【目的】小血管径の冠動脈狭窄における経皮的冠動脈形成術(PTCA)の再狭窄率は高く,予後の改善を図る上でPTCA後の冠拡張効果判定は重要である.しかし,血管内エコーの使用は小血管径の冠動脈に対してはしばしば制限され,冠動脈造影所見のみで評価することが多い.それに比較して,Dopplerflow wireは比較的安全に使用可能であり,冠動脈拡張効果判定における機能的評価法として有用である.そこで,小血管径冠動脈のPTCA治療における慢性期成績の予測法として,Doppler flow wireを用いた相対的冠予備能の有用性と限界について検討した.
【方法】待期的にPTCAを施行した労作性狭心症において,対照血管径が2.8mm以下の症例に対し,古典的バルン形成術(POBA)を施行した40例,cutting balloon 32例,ステント留置33例を対象とした.治療対象冠動脈,および狭窄を有さない対側冠動脈の冠予備能(CFR)を測定し,相対的冠予備能(r-CFR)を算出した.POBA,cutting balloon,ステント留置施行例に対し,それぞれ治療終了時のCFRが≧2.5,<2.5およびr-CFRが≧0.8,<0.8に分類し6カ月後の冠動脈造影所見にる成績を検討した.
【結果】POBA,cutting balloon,ステント留置における再狭窄率はCFR≧2.5,<2.5間で差は認めなかった.POBA,cutting balloonにおける再狭窄率はr-CFR≧0.8に比べ<0.8で有意に高値であった(POBA;41%vs74%,p<0.05,cutting balloon;36%vs72%,p<0.05).ステント留置における再狭窄率はr-CFR≧0.8および<0.8で差は認めなかった(37%vs50%,n.s).
【結果】小血管径冠動脈のPOBAおよびcuttingballoonにおいて,r-CFR<0.8の症例の再狭窄率は極めて高率であった.
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