心臓
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51 巻, 1 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
低侵襲(小切開)手術
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 諸冨 伸夫, 小林 琢, 古田 哲朗, 弓野 大
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 51 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     背景:慢性心不全(CHF)では心臓リハビリテーション(心リハ)の施行が推奨されているが,高齢CHF患者のなかには通院困難のため心リハができないものがいる.一方で,訪問リハビリテーション(訪問リハ)はこれら通院困難な患者を対象として行われるが,CHF患者への介入は不十分である.そのため在宅高齢CHF患者の心リハの効果は不明である.そこで,今回われわれは在宅高齢CHF患者に対する訪問リハに取り組み,その効果を検証した.

     方法:2015年4月より2016年7月までにゆみのハートクリニックで訪問リハを受けた患者のうちリハ開始時と3カ月後評価ができた40例を対象とし,CHF群24例(男性8例,年齢82.5±9.1歳)とnon CHF群16例(男性8例,平均年齢80.3±8.8歳)の2群に分けた.身体活動の評価としてshort physical performance battery(SPPB),activities of daily livingの評価としてfunctional independence measurement(FIM),quality of lifeの評価としてSF-8 Health Survey(SF-8)を測定した.リハ開始時と3カ月後で効果を比較検証した.

     結果:3カ月間の訪問リハを実施し,全例で心不全の急性増悪は認めなかった.SPPBはCHF群5.5±2.7点 vs. 6.7±2.8点,non CHF群4.3±1.2点 vs. 6.7±2.8点(p<0.001)と向上した.SF-8はnon CHF群は前後比較ができなかった.CHF群では下位項目すべてで向上していたが,なかでも社会生活機能(social functioning;SF)が36.0±13.0点 vs. 47.9±15.8点(p<0.01)と有意に向上した.

     結語:在宅高齢CHF患者に対して訪問リハが介入すると,身体活動と社会生活機能が向上する.

[症例]
  • 長谷川 薫, 山家 実, 門脇 心平, 関口 祐子, 宮下 武彦, 前田 恵, 松岡 孝幸, 皆川 忠徳, 渡辺 卓, 三浦 誠, 石塚 正 ...
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     侵襲性肺炎球菌感染症とは,肺炎球菌感染症の中でも,肺炎球菌が心嚢液など本来無菌の部位から検出される重症感染をさす.今回,基礎疾患のない成人女性における侵襲性肺炎球菌感染症による化膿性心外膜炎の1例を経験したので報告する.症例は40歳代女性.胸背部痛,左下肢痛を訴え当院へ救急搬送された.12誘導心電図で広範な誘導でST上昇を認め,心膜炎疑いとして当科入院.高度の炎症反応所見および左膝の腫脹を認め,左膝関節液を穿刺したところ,膿汁が採取され,化膿性膝関節炎の診断となった.心嚢液の貯留も認めたため,第3病日に全身麻酔下に左膝関節の洗浄,心嚢穿刺を行った.心嚢液も膿性であり,化膿性心外膜炎の診断となり心膜開窓術に切り替え,ドレナージを行った.採取した関節液,血液,心嚢液すべての培養から肺炎球菌が検出され,侵襲性肺炎球菌感染症と診断された.術後は,抗生剤投与と併せて収縮性心膜炎予防のため定期的にウロキナーゼにて心嚢内の洗浄を行った.その後炎症反応は改善し,退院後も収縮性心膜炎に移行することなく経過している.

  • 小松 稔典, 金井 将史, 清水 邦彦, 阿部 直之, 浦澤 延幸, 臼井 達也, 宮下 裕介, 宮澤 泉, 戸塚 信之, 吉岡 二郎, 中 ...
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     症例は59歳,男性.労作時胸痛を認めるため近医を受診.心電図にて下壁・前壁誘導でT波の陰転化があり当院へ救急搬送.冠動脈造影(CAG)を施行したところ,第1対角枝(D1)に90%の狭窄を認めたが,ステント留置には不適切病変であったためDrug Coated Balloon(DCB)にてバルーン拡張のみとした.その後は心電図および労作時の症状も改善していた.しかし5カ月後に労作時の胸痛が再燃.心電図には変化がなく労作性狭心症の再発と診断.運動負荷心筋シンチグラムを施行したところ,胸痛とともに心電図で前壁のST上昇および下壁・側壁でのST低下を認めたため運動負荷を中止.休息後,数分で症状および心電図は改善したため撮影は継続.左前下行枝領域に運動時の広範な集積低下および安静時の再分布を認めた.労作性狭心症を疑いCAGを施行したが有意狭窄は認めなかった.しかしエルゴノビン負荷にて左冠動脈の広範な冠攣縮を認め運動誘発性冠攣縮性狭心症と診断した.DCBによる治療後に運動誘発性冠攣縮性狭心症を発症した症例報告はなく,貴重な症例と考え報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 澤野 晋之介, 和田 浩, 伊部 達郎, 羽鳥 将史, 玉那覇 雄介, 坂倉 建一, 藤田 英雄, 百村 伸一
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     症例は41歳女性.心窩部痛を主訴に救急搬送.心電図で下壁誘導のT波陰転,心エコーで心嚢液貯留,血液検査でトロポニンI 3102 pg/mL,CK 170 U/Lと上昇を認めたが,冠動脈造影では冠動脈の有意狭窄は認めず.急性心筋炎の診断で経過を観察したが,経時的に心嚢液の増加と心筋壁肥厚を示し,第2病日には好酸球は847 /μLと上昇.第3病日に準緊急で心筋生検を施行し右室中隔壁より検体を採取.圧測定では平均右房圧21 mmHgと高値を示し,経時的な心嚢液の増加によるプレタンポナーデと判断し同日からステロイドパルス療法に踏み切った.治療開始後は好酸球数,心嚢液ともに速やかに減少.生検翌日の病理の結果,心筋に好酸球の浸潤を認め急性好酸球性心筋炎の確定診断に至った.ショックを伴う重症例の好酸球性心筋炎へはステロイドパルス療法が考慮されるが,本症例は経時的に病状が増悪した急性好酸球性心筋炎に対して,比較的早期からステロイドパルス療法を導入し,結果心タンポナーデによる血行動態の破綻を回避した1例であり,臨床的重要性が高いと考え報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 西地 稔幸, 肌勢 光芳, 山崎 江来良, 日野 智博, 階元 聡, 内橋 基樹, 今井 雄太, 福家 智也, 倉田 博之, 中村 隆志
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 1 号 p. 68-75
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     症例は生来健康な41歳女性.倦怠感・歯痛を主訴に受診し精査により1型糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシスと診断した.入院後の精査で,経胸壁心エコー図での中部の前壁・前壁中隔・側壁の壁運動低下,心電図でⅡ,Ⅲ,aVF,V4-6でST低下を認めたので虚血性心疾患を疑い,冠動脈造影を行ったところ冠動脈に有意狭窄は認めなかった.左室造影では心エコー図と同部位の壁運動低下を認めた.以上のことから非典型的なたこつぼ心筋症と診断した.心不全徴候はなく抗凝固療法とβ遮断薬で加療し第40病日には壁運動・心電図ともにほぼ正常化した.たこつぼ心筋症の病態には未解明な部分も多いが,壁運動異常の部位により異なる病型に分けられることや,糖尿病性ケトアシドーシスとの関連の報告もある.このたび,新規発症の1型糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシスを契機に発症した非典型的なたこつぼ心筋症の1例を経験したので,糖尿病とたこつぼ心筋症の関連についての文献的考察と併せて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 石田 三和, 山田 容子, 水谷 知泰, 原 敦子, 大部 誠, 阿古 潤哉, 猪又 孝元
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     心不全入院を繰り返す拡張型心筋症の69歳男性.低心拍出に伴う高度な肝機能障害を認め,静注強心薬を投与した.肝機能と全身状態は改善し,強心薬継続下で僧帽弁形成術を施行した.一過性に低心拍出を生じたが,静注強心薬にて混合静脈血酸素飽和度69%,中心静脈圧5 mmHgと血行動態は安定を続けた.トランスアミナーゼの上昇を伴わなかったが,総ビリルビン値が18-22 mg/dLと進行性に上昇し,死亡した.剖検では,中心静脈周囲の広汎な肝細胞脱落とわずかな線維化,肝内胆汁うっ滞がみられた.血行動態破綻に伴う肝障害組織像と類似した剖検所見により,各血行動態指標では低心拍出の持続はないものの低心拍出の反復により総ビリルビン値が急激に上昇したと推察された.病態解釈に剖検所見を包括的に活用した貴重な1例である.

Editorial Comment
[症例]
  • 賀来 文治, 井ノ口 安紀, 北川 直孝, 勝田 省嗣
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 1 号 p. 87-96
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     症例は61歳男性.身長168 cm,体重56 kg,腹部疾患の既往なし.薬剤抵抗性の発作性心房細動に対してカテーテルアブレーションを実施.肺静脈隔離術と下大静脈─三尖弁間峡部のブロックライン形成を行った.肺静脈隔離術中は食道温度センサーを用いて食道内温度をリアルタイムに計測し,食道内温度が40℃以上になれば通電を中止した.アブレーション終了翌々日の昼頃(アブレーション終了後約48時間)から,吐気と腹部膨満感が出現した.その後も腹部症状は次第に増強,夕刻には激しい上腹部痛が出現した.上腹部は緊満して突出し,触診では腹部は硬,聴診ではグル音の低下を認めた.造影CT検査では腹部動脈に塞栓症を疑わせる血栓像や胃幽門部に狭窄を疑わせる所見を認めなかった.胃と十二指腸の第2部までは著明に拡張して大量の内容物が貯留していた.これに対し,上腸間膜動脈と腹部大動脈との間で圧迫された十二指腸第3部に狭窄を認めるとともに,それ以降の腸管は虚脱ぎみとなり腸内容物が目立たなかった.これらの画像所見より上腸間膜動脈症候群と診断した.経鼻胃管挿入によるドレナージ施行により減圧をはかったところ,腹痛と嘔気はすみやかに改善し,2日間の絶食,補液の後に食事の再開を行った.さらに,再発予防のために,食事回数を1日4-5回に増やして分割とし,1回の食事量は少なめとした.加えて,食後の体位指導を行い,これらの生活指導により,以後,腹部症状の再燃を認めていない.

     上腸間膜動脈症候群は,十二指腸第3部が,上腸間膜動脈と腹部大動脈との間で圧迫され,高位閉塞症状を呈する稀な疾患であるとされる.急激に発症し,激しい胆汁性嘔吐と胃拡張,腹痛,脱水,電解質質異常などを呈するのみならず,診断が遅れると胃壊死や胃破裂が生じて重篤化することもあるとされる.心房細動に対するカテーテルアブレーションの心外性の合併症の1つとして生じる,胃食道神経障害の病態として,上腸間膜動脈症候群も念頭に置くことは大切であると思われる.

Editorial Comment
[症例]
Editorial Comment
Meet the History
  • ─森博愛先生に聞く
    森 博愛, 佐田 政隆
    専門分野: Meet the History
    2019 年 51 巻 1 号 p. 105-118
    発行日: 2019/01/15
    公開日: 2020/02/15
    ジャーナル フリー

     森 博愛先生は私の二代前の徳島大学内科の教授です.今回,その御業績をお聞きする機会をいただき,心電計が手作りの時代からのご苦労と,心電図診断学の確立におけるその偉大な貢献に感服いたしました.

     90歳を超える現在でも,最新の文献をチェックして,論文や著書,講演として情報発信しておられます.徳島県医師会報には,毎月「心電図セミナー」を連載されており,今月で324号となります.また,心電図メーリングリストを運営されており,全国のメンバーに毎日のように心電図の解釈を教育されています.また,ご自身でホームページを立ち上げておられ,各種心電図に関する解説を掲載されています.Webで何かの心電図を検索した方は誰でも見たことがあるサイトと思います.

     先生は,「うだつがあがる」という言葉の起源になっている卯建(うだつ)の町並みで有名な徳島県脇町にある森家の10代目当主です.御実家では,大正中期から昭和にかけての診療設備をそのままの形で再現しており,森先生が帰宅されているときには,一般の観光客に開放して解説もされているとのことです.

     このように常に,心電図学を極めて,広く教育しようとする姿勢には,ただ脱帽するばかりです.まさしく,心電図学のレジェンドです.御健康に留意されて,益々御活躍されることを祈念しております.

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