心臓
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42 巻, 5 号
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Open HEART
HEART's Selection(心エコー図による心筋虚血の診断)
HEART's Original
臨床研究
  • 河野 健一, 青山 徹
    原稿種別: HEART' s Original
    2012 年42 巻5 号 p. 627-631
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    目的:当院における,入院期の心不全患者への心臓リハビリテーション(心リハ)の実態と今後の課題を,心リハ介入の有無と,介入時期の違いから検討した.
    方法:2007年4月~2008年7月に心不全急性増悪にて入院した56例をリハ介入群25例と非介入群31例に分け,さらに心リハ介入群を,介入までの期間の中央値8日を基準に,早期介入群12例と介入遅延群13例に分けた.年齢,基礎疾患,在院日数,入院時EFとBNP,カテコラミンと利尿薬の静注日数,酸素投与日数,入院時NYHAの分類,心リハ介入時での強心薬と利尿薬の使用割合,離床経過,入退院時の歩行自立割合を各群で調査した.
    結果:心リハ介入群は非介入群と比較し,有意に,年齢,入院時NYHAが高く,在院日数,利尿薬静注日数,酸素使用日数が長かった.また,心リハ介入例中,早期介入群は介入遅延群と比較し,治療状況や心リハ進行に差はなく,在院日数が有意に短かった.
    結語:心リハ介入依頼のある症例の特徴として,高齢であり入院時の心不全重症度が高く,また,心不全に対する医学的管理が長期に及んでいた.介入時期の比較より,早期介入群と介入遅延群において治療状況に差はなく,介入遅延群の中には,より早期に心リハを開始できた症例が存在したと考えられる.早期介入群で有意に在院日数が短縮するという結果からも,循環血行動態が安定した後に,早期より心リハを開始していく体制を医師とともに確立するべきであると考えられる.
症例
  • 高橋 英樹, 西岡 成知, 莇 隆
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 632-635
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.2007年9月より,腹部不快感を認め,精査により盲腸癌,腹部大動脈瘤 (50mm) と診断された.幽門側胃切除と虫垂切除の2度にわたる開腹歴の既往があったため,盲腸癌に対して腹腔鏡下での手術は困難であり,また術前検査で耐術可能であると判断したため,人工血管感染に対する予防対策を十分に施行したうえで,1期的手術を施行することとした.手術は腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術 (Inter Gard 16mm) を施行した後に,可能な限り瘤壁で人工血管をラッピングし,後腹膜を密に閉鎖した.その後,周囲をガーゼにて被覆し,吻合開始まで腸粘膜が術野に露出しないように注意しながら,自動吻合器を用いて腸管吻合を行った.術後経過は良好であった.術後2年6カ月の現在も再発を認めることなく,外来にて通院加療中である.盲腸癌を合併した腹部大動脈瘤に対する同一術野での1期的手術も,人工血管感染に対して一連の予防対策を行い,術野の汚染を最小限度にすることで可能であり,症例によっては選択肢の1つになり得ると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 高橋 朋子, 岩坂 潤二, 伯耆 やえ, 杉山 宏, 大石 千尋, 上山 敬直, 朴 幸男, 山本 克浩, 大谷 肇, 岩坂 壽二
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 637-641
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    50歳代,男性.6カ月前に閉塞性動脈硬化症に対して外科的治療を施行された.術前の冠動脈造影検査では右冠動脈に有意狭窄はなかった.
    今回,完全房室ブロック合併下壁急性心筋梗塞症でCCUに緊急入院となった.緊急冠動脈造影検査で右冠動脈の完全閉塞がみられ,引き続いて同部位への緊急経皮的冠動脈形成術を開始した.病変部には巨大な血栓像がみられた.血栓が大きく血栓吸引できなかったためバルーンカテーテルでの拡張を繰り返した.血栓は破砕され#4PDと#4AVに移動した.再度血栓吸引を行った.#4AVで吸引カテーテルがスタックしたところで慎重に陰圧をかけたままで吸引カテーテルを回収し大きな血栓を得た.この後#4AVについては血行が改善し,TIMI-3になり完全房室ブロックも改善した
    さらに,同様の手技を#4PDに対しても施行した.吸引カテーテルが血栓でスタックしたためそのまま回収を試みた.しかし吸引カテーテルがガイドカテーテルに入って少ししたところでガイドカテーテルからの圧が消失した.血栓がカテーテル内あるいは入口部付近でカテーテル内腔を閉塞したと考えガイドカテーテルに陰圧をかけ,ガイドカテ自体を体外へ抜去し,非常に大きな血栓を得た.この後は#2に小さな血栓像を認めるのみで良好な血流が得られたため終了した.
    吸引カテーテルから脱落した巨大血栓をガイドカテーテルで回収できた貴重な症例であったので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 小宮山 浩大, 手島 保, 田辺 康宏, 高野 誠, 北條 林太郎, 仲井 盛, 弓場 隆生, 辰本 明子, 深水 誠二, 櫻田 春水
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 644-650
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は陳旧性心筋梗塞にて当院通院中の58歳,男性.2008年8月下旬より左下腿浮腫が出現した.9月上旬より安静時の呼吸苦も出現し軽快しないため救急要請のうえ,当院搬送された.来院時Dダイマー22.4µg/mLと高値であり,造影CTにて右肺動脈下葉枝と左肺動脈上葉枝に血栓を認め,腎静脈分岐部以下から左下腿にかけて連続する血栓を認めたため急性肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症と診断した.循環動態と酸素化は保たれていたため同日下大静脈フィルターを挿入しウロキナーゼによる血栓溶解療法とカテーテルによる血栓吸引療法の方針とした.入院第6日にGüther-Tulipフィルターに交換.入院第19日には肺動脈内血栓と下大静脈から左大腿静脈内の血栓消失を認めGüther-Tulipフィルターの回収を試みたが,フィルターの先端が下大静脈壁に穿孔しており,抜去を行わず永久留置の方針とした.
    下大静脈フィルターによる下大静脈穿孔は,稀と思われ若干の考察とともに報告する.
症例
  • 外川 正海, 松村 祐, 八巻 文貴, 板本 智恵子, 小林 正経, 内藤 貴之, 藤野 高久, 河野 恆輔, 山本 博昭
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 651-655
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.健診にて心電図異常を指摘され,当院循環器内科を受診された.胸部聴診にて連続性雑音を指摘され,同科にて精査を行った.心臓CTおよび冠動脈造影にて左右冠動脈より起始し肺動脈へと流入する異常血管および複数の嚢状冠動脈瘤形成を認めた.瘤は肺動脈左側に1つ(38mm),肺動脈前面に1つ(20mm),両者の間に1つ(8mm)の計3つ認められた.異常血管の走行が非常に複雑なため経皮的治療では根治困難と判断され,開胸手術施行の方針にて当科へと紹介になった.手術は胸骨正中切開にて心嚢にアプローチした.人工心肺確立後,心拍動下に異常血管を可及的に離し結紮処理した.その後,大動脈を遮断し心停止下に肺動脈および冠動脈瘤を切開し,異常血管の開口部を縫合閉鎖した.さらに遮断解除した後,異常血管全体を注意深く観察し,虚脱が得られていない部位はすべて切開および縫合閉鎖した.術後経過はおおむね良好であった.造影CTにて冠動脈瘤および冠状動脈肺動脈瘻の消失を確認し,術後12日目に独歩退院となった.複数の嚢状冠動脈瘤を伴う冠状動脈肺動脈瘻という比較的稀な症例を経験し良好な結果を得たので,文献的考察を加えて報告する.
Editorial Comment
症例
  • 池田 泰子, 竹村 仁志, 黒沢 利郎, 大内 武, 木暮 武仁, 有川 明慶, 佐々木 毅, 山口 洋, 牧田 哲, 水野 友裕
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 657-662
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    4年前の心臓超音波検査で仮性心室瘤を指摘されるも無症状で経過し,今回心不全で入院した.心臓超音波検査で後下壁の壁運動低下と心室瘤・血栓を認め,冠動脈CTでは左室後壁から後下外側への楕円形突出像と血栓像,右冠動脈と左前下行枝の狭窄が疑われた.冠動脈造影では回旋枝の完全閉塞を含む3枝病変で左室駆出率は22.6%と低下,左室造影では後下壁に心室瘤を認めた.MRIでは後外側下方へ腫瘤状突出と壁の菲薄化・壁在血栓が疑われ,陳旧性心筋梗塞による仮性心室瘤と診断し,冠動脈バイパス術と左室形成術を施行した.切除標本の病理診断では,線維性瘢痕組織に一部残存心筋組織が認められ,真性心室瘤と診断された.本例は真性心室瘤でも嚢状で入口部狭小タイプを呈する偽性心室瘤で,形態は仮性心室瘤と類似している.両者の鑑別は画像診断では困難であり,最終的には病理で確定診断された.心臓超音波検査,冠動脈CT,MRIなどの画像診断は非常に有用であったが,仮性心室瘤と真性心室瘤で嚢状を呈する偽性心室瘤の鑑別に苦慮した症例を経験した.
症例
  • 稲葉 理, 佐藤 康弘, 横山 泰廣, 小川 亨, 桜井 馨, 大下 哲, 加藤 隆一, 伊藤 順子, 萬野 智子, 圓福 智子, 塚本 三 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 663-667
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.2007年7月下旬より38℃台の発熱が出現した.右下腿の皮膚びらんを認めたため,蜂巣炎の診断のもとに前医で抗生物質の投与を受け皮膚症状は改善したが,発熱は改善しなかった.心エコーにて左房内の腫瘤影を認めたため,精査加療目的で8月中旬に当院に転院.エコー所見上,感染性心内膜炎の疣贅よりは左房粘液腫が疑われ,粘液腫感染として抗生物質の投与を行ったが,発熱の改善は認めなかった.ほかの熱源検索のために頸部~骨盤造影CTを施行したところ,全身性のリンパ節腫大を認めた.また可溶性インターロイキン2受容体の上昇を認めたため,悪性リンパ腫を疑い右鼠径リンパ節生検を施行したが,生検結果は,反応性のリンパ節腫大であった.その後,発熱は自然に寛解,増悪を繰り返した.2007年12月上旬に,左房粘液腫,胸腺腫摘出手術を施行.術後は解熱し,12月下旬,術後評価のため,胸腹部CTを施行したところ,術前に認めた全身性リンパ節腫脹は改善を認めた.また,術後可溶性インターロイキン2受容体も減少を認めた.
症例
  • 足利 光平, 明石 嘉浩, 小山 幸平, 鈴木 健吾, 長田 圭三, 大宮 一人, 三宅 良彦
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 668-674
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.急性腎盂腎炎の第2病日に急性循環不全を呈し,心電図にてII,III,aVF,V1~6誘導のST上昇を認めたことから,急性冠症候群を疑った.心臓カテーテル検査では冠動脈には有意狭窄を認めず,左室造影での駆出率は13%であった.左室壁運動は,心尖部は無収縮であったが心基部の壁運動が保たれていたことから,たこつぼ心筋症を疑った.血行動態が不安定であったことから,大動脈バルーンパンピング (intraaortic balloon pumping; IABP) による循環補助療法を開始した.その後,胸部誘導のST上昇は間もなく改善したものの,左室壁運動改善の兆しがなく,第8病日までForrester IV型にて経過した.第11病日に施行した心筋生検にて,単核球と形質細胞主体の炎症細胞浸潤を認め,間質の浮腫および心筋細胞の変性を認めた.また,心臓造影MRIにて壁運動低下部位の造影遅延を認めたことから急性心筋炎との診断にいたった.発症当初はたこつぼ心筋症を疑ったが,心電図変化が非典型的であり,左室壁運動の回復が遅く,診断に苦慮した本症例に対して,文献的考察を加えて報告する.
Editorial Comment
症例
  • 坂野 康人, 相澤 啓, 三澤 吉雄, 河田 政明
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 676-679
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    右室二腔症は先天性心疾患の1つとして知られているが,成人期に単独で初めて指摘されることは稀である1)2).今回われわれは,急速に進行した高度の右室流出路狭窄による心不全に対し,準緊急的に外科治療を要した症例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.労作時の呼吸困難と下腿浮腫を契機に心エコー検査にて右室流出路狭窄,三尖弁閉鎖不全を認めた.心臓カテーテル検査では右側大動脈弓のほか,右心室-肺動脈圧較差は120mmHgであった.またMRI検査では左心室心筋の著明な肥厚を認めた.手術は右室流出路の異常筋束を切除,右室流出路をe-PTFEパッチにより再建した.右室流出路周囲への凍結凝固焼灼により,心室内リエントリー形成を予防した.三尖弁および弁輪に形成術を加え逆流を制御した.術後経過は良好で圧較差は消失したが術後1カ月後の心エコー上膜様部に小さな心室中隔欠損を認めた.本症例は高度の左室肥大も伴っており肥大型心筋症との鑑別が当初必要であったが,経過から右室二腔症の診断が確定した.
Editorial Comment
症例
  • 福田 大和, 福田 信夫, 酒部 宏一, 森下 智文, 篠原 尚典, 田村 禎通
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻5 号 p. 682-687
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.高度大動脈弁逆流で通院治療中であった.最近,浮腫と易疲労感が増悪し,胸部X線上肺うっ血はないが心拡大が著明で,また心エコー検査で大量の心膜液貯留と振子様運動がみられ,心タンポナーデと考えられ入院となった.入院後,心膜ドレナージにより症状は一時改善し,排液後27日目に退院した.しかし,退院5日後に急性肺水腫で救急受診し,再入院となった.再入院後,血漿BNP値は3,283pg/mLと前回入院時の579pg/mLに比べ著明な上昇を認めた.肺水腫に対する治療および心膜液の再貯留とともにBNP値は948pg/mLと低下し,肺うっ血徴候も改善した.本例では心タンポナーデに起因する静脈還流の減少による左室前負荷の減少や,心膜腔内圧の上昇による左室拡張期圧の上昇が,高度大動脈弁逆流による肺うっ血の出現に対して防御的に作用したものと考えられた.心膜ドレナージに際しては排液後の血行動態の変化を考慮したうえで施行することが重要な例と思われたため報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
Meet the History
  • —高階經和先生に聞く(1)
    高階 經和, 山科 章
    原稿種別: Meet the History
    2012 年42 巻5 号 p. 691-697
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    いまやプロ野球界では世界的に有名になったマリナーズのイチロー選手ですが,循環器教育領域でイチローといえば,誰もが知っている,すぐれた心臓病患者シミュレータ「イチロー」のことです.それはまだ野球のイチロー選手がデビューする前に,制作者である高階經和先生によってこのシミュレータに名付けられたものでした.
     今回は,臨床だけでなく循環器医学教育にも大きな影響を及ぼした高階先生をゲストに,医師であった父のことやアメリカでの恩師との出会い,イチローの誕生と医学教育について,さまざまなお話をおうかがいしました.
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