
    結果: LVEF, E/A比T-Iは, 抗癌薬投与前後で有意変化を認めなかったが, LVMおよびLVMIは投与後に有意な増加を認めた. また, ΣCEF/LVM, ΔLVM間およびΣCEF/LVMI, ΔLVMは有意な正の相関を認めた.
    考察: 心毒性を有する抗癌薬の投与の結果LVMの有意な増加が認められ, 遠心性肥大の傾向が示唆された. またその変化率は心筋重量1gあたりの抗癌薬量と相関関係を認めたことは興味ある現象であるが, 心毒性を有する抗癌薬の心筋障害との関連については, 今後の検討が必要である.
症例
  • 森 健太, 河田 正仁, 中西 智之, 平山 恭孝, 足立 和正, 松浦 啓, 坂本 丞, 佐野 暢哉
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1183-1188
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は87歳, 女性. 嘔気と全身倦怠感のため近医受診し, 血圧低下と心電図上II, III, aVFのST上昇を認め, 急性心筋梗塞の疑いで当院に救急搬送となった. 緊急冠動脈造影では正常冠動脈であり, 自然再灌流か冠攣縮性狭心症を疑った. 第1病日は心室性期外収縮による2段脈を呈していたが, 第2病日に心拍数150/分の心室頻拍(ventricular tachycardia; VT)を認めた. 各種薬剤に反応せず, 意識レベルの低下と循環動態破綻をきたし, 心静止から死亡確認となった. 急性心筋梗塞か心筋炎による致死性不整脈か判断困難であり, 診断確定のため家族同意のもと, 体表からのエコーガイド下針心筋生検を施行した. 病理診断にて, 心筋線維束内と間に, び漫性のリンパ球浸潤と少数の好酸球を伴い, 心筋線維束には萎縮傾向と空胞変性, 浮腫も目立ち, 心筋炎と診断した. 急性心筋梗塞様心電図変化を呈し, electrical stormにて死亡した劇症型心筋炎の1例であり, 診断に経皮的エコーガイド下生検が有効であった.
症例
  • 勝野 哲也, 渋井 敬志, 大島 杏子, 古賀 規貴, 萬野 智子, 佐伯 仁, 松原 清二, 平尾 見三, 磯部 光章
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1189-1194
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性. 特記すべき既往はない. 見舞いに行った先の病院内で胸痛を自覚し, 心電図所見から急性心筋梗塞と診断され, 当院に救急搬送となった. 来院時, ショック状態を呈しており, 大動脈内バルーンパンピングと経皮的心肺補助装置による補助循環下に緊急心臓カテーテル検査を施行した. 左冠動脈主幹部の完全閉塞病変を認め, 左前下行枝の血行再建に成功したが, 左回旋枝の再灌流は得られなかった. 検査中に心室細動となり直流通電を要したが, ICU入室後まもなく再度心室細動となった. リドカイン, ニフェカラント, 硫酸マグネシウム投与下に直流通電を行うも無効であり, アミオダロン投与後の直流通電により洞調律に復した. 多剤薬剤抵抗性の心室細動にアミオダロンが有効であった左主幹部急性心筋梗塞の1例を経験したので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 杉山 英太郎, 竹中 孝, 井上 仁喜, 藤田 雅章, 蓑島 暁帆, 長谷部 直幸
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1196-1200
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性. 2002年, 閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy; HOCM)による左室内圧較差軽減目的にペースメーカー植え込み術を施行され, 心エコー図上左室内圧較差は5~10mmHgで経過していた. 2008年8月下旬ころから精神的ストレスが加わり, 9月上旬に安静時胸痛が出現し軽減しないため, 当院の救急外来に搬入された. 心電図・心エコー図より, 急性心筋梗塞が疑われ, 緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈に有意狭窄はなく, 左室造影上心尖部の無収縮・心基部の過収縮を認め, たこつぼ心筋障害と診断した. 左室内の引き抜き圧較差を測定したところ110mmHgと増大していた. ペーシングの効果を評価するために一時中止してみると130mmHgとさらに増大したため, DDDペーシング継続下に薬物療法を行った. 壁運動は徐々に改善し, 8週後には左室内圧較差も軽減していた. たこつぼ心筋障害に合併する左室内圧較差の軽減にもペーシング治療が有効である可能性が示唆された.
症例
  • 野並 有紗, 斧田 尚樹, 近藤 史明, 土居 義典
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1201-1206
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 男性. 約15年前に交通事故にて左下肢を骨折し, 以後グリップタイプの杖(右手用) を歩行時に使用している. 今回, 不安定狭心症疑いにて冠動脈造影を施行した. 右橈骨動脈を穿刺したが, カテーテルが上腕動脈内で捻転し, カテーテルのみを抜去することが不可能となりシースごと抜去した. 引き続き右大腿動脈を穿刺し, 左前下行枝#7の高度狭窄病変に薬剤溶出性ステントを留置した. 20日後に外来受診した際, 右橈骨動脈に約30mm大の拍動性の腫瘤を認め, 血管超音波検査にて右橈骨仮性動脈瘤と診断した. 瘤径が大きいことから超音波プローベによる圧迫では不十分であるうえに, 手技自体による破裂の危険が危惧され手術治療を選択した. 仮性動脈瘤の原因として, カテーテル変形箇所での穿刺孔拡大, 止血不十分および杖歩行による穿刺部の荷重が推察された.
症例
  • 遠藤 慎一, 高木 正之, 幕内 晴朗, 小林 俊也, 丹原 圭一, 小林 博雄
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1207-1211
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    心臓粘液腫は心臓腫瘍の中で最も頻度が高く, この疾患の発症形式は, 腫瘍それ自体による症状だけではなく, 腫瘍の塞栓症状によることも多い. 本症例は塞栓子が左浅大腿動脈に生着後, 増大して大腿動脈狭窄を起こしたと考えられ, 同部の術中所見と病理所見で心臓粘液腫と診断, その後の心エコー検査で左房粘液腫の診断にいたった. 近年, 閉塞性動脈疾患に対して経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty; PTA)が第1選択となりつつあるが, このような腫瘍性病変もあり得ることを念頭に置き, 特に画像診断上, 閉塞性動脈硬化症に合致しない場合には, 安易にPTAを行うべきではないと考える.
症例
  • 河合 秀樹, 大野 淳, 岩下 由佳, 横井 朋子, 中尾 彰宏, 山本 順一郎, 前田 伸治, 坂野 章吾, 尾崎 行男
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 9 号 p. 1212-1218
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 男性. 2008年8月ころより下腿浮腫, 2009年4月に入り浮腫増強, 発熱, 労作時息切れを認め, 同月下旬, 当院内科初診. 著明な心嚢水および両側胸水を認め, 同日精査加療目的で入院. 入院後, 胸腔・心嚢穿刺そのほか, 各種精査行うも原因不明. 採血にて抗核抗体1,280倍, 抗DNA抗体300倍など, 膠原病を示唆する所見を認めたが, 臨床的には非典型的であった. 診断的治療目的で抗生物質, 次いで, 抗結核薬を投与するも奏効せず, 感染性漿膜炎は否定的と考えた. 各種検査結果と臨床経過より, 稀な疾患ではあるが高齢発症ループスの可能性が高いと考え, ステロイド投与を開始したところ, 徐々に症状改善し, 心嚢水, 胸水とも減少を認めた. 各種精査を行っても原因のはっきりしない漿膜炎にたびたび遭遇するが, その中に本疾患が潜在している可能性があると考えられる.
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