心臓
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41 巻, 2 号
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Open HEART
HEART’s Selection (DES時代の冠動脈バイパス術)
HEART’s Original
基礎研究
  • 半田 武巳, カタレ ラジェシュG, 柿沼 良彦, 有川 幹彦, 安藤 元規, 山崎 文靖, 佐藤 隆幸, 笹栗 志朗
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    背景: われわれは迷走神経刺激やアセチルコリン(ACh)を介した心筋保護効果についてこれまで報告を行っている. 臨床応用を目的とした低侵襲で簡便にAChを誘導させる方法として, 一般に臨床で用いられている経口コリンエステラーゼ阻害薬, アルツハイマー治療薬, Donepezilに着目し, 容量負荷心不全マウスモデルに対する心筋リモデリング抑制効果, 生存率改善効果について検討した.
    方法と結果: 動静脈シャント作成4週間後に心不全マウスを無作為に治療群, 無治療群に分類した. Donepezilは5mg/kg/日で経口投与を行った. 治療4週間後, ランゲンドルフ還流心装置により左室圧容量曲線を作成し機能評価を行った. 無治療群と比較すると治療群では有意差を持って左室収縮末期圧容量曲線の上昇が認められた. Donepezil投与により心筋重量体重比は有意差を持って減少した(6.14±0.16 vs 5.68±0.17mg/g, P<0.05). 無治療群での140日生存率は30%以下であり, Donepezilは生存率を劇的に改善させた(73% vs 28%, P<0.05). また治療群では有意差を持って心房性Na利尿ペプチドの加算増加, 脳性Na利尿ペプチドの減少が認められた.
    結語: 今回の検討により, Donepezilは心不全ポンプ失調と心筋リモデリングを予防し, 心不全の生存率を改善させる可能性が示唆された.
臨床研究
  • 谷 樹昌, 長尾 建, 平山 篤志
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 124-132
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    背景: 多くの疫学的研究で白血球数は動脈硬化性疾患罹患率の指標として報告されている. しかしながら, スタチンの抗炎症作用, とりわけ白血球数に及ぼす効果と冠動脈硬化進展抑制との関係に関しては不明な点が多い.
    方法と結果: 対象は冠動脈形成術後に, プラバスタチンを投与し, 血管内超音波を試行した50症例. 6カ月後に冠動脈プラーク容積はベースラインに比較して14%の減少, さらに白血球数も8.9%の減少を認めていた. 動脈硬化進展抑制に大きく関与する血清脂質の変化と白血球数の変化率には相関は認められなかった. 冠危険因子, 内服薬を含めた多変量解析では白血球数の変化率は独立した冠動脈硬化進展抑制の予測因子であった(β coefficient, 0.262, 95%信頼区間, −0.008 to 0.410).
    結果: プラバスタチンの多面的効果である白血球数の減少は冠動脈硬化退縮の新たな指標として有用である可能性がある.
症例
  • 小鹿野 道雄, 椎葉 邦人, 宮地 秀樹, 富田 和憲, 木股 仲恒, 中村 俊一, 吉田 明日香, 田邊 潤
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群は胸部誘導V1~3の右脚ブロック型にST上昇を伴う, いわゆるBrugada型心電図波形と, 心室細動による突然死を特徴とする原因不明の症候群である. Brugada型心電図はST-Tの形からcoved型とsaddle-back型に分類され, coved型では心内膜と心外膜間の再分極時間不均一性が強く, より心室細動へ移行しやすいとされている. 近年, Brugada症候群の不整脈器質部位として右室流出路が注目されている. また, Brugada症候群の診断には器質的心疾患のないことが不可欠であるが, 剖検にて右室流出路の器質的異常を認めた報告が散見されている. 器質的異常の原因の1つとして虚血があげられ, われわれは, 右室流出路を灌流する冠動脈円錐枝の冠攣縮および塞栓症によって誘発された冠動脈円錐枝の単独虚血によって, Brugada型心電図がsaddle-back型からcoved型へと変化した2症例を経験した. 冠動脈円錐枝は, 直接大動脈から派生している確率が30%以上あり, 通常の冠動脈造影検査では評価不十分である可能性があるが, 冠動脈円錐枝の虚血の有無を詳細に評価することはBrugada症候群の診断に際して重要であると考えられた.
症例
  • 瀬川 利恵, 佐久間 雅文, 中村 元行, 菅野 裕幸, 澤井 高志
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    3年前から中等度の僧帽弁閉鎖不全症(左室駆出率65%) と診断されていた73歳, 女性が, 息切れを主訴に入院した. 心エコー図検査では重度の僧帽弁閉鎖不全症と左室収縮能障害(左室駆出率35%)を認めた. また高炭酸ガス血症(PaCO2 60mmHg)があり, 肺機能検査で拘束性換気障害を認めた. 肺の間質性変化は軽度で, 体幹部の皮膚の硬化と肋間筋の萎縮があり, 胸郭の運動制限によるII型呼吸不全と考えた. 利尿薬による心不全治療, 陽圧人工呼吸器による換気補助を施行したが, うっ血性心不全が進行し入院から10カ月後に死亡した. 剖検では体幹の皮膚, 食道, 心筋および乳頭筋, 肺, 横隔膜, 膀胱など広範囲な線維性変化を認め全身性強皮症と診断した. 左室心筋および乳頭筋には炎症性細胞の浸潤と線維化がみられ, 左室収縮機能障害と僧帽弁閉鎖不全症の原因と考えられた. また体幹部の皮膚の硬化と肋間筋および横隔膜の線維化により, II型呼吸不全をきたしたと考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 伊藤 順子, 稲葉 理, 萬野 智子, 清岡 崇彦, 大下 哲, 小川 亨, 櫻井 馨, 田原 敬典, 横山 泰廣, 佐藤 康弘, 若杉 恵 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 男性. 下腿浮腫, 労作時息切れ, 全身倦怠感を主訴に近医を受診し, 精査目的で当院へ紹介された. 来院時心電図で心拍数30台の完全房室ブロックを認めたため一時的にペースメーカーを挿入し, 入院した. 心臓超音波検査では心房中隔から心室中隔の一部にかけて右心系に突出した巨大な腫瘤が認められた. その後の精査で非Hodgkinリンパ腫と診断されたことから, 同疾患の心内浸潤と判断した. 化学療法を施行し, 1クール終了後腫瘍の若干の退縮が認められたが, その後病勢が進行し全身状態は徐々に悪化, さらに感染を合併したため敗血症・多臓器不全となり永眠された. 原発性, 転移性を問わず, 生前に心臓症状から診断される悪性リンパ腫は稀である. 心内浸潤による完全房室ブロックを契機に診断されたstage IV非Hodgkinリンパ腫という比較的稀な1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する.
症例
  • 高谷 具史, 西川 裕二, 岡本 匡史, 畑 勝也, 木島 洋一, 北 智之, 伊藤 光哲, 中島 英人, 岩橋 和彦, 川嶋 成乃亮, 竹 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 男性. 主訴は不明熱と呼吸困難. 既往歴として15年前に胃癌に対して幽門側胃切除術を施行されている. 現病歴は, 2007年5月中旬に腸閉塞で入院, 解除術を施行された後も連日発熱を認めていた. 7月下旬より呼吸困難と血痰を認め, うっ血性心不全が疑われ当科紹介となった. 経胸壁心エコー図検査で, 大動脈弁の三尖に疣贅, および無冠尖の逸脱を, 僧帽弁には肥厚像や可動性の低下を認め, いずれも著明な逆流を伴っており, 感染性心内膜炎によるうっ血性心不全と診断した. 血液培養から腸球菌を認め, 早期の手術施行を検討していたが, 転科3日目に呼吸状態が急激に増悪した. 画像所見などから急性呼吸促迫症候群の合併を考え, ただちに好中球エラスターゼ阻害薬投与を開始した. 同薬剤の4週間投与と低容量換気人工呼吸器療法にて呼吸状態は徐々に改善したため, 9月中旬に大動脈弁, 僧帽弁の人工弁置換術および三尖弁縫縮術を施行, 術後の経過は良好であった. 今回われわれは感染性心内膜炎によるうっ血性心不全に合併した急性呼吸促迫症候群に対して, 低容量換気人工呼吸器療法と早期からの好中球エラスターゼ阻害薬の長期投与が著効した1例を経験したので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 加茂 雄大, 市瀬 茉里, 高田 宗典, 瀧澤 雅隆, 魚住 博記, 福島 和之, 小早川 直, 竹内 弘明, 青柳 昭彦
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    孤立性左室心筋緻密化障害(isolated left ventricular noncompaction)は, 左室心筋が緻密層(C)と肉柱層(NC)の二層構造を呈し, 左室の過剰な肉柱構造と肉柱間の深い間隙を特徴とする先天性疾患である. 成人例においても, 心不全·不整脈·血栓塞栓症など多彩な臨床所見を呈することで知られている. 本症例は左室収縮能が低下していた急性心不全で, 心エコー図によって孤立性左室心筋緻密化障害が疑われた. マルチスライスCT(multidetector CT; MDCT)を施行したところ, 本疾患の特徴的な画像所見がより鮮明に得られ確定診断にいたったのと同時に, 非侵襲的に冠動脈病変の評価も可能であった. 左室収縮能低下を有する心不全症例において, 基礎心疾患の診断のために冠動脈病変の鑑別も兼ねてMDCTは有用であると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 伊藤 一貴, 鶴山 幸喜, 長尾 強志
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/05/09
    ジャーナル フリー
    患者は意識消失を繰り返し生じた80歳の男性で, 入院時の血液検査やMRIでは明らかな異常所見は認められなかった. 心電図では心拍数49/分 整の心室調律でQT延長が認められた. 入院後の病室で一過性の意識消失を生じたが, その際のモニター心電図で倒錯型心室頻拍(torsade de pointes; TdP)が認められたためマグネシウム静脈内投与および一時ペーシングによる治療を行った. 第2病日にTdPから心室細動に移行したため電気的除細動が行われた. 3時間後に施行した99mTc-tetrofosmin心筋シンチグラフィでは心尖部を中心として高度な集積低下所見が認められた. 断層心エコー図検査では心尖部の無収縮および心基部の過収縮が認められため, 冠動脈造影を施行した. 左右冠動脈に狭窄病変は認められず, エルゴノビン負荷でも冠攣縮は誘発されなかった. 左室造影では心基部の過収縮および心尖部の風船様無収縮が認められた. このため, たこつぼ心筋障害と診断した. 第4病日の123I-MIBG心筋シンチグラフィでは無収縮が認められた領域で高度な集積低下所見が認められた. TdPにたこつぼ心筋障害を合併した稀な症例を経験したが, それらの発症機序に交感神経の関与が示唆された.
Editorial Comment
研究会(第42回 河口湖心臓討論会)
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