心臓
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6 巻, 11 号
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  • その臨床的意義
    厚地 良彦, 渡辺 佐知子, 阿部 光樹, 田島 経躬, 岡村 健二, 龍野 勝彦, 近藤 瑞香, 広沢 弘七郎
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1529-1535
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺静脈瘤の報告例57症例について,その発生より,先天性と後天性に分けた.前者においては,心血管異常や,肺疾患に伴うものもあるが,何ら随伴疾患なく,無症状のものもあった.後者においては,僧帽弁疾患,特に閉鎖不全に伴うものが一番多い.発見年齢は6歳から62歳にわたり,平均年齢は38歳で性差はなかった.発見年齢の高いことは,静脈瘤による臨床症状の発現頻度が少ないことを示唆している.発生部位はともに右肺に多く,先天性では2倍に,後天性では4倍の頻度で右肺に多く,各葉では右下葉に多く発生している.静脈瘤の数は,多発性が22%で後天性が先天性の3倍であった.自然歴については,まだ明確でないが,3例の破裂による死亡例をみてみると,発見後,17ヵ月後,12後年後,他の1例は肺結核の侵潤により破裂している.一方,15年間follow-upしてもその大きさに変化のなかったものもあり,肺静脈瘤の外科的適応の難しい点と思われる.
  • 志田 寛, 森本 雅巳, 関 龍幸, 井之川 孝一, 岩浅 武彦, 杠 英樹, 代田 広志
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1536-1542
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    単純超低体温下開心術における代謝性アシドージスの本態を乳酸血症の面より追求する目的で,血中乳酸の変動とその除去の2因子を検討した.まず,血中乳酸は冷却により増加し,とくに血流遮断により著明に増加することより,hypoxic metabolismによる嫌気性解糖の促進が乳酸血症の1因をなしていると考えられる.つぎに,その除去の問題については,術中における肝機能の検索より,低温により肝の代謝機能は一時的に低下し,したがって肝における乳酸処理能の低下が推測され,実験的にも冷却によりbase excess,乳酸およびピルビン酸の肝静脈・末梢静脈較差の減少が立証された.すなわち,冷却時における肝の酸性代謝産物の処理能の低下も,乳酸血症発生に対し重要な役割を演じていることが判明した.また,この対策として表面冷却・体外循環併用の有用性も論議された.
  • 藤井 諄一, 渡辺 〓, 渡辺 坦, 加藤 和三
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1543-1552
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房細動を有する各種心疾患でUCGにより先行R-R,LVEDV,SV各相互の関係を求めて左室充満曲線および左室機能曲線を描ぎ,左室の充満特性,拡張性,左室機能の定性的・定量的評価におけるその有用性を検討した.
    心不全では駆出分画の低下,左室残留血液量の増加および左室機能曲線の右(下)方への移動を認めた.僧帽弁狭窄では左室充満曲線で左室流入障害を示す所見を,心膜炎例では左室充満抑制を示唆する所見を得た.治療前後の左室機能曲線を比較した例ではdigitalisおよび利尿剤により治療した全例で治療後,左室機能曲線が程度の差はあったが左(上)方に移動するのを認めた.また利尿剤のみによって治療した心嚢液貯留の1例では症状軽快とともに左室機能曲線は右上方への延長を示して同一曲線上を移動した.心嚢液消失後,左室充満抑制が除去されEDV,SVが増加したものと考えられた.本法により非観血的に得られたこれら曲線は近似的なものではあるが,心機能評価に有用であると結論された.
  • 坂本 徹, 山田 崇之, 畑野 良侍, 長岡 秀郎, 十九浦 敏男, 村上 忠重, 谷口 興一
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1553-1558
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁狭窄症の術後急性期に色素希釈法により肺血量測定を行ない,その変動と各種因子との関係を検討した.術直後より肺血量は正常範囲内にあった.また,肺血量は肺平均循環時間,心係数,1回拍出係数,平均左房圧と正の相関を示した。しかし平均肺動脈圧とは35mmH墓までは正の相関を示したが,35mmHg以上では肺血量は減少した.同様の逆転現象は肺血管伸展圧25mmHg以上,肺血管抵抗5unit以上でも認められ,これは肺血管床の変化がこれらの点を境界にして惹起されるためと考えられた.
    また,肺血量測定は肺循環動態把握には付随的な指標である.
  • 仁村 泰治, 榊原 博, 松尾 裕英, 松本 正幸, 永田 正毅, 別府 慎太郎, 玉井 正彦, 川島 康生, 藤野 正興, 小塚 隆弘, ...
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1559-1568
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    UCGが左房粘腫液について特徴ある所見を示すことは次第に明らかにされつつある.しかしその所見は症例ごとに多少の違いがある.そこで本論文ではまず自験例についての所見を述ぺ,それを中心として左房粘液腫UCG所見の特徴抽出を行ない,その問題点を検討した.
    それらは
    (1)左房領域ないし左室流入路内の層状エコー
    (2)同じく窯状エコー
    (3)それらが速い「動き」を示す所見
    (4)緩徐な僧帽弁前尖の拡張期後退速度
    などである.これらの所見の中のあるものが随時相い混じて現れる.この際心基部より心尖部にわたり,連続的な観察を行なうことが必要である.左房内血栓,僧帽弁狭窄などの類似の所見との鑑別には,「動き」に注目することが最も重要と思われる.上に拳げたような所見が全く左房粘液腫に特異的と言いうるかどうかはなお今後の検討を必要とするが,いずれにせよUCGは左房粘液腫の診断に有力な手段であることは確実である.
  • その心血管造影による診断
    岡田 嘉之, 田所 正路, 大須賀 洋, 小泉 誠二, 八巻 重雄, 加畑 治, 伊藤 孝, 堀内 藤吾, 高宮 誠
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1569-1576
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴におけるVSDの位置は,infracristal VSDとsubpulmoary VSDとに大別され,ごくまれには室上稜の中央に位置するものもある.根治手術に際して,subpulmoary VSD型のものは,高頻度に右室流出路パッチを必要とすることなどから,VSDの位置診断は外科的に重要である.著者らは16mm X線映画を用いた心血管造影所見と,手術所見を照合し,Fallot 四徴におけるVSDの位置診断をこころみた.これにより,第1斜位像がこの診断に有用であることを知った.Infracristal VSD型は,第1斜位像で肺動脈弁下に室上稜の透亮像が明瞭で,その下にVSDがある.subpulmoary VSD型では,肺動脈弁直下にVSDが存在し,VSDと三尖弁輪との間に室上稜と思われる小さい透亮像がみられた.
  • 山本 豊, Judge, R. D.
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1577-1584
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Sick Sinus Syndrome(Brady-Tachycardia Syndromeを含む),およびCarotid Sinus Syncopeを有する患者19例に,植え込み式冠状静脈洞ペーシングを行ない,延243ヵ月の観察から,その有用性,安全性,安定性を検討した.ベーシング単独,またはdigitalis製剤,利尿剤,抗不整脈剤などの薬物療法の併用により,衰弱疲労感めまい,失神発作,息切れ,胸痛,動悸などの自覚症状は,大部分の症例で消失または改善を示し,さらに,心室性期外収縮,発作性心房細動・粗動なども,大部分の症例で改善を示した.合併症や房室ブロックの発生はみられなかった.電極位置は安定で,ペーシング閾値は平均3.0mA,置換時に大きな変化はなかった.一時的なペーシング不全を2例に認めた.デマンド型ペーシングでは,約半数に感知異常を認めたが,適切な感知閾値と不応期をもつペースメーカを選択すことにより,解決できることを示した.
  • 日本人健康成人における偽陽性率
    石川 宏靖, 外畑 巌, 山内 一信, 安井 昭二, 野村 雅則, 水 野康
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1585-1595
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    日本人健康成人男女1,570名のFrank法VCGを用い,欧米人を対象とした左室肥大診断基準((1)Varrialeら,(2)Upshawら,(3)Romhiltら,(4)Abbott-Smithら)の本邦人への適用性と,本邦人を対象とした基準((5) 村田ら,(6) 戸山ら,(7) 森ら)の女性および若年男性への適用性を,正常者での偽陽性率(以下FPRと略す)を中心に検討した.
    前者の基準のうち(1),(3)および(4)のFPRはきわめて低く本邦人にも適用可能といえる.(2)の確定(definite)診断基準の30歳未満の男性でのFPRは23.8%と高く,本邦人若年男性には適用し難い.後者の基準のうち(6)のFPRはきわめて低く,若年男性にも適用可能といえる.(5)と(7)のFPRはかなり高く,若年男性はもちろん女性でも境界値修正が必要と考えられる.各基準の女性でのFPRは同年代の男性に比しすべて低く,そのほとんどに統計学的に有意な性差が存在し,一部の基準には有意な年齢差も認めた.このことは正常と左室肥大との適正な鑑別には,年齢差の存在を考慮した性別診断基準の必要性を強く示唆するものと考えられる.
  • 乃木 道男, 佐藤 禎二, 水庭 弘進, 高尾 篤良
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1597-1600
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性心奇形は,ときに他の身体部分の奇形を合併することがある.
    われわれは,6歳女児で,心室中隔欠損症兼動脈管開存症に,両側鎖骨形成不全を合併した1例を経験したので報告する.
    鎖骨形成不全を伴う,系統的疾患は,Cleidocranlal dysostosis,あるいは,Mutational dysostosisといわれる,まれな骨形成異常で,頭蓋骨化骨形成遅延,歯牙の発生遅延などがみられることが多い.鎖骨形成不全と,先天性心奇形との合餅については,その成因は不明である。しかし,サリドマイド児に,心奇形を伴うこともあり,本患児の母親が,妊娠初期に,強度の妊娠悪阻の治療のため,種々の薬剤を服用しており,このことが鎖骨形成不全,ひいては心奇形の発生とも因果関係があるものか,関らのもたれる症例である.なお,心奇形に対しては,一期手術を行ない,経過順調である.
  • 玉井 良胤, 高安 健, 渡辺 直寛
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1601-1607
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で,既往歴に糖尿病・気管支喘息がある.昭和46年6月1日,下壁心筋硬塞発作のため入院硬塞発作前の心電図は完全右脚ブロックとともに左軸扁位(-58°)を呈していたが,発作後の心電図は且度の房室ブロックを呈し,軸変化も+20°と正常になり右脚ブロックが消失した.硬塞発作後一時,間漱性右脚ブロックを呈したが,それもまもなく消朱し,記録した限りでは2ヵ月もの間,右脚ブロックの出現はなかったが,その後ふたたび右脚ブロックを呈するようになった.
    考案:一過性ならびに聞激性右脚ブロックを示す報告はまれでなく,心筋硬塞発生により脚ブロックの出現することは多くの報告でみるが,われわれの症例のように硬塞発生後右脚ブロックの一過性の消失をみる報告はない.その原因として,(1) 硬塞による血行学的異常,(2)臨界心拍数による脚ブロックの出没,(3)そして硬塞そのものによる二次的な電解質イオン・生化学的な異常などが考えられる.
  • 川崎 英, 小野 進, 長谷田 恭子, 石瀬 昌三, 井村 優, 竹田 亮祐, 三好 恵一, 上山 武史, 岩 喬, 竹越 襄, 村上 暎二 ...
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1608-1613
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室より右房に血液が直接流れ込む先天性心疾患を総称して左室右房交通症というが,最近われわれも心血管造影および色素希釈法で左室より直接右房に向かうジェットを認め,左室右房交通症を疑い手術によって三尖弁中隔尖に0.5×0.8cmの小孔が存在し,左室右房の短絡を証明しPerryらの分類によII型と考えられる症例を経験した.
    患者は35歳,男性で20歳ごろよりときどき動悸眩景を認め弁膜症と診断されたこともあったが他に特別な家族歴や既往歴はない.心電図胸部X線像では,はっきりした異常所見はなく,心界は左に1横指拡大し,胸骨左縁に沿ってLevineIII~ IV度の荒い汎収縮期性雑音が聴取された.さらに当症例は術後激しい胸痛,発熱,著明な心拡大,胸水貯留,胸膜摩擦音などを認め諸検査よりPost Pericardiotomy Syndrolmeを疑い,副腎皮質ホルモソや抗生剤を投与したところ症状の改善,検査値の正常化をみた.
  • 内藤 泰顕, 岡本 重一, 加茂 保治, 村尾 茂雄, 佐藤 健司, 藤野 正興
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1614-1618
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    従来window typeの動脈管開存症(PDA)の非開胸的閉鎖術(Pestmann氏法)は,用いる人工栓の留置が困難で,それが大動脈側に落ちる危険性が大きいので適応外とされていた.しかし作成する人工栓の形を工夫すれば本法は可能と考え,従来用いているクサビ形のものでなく,これを亜鈴形にした.その先端の一方の太い部分を栓の弾性と血管の伸展性を利用して動脈管を通過させ,亜鈴形のくびれた部分がちようど動脈管を閉鎖するようにする.こうすると人工栓の両端の太い部分が動脈管を肺動脈および大動脈側からはさみつける形になり,栓の留置は確実となる.この亜鈴形の人工栓(Ivalon spongeより作成)を用い,昭和48年11月29日window typeのPDAに初めて非開胸的閉鎖に成功した.
    症例は19歳女子で,最近心悸充進,労作時呼吸促進が出現,糖査の結果window typeのPDA診断肺対体血流量比2.0,血管抵抗比0.06で,動脈管の内径は3.6mmであった.
  • 自家大伏在静脈によるバイパス手術成功例
    高安 俊介, 小船井 良夫, 遠藤 真弘, 中沢 誠, 今野 草二
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1619-1625
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左冠状動脈肺動脈起始症の1例に対し,自家大伏在静脈によるバイパス手術を行ない成功したので報告する.患者は12歳男子,過激な運動で呼吸困難あり,心電図で左室肥大および、aVLにsmall Q波があり負荷心電図は陽性,右心カテーテル検査で肺動脈に40%の左右短絡があり大動脈造影で本症と判明した,手術は体外循環下に左冠状動脈起始部を結紮,次に用意した静脈グラフトを大動脈と左冠状動脈にそれぞれ端側吻合した.グラフト内に最高時500ml/min,平均200ml/minの血流が測定された.術後経過は順調で,術灸冠状動脈造影では左右ともによく末梢まで造影された,また2ヵ月後の負荷心電図でSTの変化は著しく改善された.
    従来本症に対しては結紮術が多く行なわれて来たが,最近術後悪化した例が報告されて来ており,その長期的予後には疑問が残る.パイパス手術は本症例の様に術後生理的な冠灌流が得られ,現段階では本症に対し選択すべき術式と思われる.
  • 富野 哲夫, 安藤 正彦, 北村 信夫, 林 久恵, 今野 草二
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1626-1631
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動脈管開存(PDA)と心房中隔欠損(ASD)の単純なる合併症,すなわちPDA+ASDの治験例について報告した.
    本症が発生学的にまれであることを統計的に示した.またPDAが他の心奇形と合併してあらわれる発現率と比較して,特にPDA+ASDの合併することが少ないことが判った.この原因として,胎生期の血行動態より考察し,ASDの開存している場合はPDAが閉鎖しやすい状態にあることを2つの理由をあげて推察した.また本症における手術手技についても言及した.
  • 石川 自然, 安藤 正彦, 辻 隆之, 須磨 幸蔵, 高尾 篤良
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1632-1637
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    われわれは雑腫成犬を使用しての実験中,たまたままれにみるイヌの心膜欠損に遭遇した.
    本心膜欠損例は,'L内筍形の合併はなく,'t前面左右に及ぶ広範囲の心膜欠損があり,ヒトにおいてもまれと思われるtypeの1つである、また,形態学上興味深い事は,特に左室側の心膜辺縁の直下に深い圧痕がみられ,さらに左側のN.phrenicusが露出されていた事である.現在までに,ヒトの心膜欠損症の臨床症状の1つとして胸痛があげられているが,本症例の場合,圧痕による冠状動脈の圧迫は形態学上胸痛の成因を示唆している様に思われる.
    発生学的には,横隔膜神経が左側心膜を伴っていない事から,左側のpleuropericardial-membraneの不完全な発育によって肺芽が胸腔と心腔との間にある空隙に突入しながら発育したためと思われる.心膜欠損症の発生機序については,不明なところがまだ多く,今後さらに検討する必要があると思われる.
  • カテコールアミンの心臓作用とcyclic AMP
    戸田 昇
    1974 年 6 巻 11 号 p. 1639-1648
    発行日: 1974/10/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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