心臓
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24 巻, 10 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 新しい実験モデルによる解析
    柳沼 厳弥, 高橋 徹, 鈴木 康之, 毛利 平
    1992 年24 巻10 号 p. 1123-1129
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は,進行した肺高血圧症では,肺胞組織への血流は,狭小化した本来の経路と,気管支動脈が閉塞部を迂回する"bypass"型側副血行路の2系統で維持されている可能性を報告してきた.今回,肺循環における側副血行について,肺高血圧症の実験モデル犬で肺動脈注入標本を作成し検討した.実験モデルにはHeath & Edwards 4度以上の進行した病変が発生していた.肺動脈注入標本では太く蛇行した肺動脈の末梢側は枯れ枝状に途絶しているのが認められた.また,肺動脈からは蛇行した多数の気管支動脈が造影された.胸膜面からは,肺動脈からまず胸膜内の拡張した気管支動脈へ造影剤が流入し,その後肺胞毛細管に分布するのが観察された.このように気管支動脈が肺動脈末梢の閉塞部をbypassする形で側副血行路として機能していることは実験的にも実証された.
  • 稗方 富蔵
    1992 年24 巻10 号 p. 1130-1131
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • ミトコンドリア呼吸機能を中心として
    迎 修司, 柳下 俊邦, 梅津 一彦, 冨田 昌孝, 伊藤 誠司, 下司 映一, 今野 述, 片桐 敬
    1992 年24 巻10 号 p. 1132-1139
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に伴う重症左心不全の発症原因と急性心不全の治療薬として有用であるドーパミンとドブタミンの心筋代謝に及ぼす効果に関して,実験的急性心筋梗塞に合併する心原性ショックモデルを作成し,エネルギー産生を担うミトコンドリアの呼吸機能と電子伝達系酵素活性を指標に,特に残存心機能の主体となる非梗塞部心筋に着目して血行動態と絡めて検討を行った.雑種成犬の左冠動脈回旋枝結紮により急性心筋梗塞を作成した.血行動態を測定し,左室収縮期圧によりショック群(冠結紮前値の70%未満に低下した群)と非ショック群に分類した.摘出心よりミトコンドリアを抽出し呼吸活性と電子伝達系酵素活性を測定して血行動態とミトコンドリア機能(特に非梗塞部心筋)との関連と,ドーパミン,ドブタミン投与によるこれら活性の変化を検討した.また,各群心筋細胞の電顕観察も行った.非梗塞部心筋ミトコンドリアの呼吸調節比,電子伝達系のcomplex I活性,DNP-ATPase活性はショック群では非ショック群に比較して低下したが,ドーパミン,ドブタミン投与で著明に改善した.電顕観察でも,ショック群でみられた微細構造変化はドーパミン,ドブタミン投与群では軽微であった.急性心筋梗塞に合併する心原性ショックの発症機序に関して,非梗塞部心筋のエネルギー産生障害の関与が示唆され,ドーパミンやドブタミン投与により心機能の回復とともにミトコンドリア機能は改善することが示唆された.
  • 丸山 貴生, 川本 俊治, 吉野 孝司, 石川 勝憲, 新井 武志
    1992 年24 巻10 号 p. 1140-1144
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影検査にて,冠動脈瘤や拡張性病変がまれに認められる.これらの病変は冠動脈狭窄病変単独例と比べ,いかなる臨床的特徴を持つものであるのかを検討した.その結果,自然発症した冠動脈瘤症例の臨床的特徴,ならびに発生部位は狭窄病変症例と差はないが,重症3枝病変例に多い傾向にあった.一方,拡張性病変症例の臨床的特徴は狭窄病変症例と差を認めなかったが,発生部位は左主幹部に多い傾向にあり,病変重症度とは関連性を認めなかった.
    冠動脈瘤は狭窄の有無に関係なく心筋梗塞を合併する率が高く,一方拡張性病変は軽度でも狭窄病変が存在すれば高率に心筋梗塞を合併する事を認めた.以上の点より,冠動脈瘤症例および冠拡張性病変症例は,狭窄病変単独症例に比べ血栓形成が行われやすいため,心筋梗塞を発生したものと考えられ,抗凝固療法を行うなどの治療が必要であると思われた.
  • 井上 詠, 宮崎 利久, 野間 重孝, 新堀 立, 勝本 慶一郎
    1992 年24 巻10 号 p. 1145-1152
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    過去1年間に当施設で冠動脈バイパス術(CABG)を施行した44例中3例に術後心室頻拍(VT:持続性再発性2例,incessant 1例)の出現を認めた.全例心筋梗塞歴のある3枝病変で,駆出率の平均40%,左室拡張末期容量係数110ml/m2と左室機能の低下を認めていた.VTはCABG術後15日以内に出現し,同時に全例に心不全兆候を認めた.2例は一過性心房粗細動を合併していた.心電図,血清酵素所見から急性心筋梗塞の発症は除外された.心不全対策と同時にI群抗不整脈薬を投与し,1例ではVTを予防でき,他の1例では一時的にVTの発生頻度の減少を認めた.残る1例では3種類のI群薬が無効であったためamiodaroneの投与を行い,VTを予防し得た.いずれの例においてもバイパスグラフトの閉塞は認めなかった.逆に,上記44例中少なくとも1本のバイパスグラフトの閉塞が確認された5例では,術後VTを認めなかった.これらの術前の左心機能は良好であった.以上,我々が経験したCABG術後のVTの成因として,術前からの心筋梗塞病変と左室機能低下,術後の心不全の存在が重要であると考えられた.
  • 池田 聡司, 今村 俊之, 内藤 達二, 松永 和雄, 原田 敬, 小串 亮三, 松崎 忠樹, 中村 清孝, 原 耕平
    1992 年24 巻10 号 p. 1153-1156
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.昭和52年より気管支喘息,肺気腫の診断にて当科外来通院中であったが,以前より心雑音を指摘されており,今回精査のため当科入院となった.入院時所見では血圧:150/78mm-Hg,脈拍:78/分,整,心音:3 LSBにて連続性雑音,2 LSBにて収縮期駆出性雑音を聴取,心電図は完全右脚ブロックを示した.胸部X線写真では心胸郭比46%,左第2弓の軽度突出を認めた.呼吸機能は閉塞性障害.選択的冠動脈造影にて左右冠動脈より肺動脈への異常交通を認め,またMRIにて縦隔脂肪層内に冠動脈瘻を確認し得た.201タリウム運動負荷心筋シンチグラフィーにて中隔~下壁への血流再分布を認めたとともに,負荷前後のシャント率は11.6%から17.3%へ増加を認め,心筋虚血を促したと考えられた.
  • 特に経食道心エコー法による検討
    田畑 智継, 大木 崇, 井内 新, 藤本 卓, 清重 浩一, 武市 直樹, 大石 佳史, 林 真見子, 真鍋 和代, 福田 和代, 福田 ...
    1992 年24 巻10 号 p. 1157-1162
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺静脈瘤は比較的まれな疾患であり,従来は心臓カテーテル法による肺動脈造影がその診断手段として用いられてきた.今回我々は,経食道心エコー法を用いて詳細に病態を検討することができた肺静脈瘤の1例を経験した.症例は25歳の男性で,僧帽弁前尖における前交連側腱索の欠如と僧帽弁前尖の逸脱および著明な僧帽弁逆流を手術の際に確認し,僧帽弁置換術を施行した.また,術前のCTおよびMRIにて左右肺静脈瘤の存在を認め,特に左肺静脈瘤の形成が著明であることを確認した.経食道心エコー法では,僧帽弁前尖の逸脱と,大量の僧帽弁逆流が左房後壁の左下肺静脈開口部へ直接流入する様子が詳細に観察できた.さらに,この逆流血が瘤内を旋回する所見および僧帽弁置換術後に瘤の縮小を認めたことから,左下肺静脈瘤の成長に僧帽弁逆流の関与していることが推察された.以上より,肺静脈瘤の治療方針を検討するにあたっては,僧帽弁疾患,ことに僧帽弁逆流の有無および方向を明らかにすることが肝要であり,その手段として経食道心エコー法が最も優れていると考えられた.
  • 平田 雅敬, 御厨 美昭, 門田 政富, 田村 彰, 神崎 維康, 那須 勝, 宮本 忠臣, 大野 暢久
    1992 年24 巻10 号 p. 1163-1167
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男.既往歴に特記事項なく,川崎病を示唆する症状は明らかではない.20歳頃より労作性狭心症があり,徐々に増悪してきたが,安静時発作は1度もなかった.昭和63年9月5日精査目的で当科に入院した.血液検査上,凝固異常,高脂血症,慢性炎症所見は認めなかった.心電図では不完全右脚ブロックを認め,運動負荷心電図で,有意のST低下とともに胸痛が出現した.心臓カテーテル検査では,心内圧,心係数は正常で,左室造影にて前壁の軽度壁運動低下を認めた.冠動脈造影では,前下行枝は第1対角枝分岐直後で完全閉塞し,さらに,左主幹部から前下行枝,回旋枝近位部にかけて,び漫性の壁在血栓による陰影欠損,高度狭窄を認めた.右冠動脈は正常で,前下行枝へ側副血行を供給していた.同年11月14日左主幹部,前下行枝,回旋枝近位部の内膜除去術,大動脈-前下行枝,回旋枝へのバイパス術を施行し,軽快退院した.術中所見,冠動脈病理標本所見では,冠動脈瘤はなく,内腔は器質化血栓で閉塞しており,冠動脈内膜には炎症所見, 動脈硬化所見ともに認められなかった. 本症例は,冠動脈壁在血栓による非動脈硬化性の狭心症で,血栓形成の原因として,川崎病の後遺症の可能性が考えられたが,原因は不明であった.過去に,同様の症例報告はなく,まれな症例と思われるので報告した.
  • 和田 勝雄, 菊池 文孝, 木村 俊昭, 櫛引 大輔, 虻川 輝夫, 藤野 安弘, 小野寺 庚午
    1992 年24 巻10 号 p. 1168-1172
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性冠動脈解離による若年者の急性心筋梗塞を経験したので報告する.症例は24歳の男性で胸部不快感が出現したため当科を受診.心電図上II,III,aVFでST上昇を認め下壁梗塞と診断した.約1カ月後に施行した冠動脈造影では右冠動脈(RCA)seg.3で完全閉塞,左前下行枝(LAD)seg.7および左回旋枝(LCX)seg.13に冠動脈解離を認めた.1年後に施行した冠動脈造影ではRCAseg.3は再疎通していたが同部に解離を認め,解離がseg.1まで進行していた.左冠動脈造影ではLADseg.7およびLCXseg.13に解離を認め,seg.7は75%の狭窄性病変に進行していた.左室造影では左前下行枝の狭窄性病変の進行によると考えられる心尖部壁運動の悪化を認めた.一般に冠動脈解離は内科的治療で予後良好との報告が多いが,この症例は主要冠動脈3枝に解離を認め,解離の進行によると考えられる左室壁運動の低下も認められることから積極的に冠動脈-大動脈バイパス術を考慮すべき症例と考えられる.
  • 成人の冠状動脈瘤と冠状動脈解離について
    岡田 了三, 河合 祥雄
    1992 年24 巻10 号 p. 1173-1174
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 土屋 整也, 南部 万記子, 武川 博昭, 松井 英夫, 松本 典昭, 竹中 徳哉, 高須 信寿
    1992 年24 巻10 号 p. 1175-1180
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    一般に,心室ペーシングの症例では,合併しうる心疾患に関する情報を心電図より得ることは困難であるといわれている.本例は永久的ペーシング中に急性心筋梗塞を合併し診断に難渋した1例である.症例は70歳女性で,洞不全症候群(Rubenstein III群)として体内式ペースメーカー(VVI)の植え込みを受けてから,約2年7カ月後に約30分続く前胸部痛があり入院した.入院時の心電図では基本調律は心房細動であったが,ペーシング不全は認められなかった.第10病日に行った心臓カテーテル検査,冠動脈造影では有意な狭窄はなかった.しかし,第13病日の13時30分に激しい前胸部痛を訴え急性心筋梗塞を発症した.心電図ではV1~V5で心室ペーシングの幅広いQRS波に引き続くST部分の著明な上昇を認めた.慢性期の左室造影や心筋シンチグラムなどにより前壁から下壁にかけての広範な心筋梗塞と診断したが,冠動脈造影では変化を認めなかったことより冠動脈攣縮により心筋梗塞が起こったものと考えられた.
  • 山本 喜一郎, 足達 教, 真弓 文仁, 野津 原昭, 藤浦 芳丈, 岡本 俊昭, 松山 公明, 戸嶋 裕徳, 神代 正道, 森松 稔, 村 ...
    1992 年24 巻10 号 p. 1181-1186
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ステロイド治療中の患者に,ステロイド筋症の合併することが知られている.今回,我々は,ステロイド骨格筋,心筋症が疑われる1剖検例を経験したので報告する.症例は47歳,男性.気管支喘息にてtriamcinolone acetonide 40mg/月の筋注を受け,体重減少,四肢筋力低下および筋萎縮,労作時の呼吸困難,動悸を認めるようになった.筋注は80mgに増量されたが症状は改善がみられず,心不全の増悪で入院となった.胸部X線写真はCTR64%,ECGは左室肥大,断層心エコーは著明な左室の拡大,全体的な壁運動の低下を認め,拡張型心筋症の診断にて治療を開始したが,多臓器不全を合併し死亡した.病理解剖では,肉眼的に四肢近位筋の萎縮,組織学的にtype 2線維の萎縮がみられ,心では重量560gと増加,冠動脈に狭窄所見はないが組織学的に心筋細胞の萎縮,壊死,線維化を認めた.心不全の原因として,骨格筋と同様,フッ化ステロイドの影響が考えられた.
  • 吉岡 二郎, 赤羽 邦夫, 戸塚 信之, 丸山 隆久, 羽生 憲直, 池田 修一, 相楽 達男, 沢木 章二, 古田 精市
    1992 年24 巻10 号 p. 1187-1191
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性で,動悸を主訴に緊急入院した.入院時は頻拍性心房細動でpre-shock状態であった.入院前の心電図でPR時間短縮(0.11秒)・左室肥大・T波陰転がみられた.心エコー検査で,左室壁のび漫性肥厚・左室内腔の狭小化と心室壁にび漫性に細穎粒状エコーを認めた.同胞に若年での腎不全死例・房室ブロック例がいた.PR時間短縮と心エコー図所見よりFabry病も疑い,家族歴を再聴取したところ,既報のFabry病家系の構成員であることが判明した.左室造影は肥大型心筋症類似の所見で,1回拍出係数は22.9ml/beat/m2と低下していた.右室心筋生検標本で,心筋細胞の高度の空胞変性がみられ,電顕で多数のosmiophilic inclusionが認められた.白血球α-galactosidase活性は対照の33.5%と低下していた.以上よりFabry病と確診した.頻拍時は血圧が低下し軽労作も困難であった.各種抗不整脈剤を試みた結果,digitalis,diso-pyramide,verapamilで頻拍発作はコントロールされたが,RR時間の延長が著明となりペースメーカー植え込み術を施行した.本例のごとく,頻拍発作を主症状とし,加療中にペースメーカー植え込みを要したFabry病の女性例はまれでありここに報告する.
  • 宇野 恵子, 小川 聡, 大木 貴博, 根岸 耕二, 吉川 勉, 阿部 純久, 半田 俊之介, 宮崎 利久
    1992 年24 巻10 号 p. 1192-1198
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Romano-Ward(R-W)症候群のTorsades de pointes(TdP)は心筋の再分極異常がその原因と考えられており,心臓交感神経の活動性の亢進により誘発される.TdPの予防にはβ遮断薬が有効であるが,その作用機序は明らかではない.今回我々は,R-W症候群の1例に電気生理学的検査(EPS)を行い,右室心内膜側より記録したmonophasic action potential(MAP)上に局所再分極異常を示すと思われるhumpを観察し得た.β刺激薬投与によりMAPのdurationは延長,humpは増高し,同時に心室性期外収縮が出現した.β遮断薬投与下ではQTc時間の短縮を認め,humpの増高は認められなかった.R-W症候群における心筋再分極異常と交感神経系の関与をMAP記録より判定し得たので報告する.
  • 毛利 太一, 田辺 章弘, 大賀 雅信, 中村 俊博, 椿 孝二, 日高 義雄, 真弓 文仁, 冷牟田 浩司, 足達 教, 古賀 義則, 戸 ...
    1992 年24 巻10 号 p. 1199-1204
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原因不明の右室拡大と,徐脈性不整脈を認めた3症例を報告する.【症例1】52歳女性.心拍数40/分の洞性徐脈で心房内マッピングで部分的停止がみられた.心胸郭比(CTR)は66%と心拡大を認め,右室拡張末期容積係数(RVEDVI)は167ml/m2と著明な拡大を示したが,左室拡張末期容量係数(LVEDVI),左室駆出率(LVEF)は正常であった.【症例2】55歳女性.心拍数58/分の房室接合部調律と約3秒の心停止を認め,症例1同様,部分的心房停止がみられた.CTR70%と心拡大を認め,RVEDVIは152.5ml/m2と拡大を示した.LVEDVIは軽度増大し,LVEFは0.56と軽度低下を示したが,明らかな左室壁運動異常は認めなかった.【症例3】70歳男性.心拍数45/分の房室接合部調律と発作性上室性頻拍がみられた. CTR56%と心拡大を認め, RVEDVIは120.5ml/m2と拡大を示したが,LVEDVI,LVEFは正常であった.全例冠動脈は正常で,左脚ブロック型の心室頻拍は認めず,右室心内膜心筋生検では脂肪浸潤と間質の線維化がみられた.全例,明らかな器質的弁膜疾患,先天性心内奇形,呼吸器疾患の合併はなく,一次的に右室拡大を呈し,徐脈性不整脈を合併しているという共通点を有する症例である.これら3例は拡張型右室心筋症の範疇に含まれると思われるが,拡張型右室心筋症の中にはこのように徐脈性不整脈を主微とする例も存在すると考えられた.
  • 三崎 拓郎, 松永 康弘, 坪田 誠, 松本 康, 大竹 裕志, 渡辺 洋宇, 岩 喬, 野上 昭彦, 廣江 道昭
    1992 年24 巻10 号 p. 1205-1210
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    直流通電によるカテーテル焼灼が試みられたが不成功に終わった20歳女性に対し手術による副伝導路切断術を行った.術中左房心内膜にクレーター状の組織欠損が認められた.心内膜アプローチによる心房筋の切開を開始するも,弁輪部周辺は瘢痕となり通常の心外膜下脂肪の剥離,心房筋の露出が困難なため心内膜側ならびに心外膜側からの冷凍凝固が必要であった.術後6カ月を経た現在心電図でデルタ波を認めず,抗不整脈剤なしで頻拍は生じていない.カテーテル焼灼をする際はかかる症例が生ずることもあるため,治療の限界をどこにおくかを決めることが重要である.また焼灼後は新たな病変が形成されるため,通常の心内膜アプローチで難渋する場合もありうることを念頭におき臨む必要がある.
  • 小松 隆, 千葉 実行, 戸塚 英徳, 三上 雅人, 三国谷 淳, 小野寺 庚午, 高橋 健, 佐々木 利幸
    1992 年24 巻10 号 p. 1211-1217
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.主訴は動悸.昭和49年より高血圧症にて当科外来を通院. 平成元年1 月中頃より時々動悸が出現し,同時に前胸部不快感を伴うため精査加療のため入院.臨床心臓電気生理学的検査では安静時His束心電図が洞周期約680msec,PA 30msec,AH 75msec,HV 30msecとすべて正常であった.しかし,心房早期刺激法では,基本刺激間隔500msecでS1-S2 270msecから310msecの範囲で心拍数約11O/分のslow paroxymal supraventricular tachycardia(以下PSVT)を,S1-S2 190msecから260msecの範囲で心拍数約160/分のrapid PSVTが再現性を持って誘発された.Slow PSVTは頻拍中の心房興奮様式が洞性のそれと一致し,興奮順序が高位から下位であり,明瞭な心房エコー帯を認め,適切なタイミングで加えた心房早期刺激にて停止可能であった.一方,rapid PSVTは房室伝導曲線にてjumping up現象を認め,興奮順序は下位から高位であり,明瞭な心房エコー帯を認めた.また,室房伝導曲線では連結期の短縮とともに室房伝導時間の延長を認め,副伝導路の存在が否定された.以上の所見より,slow PSVTは洞結節性リエントリー性頻拍(以下SANRT),rapid PSVTは房室結節性リエントリー性頻拍(以下AVNRT)と診断し,2種類のPSVTに対しATPならびにverapamilの薬効評価も検討した.SANRTならびにAVNRTによるPSVTは現在までに4例しか本邦報告をみるにすぎず,まれな症例と思われる.
  • 伊西 洋二, 平井 寛則, 當間 三弘, 鈴木 真事, 出川 敏行, 二宮 健次, 矢吹 壮, 町井 潔, 高橋 啓, 箕輪 久, 安島 春 ...
    1992 年24 巻10 号 p. 1218-1223
    発行日: 1992/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.昭和63年6月頸部腫瘤のため某院に入院し,非ホジキン型悪性リンパ腫(stageI)の診断で腫瘍摘出術および放射線治療を受けた.平成1年1月頃より食欲不振が出現し前医に入院,精査の結果,胃・十二指腸悪性リンパ腫(非ホジキン型)と診断された.同院入院中に胸痛発作を認め心電図上V 2 ~ V 6 のS T 上昇を認めたが, ニトログリセリン舌下にて胸痛は消失し,心電図上も改善を認めた.心臓精査の目的で当院入院となった.心エコー図では左室前側壁および心室中隔から心尖部にかけての著明な肥厚を認め,同部位にhypokineticな壁運動異常を認めた.67Gaシンチグラフィーでは左胸部に異常集積像を認め,また201T1心筋シンチグラフィーにて心室中隔から心尖部にかけての異常集積像を認めた.左室造影では前壁および中隔から心尖部にかけてakinesisであり,右室造影でも心尖部に限局してakinesisを認めた.冠動脈造影では有意狭窄を認めなかった.同時に施行した右心室筋生検で心内膜から筋層内に極めて著しい悪性リンパ腫細胞の浸潤が認められ,悪性リンパ腫の心内膜および心筋転移の確定診断が得られた.
    生前における悪性リンパ腫の心臓転移の診断はまれであり,さらにその経過中に狭心症様症状を認め,この症状と悪性リンパ腫心臓転移との関連を検討する上でも,本症例は極めて貴重な症例であると考えられた.
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