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米良 尚晃, 池田 隆徳, 信太 研二, 三輪 陽介, 宮越 睦, 榊 桂, 阿部 敦子, 石黒 晴久, 塚田 雄大, 中村 健太郎, 柚須 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
5-11
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
急性心筋梗塞(AMI)の経過中に心室細動などによるelectrical stormを合併した場合,多くは治療抵抗性となるため,しばしば致命的な転帰をたどる.今回,AMI経過中に突然electrical stormをきたし,超短時間作用型β1遮断薬のlandiololが著効した症例を経験したので報告する. 症例は4 3 歳, 男性.AMIに心不全,肺炎を併発してCCU管理となった.入院第21病日の冠動脈造影検査で,左冠動脈主幹部の完全閉塞が認められた.血行動態の破綻が著しく,救命のため同部位に対して経皮的冠動脈形成術が施行された.その5日後に突然,electrical stormが出現した.抗不整脈薬の投与は,心電図でQTc時間が延長していたため行われなかった.気管内挿管下ではあったものの,交感神経緊張の関与が考えられたためlandiololを静注したところ, 速やかにelectrical stormは消失した.landiololはAMI経過中に発現するelectrical stormに対して考慮されるべき薬物といえる.
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廣瀬 雅裕, 三橋 武司, 中神 理恵子, 新保 昌久, 山本 啓二, 勝木 孝明, 島田 和幸
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
12-19
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例1:80歳,女性.急性心筋梗塞の疑いで入院.心電図はII,III,aVFにST上昇.心エコーで後下壁運動低下・心嚢液貯留あり.造影CTで大動脈解離は否定.冠動脈造影で左回旋枝狭窄病変を認めた.心タンポナーデを呈したため穿刺にて血性心嚢液排液し血行動態は改善.マルチスライスCTで左室後壁に菲薄化を認め,心筋シンチ・冠動脈狭窄部位と一致し心筋梗塞に伴う心破裂と診断.
症例2:73歳,女性.胸背部痛で近医受診.心電図はII,III,aVFでST上昇.一時ショック状態となり当院搬送.造影CTでは大動脈解離は否定的であったが心嚢液貯留あり.心エコーでは壁運動異常なく血行動態も安定したため保存的に加療.マルチスライスCTでは左室後壁に菲薄化あり心破裂と診断.
急性心筋梗塞の浸出性心破裂は臨床経過や心エコーのみでは確定診断に至らないことも多いわれはマルチスライスCTにて左室の菲薄化を明瞭に描出し心破裂の診断に至った2症例を経験したので報告する.
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川端 美穂子, 平尾 見三, 佐々木 毅, 古川 俊行, 岡田 寛之, 櫻井 馨, 稲垣 裕, 横山 泰廣, 蜂谷 仁, 畑 明宏, 磯部 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
20-24
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
患者は71歳,女性.主訴:呼吸困難.現病歴:呼吸困難増悪のため来院直後,心肺停止となった.蘇生後,急性心筋梗塞と診断,左前下行枝#795%狭窄に対する緊急インターベンションに成功.CKピーク値は2764 IU/Lであり,心エコーでは前壁の軽度壁運動低下を認めるものの駆出分画率60%と保たれていた.術後よりQTc延長が認められ,翌日には巨大陰性T 波を伴い最大708msまで到達,TPE(T波ピークからT波終末まで)間隔の延長を伴っていた.血清K値は正常であり,胸痛や新たなST変化もみられなかった.その後反復性torsade de pointes(TdP)を繰り返した.マグネシウムおよびリドカイン静注は無効であったが,β 遮断薬静注によりelectrical stormから脱した.第5病日にQTは正常化.第19病日に冠動脈造影を施行したが,病変は認められなかった.心内膜下梗塞による,M細胞優位の活動電位延長によって貫壁性再分極時間のばらつき(transmural dispersion of repolarization:TDR)が増大し,TdPが発生した可能性が考えられた.急性冠症候群における虚血解除後にQT延長を生ずるのはまれではあるが,TPE間隔が延長した巨大陰性T波を伴いQT延長が認められる症例においてはTdP発生も念頭においた全身管理が必要である.
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山田 貴之, 岩渕 成志, 横井 宏佳, 野坂 秀行, 延吉 正清
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
25
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
背景:虚血性心疾患における完全血行再建は重要な予後規定因子である.
方法:当院において1988年から1998年までの間に経皮的冠動脈形成術(PTCA)を施行し血行再建に成功した初回患者6,246人を左心機能別に3群に分けた.Normal(LVEF>50,n=5,246pts),reduced(R:LVEF=30~50,n=800pts),poor(P:LVEF<30,n=380pts)の各群において各々の長期予後と完全血行再建との関係を調べた.
結果:平均左室駆出率はそれぞれ69.5%(N),42.5%(R)および23.6%(P)であった.完全血行再建率は674%(N),48.5%(R)および40.1%(P)であった.1年後の全死亡率は2.4%(N):4.5%(R):10.3%(P)(p<0.0001)であり突然死率は1.0%(N):1.8%(R):6.3%(P)(p<0.0001)であった.完全血行再建は全群において全死亡率を有意に減少させた(N:1.7/3.8%;p<0.0001:Chi square 21.034,R:2.9/5.9%;p=0.0393,Chi square 4.249,P:6.0/13.3%;p=0.0209:Chi square 5.335).N groupおよびRgroupにおいては完全血行再建は突然死も有意に減少させた(N:0.7/1.8%;p <0.0001:Chi square 15.5,R:0.8/2.7%;p=0.0397:Chi square4229)が,P groupにおいては有意な結果を示さなかった(P:4.0/8.0%;p=0.1053).
結論:完全血行再建は虚血性心疾患における長期生存率および突然死回避率を改善させるが,重症心機能低下例においては長期生存率に影響は与えるが,突然死の予測因子とならない可能性がある.
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慶田 毅彦, 藤田 雅樹, 玄 陽平, 山家 謙, 大平 洋司, 加藤 隆弘, 島袋 高志, 榊原 直樹, 相良 耕一, 山下 武志, 沖重 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
26-31
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
目的:突然死の原因疾患として冠攣縮性狭心症(VSA)が報告されており,その治療法として植込み型除細動器(ICD)を選択した報告も散見される.しかしわれわれは心肺停止の原因としてVSAが考えられた症例に対し,薬物療法のみで経過をみた症例を経験したので報告する.
症例および経過:対象は心肺停止を認めた4症例(男性3例,平均年齢46.5±10.0歳).
(1)正常冠動脈(2)基礎心疾患が無い,(3)心臓電気生理学的検査(EPS)にて洞機能および房室伝導正常であること,(4)心室性不整脈が誘発されないこと,(5)サンリズム負荷陰牲,(6)加算平均心電図陰性を確認.その後アセチルコリン(Ach)負荷にて冠攣縮(右冠動脈1例,左冠動脈3例)誘発を確認.以上より心肺停止の原因はVSAと考え,薬物療法を開始.再度Ach負荷施行し,冠攣縮誘発されないことを確認して退院とした.外来における平均815±993日(231-2296日)の経過観察の結果,全例において胸痛,失神などの症状や心肺停止を認めていない.
結語:われわれが経験したVSAに伴う心肺停止症例は薬物療法のみで,現在まで経過良好である.しかしICD必要性の有無についてはさらに検討が必要であると考える.
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小船 雅義, 渡辺 一郎, 高山 忠輝, 赤羽 正史, 芦野 園子, 奥村 恭男, 川内 千徳, 山田 健史, 小船 達也, 大久保 公恵, ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
32-37
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は79歳,男性.高血圧,狭心症に対し,2005年より近医でアンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬,ニトログリセリンテープを処方されていた.2006年1月25日午前1時より心窩部違和感が出現し,3時30分ころより胸痛,悪心,冷汗が出現するようになり,ニトログリセリンを使用したが,症状が改善しないため救急車を要請した.救急車内で記録したモニター心電図で房室ブロック,ST上昇が見られたため,救命センターに搬送された.救命センター到着時には意識清明であったが,モニター上,心室細動に移行したため,直流除細動を施行した.除細動後の心電図は心房細動で,前胸部誘導でSTの低下が見られた.緊急冠動脈造影では左室駆出率70%で左室機能は保たれており,冠動脈に有意狭窄は認められなかった.血液生化学検査上,トロポニンの上昇はみられなかった.後日植込み型除細動器(ICD)の植え込みを施行した.
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井上 義明, 井川 修, 足立 正光, 矢野 暁生, 三明 淳一朗, 小倉 一能, 加藤 克, 田中 宏明, 飯塚 和彦, 重政 千秋, 久 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
38-44
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は56歳,男性.主訴は意識消失発作.2002年12月8日朝9時ごろ,突然の前胸部痛の出現,その後に意識消失を生じた.モニター心電図にて心室細動が認められたため電気的除細動が行われ洞調率に復帰した.入院後の経過中,心電図上突然,前胸部誘導のST-Tの上昇があったが亜硝酸薬の静注にて速やかに改善した.これらのイベントより冠攣縮性狭心症を疑いCa拮抗薬の投与が開始された.状態が落ち着いた第13病日にCa拮抗薬内服下で心臓カテーテル検査が行われた.コントロールの冠動脈造影では有意狭窄を認めないものの,アセチルコリン負荷検査では右冠動脈は10μgにて,左冠動脈は20μgにて冠攣縮による高度な狭窄が誘発された.他に器質的心疾患を認めなかったこと,多枝冠攣縮が誘発されたことよりこの度の心室細動は冠攣縮によるものと判断した.薬剤投与下にても多枝冠攣縮が認められるため薬剤のみでは冠攣縮とそれに引き続き生じると考えられる心室細動を予防するのは困難と判断され,突然死予防目的にて植込み型除細動器(ICD)の植え込みを行った.ICDの適応を考える上で重要な症例と思われ報告する.
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荒田 宙, 五関 善成, アブライテ ・アブラ, 森崎 倫彦, 石山 泰三, 肥田 敏, 山科 章
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
45-51
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例1は62歳,男性.ペンキ塗装中に突然の意識消失発作をきたし救急搬送.来院時心室細動を認めDCにて洞調律へ回復した.心電図上Brugada様心電図を認め,pilsicaiaide負荷試験・心臓電気生理検査施行するも有意な所見なし.入院中ホルター心電図にて,安静時のST上昇を数回認めたため冠動脈造影を施行.造影中に多枝冠動脈に攣縮を認め,これによる心室細動が強く疑われた.内服開始後ホルター心電図にてもST上昇認めず,現在外来で経過観察中である.症例2は80歳,女性.前胸部不快感後の意識消失発作を6回認めたため精査目的で入院.入院後の心電図モニターにて,ST上昇後に房室ブロックから50秒間の心停止を認めた.冠動脈造影にて右冠動脈#3に90%狭窄認め,同部位を含む冠攣縮が疑われた.右冠動脈へのステント留置および投薬開始後,モニター上のST上昇も認めず現在外来で経過観察中である.
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日本版救急蘇生ガイドラインから
相澤 義房
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
52
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
救命救急治療の現場では,心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈は避けて通れない.最近,心室頻拍・心室細動に対する薬剤効果の検討からリドカインが問題視され,代わってアミオダロンが勧められるようになった.わが国ではアミオダロンの静脈投与による使用はできないし評価も確立していない.一方,III 群薬として難治性心室頻拍・心室細動にはニフェカラントが承認されており,最新の日本版救急蘇生ガイドラインにも収載された.本剤は不整脈専門家により難治性の心室頻拍・心室細動に有効であることが報告された.ニフェカラントの効果はQT延長,したがって不応期の延長なくしてはあり得ない.本剤ではQT延長は当然とみなし,その上で救命のために心室頻拍や心室細動が停止できるか?その目的を達成するためにTdPをきたさない範囲での増量が可能か?という観点で使用されることになる.当日は本剤の特性,作用機序など臨床に即して述べたい.
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三田村 秀雄
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
53
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
2004年7月に自動体外式除細動器(AED)が一般に解禁されると,全国津々浦々にAEDの設置が拡がり,AEDによる救命例も続出している.AEDの設置場所として人の密集する所は特に効果的で,空港,駅,イベント会場,ホテル,ショッピングセンターなどへの配備が進み,救命例も報告されている.運動に伴う心室細動の出現も想定内のことであり,AEDが準備されたマラソン大会やフィットネスジム,プール,運動場,学校などで救命に成功している.その一方でAEDが未配備の新幹線内での心停止や,配備されていたのに使用されなかった学校の事例なども報告されており,いまだ啓蒙が十分とはいえない.またAEDによる頻拍診断が不適正な事例も報告され,そのアルゴリズムに限界のあることもわかってきた.AED後に心肺蘇生術を必要とする例も少なくなく,電気ショック後の自動診断に時間をとられる前に蘇生術を再開することが新しいガイドラインで勧められている.
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中山 尚貴, 尾崎 弘幸, 海老名 俊明, 小菅 雅美, 日比 潔, 塚原 健吾, 奥田 純, 岩橋 徳明, 矢野 英人, 仲地 達哉, 遠 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
54-57
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は30歳,男性.2006年6月,スポーツジムのランニングマシンで運動中に突然,心窩部不快感が出現し,運動を中止したが痙攣を伴う意識消失をきたし倒れた.スポーツジムのトレーナーがただちに心肺停止を確認し,施設内の自動体外式除細動器(AED)を装着した.AEDの音声に従い除細動ボタンを1回押し,すみやかに自己心拍が再開したが,AED使用後にリセットボタンを押したため,メモリーが消去され,心肺停止の原因として致死性不整脈の関与は確認できなかった.
入院後,トレッドミル運動負荷心電図検査で広範囲の誘導でST低下を認め,冠動脈造影検査を施行し冠動脈瘤を伴う重症多枝病変を認めた.心肺停止の原因は心筋虚血による心室細動もしくは無脈性心室頻拍と推定し,冠動脈バイパス術を施行した.
AEDの普及に伴い非医療従事者によるAEDを使用した救命例が本邦でも徐々に報告されており,本症例は現場にあったAEDをただちに使用したことが社会復帰に大きく貢献したと考えられる.ただし,本症例で使用したAEDのように,一部機種ではリセットボタンを押すことによりメモリーが消去され,事後検証が困難になることは注意すべき点であり改善を要する.
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高次脳機能障害ない蘇生を目指すには
杉安 愛子, 野上 昭彦, 小和瀬 晋弥, 荻ノ沢 泰司, 窪田 彰一, 山崎 哲郎, 中島 直久, 青木 元, 玉木 利幸, 柚本 和彦, ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
58
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例1:66歳,男性.スポーツクラブにて水泳中に心肺停止.自動体外式除細動器(AED)が装着され,52秒後に作動した.除細動後は洞停止で,5.6秒後に心室補充収縮,15秒後に洞調律が認められた.症例2:58歳,男性.スポーツクラブにてテニス中に心肺停止.約3分後にAEDが装着され,60秒後に作動した.除細動後は完全房室ブロックで,76秒後に心室補充収縮,98秒後に33/分の心室調律が認められた.
症例1は後遺症なく蘇生されたが,症例2には高次脳機能障害が残存した.この2症例を検討すると,AED装着・作動までの時間に違いはなかったが,除細動後の自己調律の出現に大きな差があった.高次脳機能障害なく社会復帰を目指すには,AED使用までの時間短縮,AED使用までの心肺蘇生術施行もさることながら,AED作動後の心肺蘇生術続行も必要と考えられた.また,汎用AEDに経皮ペーシング機能の追加も望まれる.
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加藤 勲, 岩 亨, 鈴木 靖司, 大野 真, 坂中 清彦, 辻 晶, 伊藤 隆之
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
59-64
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
当院内で意識消失に対して汎用型自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)が使用された27例を検討し問題点を検証した.症例は,心停止を認めない意識消失が3例.心静止/無脈性電気活動が14例.心室頻拍(VT)/心室細動(VF)が10例であった.AEDがショックを放出したのはVF6例中5例.多形性VT1例中1例.単形性VT3例中0例で,単形性VTは全例心拍数250回/分未満であったためショックは放出されなかった(PHILIPS社の単形性VTでの作動条件は心拍数250/分以上).
当院で使用経験のあるAEDモード付き除細動器は,通常のAEDよりも遅い単形性VTでも作動する(PHILIPS社の作動条件は心拍数150/分以上)ので,除細動器のAEDモードを使用した方が救命率は上がる可能性がある.またAEDの作動条件を満たさないVTでも手動モードであれば医師によりショックの放出は可能である.
院外と院内の心停止では状況は若干異なるため,AEDの院内設置は理想的な機種選択が考慮されるべきと考える.
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2007 年39 巻Supplement3 号 p.
65-68
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
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上村 孝史, 山部 浩茂, 田中 靖章, 森久 健二, 小野 敬道, 木村 義博, 小川 久雄
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
69
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例:58歳女性.45歳ころより検診にて多発性心室性期外収縮を指摘され,特に自覚症状も認めないために経過観察となっていたが,突然の意識消失発作を認め,近医へ緊急搬送となった.搬入時には意識清明で神経学的所見にも異常は認められなかったが,経過中再び意識消失発作を来し,その際のモニター心電図にて多形性心室頻拍が認められ,当院へ紹介となった.精査の結果,器質的心疾患は認めず,多形性心室頻拍は先行する心室性期外収縮をtriggerとして生じていると考えられ,心室性期外収縮に対するカテーテルアブレーションを行った.心室性期外収縮は左脚ブロックタイプ,下方軸であり,右室流出路起源と考えられた.マッピングの結果,右室流出路前中隔部にQRSより32msec先行する最早期興奮部位を認め,同部位へ高周波通電を行うことにより心室性期外収縮は消失した.その後はtriggerとなった心室性期外収縮は消失し,以後は意識消失等なく経過している.
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寺田 健, 阿部 芳久, 門脇 謙, 庄司 亮, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 三浦 傅
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
70-74
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は51歳,女性.繰り返す心室細動で救急搬送された.心室細動は同一の心室期外収縮から生じ,連結期は約500msと長く,QRS幅の広い右脚ブロック・左軸偏位タイプの期外収縮であった.リドカイン,ベラパミル,プロプラノロールは無効で,電解質異常はなく,QT延長やBrugada型心電図は認めなかった.イソプロテレノール持続静注により心室細動は抑制された.突然死の家族歴や,失神はなし.心臓超音波検査やアセチルコリン負荷も含めた心臓カテーテル検査では器質的心疾患を認めず,特発性心室細動と診断し,植込み型除細動器(ICD)植え込み術を施行した.ピルジカイニド負荷試験ではBrugada型心電図はみられなかったが,右脚ブロック,下方軸タイプの心室期外収縮が頻発し,イソプロテレノールにより抑制された.以後は無投薬で心室細動を認めていない.本症例は左心室起源の期外収縮から生じる非Brugada型の特発性心室細動であり,その病態解明には同様な症例の蓄積が待たれる.
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上野 景子, 臼田 和生, 鷹取 治, 谷口 陽子, 樫本 雅彦, 中野 学, 打越 学, 安間 圭一, 永田 義毅, 石川 忠夫, 池田 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
75-80
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は15歳,男性.生来健康であったが2005年10月,持久走中に突然心肺停止となった.救急車内で心室細動が確認され,電気的除細動にて洞調律に復帰し,心肺蘇生に成功した.高山赤十字病院にて急性期治療の後,精査加療のため当院紹介となった.心臓電気生理学的検査では,イソプロテレノール負荷後に高位右房および右室刺激にて260bpmと非常に速い心室内変行伝導を伴う非通常型房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)が誘発された.心室細動・心室頻拍は誘発されなかった.遅伝導路に対する焼灼後AVNRTは誘発不能となった.基礎心疾患のない若年者の心室細動であり,今後の再発予防のため植込み型除細動器の適応と判断し,植え込みを行った.
総括;若年者のAVNRTが運動時の心室細動発症に関与した可能性も示唆されたまれな症例を経験した.
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福田 浩二, 熊谷 浩司, 若山 裕司, 菅井 義尚, 広瀬 尚徳, 山口 展寛, 篠崎 毅, 下川 宏明
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
81-86
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は32歳,男性.生来健康.2006年7月末,夕食後テレビ視聴中に失神.数分で自然回復.8月初旬夕食後,風呂掃除中再び失神.救急隊到着時モニターで心室細動(VF)確認.自動体外式除細動器(AED)にて除細動後,地元基幹病院に搬送.神経学的後遺症なし.植込み型除細動器(ICD)植え込み目的に当院紹介.サンリズム負荷試験陰性.プログラム心尖部2連期外刺激で容易にVFが誘発された.8月中旬ICD植え込み施行.入院後より夕食後に増加する左脚ブロック下方軸の心室性期外収縮を認めた.この心室性期外収縮は運動負荷では負荷開始早期,終了回復期に増加した.ICD植え込み4日後,夕食後安静時に同型の心室性期外収縮2連(最初の連結期390msec)に引き続きVF発生,ICD適正作動にて停止.VF発生時に装着していたHolter心電図の周波数解析で,発生直前のlow frequency成分の上昇を認めた.今回のVF発生に自律神経系のバランスの変化が関与する可能性が考えられた.
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坂部 茂俊, 笠井 篤信, 角田 健太郎, 仲田 智之, 坂井 正孝, 大西 孝宏, 説田 守道
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
87-91
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
患者は43歳,女性.家族歴に心臓突然死はない.2006年1月3日より自動車運転中,就業中など数回の失神発作を繰り返し1月5日に当院循環器科を受診した.心臓に明らかな器質的異常を認めなかったが当日のHolter心電図検査中に失神があったため,急ぎ解析したところ約90秒間の心室細動(Vf)が記録されていた.特発性心室細動と診断し植込み型除細動器(ICD)の移植を行った.約2カ月間Vfの出現はなかったが3月に合計8回,5月に合計3回それぞれ除細動を必要とするVfの出現があった.これらのVfはすべて同型(左脚ブロック下方軸)の心室性期外収縮(VPC)から始まっていた.この右室流出路VPCに対するアブレーションでVfを抑制することを試みた.CARTO systemを用いてVPCの最早期興奮部位を同定しoriginあるいはexitを焼灼することを計画したが,activation map上VPCの最早期と思われる部位ではperfect pace mapは得られず通電も無効であった,約26mmはなれた後壁よりにperfect pace mapが得られるポイントがありこの部位の通電でVPCは消滅した.アブレーション後約7カ月の経過観察期間においてVfの再発はない.
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橘 英明, 小松 隆, 佐藤 嘉洋, 小澤 真人, 大島 杏子, 佐藤 衛, 中村 元行
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
92-99
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は24歳,男性.主訴は動悸発作.2006年4月,仕事中突然動悸発作が出現した.近医心電図ではATP20mg急速静注にて停止する心拍数210/分の左脚ブロック左軸偏位の心室頻拍( V T - I ) を認めた.電気生理学的検査ではイソプロテレノール(ISP)負荷による右心室早期刺激法ならびに頻回刺激法にてVT-Iが誘発された.頻拍中のCARTO activationmapによる最早期興奮部位は右心室心部尖部自由壁側に存在し,カテーテル先端電位には体表面心電図のQRS波に30msec先行するpre-potentialならびに右心室内に遠心性の興奮伝播が観察されたが,同部でのconcealed entraimment現象は得られなかった.撃発活動による心室頻拍と診断し,同部への4mmtipカテーテルによる高周波通電後反復性心室反応が出現したが,その後QRSの異なったVT-IIが誘発された.その起源はVT-Iと19mm離れた右心室心基部側に存在しており,同部の8mm-tipカテーテルによる高周波通電後に心室頻拍は誘発されなくなった.同時に施行した右心室心筋生検像では非活動性の心サルコイドーシスが示唆される所見を認めた稀な1例を報告する.
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岡 克己, 清水 宏紀, 増山 理, 大柳 光正
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
100-105
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は53歳,男性.高血圧に対し内服加療中であった.2006年1月テニス中に突然意識消失を来しbystander CPR施行され救急車内で心室細動(VF)が確認されたためDCにて除細動され心拍再開後当科搬送入院となった.入院時,意識清明,心電図では2:1-3:1心房粗動(AF)であったが自然に洞調律へ回復した.血液,生化学検査に異常なく,心エコーでは左室壁運動異常は認めなかったが心尖部に限局した壁肥厚を認め心尖部肥大型心筋症(APH)と診断した.心臓造影MRIでは心尖部の乳頭筋に沿った浅い層に造影遅延を認めた.アミオダロン,カルベジロールの内服を開始,AFに対して三尖弁輪-下大静脈間にlinear ablation施行後,植込み型除細動器(ICD)植え込みを行った.APHは比較的予後良好とされているが,本症例のように致死的不整脈をきたすこともあり,若干の文献的考察をふまえて報告する.
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深水 誠二, 櫻田 春水, 高野 誠, 迫田 邦裕, 弓場 隆生, 小宮山 浩大, 久次米 真吾, 谷井 博亘, 辰本 明子, 田邊 康宏, ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
106-111
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は62歳,男性.労作時呼吸困難のため近医受診し心房細動(Af)を指摘された.ピルジカイニドの内服が開始となったが,通勤中に意識消失しbystanderCPRを受けた.救急隊到着後,心室細動(VF)に対して電気的除細動が行われ蘇生された.心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄はなく,スパズム誘発も認めなかった.左室造影で心尖部心室瘤を認めたが,心室遅延電位は陰性であった.心室プログラム刺激で血行動態不良の心室頻拍(VT)が複数誘発されたが,ニフェカラントおよびプロカインアミドは無効だった.AfはVFに対する電気的除細動では洞調律に復しなかったが,検査中の直流通電で洞調律に復した.植込み型除細動器(ICD)植え込み後,Afが再発しICDによる除細動後も再発するためソタロールの投与を行ったところ心房ペーシング調律が維持できた.また,ソタロール内服下の心室プログラム刺激でVTの誘発は抑制され,本症例ではソタロールがAf・VTの双方に有効であったものと考えられた.
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大郷 恵子, 圓光 賢希, 草野 研吾, 桜木 悟, 永瀬 聡, 中村 一文, 柳井 広之, 大森 昌子, 大家 政志, 難波 靖治, 津田 ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
112-117
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は19歳,男性.主訴は胸苦・胸痛.2006年4月29日午前2時ころ,胸苦・胸痛のため近医を受診,心電図上広範囲のST-T変化を認め急性心膜炎の疑いで入院となった.30日午前4時ころより血圧低下がみられたためdopamine点滴を開始され当科転院となった.転院時,血圧80mmHg,脈拍130/分で,奇脈,III音,頸静脈怒張を認めた,心エコーでの左室壁厚増大とびまん性の高度壁運動低下(左室駆出率23.8%),多量の心嚢液貯留,CPKの上昇などから劇症型心筋炎による心原性ショックと診断した.機械的循環補助を行った上で,心臓カテーテル検査により冠動脈疾患を否定し,右室心内膜心筋生検を施行した.5月2日好酸球性心筋炎との組織診断によりステロイド投与を開始した.そのころより心機能の急速な回復がみられ,補助循環が離脱可能となった(離脱時に脳出血を合併).その後ステロイドを漸減中止したが好酸球性心筋炎の再発やLoffler心内膜炎への移行は認めていない.原因検索の結果,イヌ回虫に対する抗体が陽性であり,寄生虫感染に関連した好酸球性心筋炎と考えられた.
今回われわれは劇症型心筋炎がイヌ回虫感染に伴う好酸球性心筋炎によるという稀な1例を経験し,ステロイド投与と機械的循環補助により救命しえたので報告する.
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進宅 礼章, 小林 大祐, 浅井 純, 小林 元夫, 清水 和朗, 山下 朗, 池田 孝之
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
118-121
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
79歳,男性.アルツハイマー型痴呆のため他医通院中であった.2006年4月急性心筋梗塞のため当科入院.緊急心臓カテーテル検査を実施し,左冠動脈前下行枝#9に完全閉塞を認め,冠動脈形成術を施行した.入院後,高度の不穏状態を呈したので,ミタゾラムの静脈内持続投与を行った.入院第5病日に発作性心房細動が出現したため,心拍数コントロール目的にベラパミル投与を行ったところ,突然,心肺停止をきたした.直ちに心肺蘇生を行い,自己心拍,呼吸ともに回復した.心肺停止の原因として,ミタゾラム,ベラパミルが同じ代謝酵素で代謝されており,そのことが各薬剤の血中濃度を上昇させ,各薬剤の相互作用が関与した可能性が考えられ,今後の臨床の注意すべきこととして報告した.
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山科 順裕, 八木 哲夫, 滑川 明男, 石田 明彦, 田淵 晴名, 住吉 剛忠
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
122-128
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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50歳,男性.既往歴,家族歴に特記事項なし.夜間睡眠中に胸部不快,全身痙攣を伴う失神発作を起こし脳神経外科医院に救急搬送されたが神経学的に異常所見を認めなかった.失神直後の心電図で心房細動を認め当科へ紹介された.アセチルコリン負荷冠動脈造影で90%狭窄を伴う冠動脈攣縮が誘発されたためCa拮抗薬,亜硝酸薬を開始したが,その後も同様の失神発作を繰り返した.神経内科から抗てんかん薬を開始されたが無効であった,当科再入院時に右側胸部誘導でsaddle-back型のST上昇があり,ピルジカイニド負荷心電図で著明なcoved型のST上昇所見を認め,臨床心臓電気生理学的検査で心室期外刺激から心室細動が誘発されたためBrugada症候群と診断し,植込み型除細動器(ICD)を植え込んだ.植え込み後に再度失神発作を起こしたがICDは作動しなかった.抗てんかん薬の増量を行った結果,失神の出現を認めなくなった.繰り返す失神の原因の鑑別に非常に苦慮した1例を経験した.
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真田 明子, 池主 雅臣, 田邊 繁世, 小村 悟, 飯嶋 賢一, 岡田 慎輔, 和泉 大輔, 田辺 靖貴, 古嶋 博司, 相澤 義房
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
129-133
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
61歳,女性.失神歴・家族歴なし.2006年5月意識消失発作にて発症し,発作時に多形性心室頻拍(TdP)・心室細動(VF)を認めた.胸部誘導で著明なQT延長を伴う巨大陰性T波と,冠動脈造影に有意狭窄は認めないが,左室造影上特徴的な壁運動異常を示しておりたこつぼ型心筋症と診断された.その後,左室壁運動異常,陰性T波,QT間隔は徐々に改善したが,7月24日,再びストレス下にTdP/VFをきたした.同日に行われた電気生理学検査(EPS)ではVFは誘発されなかった.植込み型除細動器(ICD)植え込みを行い,その後作動は認めていない.
たこつぼ型心筋症は約9%にVT/VFが発症すると報告されているが,いずれも急性期に発症するものであり,また,多くの症例で巨大陰性T波を認め,QT延長を認めるものの,TdPのような重篤な不整脈の合併を報告した例は少ない.本症例のように壁運動の改善が認められた回復期にもTdP/VFを合併した報告例はなく,重要であると考えられた.
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脇本 博文, 沖重 薫, 畔上 幸司, 大庭 景介, 倉林 学, 上原 裕規, 瑞慶覧 貴子, 小西 正則, 志村 吏左, 磯部 光章
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
134-139
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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後天性QT延長症候群は種々の原因により発生するが,アルコール離脱により生じる後天性QT延長症候群(LQTS)の認識はうすく,同病態下における多形性心室頻拍(torsades de pointes;TdP)発生の報告も少ない.今回,われわれは失神を主訴としたアルコール離脱期のLQTSに伴うTdPを2例経験した.
症例1:23歳,女性.20歳ころよりビール2L/日,焼酎1L/日の飲酒を繰り返し,アルコール性肝不全にて当院入院となった.失神発作を発症し心電図モニターにてTdPが確認された.基礎心疾患なし.QTc=0.753msecと著明に延長(入院時QTc=0.529msec)し,マグネシウム静注,イソプロテレノール持続投与にてTdPは減少,QTcも徐々に短縮した.
症例2:50歳,男性.48歳ころより飲酒量が増え,日本酒1升/日の飲酒を続けていた.他院にてアルコール依存症と診断され禁酒を指示されたが,その後も不定期に飲酒を繰り返していた.失神発作を発症し救急車にて当院へ搬送された.心電図はQTc=659msecと著明に延長しTdPを繰り返していた.基礎心疾患なし.マグネシウムの静注後TdPは消失し,その後QTcは徐々に短縮した.
2症例とも後日施行した心臓電気生理学検査(EPS),epinephrine負荷試験では有意な所見を認めなかった.
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内川 智浩, 因田 恭也, 嶋野 祐之, 北村 和久, 平敷 安希博, 原田 修治, 高木 克昌, 山内 正樹, 辻 幸臣, 簗瀬 正伸, ...
2007 年39 巻Supplement3 号 p.
140
発行日: 2007/08/30
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
症例は28歳,男性.2002年12月に心室細動(VF)を発症. 心電図はBrugada型で, サンリズム負荷で, V
1-V
3でST上昇しVFが誘発された.Brugada症候群と診断され,植込み型除細動器(ICD)移植術が施行された.2004年6月にICDが2回作動後はVFの出現はなかったが,2006年7月14日に意識消失とICDの作動を3回認め,緊急入院となった.入院後もVFとICDの作動を3回認めVF stormと考えイソプロテレノール(ISP)点滴静注を開始したところ著明に心室性不整脈は抑制された.β刺激薬内服に変更し,入院5日後に退院となった. 今回入院時からホルター心電図を記録しており,心拍変動とQT時間について検討した.HF成分はVF直前に上昇が見られ,ISP投与後には著明に抑制された.またQaT(Q-T波の頂点までの時間)/RRグラフの傾きはstorm期では陰性であったが,ISP投与後には陽性となった.本症例の心室性不整脈発現時には副交感神経の亢進と,再分極時間の特異性がみられ,VF発生の機序に関連するものと考えられた.
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