当施設開設以来10年間に心臓原発悪性リンパ腫を3例経験した.
症例1:65歳,男性.労作時呼吸困難,意識消失発作のため入院.心陰影拡大,心膜液貯留,心室中隔腫留,房室ブロックを認めた.心膜液細胞診でT細胞性異常リンパ球浸潤,67Gaシンチで心臓部のみ異常集積を認め,リンパ節腫大を認めず心臓原発悪性リンパ腫と診断した. 化学療法にて臨床症状時的改善を認めたが診断6カ月後に心不全,肺炎で死亡した.
症例2:68歳,男性.全身倦怠感,咳漱,浮腫のため入院.心陰影拡大,胸水,心膜液貯留,右房および右室外側壁腫瘤を認めた.右頸部,右鼠径部に小リンパ節を触知したが右頸部リンパ節は組織学的に乾酪壊死で,胸腹部リンパ節腫大なく,67Gaシンチで異常集積なく,心膜液細胞診でT細胞性異常リンパ球浸潤を認め心臓原発悪性リンパ腫と診断した.化学療法で寛解していたが診断37カ月後に急性肺炎で死亡した.
症例3:74歳,男性.労作時呼吸困難のため入院.心陰影拡大,胸水,心膜液貯留,心房および心室中隔腫留,完全房室ブロックを認めた.胸水,心膜液細胞診で異常細胞を認めず,リンパ節腫大なく,67Gaシンチでも異常集積なく心臓腫瘍の診断で化学療法施行中に心室細動で死亡した.Necropsyにて心臓腫瘤は多型細胞型悪性リンパ腫の組織像を呈し,心臓原発悪性リンパ腫と診断した.
心症状を初発とする悪性リンパ種は稀有であるが,化学療法,放射線療法が有効であり,心不全,刺激伝導障害の一因として念頭に置き心膜液細胞診および心エコー等画像検査にて早期の診断治療に心がけるべきである.
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