心臓
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54 巻, 8 号
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection わが国の植込型補助人工心臓のDestination Therapy 企画:縄田 寛(聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科)
HEART’s Column
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HEART’s Up To Date
[臨床研究]
  • 荒木 直哉, 高木 淳, 西川 幸作, 吉永 隆, 岡本 健, 福井 寿啓
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 8 号 p. 896-904
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     目的:術前低心機能の有無で心臓手術後心臓リハビリテーションの入院中における成績を比較すること,および術後運動耐容能の回復に影響を及ぼす因子を明らかにすること.

     方法:2019年4月から2021年3月までに待機的に心臓手術を施行した症例のうち,術前歩行困難例や維持透析症例などを除く178例(69.4±10.3歳,男性112例)を対象とした.術前左室駆出率が50%未満の症例を低心機能群(28例;15.7%),50%以上の症例を非低心機能群(150例;84.3%)と定義し,両群間で患者背景や術前身体機能などを比較した.さらに術後運動耐容能が術前値に回復するまでの日数を調査し,中央値までに回復しなかった症例を目的変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行い,術後運動耐容能の回復に影響を及ぼす因子を調査した.

     結果:低心機能群は非低心機能群と比較して,喫煙率,EuroSCOREⅡ,術前BNP値が高かった.また,低心機能群は複合手術の割合が高く,手術時間が長い傾向であったが,術後経過に有意差を認めなかった.多変量解析の結果,術後運動耐容能の回復に影響を及ぼす因子は心房細動(オッズ比2.520,p値0.028),糖尿病(オッズ比2.800,p値0.002)であり,低心機能は該当しなかった.

     結語:術前低心機能の有無で術後心臓リハビリテーションの入院中における成績には差がなく,術前低心機能であっても非低心機能と同様に術後運動耐容能の回復を図ることができると考えられた.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 坂本 勇斗, 飛田 和基, 合田 あゆみ, 竹内 かおり, 菊池 華子, 伊波 巧, 田村 雄一, 佐藤 徹, 山田 深
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 8 号 p. 906-911
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

    目的:emPHasis-10を用いて,肺動脈圧以外に肺高血圧症(PH)患者のQOLに関連する因子を明らかにすること.

    方法:対象は2018年6月~10月の間に当院で右心カテーテル検査を行った薬物治療中のPH患者88例とした.患者基本情報,血行動態指標,emPHasis-10,筋力,6分間歩行距離(6MWD),酸素療法の有無,罹患期間を診療録から後方視的に抽出した.emPHasis-10の合計点を従属変数,その他の項目を独立変数として重回帰分析を行った.

    結果:対象患者の年齢は59(46-71)歳,肺動脈性肺高血圧症(PAH):慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)=32:56例,平均肺動脈圧19(16-24) mmHg,emPHasis-10の合計点17(9-28)点,6MWD 436(373-509) m,酸素療法 有:無=12:76例,罹患期間5(2-9)年であった.emPHasis-10の合計点と6MWDおよび罹患期間の間に有意な相関を認め,標準化偏回帰係数はそれぞれβ=−0.46(95%CI:−0.72,−0.19,p<0.01),β=0.32(95%CI:0.13,0.51,p<0.01)であった.

    結論:肺動脈圧の低減が得られた薬物治療中のPH患者でもQOLは低下しており,そのQOLには運動耐容能と罹患期間が影響を及ぼしていることが示唆された.

  • 久保 輝明, 片桐 悠也, 中村 彩紗, 前田 康介, 新田 翔一朗, 三村 知之, 木村 啓介, 高石 篤志
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 8 号 p. 912-919
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     目的:近年の高齢心不全患者の増加により,通所リハビリテーション(デイケア)の現場でも心不全の利用者は増加傾向にあると予測される.しかし,介護保険利用下での心不全症例に関する疫学的臨床研究の報告例は少ない.本研究はデイケア利用者における心不全症例の心不全再増悪による入院の有無を調査し,デイケアでの心不全再増悪予防に関する課題を明らかにすることを目的とした.

     対象:2019年4月中に当施設にてデイケアを利用していた107例を対象とした.

     方法:107例から心不全の診断が確認された22例(21%)を抽出し分析対象とした.また,4月以降1年間での心不全再増悪による入院有無にて2群間に分け,利用者背景,心不全再増悪因子などについて調査・検討した.

     結果:分析対象者の18例(81%)がHFpEF症例であり,9例(41%)が1年間で心不全再増悪による入院を要した.また心不全増悪誘因としては内服管理の不十分や塩分・水分過剰摂取の症例はなく,肺炎や心房細動,他疾患治療による心負荷といった原疾患以外の疾患を契機に悪化した症例がみられた.

     結論:デイケアでの心不全再増悪の予防としては,過活動に対するADL指導とともに心負荷になりうる合併疾患への配慮が必要と示唆された.

[症例]
  • 後藤 準, 大瀧 陽一郎, 高畑 葵, 田村 晴俊, 和根崎 真大, 沓澤 大輔, 加藤 重彦, 西山 悟史, 高橋 大, 有本 貴範, 渡 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 920-926
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     症例は67歳の女性.63歳の時に成人発症型ネマリンミオパチーと診断されていた.労作時息切れが出現し,心臓超音波検査で,左室駆出率の高度低下(LVEF 13%)とBNP高値(2,994 pg/mL)を指摘され,重症心不全と診断された.精査・加療目的に当院に転院搬送された.β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI),SGLT2阻害薬,イバブラジンを導入し,心不全は改善し第37病日に自宅退院となった.心筋生検を含めた心精査より,ネマリンミオパチーによる心不全と診断した.心不全は再発なく経過し,8カ月後LVEF 56%,BNP 13.6 pg/mLと正常化した.成人発症型ネマリンミオパチーで心不全を発症するのは稀である.これまで新規心不全治療薬を用いた至適薬物療法により心機能が改善した報告はない.重症心不全を呈した成人発症型ネマリンミオパチーの1例について過去の文献を含めて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 栃木 秀一, 建部 祥, 田邉 友暁, 田岡 誠, 山﨑 琢磨, 齋藤 真人, 丁 毅文, 丁 栄市, 加藤 能利子, 曽川 正和
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 928-931
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     心臓手術後に発生する視機能障害は稀ではあるが一旦発生すると治療に難渋することがある.今回大動脈弁置換術後に急性緑内障発作を合併した症例を経験した.症例は65歳男性,前日野球をしていた際に胸部苦悶感を自覚し外来を受診した.患者は2年前に健診で心雑音の指摘をうけ当院受診,その際に心臓カテーテル検査を行い冠動脈造影では異常を認めず,大動脈弁狭窄を認めたが左室-大動脈間圧較差23 mmHgであったため経過観察とされた.今回心エコーでは大動脈弁最大血流速度4 m/sの大動脈弁狭窄症を認め心電図では左室肥大とV1-3でST上昇,加えて逸脱酵素の上昇を認めた.同日入院,保存的治療を行い病状の改善をみて再度心臓カテーテル検査を行い左室-大動脈間圧較差56 mmHgと大動脈弁狭窄の進行を認め,1カ月後に手術(機械弁による大動脈弁置換)を行った.第3病日に左下肢のしびれ,右手指が動かしにくいという症状出現,脳虚血発作を疑い治療を開始したが第4病日には顕著な視力低下と散瞳を認めた.第5病日に総合病院眼科受診,眼圧上昇(40-50 mmHg)を認め急性緑内障発作と診断された.ピロカルピン点眼では眼圧低下が得られず同日レーザー虹彩切開術をうけ,眼圧は正常化し視機能は保持された.本症例を通して術後の視機能障害でも稀な急性緑内障発作,さらに心筋梗塞で発症した大動脈弁狭窄症に関して考察を加えた.

Editorial Comment
[症例]
  • 藤田 佳委, 井本 宏治, 山口 まどか, 加藤 孝佳, 吉田 雅昭, 園山 一彦, 河端 哲也, 伊藤 俊輔, 三宅 隆明, 若山 聡雄, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 933-940
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     ポマリドミドは再発・難治性の多発性骨髄腫に対して使用される新規免疫調節薬の一つである.通常はデキサメタゾンとの併用,さらにもう1剤を加えた3剤併用療法が行われる.その重篤な有害事象の一つとして静脈血栓症が挙げられる.今回,多発性骨髄腫に対してポマリドミド使用中に急性肺血栓塞栓症(APTE)を発症した2例を経験した.

     症例1は73歳男性,症例2は70歳男性でいずれも呼吸困難を主訴に受診し,APTEの診断に至った.治療を中止したうえで抗凝固療法を開始したが,症例2ではショックバイタルとなったため,血栓溶解療法を施行した.2症例とも加療により肺動脈内の血栓消失を確認し,自宅退院となった.

     ポマリドミド使用中は抗凝固療法による血栓予防が推奨されているが,本邦では保険適応がないため,アスピリン使用の上,静脈血栓の早期発見に努める必要がある.

Editorial Comment
[症例]
  • 岡田 あずさ, 黒田 和宏, 藤原 知洋, 和多 一, 田中 正道, 湯本 晃久, 齋藤 博則, 福家 聡一郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 944-951
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     症例は65歳男性.下咽頭癌に対し4年前からニボルマブによる化学療法を受けていた.数日前より夜間起座呼吸があり受診した.血中酸素飽和度低下と,画像検査では心拡大,肺うっ血像および,びまん性の左室壁運動低下を認め,左室駆出率は27%と低下していた.血液検査では血清クレアチンキナーゼ(CPK)高値とナトリウム利尿ペプチドの上昇,12誘導心電図では前胸部誘導で陰性T波と左室肥大所見を認めた.初発の心不全として強心薬,利尿薬を用いた急性期治療の後に心臓カテーテル検査を行った.冠動脈病変は認めず,続いて心筋生検を行った.病理組織学的検査では線維増生を認め,炎症細胞浸潤はみられなかった.その他の二次性心筋症は否定的であり,ニボルマブによる心機能障害と診断した.活動性の心筋炎所見は認めなかったため免疫抑制療法/免疫調整療法は行わずニボルマブを中止の上,慢性心不全に対する標準療法を行い軽快,退院した.免疫関連有害事象(irAE)の中で心筋炎および心筋症の報告は稀だが死亡率は高い.今後がん治療において循環器内科医の役割も増していくと思われる.

Editorial Comment
[症例]
  • 宮城 孝雅, 槇田 徹, 湧川 林, 勝連 朝史, 平良 良集, 大城 克彦, 宮良 高史, 田場 洋二, 當真 隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 955-962
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     症例は49歳男性.SARS-CoV-2陽性となり,宿泊療養施設で心肺停止となり当院へ救急搬送.患者を個室隔離した救急ベッドへ搬入し,医療従事者は感染対策のため個人防護具(PPE)を装着し,接触する人数を制限し速やかに気管内挿管した.カテーテル室を陰圧にして,物品を養生したのちに患者を移動した.経皮的心肺補助(PCPS)導入後に心室細動は停止.冠動脈造影では#7に閉塞を認め治療を行い,TIMI3の再灌流が得られた.術後は陰圧個室のICUへ移動.一時透析を必要としたが,血行動態は安定しPCPSを離脱.神経学的後遺症なく独歩退院となった.院外心停止の重症COVID-19患者であったが,迅速な治療と適切な感染対策により良好な転帰を得ることができたため報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 榎本 貴士, 三島 健人, 岡本 竹司, 大久保 由華, 中村 制士, 大西 遼, 白石 修一, 土田 正則
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 966-971
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     症例は62歳男性.Marfan症候群の家族歴があり,小学生の頃より大動脈弁輪拡大でフォローされていた.37歳の時にStanford A型急性大動脈解離を発症し,Cabrol法による大動脈基部置換術を施行された.術後16年目のCTで人工血管と左右冠動脈の吻合部狭窄を指摘されていたが無症状のため経過観察となっていた.その後徐々に心不全症状が出現し,術後23年目(60歳)の時に入院となり,両側吻合部ともに99%狭窄を認めPCIを施行された.いったんは心不全は改善したが翌年には心不全再増悪を認め,精査の結果,右冠動脈完全閉塞および左冠動脈吻合部ステント内90%狭窄を認めた.これ以上の内科的治療は困難と判断され,今回on pump beating CABG(LITA-#7,RITA-#14,RGEA-#4PD)を施行した.術後合併症なく経過し,術後29日目に退院となった.Cabrol法は大動脈基部置換術のうち小口径人工血管を用いて冠動脈再建を行う手法であり,止血視野の確保や確実な心筋保護といった点で非常に有効であり普及していったが,遠隔期の人工血管吻合部の狭窄や人工血管の閉塞が問題となった.治療方法として新たに小口径人工血管を付け替える方法やCarrel patch法として再建する方法,CABGなどがあげられる.本症例のように若年であり,低心機能で大動脈基部に高度な癒着が想定される場合は動脈グラフトを使用したCABGが有用と考えられるが,今後大動脈解離の進展の可能性もあるため注意深く経過観察していく必要があると考えられる.

Editorial Comment
[症例]
  • 中川 博文, 南渕 明宏, 岡田 祥一, 川幡 大嗣, 中村 圭佑, 寺田 拡仁, 奥山 浩
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 8 号 p. 973-981
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/18
    ジャーナル フリー

     冠動脈起始異常症(anomalous aortic origin of a coronary artery;AAOCA)は稀な先天的冠動脈異常である.その中でも右冠動脈が左冠動脈洞より起始するタイプ(anomalous aortic origin of the right coronary artery;AORCA)はそのほとんどが無症状で経過するが,前触れなく突然死する事例が報告されている.

     症例1は74歳,男性.AORCAを指摘されており,さらに薬剤抵抗性の反復性心室細動を有していた.これに対し植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)挿入が行われているが,植込み後も1年に1回の頻度で除細動が作動していた.

     症例2は41歳,男性.安静時胸痛と一過性意識消失を伴う頻脈発作の精査を行ったところAORCAが指摘された.

     これまでのエピソードや検査結果を元に,これら2症例が突然死のリスクが高い症例であると判断し心停止下にて右冠動脈のreimplantation法を行った.術後の経過は良好で,術後2年以上が経過するが2症例とも術前に認めた症状は完全に消失している.

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