【目的】熱希釈(TD)法による右室駆出率(RVEF)測定の信頼性に関しては一定の見解が得られていない.今回我々はTD法によるRVEF測定の精度をサーミスター留置部位に着目し,検討した.
【方法】虚血性心疾患13例に対し,先端から4cm(D)と9cm(P)の2カ所に時間分解能の優れたサーミスターを装着したSwan-Ganzカテーテルを用い,DとPから同時に連続149回RVEFを測定し,サーミスター部位別のTD曲線を比較した.9例は81mKr心プールシンチ(Kr)法から求めたRVEFと対比した.
【結果】TD法によるRVEF測定は,その原理から心拍に一致して減高する水平部分の明瞭な階段状のTD曲線を得る必要がある.しかし,Dでは149回中60回しか階段状のTD曲線が得られず,Pの126回と比べ測定上問題があった.特に体表面積の小さい症例ほどその傾向が強く,測定に注意を要する.良好なTD曲線が得られたD,Pから求めたTD法のRVEFは,Kr法と比べ低値(46.6%,49.3%vs60.1%)を示すが,両者は良好な正相関関係(r=0.80,r=0.96)を有し,特にPで強い相関を認めた.また,Dから求めたRVEFがPと比べ低く算出された.
【総括】TD法によるRVEF測定の信頼性を増すには,肺動脈血管壁や肺実質の影響と肺動脈のmixing chamber化を避けるため,サーミスターを可能な限り肺動脈弁上に近づけ,良好なTD曲線を得ることが必要である.
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