心臓
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9 巻, 12 号
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  • 高橋 栄司, 本田 慶一郎, 前川 滋, 土井尻 健一, 菅原 啓子, 渡辺 一央, 荘 恵珠, 本間 博, 小原 進, 小沢 正人, 木村 ...
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1057-1061
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血清Dopamine-β-Hydroxylase(DBH)活性は交感神経活動の指標になりうると考えられるが,狭心症におけるこのDBH活性に関する報告は見あたらない.狭心症患者3例において,発作中および発作後1時間目に血清DBH活性を測定し,非発作時の基礎活性値と比較検討した結果,発作時には16%から50%のDBH活性の上昇が認められた.しかも発作直前に測定し得た症例でも,非発作時に比しすでに8%の上昇を示していた.これは狭心症発作時には交感神経系が異常に興奮していることを意味するのみならず,Catecholamineの遊離が発作発現の誘因的役割をはたしている可能性を示唆するものである.また,狭心症患者6例においてMaster二重負荷試験を施行した結果,負荷後の血清DBH活性は負荷前に比し,全例において上昇し,その上昇率は8%から23%であった.
  • 玉井 良胤, 高安 健, 青木 隆明, 植松 正保, 酒井 和夫, 渡辺 直寛
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1062-1071
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    6年間に一過性・間歌性脚ブロック16症例を経験し,各症例の臨床経過,心電図変化などを検討した.全例病的心にみられ,正常心の症例はなかった.この種の脚ブロックは心拍の変化により出没する場合が多く,16例中間歌性脚ブロックを示した11例に認めた.恒久性脚ブロックとは反対にこの種のブロックでは左脚ブロックが多いといわれているが,われわれは16例中11例に右脚ブロックであった.
    成因に関しては頻脈依存性脚ブロックの症例では膜電位における位相3の相対不応期が関与しているため位相3ブロックと呼ばれ,一般の認められているところである.徐脈性に関してはいまだ明確にされておらず,現在自発性拡張期脱分極が主因とする説が有力であり,それゆえに位相4ブロックと呼ばれている.しかしわずかの徐脈化による脚ブロックの出現する症例にはこの説で考えるのは困難であり,今後の脚-プルキンエ系の伝導機構に関する解明が望まれる.
  • 友田 春夫, 松本 貞敏, 岡部 真也, 笹本 浩, 松山 正也, 小出司 郎策, 川田 志明, 正津 晃
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1072-1078
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    臨床例における左室心筋stiffnessを計測,臨床症状との関連を検討した.左室シネアンジオグラフィー,内圧同時測定施行症例30例につき,急速充満期後より左房収縮期までの間で,左室心筋応力(σ,stress),歪(estrain)関係を,式σ=b・ekEにfitさせ,左室心筋stiffness constant,kを算出した.心筋stiffness constantは,正常例(6例)-9.6±4.3,僧帽弁狭窄症例(6例)-10.7±4.0,左室容積負荷症例(6例)-12.1±4.2,心筋梗塞を伴わない冠動脈狭窄症例(7例)-8.6±2.5,陳旧性心筋梗塞症例(5例)-23.6±7.4.であった.心筋stiffness constantと,従来計測されてきた収縮性に関する指標,たとえばmaxVcfなどを組み合わせることにより,各症例に対してより詳細な評価を試みた.
  • 垣畑 秀光, 田中 茂穂, 鈴木 康之, 田所 正路, 石沢 栄次, 香川 謙, 毛利 平, 堀内 藤吾, 臼井 恵二
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1079-1084
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心大血管再手術例の多くは胸骨および心大血管周囲の癒着が強固で剥離操作中に予期しない大量出血をきたす場合がある.したがって,剥離が最小限にすませ出血による危険が極力回避できる低体温法は再手術例には価値ある関心手段であるとおもわれる.われわれは,1977年2月までに心大血管の再手術19例にエーテル深麻酔下表面冷却に中心冷却加温を併用する“バイパス超低体温法”を用い手術を施行した.患者の年齢は生後5ヵ月から20歳にわたっており疾患はFallot四微症短絡術後の二期的根治手術例をはじめ重症例が多く,死亡6例(呼吸不全3例,低心拍出量症候群3例)であったがいずれも原疾患によるもので本法が死亡原因となった症例はなかった.術後出血量は平均1ml/kg/hrで,1例に術後一過性の脳神経障害がみられた.心大血管の再手術例における本法の利点,適応について検討した.
  • 松浦 雄一郎, 田村 陸奥夫, 山科 秀機, 肥後 正徳
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1085-1089
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 昌平, 中島 昌道, 遠藤 真弘, 林 久恵
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1090-1095
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    IIa型家族性高リボ蛋白血症の1家系にみられた虚血性心疾患の兄弟,2例を経験した.症例1は狭心症発作が頻繁に起こるため,大動脈-冠状動脈バイパス術を行った.症例2は心筋梗塞発作後,左室瘤切除術と大動脈-冠状動脈バイパス術を行った.この2例は血清コレステロールの増加,リポ蛋白分画ではβ-リボ蛋白の増加を示し,食餌療法,高脂血症治療剤に抵抗したため,家族性高脂血症を疑い,この家系の他の構成員について高脂血症,虚血性心疾患の有無を調査した.その結果,見込みも含めてIIa型高リポ蛋白血症7人と虚血性心疾患5人がみつかり,これらの虚血性心疾患がIIa型家族性高リポ蛋白血症を基盤にして発生したことが明らかになった.症例1,症例2および剖検し得たもう1例の冠状動脈の形態と病変のパターンは多くの点で類似性がみられた.
  • 入山 正, 石原 茂樹, 山田 学, 安西 信行
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1096-1100
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    6歳女子のFallot四徴症に合併した単左冠状動脈の一例を経験した.根治手術の際,右室流出路を縦切朋してパッチで拡大したが,術直後右心不全と不整脈のため死亡した.剖検で,右冠状動脈口は認めず,右冠状動脈は単左冠状動脈前下行枝より起始,右室流出路を横切って走行しており,右室流出路縦切開の際切断された.Fallot四微症に単腫状動脈が合併するのはまれではあるが,右室流出路切開に際しては,異常冠状動脈の走行に十分注意すべきと反省させられた.
  • 須磨 久善, 石村 孝夫, 鷹津 文麿, 山口 洋, 古田 昭一
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1101-1107
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈瘤はきわめてまれな疾患であるが,放置しておくと動脈瘤の破裂,瘤内に生じた血栓による末稽冠動脈の閉塞などにより急性心筋梗塞を惹起し致死的な結果となりうる.今回われわれは,冠状動脈造影により右冠動脈起始部に孤立性嚢状動脈瘤の存在を認め,動脈瘤切除および伏在静脈移植によるaorto-coronary bypass手術を施し治癒せしめ得た症例を経験した.
    症例は45歳の女性で,出産1ヵ月後に突然の胸痛をもって発症した.切除標本おいて動脈硬化性変化は少なく動脈瘤の部分はhealed dissection様にみられた.以上より本例が原発性解離性冠動脈瘤の可能性が強いと考えられ,本症に関する若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 森川 哲夫, 大沢 幹夫, 原田 昌範, 河村 剛史, 小助川 克次, 臼田 多佳夫, 田中 徳太郎
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1108-1115
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    13歳女児で内臓逆位を伴った修正大血管転位症,すなわちCardell分類B4,Van Praagh分類I-D-Dに,VSD・PSを合併し,両側室上稜を有した症例を経験した.本症例に対して,解剖学的右室切開にて,心内修複術を施行し良好な結果を得た.この方法には種々の利点があるが,術後重篤な低心拍出量症候群に陥ったり,動脈側心室の房室弁閉鎖不全を生じやすいなどの不利な点もあることを留意しなければならないと思われた.B4に対する心内修複術成功例は,文献的に調べ得た範囲で,本邦2例目であった.
  • 三羽 啓史, 三浦 克弥, 田淵 哲夫, 浅田 博幸, 塚原 富幸
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1116-1122
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心電図上,ヒス束分岐部以下両脚に及ぶ伝導障害が予想されるにもかかわらず,QRS時間正常の第II度房室ブロックを示す症例を報告した.症例は64歳の男性で3年前より軽度の高血圧を指摘されている以外には特別既往症はない.今回は眩量を主訴に入院した.
    心拍(頻拍)依存性左脚ブロックとMobitz II型右脚ブロックの共存の結果,1:1伝導時のQRS波形は左脚ブロックを伴うが,第II度右脚ブロックにより心室拍数が減ずると,伝導時に左脚の伝導性も改善しQRS波形の正常化がみられたものと思われる.
    主な病変部位としては,PR時間一定の交代性脚ブロック,QRS電気軸正常の左脚ブロック,左脚主幹部起源の補充調律などの所見から,ヒス束遠位部以下両脚近位部に至る比較的狭い範囲の障害が予想される.
  • 岩 喬, 佐藤 博文, 三崎 拓郎, 飯田 茂穂, 上山 武史
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1123-1127
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    5歳男子で生直後よりチアノーゼ,心雑音があり,心血管造影によIII型大血管転位症が疑われた.体外循環下に右房を切開すると,三尖弁の心房側表面から発生した1.6×1.6×1.5cmのGiant blood cystを認めた.こすのGiant blocd cystを三尖弁より摘出し,心内を精査ると,共通房室弁をもった単心室であったので,Glenn手術を施行し,臨床症状は著明に改善した.
    Giant blood cystは,1963年にLieseらが最初に報告したきわめてまれな疾患で,木症例を含めて現在までに世界中で7例の報告をみるのみである.本症例は複雑心奇形を合併しており術前診断は困難であったが,術後順調に経過し,術後1ヵ月で退院した.本症例を紹介し,文献的考察を加えて報告した.
  • 長柄 英男, 田村 栄稔, 跡部 正明, 松本 学, 平塚 博, 伊藤 勝啓
    1977 年 9 巻 12 号 p. 1128-1135
    発行日: 1977/12/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近われわれは24歳女性のIHSSの1症例に対して,異種生体弁による僧帽弁置換術を行った.左室大動脈圧較差は術前104mmHgであったが術後11mmHgと無視できうるまで低下し,LVEDPも著明に低下した.運動制限などの症状も改善し肺動脈領域に軽度の収縮期雑麿を残すのみで良好な結果を得た.
    IHSSに対する手術は種々の術式が考案されているが,その中で僧帽弁置換術は(1)圧較差を確実に無くすことができる.(2)僧帽弁逆流を残さない.(3)A-Vブロックなどの致命的不整脈の危険が少ない.(4)心室中隔穿孔の危険がない.などの特徴を有し有用な方法であると考えられる.
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