心臓
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27 巻, 6 号
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  • 心電図による検討
    谷内 亮水, 秦泉寺 寿美雄, 長谷川 香代, 藤本 由美, 藤田 亀明, 沼本 敏, 大脇 嶺, 西村 直己, 山本 克人, 森下 智文, ...
    1995 年 27 巻 6 号 p. 509-518
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症の経年変化について心電図を用い検討した. 1 9 7 8 年~ 1 9 9 4 年の間に平均9 3 . 6 カ月経過観察できた24例を対象とした.経過観察期間の前後で,12誘導心電図波形を比較し,(1)QRS時間,(2)電気軸,(3)移行帯,(4)標準肢誘導と単極胸部誘導のS波高,R波高,T波高,STレベルについて,t検定(paired)を用いて検討した.経過と共に移行帯の時計回転方向への変化,QRS時間の延長(0.083秒→0.093秒,p<0.05),QRS振幅の減高(SV1+RV5:51.9mm→42.4mm,p<0.025),V4~V6誘導での陰性T波の陽転化が高頻度に認められた.その原因として,心筋変性,線維化の進行による壁厚の減少および左室の拡大が推察された.
  • 冠動脈内血栓溶解療法を第一選択とすべきか否か
    縄田 智子, 原政 英, 伊藤 健一郎, 白岩 博晴, 浦上 三郎, 恒松 芳洋, 幸松 晃正, 井上 健, 前田 利裕, 犀川 哲典, 坂 ...
    1995 年 27 巻 6 号 p. 519-524
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    [目的]急性心筋梗塞(AMI)に対する再灌流療法を施行する際に冠動脈閉塞形態によって冠動脈内血栓溶解療法(ICT)が有用な症例を選択できるかどうかを検討した.
    [対象・方法]対象はICTを施行したAMI例のうち,緊急冠動脈造影時に完全または亜完全閉塞であった40例.緊急冠動脈造影時の責任冠動脈閉塞形態を1)血栓型(1)明瞭血栓型(12例),(2)不明瞭血栓型(12例),2)先細り型(8例),3)平坦型(8例)に分類し,血栓型と先細り型および平坦型のICT成功率を比較した. ただしTIMI0~1を不成功,TIMI2~3を成功と定義した.
    [結果]年齢,性別,責任冠動脈の左右別,発症後経過時間,および血栓溶解剤の種類によってはICTの成功率に有意差はなかった.一方閉塞形態による分類では,血栓型が先細り型および平坦型に比して有意に成功率が高かった(血栓型vs先細り型vs平坦型;88%vs50%vs37%,p<0.01).なお明瞭血栓型と不明瞭血栓型には有意差はなかった.
    [考按・総括]冠動脈閉塞形態を検討することは再灌流療法を選択するうえで有用であり,血栓型閉塞の場合はICTを第一選択とすべきであると考えられた.
  • 小池 康崇, 吉野 靖, 葉山 泰史, 前田 文昭, 立之 英世, 楊 志成, 外山 雅章, 田辺 大明, 尾崎 重之, 河瀬 勇, 西村 ...
    1995 年 27 巻 6 号 p. 525-529
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併した乳頭筋断裂はまれな病態であり,心原性ショックを生じるため救命困難とされている.今回緊急の僧帽弁置換術および冠動脈バイパス術により救命し得た70歳女性の症例を経験した.呼吸困難を主訴に救急外来を受診し,急性心筋梗塞による心不全の診断で入院した.入院時Killip3型,Forrester 2型を呈した.フロセマイド,硝酸イソソルビドなどにて,肺動脈楔入圧は低下したが,その後肺うっ血が進行し肺動脈楔入圧の上昇,V波の増高を認め,急性僧帽弁閉鎖不全症を疑った.心エコー図にて乳頭筋断裂による僧帽弁前尖の逸脱,4度の僧帽弁逆流を認めた.大動脈内バルーンパンピング法(IABP)を行いながら冠動脈造影を施行し,左前下行枝中枢部に60%狭窄,回旋枝鈍縁枝の完全閉塞を認めた.造影終了時より心原性ショックとなりカテコールアミン投与にても血行動態の改善はなかった.気管内挿管を行い手術室に搬送して,緊急手術を行った.前乳頭筋の筋腹部分で完全断裂を認め,僧帽弁置換術を行い,前下行枝にてバイパスをかけた.術後は経過良好で1カ月後退院した.本症例は臨床経過に加え心エコー図,血行動態の経時的観察により乳頭筋断裂を診断し,時期を逸することなく外科的治療に踏み切り救命し得た症例である.
  • 牟田 毅, 永島 隆一, 車 忠雄, 森 唯史, 丸山 徹, 加治 良一, 権藤 久司, 金谷 庄蔵, 藤野 武彦, 仁保 喜之
    1995 年 27 巻 6 号 p. 530-535
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    著明な脾腫と脾機能亢進による汎血球減少症を伴えば出血傾向や易感染性の危険が増すため脾腫の原因の正確な評価は治療上重要な問題となる.今回我々は肝脾腫と汎血球減少症をきたした僧帽弁閉鎖不全の症例を経験し,心不全の治療よりも抗生物質の投与にて脾腫が著明に縮小したことから感染性心内膜炎が脾腫の原因であったと考えられた症例を経験したので報告する.症例は45歳女性.全身倦怠感,呼吸困難,全身浮腫にて来院し僧帽弁閉鎖不全による心不全の診断にて平成5年5月31日当科入院.入院時発熱なく,汎収縮期雑音とIII音ギャロップを聴取,肝臓,脾臓を各5横指触知した.検査成績では汎血球減少症を示したがCRP陰性,血液培養陰性であった.腹部エコーにて著明な肝脾腫,心エコーにて僧帽弁前尖に疣贅を認め,高度僧帽弁逆流と肺高血圧(RVSP=82mmHg)を認めた.経過中に発熱,CRP上昇,脾腫の増大と汎血球減少症の増悪が出現し抗生物質を投与したところ,心不全治療に反応しなかった脾腫が著明に縮小し汎血球減少症の改善を認めた.しかし貧血の改善に伴い心仕事量増加によると思われる心不全の増悪が出現したため僧帽弁置換術を施行し,心不全,脾腫,汎血球減少症は改善した.本症例のように発熱・CRP上昇を伴わずに発症した僧帽弁閉鎖不全症でも感染性心内膜炎が存在する可能性があり,脾腫・汎血球減少症の病態改善に抗生物質の投与も考慮する必要がある.
  • 高尾 雅己, 宮原 嘉之, 室屋 隆浩, 池田 聡司, 内藤 達二, 新北 浩樹, 森光 卓也, 波多 史朗, 太田 三夫, 宮原 嘉久, ...
    1995 年 27 巻 6 号 p. 536-541
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋炎急性期の壁運動障害は左室の奇異性運動ともいわれ,その程度と範囲は心筋炎の重症度による.これらは通常,慢性期には壁運動障害を残さず改善する.一部,心室瘤を形成する症例や壁運動障害を残存する症例もみられるが,一般的には程度の差はあれ,び漫性の障害を伴うものが多い.今回我々は心エコー,心筋シンチグラム,左室造影上,心基部に限局した壁運動障害を残した1症例を経験した.症例は66歳,女性.約10年前より高血圧症にて近医に通院治療中,感冒様症状に引き続き,ショック状態にて近医に緊急入院した.心電図上,心室頻拍を呈し,DCショック施行にて発作停止.血液生化学では血清酵素の上昇と強い炎症反応を認めた.心エコーでは,左室壁運動は全体的に低下しており,左室駆出率は34%と著明に低下していた.その後も心室頻拍を繰り返し,精査加療の目的で当科へ転院となった.コクサッキーB群ウイルスをはじめとする血清抗体価の有意な上昇は認められなかったが,冠動脈造影上有意な狭窄を認めず,左室造影上冠動脈の支配領域に一致しない心基部に限局した壁運動異常を認めた.右室心内膜生検の結果,心筋内に単核球の浸潤を認めた.以上の結果および臨床経過から,本例は急性心筋炎と考えられ,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 高橋 淳, 家坂 義人, 全 栄和, 後藤 昌計, 井川 昌幸, 徳永 毅, 雨宮 浩, 藤原 秀臣, 青沼 和隆, 秋山 淳一, 野上 昭 ...
    1995 年 27 巻 6 号 p. 542-548
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    頻脈性心房細動を合併した右側副伝導路症例の高周波カテーテルアブレーション1週間後の電気生理学的検査において,副伝導路伝導を認めなかったものの,1カ月後に再発したB型WPW症候群を経験した.症例は37歳男性,心電図上および電気生理学的検査による三尖弁輪部のマッピングにより右側側壁副伝導路を確認した.鎖骨下静脈アプローチにより,洞調律時最早期心室興奮部位を指標に右側側壁三尖弁輪直下心室側に高周波通電を施行し,1回の高周波通電によりアブレーションに成功した.しかし1カ月後,伝導能の低下した副伝導路伝導が再発し,1回目の通電部位より約1cm前壁側での再アブレーションに成功し,multiple fiberを有する副伝導路が示唆された.しかし翌日さらに伝導能の低下した副伝導路伝導を確認し,1回目より約0.5cm後壁側でのアブレーションにより完全離断に成功し,5カ月間の経過観察期間中,再発を認めていない.本例は,初回アブレーション1カ月後の再発により, 初めてmultiplefiberを有する副伝導路確認され,再発への関与が示唆され,副伝導路の解剖学的多様性を示す症例と考え,報告する.
  • 岡田 了三
    1995 年 27 巻 6 号 p. 549-550
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 末松 知真, 上田 昌博, 毛利 太一, 田中 政史, 高月 浩, 勝野 誠, 大島 文雄
    1995 年 27 巻 6 号 p. 551-556
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    当施設開設以来10年間に心臓原発悪性リンパ腫を3例経験した.
    症例1:65歳,男性.労作時呼吸困難,意識消失発作のため入院.心陰影拡大,心膜液貯留,心室中隔腫留,房室ブロックを認めた.心膜液細胞診でT細胞性異常リンパ球浸潤,67Gaシンチで心臓部のみ異常集積を認め,リンパ節腫大を認めず心臓原発悪性リンパ腫と診断した. 化学療法にて臨床症状時的改善を認めたが診断6カ月後に心不全,肺炎で死亡した.
    症例2:68歳,男性.全身倦怠感,咳漱,浮腫のため入院.心陰影拡大,胸水,心膜液貯留,右房および右室外側壁腫瘤を認めた.右頸部,右鼠径部に小リンパ節を触知したが右頸部リンパ節は組織学的に乾酪壊死で,胸腹部リンパ節腫大なく,67Gaシンチで異常集積なく,心膜液細胞診でT細胞性異常リンパ球浸潤を認め心臓原発悪性リンパ腫と診断した.化学療法で寛解していたが診断37カ月後に急性肺炎で死亡した.
    症例3:74歳,男性.労作時呼吸困難のため入院.心陰影拡大,胸水,心膜液貯留,心房および心室中隔腫留,完全房室ブロックを認めた.胸水,心膜液細胞診で異常細胞を認めず,リンパ節腫大なく,67Gaシンチでも異常集積なく心臓腫瘍の診断で化学療法施行中に心室細動で死亡した.Necropsyにて心臓腫瘤は多型細胞型悪性リンパ腫の組織像を呈し,心臓原発悪性リンパ腫と診断した.
    心症状を初発とする悪性リンパ種は稀有であるが,化学療法,放射線療法が有効であり,心不全,刺激伝導障害の一因として念頭に置き心膜液細胞診および心エコー等画像検査にて早期の診断治療に心がけるべきである.
  • 米田 武, 土金 悦夫, 船本 全信, 五十嵐 敢, 古川 順康
    1995 年 27 巻 6 号 p. 557-561
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    再発乳癌による癌性心タンポナーデに対し,心膜腔内にドレナージチューブを2本留置し,ヘパリンの心膜腔内灌流下にメソトレキセート(MTX)の心膜腔内注入と,MTX,5FU,プレドニゾロンの全身投与化学療法併用が有効であった症例を経験したので報告する.症例は,39歳の女性.1987年2月左乳癌に対し,定型的乳房切除術が施行された.1992年6月頃より労作時の呼吸困難,咳漱が出現し,徐々に増強する傾向を認め同年8月7日入院となった.胸部X線,CT,心臓超音波検査等により,心膜液貯留が確認された.心膜穿刺液の細胞診にて多数の腺癌細胞が認められ,乳癌の心膜転移と診断された.MTX,5FU,プレドニゾロンの併用化学療法を開始し,局所療法として,9月1日心膜穿刺排液後,MTX10mgを心膜腔内に注入した.しかし9月3日呼吸困難,不穏状態出現,血圧低下(80mmHg触診),脈拍134/分,緊張微弱,四肢冷感を認めるショック状態となった.直ちに心膜穿刺施行し,血性暗赤色の心膜液約800ml排液した.ドレナージチューブ内での血液の易凝固性に対し,2本のチューブを心膜腔内に留置し,一方からヘパリン+MTXを持続注入し,他方より低圧持続吸引を続ける方法をとった.5日間のMTXの注入および持続ドレナージの結果,心タンポナーデは良好にコントロールされ心膜液貯留も消失した.2カ月後には退院となった.
  • 麻野井 英次, 石瀬 久也, 石坂 真二, 亀山 智樹, 井上 博, 梅野 克身
    1995 年 27 巻 6 号 p. 563-577
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性心不全では副交感神経機能が減弱,交感神経機能が亢進し,重症化するほどこの変化は顕著となる.最近臨床応用されている心拍数の周波数解析は,交感神経緊張と副交感神経緊張に特異的な心拍変動成分を抽出して,同一次元で自律神経バランスを評価しようとする方法である.本法を用いる際には,1)高周波成分に対する呼吸の影響,2)低周波成分に対する副交感神経系の影響,3)全周波数成分に対する年齢の影響を考慮する必要がある.心不全患者の心拍変動で最も顕著な所見は,全周波数成分が減弱することである.重症化するほど高周波成分から低周波成分に向かってパワーが失われ,治療によりこれが回復する.かかる所見から,心不全では応答の速い神経性調節が失われ,応答の遅い液性調節がしだいに優位となることが示唆される.心拍変動の周波数解析から得られる指標は,自律神経活動だけでなく, これに関与する心臓の圧受容体やβ 受容体の機能に強く左右される.本法を他の自律神経指標と組み合わせることにより,心不全における神経性調節の異常をより多面的に解析することが可能と思われる.
  • 吉村 道博, 泰江 弘文, 中尾 一和
    1995 年 27 巻 6 号 p. 578-589
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ナトリウム利尿ペプチド(NP)ファミリーはA-type,B-typeおよびC-type natriuretic peptide(ANP,BNP,CNP)の3つから構成される.特にANPとBNPは心臓由来のペプチドであり,心不全の病態と深くかかわっている.血漿ANP,BNP濃度は心不全において著しく増加する.それぞれの分泌部位はANPは心不全の初期では主に心房であるがその重症度に伴い心室からも分泌される.一方,BNPは心不全の重症度にかかわらず主に心室から分泌される.ANP,BNPの分泌部位が異なることより心不全の基礎疾患の相違でもANP,BNPの分泌パターンが変わることが明らかとなった.ANPは主に心房においてregulated pathwayを介して,またBNPは主に心室においてconstitutive pathwayを介して分泌される.このpathwayの違いはANP,BNPの血中濃度の変動に影響を与えている.急性心筋梗塞では血漿BNP濃度は著しく増加し,ANPとは明らかに異なる分泌様式を示した.合成ANP,BNPを静注することにより心不全は改善する.その機序は強力なナトリウム利尿作用,血管拡張作用およびrenin-angiotensin-aldosterone系と交感神経系の抑制作用と思われる.今後ANP,BNPは新しい心不全治療薬になるものと期待される.
  • 死亡率と治療効果の指標
    Jay N. Cohn
    1995 年 27 巻 6 号 p. 590-597
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室のリモデリングによる左室駆出率の低下と,交感神経系活性の亢進による血漿ノルエピネフリン値の増加ば,心不全患者の生命予後を不良にする.大規模臨床試験(V-HeFT II)において,エナラプリルあるいはヒドララジン+硝酸イソソルビドによる薬物治療により,左室駆出率が持続的に増加することが示された.また,エナラプリルは短期間であるが血漿ノルエピネフリン値を減少させた.これらの生理学的指標が改善することは,心不全における薬物治療が死亡率を減少させるのに有効であることを示唆している.薬物治療によって左室のリモデリングを防ぎ,交感神経系の活性を抑制することは,心不全患者の死亡率を減少させる上で有用と考えられる.
    心不全は,左室の機能低下に始まり,次第に心・血管系,局所循環系,神経体液系にわたる複雑な病態へと進展していく.左室機能不全に端を発した心不全は,基礎疾患の進行とは関係なく進行するようで,正負の調節機序のもとに確実に左室機能を悪化させ,症状を増悪し生命予後を不良とする.
    心不全による死亡率に明らかに関係するという理由から,2つの病態が注目されている.左室駆出率は,通常放射性同位元素を用いたり,心エコー検査によって測定され,死亡率の予測に高い評価を得ている.一方,交感神経系活性の亢進を示すマーカーである血漿ノルエピネフリン値も,死亡率と直接関係する因子である.本稿ではこの2つの予後関連因子と死亡率との関連性,および治療によってこれらを改善することの可能性について述べたいと思う.
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