心臓
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24 巻, 3 号
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  • ドプラーカテーテル法との比較
    平田 展章, 中埜 粛, 松田 暉, 島崎 靖久, 谷口 和博, 小林 順二郎, 新谷 英夫, 高橋 俊樹, 光野 正孝, 井川 誠一郎, ...
    1992 年24 巻3 号 p. 251-256
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    正常冠動脈を有する6症例において心筋コントラストエコー法を用い,心筋内灌流動態面より正常左前下行枝(LAD)領域のcoronary flow reserveを検討した.
    左冠動脈に塩酸パパベリン10mgの注入前後にsonicationを施行したイオパミドール2mlを左冠動脈に注入することにより心筋コントラストエコー法を施行し,LADの灌流領域全体におけるエコー輝度のpeak intensity,disappearance half time,time-intensity curve内の面積を求めた.さらにLAD近位部にドプラーカテーテルを挿入し,塩酸パパベリン10mg注入前後の冠血流速度を測定し,時間積分を施行してそのcoronary flow reserveを求めた.その結果以下の結論を得た.(1)心筋コントラストエコー法では塩酸パパベリン投与により灌流領域のエコー輝度のpeak intensityは高値となり,disappearance half timeは延長した.Time-intensity curve内の面積は増加した.(2)塩酸パパベリン投与前後におけるtime-intensity curve内の面積比は,既存のごときドプラーカテーテルにて求めた塩酸パパベリン投与によるcoronary flow reserveと有意な相関(r=0.946,p<0.01)を示した.(3)以上より心筋コントラストエコー法によってもcoronary flow reserveを判定し得ると考えられた.
  • 神原 啓文
    1992 年24 巻3 号 p. 257-259
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 近江 三喜男, 田林 晄一, 毛利 平, 田所 正路, 柳沼 厳弥, 阿部 康之, 茂泉 善政, 佐藤 清春, 横山 斉
    1992 年24 巻3 号 p. 260-266
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈動脈造影で50%以上の狭窄病変を有する年齢40歳から79歳の651例(男496例,女155例)の狭窄病変分布と左室機能を年齢別,性別で検討し以下の結果を得た.1)虚血性心疾患の発生頻度には男女差があり(3.2:1),発生のピークは女性が5歳以上遅れていた.2)AHA分類のsegmentごとに病変発生頻度を比較すると,前下行枝>右冠動脈>左回旋枝の順であり,病変分布には男女差はなかった.3)年齢階級ごとに各segmentの病変発生頻度の推移をみると,男性では若年者から頻度が高く,その後プラトーになるものが多く,女性では若年者では比較的低値を示すものが多いが,年齢と伴に上昇し続ける傾向がみられた.4)病変枝数は男性では1枝病変は40~70歳代で33~25%と緩やかに減少し,3枝病変は25~41%と増加した.女性では40歳,50歳代は半数以上が1枝病変であったが,60歳,70歳代の3枝病変は43%,56%と男性を上まわる高頻度であった.5)冠動脈病変枝数とEFとの関係は,高齢者群では女性が男性より病変枝数のわりにEFの保たれている症例が多いのに対し,若年者群では女性の2,3枝病変のEFの落ち込みが著明であった.
  • 臨床像,心機能および予後との関連性
    近森 大志郎, 土居 義典, Shaughan Dickie, 米沢 嘉啓, 小田原 弘明, 小澤 利男, William J. McKen ...
    1992 年24 巻3 号 p. 267-273
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症(HCM)における右室肥大(RVH)と臨床像,心機能,予後との関連性について検討するため,本症患者47例に対して6方向からの右室エコー法を施行しRVHの有無を評価の上,48時間ホルター心電図および心プール法より求めた心機能指標とも対比した.
    RVHは15例(32%)に認められ,RVH群は収縮期僧帽弁前方運動の頻度が高く(47vs.10%;p<0.025),平均左室壁厚がより厚く(21±6vs.17±3mm;P<0.02),左房径が拡大し(43±6vs.36±9mm;p<0.005),心室頻拍の合併頻度も高かった(40vs.13%;p<0.05).しかし,左室収縮期・拡張期心機能指標については両群間に有意差を認めず,年齢・家族歴・症状においても同様であった.4.7±2.0年の経過観察中,RVH群15例中5例,非RVH群32例中3例に致死的合併症を認め(p<0.05),RVH群は非RVH群と比較して予後不良であった.
    以上より,RVHを認める症例はより重症のHCMと考えられ,本症患者では詳細な右室のエコー検査によるRVHの評価が重要と考えられる.
  • 田村 朗, 土井内 純治, 岡山 英樹, 越智 直登, 児玉 光司, 末次 正治, 本田 俊雄, 浜田 範子, 野本 良一, 赤松 明, 城 ...
    1992 年24 巻3 号 p. 274-279
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1983年2月から1989年11月末までの約7年間に,当院に入院した解離性大動脈瘤51症例の治療法とその予後について検討した.その内訳は男性28例(平均年齢58.9歳),女性23例(66.6歳)であり,平均年齢は女性の方が高齢であった.DeBakey分類では,I型:29%,II型:14%,III型:57%で,III型が多いことが特筆された.急性期合併症はI+II型に心嚢内への出血や大動脈弁逆流が多く,III型には胸腔内または縦隔内への出血が多かった.また,全対象例の1カ月後の生存率はI+II型:59%,III型:83%であった.I+II型の1カ月後の生存率は内科的治療群:54%,外科的治療群:67%であり,外科的治療群の方で高かったが,有意差はなかった.緊急手術を施行した例はI+II型:41%,III型:24%であり,手術の適応がありながら術前に合併症により死亡した例が多かった.1カ月以上生存例のみの慢性期予後(約5年間)はDeBakeyI+II,III型ともに生存率90%以上で良好であった.
  • 小林 延行
    1992 年24 巻3 号 p. 280-288
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    初回急性心筋梗塞(AMI)26例を対象とし,予後規定因子といわれる慢性期左室機能,梗塞サイズおよび左室拡張と経時的な血清ミオシン軽鎖I(ML-I)値との関係について検討した.AMI発症後平均25日に施行した左室造影にて求めた左室駆出率(EF),梗塞周囲径(%ACS)をそれぞれ左室機能,梗塞サイズの指標とし,左室拡張終期容積係数(EDVI),左室収縮終期容積係数(ESVI)を左室容積の指標とした.次いで,左室拡張の指標としてEDVIとともに,正常例の20%以上のEDVIを示した例をD群,20%以下の例をND群とし左室拡張程度を求め,両群でML-I値を比較検討した.ML-Iの測定はradioimmunometri cassay法にて行った.ML-I最大値は発症後平均6日後に得られEF,%ACS,EDVI,ESVIとに良好な相関関係(それぞれr=-0.71,r=0.65,r=0.81,r=0.85)を認めた.ML-I 24時間値にても同様に相関関係(それぞれr=-0,69,r=0.60,r=0.72,r=0.75)を認めた.ML-I最大値,ML-I 24時間値のいずれもD群でND群より有意に高値を示した(それぞれp&lt;0.01).またD群でML-I最大値≧20ng/mlを示す例,ML-I 24時間値>5ng/mlを示す例はそれぞれ83%(10/12例),100%(11/11例)であった(D群12例中24時間値が明らかでない1例を除外)。ML-I 24時間値はML-I最大値と同様に,慢性期左室機能,梗塞サイズ,左室拡張を反映するが,ML-I 24時間値はML-I最大値に比べ発症後,より早期における簡便な予後推定の指標と成り得ることが示唆された.
  • 矢崎 義雄
    1992 年24 巻3 号 p. 289-290
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 数間 紀夫, 伊藤 けい子, 多田羅 勝義, 李 慶英, 浅井 利夫, 村田 光範
    1992 年24 巻3 号 p. 291-295
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は日齢12日男児.日齢12日に不整脈が出現したため,心臓病学的検査を施行した.心電図により心房性不整脈と診断した.心エコー図で,右房側に大きく突出した心房中隔瘤を認めた.房室弁の異常や他の心奇形の合併はなかった.1カ月検診時には,洞調律となり,心房中隔瘤も消失していた.その後,1歳に至るまで心房中隔瘤の出現はない.本例は,心房性不整脈を伴った心房中隔瘤が短期間に消失したというまれな症例である.
  • ドプラ法による冠血行動態の検討
    竹下 聡, 古田 裕子, 板岡 慶憲, 佐伯 文彦, 一色 高明, 山口 徹
    1992 年24 巻3 号 p. 296-301
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左冠動脈肺動脈起始異常症(BWG症候群)は先天性心疾患の0.24~0.46%とされる極めてまれな疾患である.我々はドプラ法にて冠血行動態を検討し得た本邦最高齢のBWG症候群の1例を経験したので報告する.
    [症例]58歳,男性.心電図にて陳旧性前壁中隔梗塞と診断され精査入院となった.
    心エコー図所見:左冠動脈は検出し得ず.大動脈前方に拡張した右冠動脈を認めた.左室前壁から一部側壁にかけて壁菲薄化,壁運動低下が認められた.また,肺動脈主幹部の右肺動脈分岐部近位側へと連続する異常構造物が認められた.ドプラ心エコー図では拡張した右冠動脈の入口部血流は連続性に収縮期優位に認められ,収縮期最大流速は125cm/secであった.異常構造物内には肺動脈主幹部へと向う連続性の拡張中期~終期優位の異常血流シグナルが認められ,その拡張期最大流速は75cm/secであった.
    心臓カテーテル検査,冠動脈造影所見:選択的右冠動脈造影では,発達した側副血行を介し肺動脈に異常起始する左冠動脈が逆行性に造影された.肺体血流比は1.6,左-右シャント率は36%であった.
    肺動脈へのシャント・シグナルから推察される異常起始左冠動脈への側副血行は非常に発達しているものと思われ,本例の長期生存に合致する所見であった.ドプラ法は本症の診断および側副血行の発達度の推定に有用と思われた.
  • 市川 靖典, 山崎 亨, 林 正人, 高田 幸浩, 本山 隆章, 山西 淳司, 田尻 英一, 古田 豊, 本岡 龍彦
    1992 年24 巻3 号 p. 302-308
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で,平成2年2月,寒冷刺激で胸部圧迫感を自覚し,6月より増悪したため入院した.安静時心電図は異常なく,発作時およびtreadmillではV4~6でST低下を,過呼吸負荷ではaVLでST上昇とII,III,aVFでST低下を認めた.運動負荷201T1心筋シンチグラムでは後側壁に一過性の集積低下を認めた.冠動脈造影では左右冠動脈は右バルサルバ洞にある共通の冠動脈口より派生しており,主幹部は極めて短く,左冠動脈は大動脈と肺動脈の間を走行した後,前下行枝と回旋枝に分岐しており,Smith type 2,Sharbaugh type 2bの右単冠動脈症と診断した.また,有意狭窄が認められなかったため,acetylcholine(Ach)によるspasmの誘発を行った.右冠動脈内にAch20μg注入後,胸部圧迫感とともにII,III,aVFでST上昇し,末梢で完全閉塞を認めた.さらに左冠動脈内にAch100μg注入後,同様に前胸部誘導でST上昇を呈し,前下行枝,回旋枝に著明なdiffuse spasmを認めた.
    単冠動脈症は近年,突然死や心筋梗塞の合併が多いことで再認識され,冠動脈造影の普及に伴い報告例も散見される.しかし,本症はその特性上,単冠動脈の起始部にspasmの生じる危険性があり,spasmを誘発し証明しえた報告は極めてまれで貴重な症例と考えられたので報告する.
  • 佐藤 元彦, 長根 忠人, 井門 明, 加藤 淳一, 小野寺 壮吉
    1992 年24 巻3 号 p. 309-314
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は大動脈炎症候群によると思われる左冠動脈主幹部完全閉塞例を経験したので報告する.症例は58歳男性,職場検診で心電図異常を指摘され当科受診した.明らかな自覚症状は認めなかったが,大動脈壁に小石灰化巣が散在し両側鎖骨下動脈,左冠動脈に狭窄・閉塞病変を認めた.左冠動脈は入口部で完全閉塞しており,発達した右冠動脈からの良好な側副血行を介して造影された.心電図上は左室肥大を認めるのみで,左心室造影も正常であった.大動脈炎症候群による冠動脈病変は,その約10%に見られ近位部に多いとされるが,一度閉塞すれば重篤な症状を呈する左冠動脈主幹部病変の慢性完全閉塞例はきわめてまれである.また,本例では明らかな狭心症状の既往はなく,無症候性に左心機能を何ら障害することなく完全閉塞に至ったと考えられ非常に興味深い.このような例は我々が調べた範囲ではいまだ報告されていない.さらに,左冠動脈主幹部病変は外科的治療の絶対適応とされているが,無症状で安定した冠血行動態が得られ心機能が保持されているこのような場合は,左冠動脈主幹部病変でも一定期間内科的治療も考慮されるべきであると思われた.
  • 外村 洋一, 萩原 穂並, 木村 義博, 木村 忠司, 徳部 浩司, 早野 明子
    1992 年24 巻3 号 p. 315-320
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.主訴は動悸,眩暈.発作性上室性頻拍症の診断を受け精査入院となる.頻拍発作時,塩酸ベラパミル静注で2:1の房室ブロックを呈し,P波のレートは若干減少したものの心房頻拍は持続した.塩酸プロカインアミド400mg静注で6.4秒の洞停止後,洞調律となった.塩酸プロパフェノン450mg/日を内服させると,頻拍発作は投与前より頻回となり持続時間が長くなった.電気生理学的検査では,無負荷時の洞,および房室結節機能は正常,心房頻拍は誘発できなかったが,塩酸プロパフェノン300mg内服後,洞結節回復時間の著明な延長と頻拍発作が誘発された.最早期興奮部位は高位右房で,発作時のP波と洞調律時のP波の形は体表面心電図上異なっており,本頻拍は心房内リエントリーによると考えられた.自覚症状,薬剤により洞停止あるいは頻拍発作をきたすことより恒久ペースメーカーを植え込み,抗不整脈薬を併用し,現在良好な経過を得ている.
    本例は抗不整脈薬の投与により洞機能障害と1発作性心房頻拍が顕性化したproarrhythmiaの症例であり,電気生理学的検査時,塩酸プロパフェノン投与により両不整脈が誘発された.
    頻拍性不整脈発作の停止,および予防目的での抗不整脈薬投与が,かえって危険な不整脈を誘発する場合があることを示す症例であった.
  • 勝間田 敬弘, 大越 隆文, 冨澤 康子, 江郷 洋一, 三枝 広文, 井口 信雄, 内海 素子, 中川 真澄, 小林 秀樹, 加藤 辰也, ...
    1992 年24 巻3 号 p. 321-325
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血栓閉鎖型のStanford A型急性解離性大動脈瘤に対する上行大動脈人工血管置換術施行中に,致死的な肺塞栓症を生じた稀有な1例を経験した.患者は,発症後11日目に大動脈造影の際の穿刺側下肢に深部静脈血栓症を生じていたが,同時に起きた動脈瘤の切迫破裂のために,血栓溶解,抗凝固療法が行えないまま手術となった.本例の深部静脈血栓症の発症背景としては,安静臥位,カテーテル検査後の穿刺部の圧迫,また,深部静脈血栓の遊離と肺塞栓症の発症背景としては,術直前の降圧を目的とした血管拡張薬の大量投与,手術に伴う体位変換など,動脈瘤の治療に付随する処置が要因となっていた事が考えられた.今後,深部静脈血栓症を有し,血栓溶解,抗凝固療法が行えない患者に手術を行う際には,予め,下大静脈内filterの挿入を行うなどの予防策が必要と考えられた.また,解離性大動脈瘤など,安静臥床が強いられる疾患を手術する場合,術前より下肢高挙,弾性靴下の装着,下肢マッサージ等の深部静脈血栓症に対する機械的予防策を行う必要があると思われた.さらに,術中肺塞栓が疑われた場合には,迷わず肺動脈造影を行い,可能な限り,体外循環下に塞栓子の摘除を行う事が肝要と思われた.
  • 萩原 誠久, 増田 宏, 庄田 守男, 入澤 宏, 細田 瑳一
    1992 年24 巻3 号 p. 328-332
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋細胞ではカテコールアミン等のneurotransmitterによる膜電流の調節機構は,その細胞内signal-transductionに及ぶ範囲まで詳細に解明されるようになった.しかし,他の細胞では,これら薬物以外に機械的刺激により膜電流が変化することが知られている.心筋細胞における機械刺激または伸展刺激による膜電流の変化については報告が少ない.今回は,家兎単一心房筋および洞結節細胞を用いて伸展刺激に伴う電流の変化を検討した.単一心筋細胞にパッチ電極を用いてwhole-cell voltage clampを行い,電極を介する陽圧負荷または,低浸圧外液を灌流し細胞膜に伸展刺激を加えると,著明な膜のコンダクタンス増大が認められた.伸展により誘発される電流は時間非依存性で著明な外向き整流特性を示した.この伸展誘発性電流は,逆転電位が細胞内Cl濃度の10倍の変化により約60mV変化し,外向き電流が低Cl外液により減少,またClチャネルブロッカーとして知られるDNDS,SITSおよび9ACにて特異的に抑制されることからCl電流であると考えられた.
  • 曽我部 正博, 成瀬 恵治, 曽我 浩之
    1992 年24 巻3 号 p. 333-343
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近,広範な細胞種において,膜の伸展により活性化される新しい型のイオンチャネル(Stretch Activated Channel,SAチャネル)の存在が明らかになってきた.このチャネルのイオン選択性,コンダクタンス,開閉速度はバラエティに富みその生理的役割が注目されている.現在SAチャネルを巡って2つの解決すべき基本課題がある.1つはチャネル活性化の分子機構であり,もう1つは機械刺激に対する細胞の応答過程における役割の解明である.ここではこれらの課題に対する最近の我々のアプローチについて紹介する.
    SAチャネルの性質はパッチクランプ電極内に陰圧を与えて微小なパッチ膜を伸展したときに生じる単一イオンチャネル電流を計測することによって研究されてきた.ところがパッチ膜の形状観測が困難なためにSAチャネルの真の刺激である膜張力の評価ができず,最も基本的な性質である刺激-応答特性を解析することができなかった.この困難を克服するために我々は,パッチクランプ用超高倍率ビデオ顕微鏡を開発し,膜張力とSAチャネルの活動を同時測定することに成功した.これにより,膜機械特性とSAチャネルの機械刺激応答特性を分離することも可能になった.一方,細胞全体に再現性よく機械刺激を与えることも長らく難しい問題であった.我々は血管内皮細胞をシリコン膜上に培養し,この膜を伸展して刺激する方法を用い,このときのSAチャネルの活性化を細胞内Ca2+の蛍光測光を通して評価することに成功した.これらの研究によりミクロ(単一チャネル)とマクロ(細胞)の両レベルにおいて,定量的機械刺激を与えながらSAチャネルの応答を解析する端緒が開かれた.
  • 第1テーマ:伸展とイオンチャネル
    1992 年24 巻3 号 p. 344-360
    発行日: 1992/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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