心臓
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27 巻, 10 号
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  • 田村 禎通, 岩野 健造, 由井 靖子, 石田 孝敏, 松岡 雅子, 岩本 正博, 小田 修治, 手束 一博, 中園 雅彦, 村上 剛
    1995 年 27 巻 10 号 p. 857-863
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    リポ蛋白(a)〔Lp(a)〕はその構造上の特徴から,線溶系への影響が注目されている.線溶動態は血管内皮細胞のプラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)とプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)の放出量に依存しており,Lp(a)はinvitroでPAI-1の合成促進が認められている.しかし臨床例ではLp(a)とPAI-1の関係は明らかでない.そこで本研究では虚血性心疾患(IHD)におけるLp(a)とt-PA,PAI-1との関係を検討した.対象は冠動脈造影上,75%以上の狭窄を有するCAD(+)群(45例)と有さないCAD(-)群(46例)に分けた.Lp(a)濃度(mg/dl)は,CAD(+)群(35.0±31.4)はCAD(-)群(22.9±15.0)に比し有意な差ではないが,高い傾向を認めた.Lp(a)濃度は高脂血症群と正脂血症群の間に差を認めなかった.t-PA濃度(ng/ml)は,CAD(+)群(6.37±4.24)はCAD(-)群(4.42±1.94)に比し高値であった(p<0.01).PAI-1濃度(ng/ml)は,CAD(+)群(98.7±64.9)はCAD(-)群(72.2±43.6)に比し高値であった(p<0.05).Lp(a)とt-PA,PAI-1とt-PAの間にはそれぞれ有意な関係を認めなかった.一方,Lp(a)とPAI-1の間には,全症例(r=0.262)およびCAD(+)群(r=0.297)において正相関を認めた(p<0.05).以上より,IHDではLp(a)の高い傾向とPAI-1高値を認め,両者は正相関を示したことから,Lp(a)はPAI-1合成を促進して,虚血刺激で増加したt-PAを阻害し,線溶活性を低下させ血栓形成傾向となることが示唆された.
  • 沼野 藤夫
    1995 年 27 巻 10 号 p. 864-865
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 装着部位の異なる2つのサーミスターによる同時測定からの検討
    林 孝浩, 山尾 一磨, 寺岡 朋子, 川口 慶三, 小竹 親夫, 瀬尾 俊彦, 戸田 常紀, 小林 克也
    1995 年 27 巻 10 号 p. 866-873
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】熱希釈(TD)法による右室駆出率(RVEF)測定の信頼性に関しては一定の見解が得られていない.今回我々はTD法によるRVEF測定の精度をサーミスター留置部位に着目し,検討した.
    【方法】虚血性心疾患13例に対し,先端から4cm(D)と9cm(P)の2カ所に時間分解能の優れたサーミスターを装着したSwan-Ganzカテーテルを用い,DとPから同時に連続149回RVEFを測定し,サーミスター部位別のTD曲線を比較した.9例は81mKr心プールシンチ(Kr)法から求めたRVEFと対比した.
    【結果】TD法によるRVEF測定は,その原理から心拍に一致して減高する水平部分の明瞭な階段状のTD曲線を得る必要がある.しかし,Dでは149回中60回しか階段状のTD曲線が得られず,Pの126回と比べ測定上問題があった.特に体表面積の小さい症例ほどその傾向が強く,測定に注意を要する.良好なTD曲線が得られたD,Pから求めたTD法のRVEFは,Kr法と比べ低値(46.6%,49.3%vs60.1%)を示すが,両者は良好な正相関関係(r=0.80,r=0.96)を有し,特にPで強い相関を認めた.また,Dから求めたRVEFがPと比べ低く算出された.
    【総括】TD法によるRVEF測定の信頼性を増すには,肺動脈血管壁や肺実質の影響と肺動脈のmixing chamber化を避けるため,サーミスターを可能な限り肺動脈弁上に近づけ,良好なTD曲線を得ることが必要である.
  • 吉田 幸彦, 森本 紳一郎, 平光 伸也, 山田 健二, 植村 晃久, 山田 功, 寺澤 正恭, 因田 恭也, 坪井 直哉, 平山 治雄, ...
    1995 年 27 巻 10 号 p. 874-880
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心サルコイドーシス(心サ症)の心電図異常として,頻度の高い房室ブロック(AVB)に注目し,ペースメーカー(PM)植え込みを必要とする高度AVB患者の中に心サ症が混在している可能性を検討した.名古屋第二赤十字病院循環器センターにおいてPMを植え込んだ連続100例のAVB患者を対象とした.両側肺門リンパ節腫脹(BHL),縦隔リンパ節腫脹,ブドウ膜炎などサ症に特徴的な臨床症状を認めた症例,あるいは血清ACE値高値・リゾチーム値高値・ツ反陰性の内2項目以上を認めた症例に対し,断層心エコー,核医学検査,各種生検を施行し,心サ症の存在について検討した.100例中89例が追跡可能であり,10例(11.2%)が心サ症と診断された.その内訳は,男性40例中2例(5.0%),女性49例中8例(16.3%)で,40歳代が1例,50歳代が3例,60歳代が6例であった.特に40~69歳の中・高年の女性に注目すると,25例中8例(32.0%)に心サ症が認められた.心サ症では,一般に心筋生検での診断率は低く,本検討でも10例中7例に心筋生検が施行されたが,陽性例は2例(28.6%)と低率であった.ペースメーカー植え込みを必要とする高度房室ブロック患者には,11.2%と比較的高率に心サ症が存在することが明らかとなった.特に中・高年の女性患者では,常に心サ症の可能性を念頭におく必要がある.
  • 山田 美保, 門間 和夫
    1995 年 27 巻 10 号 p. 881-886
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Eisenmenger化のため手術適応なしとして経過観察されてきた心室中隔欠損症(Down症候群を除く)23例よりその自然歴について検討した.20~30歳代では易疲労性,労作時息切れなど自覚症状は軽微でほぼ通常の社会生活が可能であった.死亡例は8例,うち6例は徐々に低酸素血症が進行し活動能力が低下,NYHA IV度となり呼吸不全にて死亡という経過をとり,突然死は1例のみであった.死亡時年齢は平均41.3歳,Kaplan-Meier法により40歳における生存率は77%であった.心室中隔欠損症術後の肺高血圧残存症例(遺残短絡のないもの)に比べて,心室間短絡があるため肺血管閉塞病変自体は高度でも右心不全症状は軽度であり長期予後も良好であった.これらの症例に対し根本的な治療は望めないが,在宅酸素療法,瀉血療法,抗血小板剤,血管拡張剤等により肺血管閉塞病変の進行を抑えそのquality of lifeを維持するための治療を行ってきた.今後は,プロスタグランジンI2が肺血管拡張作用と共に血小板凝集抑制作用もあるため本症の肺血管病変の進行防止に有効と考えられており,早期より開始すべき薬剤として期待される.
  • 田中 公啓, 河口 剛, 室田 欣宏, 安藤 武士, 浅野 献一, 杉下 和郎, 羽田 勝征
    1995 年 27 巻 10 号 p. 887-890
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右室二腔症は成人ではまれであるが60歳以上の高齢者となると極めてまれである.当施設において1例を経験した.症例は62歳の女性で心不全状態にあり,手術前の右室内圧較差は200mmHg以上あった.手術は右室切開により行い異常筋束を可及的に切除した.手術後心室性の不整脈が発生し右室切開の影響であろうと思われた.1カ月後の心臓カテーテル検査では右室内の圧較差は10mmHgしかなかった.本症例は本邦では5例目の60歳以上の高齢者の症例になる.高齢者でも積極的に手術すべきであると思われた.さらに文献的考察を加えた.
  • 川口 竹男, 川辺 敏之, 田中 英穂, 安野 憲一, 大栗 治彦, 清水 完悦, 高原 善治
    1995 年 27 巻 10 号 p. 891-896
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.小児期より労作時の動悸息切れ感があり心雑音を指摘されるも放置していた.68歳時より労作時の動悸が著しくなり近医受診し,心室中隔欠損症と上室性期外収縮を指摘され内服治療を受けた.69歳時になり労作時呼吸困難増強し,うずくまるようになり来院した.来院時意識レベルの低下と著明なチアノーゼを認め(PaCO239,PaO231)収縮期駆出性雑音を聴取した.末梢血液は軽度の赤血球増多を示した(Hb17g/dl).心臓超音波検査,MRI,心臓カテーテル検査より心室中隔欠損(KirklinII型,径20 mm),大動脈騎乗,右室流出路狭窄(右室収縮期圧167mmHg),右室肥大および拡大(右室壁厚17mm)を認めFallot四徴症と診断.根治手術適応と考え心内修復術を施行し良好な結果を得た.69歳の根治手術例は文献上世界最高齢であり,ここに報告する.
  • 小林 千春, 宮本 憲雄, 真島 三郎, 薄葉 文彦, 山本 登
    1995 年 27 巻 10 号 p. 897-901
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    階段からの転落による胸部打撲を契機に生じた冠動脈解離にて急性心筋梗塞を発症した61歳男性の症例を報告する.
    受傷30分後の心電図はV6誘導にて軽微なST低下を認めるのみで胸痛は持続し,その後II,III,aVF誘導にて徐々にR波が減高し,V1からV3誘導のST上昇とT波の増高,心筋由来の酵素の上昇が認められた.発症後5週で施行した冠動脈造影上右冠動脈に解離腔を認めたが,主要冠動脈枝に硬化所見はみられなかった.左室造影では下後壁に相当する部位に壁運動異常を認めた.以上より胸部打撲を契機に生じた冠動脈解離が原因となって発症した心筋梗塞と考えられた.
  • 竹中 寛彰, 山崎 諭, 磯部 光章, 関口 守衛, 原田 昌範
    1995 年 27 巻 10 号 p. 902-908
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に対する急性期治療法として,冠動脈内血栓溶解療法(ICT)あるいはdirect PTCAは,確立された治療法であり,初期成功率も向上してきている.しかし,合併症の問題再開通しない症例等,まだまだ問題点もある.それに対して,冠動脈内の血栓を直接吸引しようという治療法が試みられている.今回,我々は,急性心筋梗塞発症2時間後に,緊急冠動脈造影を施行し,冠動脈内に大量の血栓像を認め,冠動脈内血栓吸引療法を施行し,引き続き残存狭窄に対して,PTCAを追加,良好な結果を得た1例を経験したので報告する.
  • 宇井 克人, 山口 徹
    1995 年 27 巻 10 号 p. 909-910
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 松本 健吾, 川本 俊治, 大屋 健, 栗山 洋, 吉野 孝司, 石川 勝憲, 雨宮 彰, 大竹 重彰, 井原 勝彦
    1995 年 27 巻 10 号 p. 911-916
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    60歳男性.1993年5月末より左下腹部痛にて6月2日当院泌尿器科に入院し,左腎のangiomyolipomaと診断された.しかし腹部膨満感が持続するため17日注腸検査施行され,その直後より39℃ に及ぶ高熱,3日目には乏尿・呼吸困難となり,26日に当科転科となった.胸部X線上の肺うっ血所見,動脈血培養でEnterococcus faecalis(以後E.faecalis)陽性,FDP,D-dimer,TATの亢進所見より,E.faecalisによる敗血症からpre-DIC状態を呈したKillip III度の心不全と診断した.強心剤,利尿剤および抗生剤投与にて心不全は軽快し解熱するも,第17病日より再び発熱し,血液培養で前回同様にE.faecalisを認めた.同時期より胸骨左縁第3肋間に灌水様の拡張期雑音を聴取し,感染性心内膜炎(以後IE)による大動脈弁閉鎖不全症(以後AR)と診断した.第47病日頃よりAR増悪による著明な左心不全をきたしたため,喀痰よりMRSA排菌を認めたが,第62病日緊急大動脈弁置換術を施行した.大動脈弁は三尖とも著明に破壊され,特に左冠尖と無冠尖には穿孔および疣贅が見られ,さらに左冠尖弁下部に膿瘍形成を認めた.術後は経過順調にて第186病日(術後第124日目)に退院した.
  • 本田 幸治, 渡邊 剛士, 松本 雄二, 中島 寛, 片山 知之, 森 光弘, 矢野 捷介
    1995 年 27 巻 10 号 p. 917-923
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    失神で来院したQT延長症候群と2:1房室ブロックを合併した患者(74歳,女性)にペースメーカー(DDD)植え込み術を施行した.術後7年,心室リード不全のため新規にVVIペースメーカー(60/分)植え込み術施行の後,低Kおよび低Mg血症を契機にTorsades de Pointes(TdP)を生じ再入院.TdPは心室粗動(VF)に移行,DCショック後は閾値上昇によるペーシング不全で心停止となった.種々の薬剤はいずれも効果なく数時間にわたってTdP,VF,心停止を繰り返した.このため気道確保,心マッサージを行いつつ経内頸静脈体外式ペーシングを行い,TdP,VFに対してはMgSO34gを静注,引き続き0.25-0.3g/hの点滴静注を継続した.この後TdP,VPCは全く消失し,連続モニター監視下においても再発は見られなかった.
  • 山本 和男, 林 純一, 青木 正, 佐藤 浩一, 小杉 伸一, 建部 祥, 高橋 昌, 松原 琢, 江口 昭治
    1995 年 27 巻 10 号 p. 924-928
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は呼吸困難で発症した軽度の失見当識を有する81歳男性.経食道心エコー検査にて中隔に付着する左房粘液腫と診断され,経心房中隔到達法で腫瘍摘出を行った.術後は左心不全は消失し,また心房細動から洞調律に回復した.また精神状態にも悪影響はなかった.文献上,本邦最高齢の心臓粘液腫手術症例と思われた.
  • 西村 恵理, 宮原 嘉之, 新北 浩樹, 森光 卓也, 西島 教治, 池田 聡司, 内藤 達二, 高尾 雅巳, 原 耕平, 松永 尚文, 重 ...
    1995 年 27 巻 10 号 p. 929-934
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.鼻腔腫瘍精査のため当院に入院.心電図上,心房細動を呈し,胸部X線上心拡大,心臓超音波検査上は右室自由壁に限局性の輝度の増強と,右心房内腫瘤,心嚢液貯留を認めた.鼻腔腫瘤は,生検にて悪性リンパ腫の診断を得た.右心房内腫瘤は,粘液腫や血栓等の鑑別が必要であった.胸部CTでは右心房内に境界明瞭で,辺縁不整な低吸収域を呈する塊状の腫瘤影を認め,心嚢液の貯留もみられた.Gd-DTPA造影MRIでは,右心房内の比較的均一で辺縁不整な腫瘤はGd-DTPAで造影効果がみられ,右室自由壁まで浸潤し,悪性リンパ腫の心臓浸潤と思われた.化学療法(CHOP)を開始したところ,心電図上心房細動は洞調律となり,胸部X線では心胸比の改善があり,心臓超音波検査やCTおよびMRIでは右心房内腫瘤の明らかな縮小と心嚢液の消失を認めた.以上より,治療的診断であるが,心臓浸潤を呈した悪性リンパ腫と診断した.
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