【目的】強心薬であるピモベンダンにより精神活動が改善する症例が観察される.核医学検査を用いて本剤の心機能への影響および脳血流に対する影響を検討した.
【方法】入退院を繰り返しすでに心不全治療薬の投与を受けている入院中のNYHAIII度慢性心不全で,心不全のコントロールが困難であった症例(連続15例,男13例,女2例,平均年齢68±10歳)に対して追加治療としてピモベンダンを投与した.投与開始前および投与開始後8~12週の間に心プールシンチグラフィと脳血流シンチグラフィを施行した.左室収縮能として駆出率(LVEF),1/3駆出率(1/3LVEF),最大駆出率までの時間(TPER),最大駆出率(PER),拡張能として最大充満率(PFR),最大充満率までの時間(TPFR),拡張早期平均充満加速度(PFR/TPFR)を測定.脳血流は,大脳半球,前頭葉,側頭葉,後頭葉,尾状核,視床,小脳半球を左右別々に評価した.
【結果】ピモベンダン投与前後でLVEF,1/3LVEF,TPERは有意差を認めなかった.PER,PFR,TPFR,PFR/TPFRは投与後に有意に改善した.大脳全体,右側頭葉,左右の尾状核および視床の血流は投与後に有意に改善した.
【結論】ピモベンダンは左室拡張早期弛緩能を改善することにより心機能を改善すると考えられた.有意な脳血流の改善が認められ,改善部位に視床への偏在傾向を認めたことから,ピモベンダンが強心作用以外にある種の選択性を持つ脳血流増加作用を有する可能性が示唆された.
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