心臓
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54 巻, 6 号
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OpenHEART
HEART’s Selection 大動脈瘤:最新知見と治療の進歩 企画:窪田 博(杏林大学 心臓血管外科)
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[総説]
  • 山崎 延夫
    原稿種別: 総説
    2022 年 54 巻 6 号 p. 667-685
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     目的:学術論文の被引用回数の多さは論文の質を表す尺度の一つである.本研究の目的は,これまでに日本人研究者が発表した心エコー論文を被引用回数の多寡によって順位付けし,上位150編に選ばれた研究論文とその著者の功績を讃えることである.

     対象と方法:1982年以降に日本人研究者が筆頭著者で発表した心エコーに関わる論文について,平成最後の日となった2019年4月30日の時点で被引用回数を調査し,上位150編の論文をリストアップした.検索エンジンは「Google Scholar」,検索の対象は「英語と日本語のページ」とした.

     結果:第1位の論文の被引用回数は2,086回,第150位は107回であった.他の論文で引用された回数が500回を超えていた論文は15編であり,Tei index(鄭),no reflow(伊藤),torsion(納冨),肺高血圧症(北畠),組織ドプラ(宮武),僧帽弁逆流の重症度(宮武),パルス組織ドプラ(大木),tethering(尾辻)が含まれていた.これらの論文は,日本人が世界に向けて発信したオリジナリティが突出した研究といえる.

[症例]
  • 古賀 清和, 古舘 晃, 大崎 隼, 蒲原 啓司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 686-690
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     症例は85歳男性.71歳時に大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(二尖弁)に対し,Mosaic生体弁23 mmを用いた大動脈弁置換術を施行した.年に1回の定期的な心エコー検査にて置換した大動脈弁や心機能に問題なく経過していた.2021年4月起座呼吸が突然出現し,肺うっ血と胸水貯留を認め,心不全と診断され入院となった.心精査にて重症大動脈弁位人工弁逆流を認め,内科的治療にもかかわらず心不全症状が持続したため,再弁置換術を行った.摘出したMosaic弁は左-右冠尖交連部が広範囲にわたりステントポストより離開しており(commissural dehiscence),左および右冠尖の逸脱を認めた.軟線写真では弁尖の石灰化はみられず離開した交連部に軽度の石灰化を認めた.Mosaic弁は第三世代のブタ生体弁であり良好な長期成績が報告されているが,術後14年目に大動脈弁位での交連部離開による急性大動脈弁位人工弁逆流を呈し再弁置換術を行ったので文献的考察を加えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 安武 れい, 宮永 哲, 奥山 虎章, 前原 智紀, 福島 啓介, 樺 敬人, 吉田 律, 大木 理次, 白崎 圭輔, 久保田 健之, 小武 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 693-696
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     植込み型心電図計(implantable loop recorder;ILR)が導入され,失神の病態生理の解明が進んでいる.当院において失神の原因精査にILRが非常に有効であったと考えられた1例を提示する.

     症例は82歳,男性.数年前に意識消失し転倒歴あり,今回自動車運転中に意識消失し自損事故を起こした.その4日後に座位で失神したため紹介来院となった.前医の冠動脈CTで左前下行枝に狭窄あり,当院で冠動脈造影を行ったところ#6-7 90%狭窄が認められたが,後日の負荷心筋シンチで虚血は指摘できなかった.心電図は完全右脚ブロックのみで軸偏位がなく,ホルターや入院中のモニター心電図では徐脈や頻脈を認めず,症状の頻度も月0~1回程度であり長期イベント心電図でも原因検索は困難と考え,ILRを植込み翌日退院とした.同日夕方に自宅で座っていた時にめまいあり,ILRで20秒間の発作性房室ブロックが捉えられた.失神の入院精査で診断できなかったがILR植込み翌日に失神の原因となる発作性房室ブロックが記録され,ILR植込み3日後にペースメーカ(DDD型)植込みとした.完全右脚ブロックのみの症例でも諸検査で失神の原因が不明な場合はILRを積極的に考慮してもよいと考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • 佐々木 航人, 肥田 頼彦, 菊池 彩加, 下田 祐大, 森野 禎浩
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 699-705
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     症例は63歳,男性.アルコール依存と偏食歴はなし.労作時の息切れと両側下腿浮腫,両側上肢のしびれを自覚し,201X年7月に当院外来を受診,精査中であった.翌8月,突然の胸背部痛と呼吸困難感が出現し,当院救急外来へ搬送.搬入時に血圧低下あり,身体所見,検査所見から乳酸アシドーシス,急性循環不全,肺高血圧症と診断した.直ちに治療を開始したが,改善に乏しい状態が持続した.同日中に,以前の外来で検査されたビタミンB1の異常低値が判明し,衝心性脚気の診断でフルスルチアミン10 mgを静注したところ,速やかにショックおよびアシデミアが改善した.その後,ビタミンB1製剤の内服を継続することで,全身状態の増悪なく経過し,第19病日に独歩退院した.退院前に上部消化管内視鏡検査を施行し,胃幽門部小弯側の短縮,変形,幽門狭窄を認め,食物残渣の停滞を認めた.これにより胃内pHが上昇し,ビタミンB1の分解が亢進したものと推測した.さらに,プロトンポンプ阻害薬の使用により胃内pHの上昇を助長する可能性も示唆された.原因不明の肺高血圧症,循環不全の原因として,衝心性脚気は重要な鑑別疾患であり,本症例と同様の機序で衝心性脚気を発症した例は稀であるため,文献的報告も含めて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 星野 竜, 水田 真司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 709-713
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     心臓血管腫は,極めて稀な原発性良性心臓腫瘍である.今回,この疾患に対して手術を施行し,良好な結果が得られたので報告する.症例は,71歳の女性.他院で白内障の術前検査で経胸壁心エコー検査を施行され,左心房内に腫瘤を認めたため,当院に紹介となった.当院で再度行った経胸壁心エコー検査では,左心房の心房中隔下縁に25×30 mmの高輝度の可動性のある有茎球状腫瘤を認めた.心臓・冠動脈造影CT検査では,左心房内に有茎の非造影腫瘤を認めたが,腫瘤への栄養血管は確認できなかった.頭部MRI検査では,脳梗塞の所見はなかった.原発性心臓腫瘍の診断で,体外循環下に高位右側左房切開と経右房経心房中隔アプローチで腫瘤に到達した.腫瘤は有茎で,左心房の心房中隔下縁に付着していた.腫瘤は心房中隔を一部含めて摘出し,欠損部は自己心膜パッチで閉鎖した.摘出した腫瘤は,平面滑で光沢を有し,大きさ25×35×30 mmであった.病理組織学的検査により血管腫と診断された.術後3年が経過したが,再発を認めていない.

  • 村松 和樹, 土井 駿一, 田邉 康宏, 佐藤 如雄, 桒田 真吾, 御手洗 敬信, 出雲 昌樹, 石橋 祐記, 原田 智雄, 明石 嘉浩
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 714-719
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     症例は77歳女性.僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁狭窄症による非代償性心不全と繰り返す消化管出血のため,頻回の入院治療を要していた.右心カテーテル検査ではForrester Ⅳ群(肺動脈楔入圧26 mmHg,心係数1.76 L/min/m2)の心不全を認めた.心不全の主因として,重症僧帽弁閉鎖不全症が考えられ,第13病日に経皮的僧帽弁接合不全修復術(transcatheter mitral valve repair;TMVr)を施行した.その後,黒色便を認め,貧血が進行したため緊急内視鏡検査を行ったところ,盲腸,上行結腸,S状結腸に毛細血管拡張と出血を認めたためクリッピング術を施行した.大動脈弁狭窄症と繰り返す消化管出血および消化管粘膜の毛細血管拡張を認めることからHeyde症候群が疑われたため,フォンウィルブランド因子マルチマー解析を施行したところ高分子マルチマーの欠損を認めたためHeyde症候群と診断した.第43病日に大動脈弁狭窄症に対して経皮的大動脈弁植込み術(transcatheter aortic valve implantation;TAVI)を施行した.その後,消化管出血は改善しフォンウィルブランド因子マルチマー解析では高分子マルチマーは改善していた.心不全も著明に改善し第62病日に独歩退院した.今回,我々は僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁狭窄症,反復する消化管出血を合併した症例に対して弁膜症へのカテーテル治療を行うことで著明な改善が得られた症例を経験した.

Editorial Comment
[症例]
  • 衣笠 由祐, 手嶋 英樹, 田井 龍太, 今井 龍一郎, 川井 和哉, 井原 則之, 杉本 健太郎, 入江 博之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 722-728
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     症例は36歳女性.小児期に川崎病の罹患歴があり他院で経過観察されていた.宿泊中のホテルで搬送当日早朝に呼吸困難,全身の痺れを主訴に救急要請.救急隊接触後に心肺停止となり,心肺蘇生が開始された.心室細動(ventricular fibrillation;VF)であり,車内での除細動は無効であった.病院到着後,VFを繰り返す状態であったが心肺停止後53分で自己心拍再開を得られ,緊急冠動脈造影を施行.左主幹部に1 cm大の冠動脈瘤を認め,左前下行枝#6入口部が完全閉塞していた.経皮的冠動脈形成術は非適応と診断され,体外式膜型人工肺(V-A extracorporeal membrane oxygenation;V-A ECMO)を確立した後に手術室へ移動し緊急冠動脈バイパス術を実施した.術後は体温管理療法を含めた集中治療を行い,術後2日目に人工呼吸器を離脱し,大動脈内バルーンパンピングを抜去した.経過良好で神経学的後遺症なく術後23日目に自宅退院となった.院外心肺停止症例に対応するためには救急隊を含めたすべての医療者の連携が不可欠であった.

  • 石井 怜, 細田 順也, 荻野 尭, 田口 有香, 井上 満穂, 成川 雅俊, 志水 利之, 菅谷 憲太, 若宮 卓也, 渡辺 重朗, 中野 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 6 号 p. 729-733
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     緒言:近年,小児における皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込みの報告が散見される.35 kg以下の小児例での植込み報告は少なく,安全に施行し得た2症例を経験したため報告する.

     症例:①11歳男児.体重32.8 kg.生来健康.X年4月に心肺停止となり心室細動に対して除細動を行い前医へ搬送.第6病日に当院に転院.精査の結果QT延長症候群あるいは特発性心室細動となった.第24病日にS-ICD植込み術を施行.経過良好で第34病日に退院した.

     ②7歳男児.体重27.3 kg.NAA10遺伝子異常を伴う肥大型心筋症のため前医通院中.Y年5月に心肺停止となり心室細動に対して除細動を行い前医へ搬送.精査の結果QT延長症候群と診断し心室細動の原因と考えられた.第22病日に当院に転院し第29病日にS-ICD植込み術を施行.経過良好で第38病日に退院した.

     結語:35 kg以下の小児に対して安全にS-ICD植込みができた症例を経験した.植込み後の長期的なデータが乏しいため,今後も創部・リードトラブルや不適切作動について十分な経過観察が必要と考えられる.

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