心臓
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18 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 河村 剛史, 柴田 仁太郎, 稲垣 弥寿子, 広沢 弘七郎
    1986 年 18 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    雑種成犬8 頭を用いて, 左室ペーシング, 心房- 心室順次刺激方式にて右室および左室ペーシングを行い,各ペーシング方法での左室収縮時間(STI)を比較し,さらに心室興奮伝播時間との関連も検討した.
    その結果,左房ペーシングと比べて,心室ペーシングの左室前駆出期(PEP)が延長するのは主にQ-Mc時間(心室の興奮の開始から僧帽弁閉鎖までの時間)の延長によるもので,左室等容収縮時間(ICT)の延長は軽度であった.Q-Mc時間は各心室ペーシング部位からの左室興奮伝播時間に左右されたのに反して,ICTは各心室ペーシング部位間に有意差はなかった.左室駆出時間(ET)は心室ペーシングにより軽度短絡したが,各ペーシング部位間では有意差はなかった.
    以上のことから,心室ペーシングにおけるPEP/ETの延長およびペーシング部位の違いによるPEP/ETの変動は,主にQ-Mc時間の違いによるものであって,心室の興奮開始から左室の興奮終了までの時間を反映したものにすぎない.
  • 谷本 欣徳, 小林 百合雄, 林 研二, 桝田 智之, 松田 泰雄
    1986 年 18 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1979年より1984年12月末までに22例の左内胸動脈(LIMA)による冠動脈バイパス手術を経験した. 本邦人ではLIMA はやや細く, free - flow も平均62.4mlと少ない傾向にあったが,そのために術後に狭心症が残存したり,ECGにて虚血性変化を呈した症例はなかった.LIMAの術後早期の開存率は84%であったが,技術の向上とともに改善してきており最近では多枝バイパス手術にもLIMAを使用し良好な開存をえている.
    本邦人へのLIMAの使用は,従来,細すぎて十分な血流量がえられない可能性があること,技術的に困難なことのためにあまり普及していないが,われわれの経験ではさほど問題ではなく技術的な面を向上させれば良好な成績を期待することができる.
    若年者や,糖尿病,高脂血症の危険因子が高い症例では,大伏在静脈グラフトの遠隔期における動脈硬化の進展を考えるとLIMAを積極的に使用すべきと思われる.
  • 東 秋弘, 足立 晴彦, 古川 啓三, 勝目 紘, 中川 雅夫, 伊地知 濱夫
    1986 年 18 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁狭窄症(以下MS)は,左室流入障害により低血圧の場合が多いものと考えられるが,今回,MSと高血圧の合併およびその成因としての腎梗塞の関与を検討した.
    昭和57年度外来初診者1,333名の血圧を対照として,61例のMSの血圧と比較したところ各年齢階級において,MS群は対照群の血圧に比し,低値を示したが,MSの血圧に関しては,さらに検討を要するものと思われた.
    MS61例中17例にはCTおよび腎シンチグラムを施行し腎梗塞の有無と血圧値を比較検討したところ,17例中5例(29%)に腎梗塞を認め,その血圧の平均(149±22mmHg/88±8mmHg)は,非梗塞群12例の血圧(123±13mmHg/76±7mmHg)より有意に高値を示した.また正常血圧(収縮期圧140mmHg以下かつ拡張期圧90mmHg以下)を呈したMS11例中には腎梗塞を認めなかった.17例中11例に安静時血漿レニン活性を測定したが,梗塞群は非梗塞群に比し低値を示したが,腎梗塞とレニンの関係はなお不明な点が多く,今後,さらに検討を要する.
    腎梗塞により高血圧を来す機序は不明だが,高血圧を呈するMSは,腎梗塞合併により昇圧している可能性を考慮し,検索すべきものと考えられた.
  • 青墳 裕之, 博田 良, 石田 貴和, 弓削 一郎, 香西 襄, 浅沼 勝美
    1986 年 18 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    新生児期より心不全症状を呈した心不完全型心内膜床欠損症の患児に,1歳11カ月にて内修復術を施行したが,術後早期に失った.剖検にて,僧帽弁副組織による大動脈弁下狭窄症の合併が発見され,主な死因と考えられた.僧帽弁副組織による大動脈弁下狭窄症の報告は少なく,特に不完全型心内膜床欠損症との合併は,本例が2例目であった.本例の副組織は,諸家の報告例を検討したところ閉塞の状況および付着部位に特徴をもっていた.発生学的には心内膜床の発生異常との関連が示唆された.臨床データを再考すると,本症は術前に診断可能な疾患であり,根治可能な疾患と考えられた.
  • 帖佐 信行, 森下 靖雄, 上原 景光, 丸古 臣苗, 平 明
    1986 年 18 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動脈管開存症(PDA)は先天性心疾患の中でも高頻度にみられるが,同胞発生率は低い.PDAの1人罹患後の同胞発現率は文献的には2%前後であるが,2人罹患後の同胞発生になるときわめてまれである.今回われわれは同一家族3同胞に発生したPDAを経験したので文献的考察を加えて報告した.第1子は4歳時,第2,3子はすでに肺高血圧症を呈していた2歳時に当科において動脈管結紮術を受けた.
    第1子は胸骨左縁第2肋間に連続性雑音を聴取したが,第2,3子は2歳時,同時に収縮期雑音のみ聴取し,心カテ検査でもPp/Psはそれぞれ0.63,0.78と高度の肺高血圧症を呈していた.3症例ともPDA以外の心・血管系の合併奇形はなく,母親の妊娠期間,分娩経過中とも異常は認めていない.
  • 紀 幸一, 長尾 俊彦, 清水 明, 米花 正晴, 重信 雅春, 村上 泰治, 名和 清人, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1986 年 18 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    VSD閉鎖後に,僧帽弁逸脱症候群(MVP)を併発し,さらにそれが僧帽弁閉鎖不全症(MR)と感染性心内膜炎(IE)を合併した手術治験例を経験したので報告する.
    症例は32歳男性で,γ-Streptococusによる敗血症を呈していた.術前に断層心エコー図にて僧帽弁後尖のvegetationを検出した.vegetationを有するIEとして,抗生剤療法を続けたが,その途中にてアナフィラキシー様の重症薬物アレルギーを併発したため,2度にわたり手術を延期せざるを得なかった.機をみて,Bjork-Shiley弁にて僧帽弁置換術を施行したところ,解熱し炎症所見もおさまり経過は良好であった.
    最近,ASD二次口欠損をはじめとする種々の先天性心疾患に,MVPの合併する例のあることが注目されている.さらにまた,MVPにIEが併発することも認識されてきたが,本邦では報告例がまれである.IEの手術適応,手術時期などについても考察を加えた.最近は,感染の活動期であっても積極的に弁置換術を施行すべきであるとの意見が多い.
  • 宮脇 富士夫, 水野 明, 須藤 憲一, 河野 匡, 浅野 献一
    1986 年 18 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性.肺動脈弁閉鎖不全,冠状動脈肺動脈瘻にて肺動脈弁置換(SJM25A) および瘻閉鎖を施行した.術後約14日目頃から収縮期および拡張期雑音を聴取するようになり,弁透視で弁葉の動きが制限されていることが判明した.弁葉の可動制限の経時的変化などから血栓弁による人工弁機能不全と診断し,救急手術準備下でカテーテルによる血栓除去術を試みた.結局バーマンカテーテルの先端を弁葉の横に置き,バルーンパンピングを繰り返すことによって弁の動きが改善した.操作直前,直後にウロキナーゼ60万単位を肺動脈内に投与し,以後1週間にわたり連日30万単位のウロキナーゼを点滴静注した.ウロキナーゼ投与後の弁透視で弁葉の動きは完全に回復し,元気に退院した.右心系の血栓弁には,救急手術準備下にバルーンカテーテルによる血栓除去術とウロキナーゼ大量療法を試みる価値があると思われる.
  • 鷲尾 正彦, 入沢 敬夫, 小林 稔, 星永 進, 青山 克彦, 島崎 朋司, 倉岡 節夫, 立木 楷, 早坂 真喜雄, 五十嵐 秀, 安井 ...
    1986 年 18 巻 2 号 p. 179-187
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性で,不完全型Behcet瘤に罹患していた.昭和53年5月頃より左心不全症状を呈し大動脈弁閉鎖不全症と診断され,その時すでに手術適応と考えられていたが,手術を拒否していた.昭和58年7月はじめ,強度の左心不全に陥り緊急手術を行った.手術では右冠尖,左冠尖の穿孔が認められ,また左Valsalva洞が大動脈弁輪下の左室心筋内の嚢状瘤と連続していた.S.J.M.弁による大動脈弁置換術を行い,経過良好であったが術後76日目に家庭で急死した.
    剖検により左室心筋,大動脈弁輪,上行大動脈から末梢動脈に非特異性炎症像がみられ,これら一連の病変はBehcet病による炎症性変化と考えられた.
    Cardio-Behcetはまれな疾患であるが,自験例のごとく弁膜疾患を伴ったものは現在までに自験例を含めて12例しか報告がなく,またValsalva洞に動脈瘤を形成したものは4例で,後者はすべて本邦報告例であった.鑑別診断についても若干の考察を加えた.
  • 倉橋 佳英, 三木 陽子, 宮内 吉男, 中津 忠則, 松岡 優, 宮尾 益英
    1986 年 18 巻 2 号 p. 188-195
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    患者は7歳男児で,臨床症状なく,既往歴,心エコー,心臓カテーテル検査および電気生理学的検査により心奇形および冠動脈病変のない特発性sicksinus syndoromeと診断された.心電図にて洞房ブロック,完全右脚ブロック,左軸偏位を認め,24時間心電図記録における最高洞停止時間および最低心拍数はそれぞれ2.2 秒および35/分であり, Ruben -stein らのgroupII に属する. ヒス束心電図にてP -A 間隔は25msec と正常なるもA-H 間隔,H-V 間隔はそれぞれ160msec,60msecと延長していた.さらに,overdrive suppression testにて洞結節回復時間は2,380msecと延長を示した.またQRS間隔は加齢とともに延長し,心室内伝導障害が進行しているものと考えられた.一方,運動負荷,硫酸アトロピン負荷,イソプロテレロノール負荷にて洞房ブロックは消失し,心拍数増加は良好であった.以上より,現在のところpacemakerの適用はないと考え,外来にて経過観察中である.
  • 星野 由美子, 青木 定夫, 山添 優, 矢沢 良光, 荒井 裕, 柴田 昭
    1986 年 18 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性,治療抵抗性の心不全として当科に入院した.低血圧,心拡大を認めたが心臓聴診上異常なかった.心臓以外では軽度の出血傾向を認めたのみで,巨舌,肝脾腫,神経症状,消化器症状,蛋白尿等の他の臓器障害は明らかでなかった.心電図で低電位差,心エコー図等から左室の拡張障害が考えられたこと,低γ-グロブリン血症を認めたことが手がかりとなって診断に至った.本例は転院後3カ月で心不全の進行と心室性不整脈により死亡した.剖検では心筋線維周囲と全身の小血管壁に著明なアミロイドの沈着を認めた.
    本症例にみられた心臓障害の経過および免疫グロブリン異常は原発性アミロイドーシスの診断の手がかりとして重要と思われる.
  • 馬殿 正人, 栗本 透, 唐川 正洋, 東 伸郎, 西原 祥浩, 右馬 隆之, 松浦 隆, 稲田 満夫, 延吉 正清, 伴 敏彦
    1986 年 18 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.22歳で白内障の手術.24歳より白髪を認め,35歳頃より難治性皮膚潰瘍を両肘関節伸側および左外踝部に認めた.40歳になり,労作時胸部絞扼感を自覚.心電図検査にてST変化を認め,運動負荷試験では陽性であったため,狭心症を疑われ精査のため入院. 兄2人に低身長, 若年性白髪を認める.他の兄1人は急性心筋梗塞にて死亡.入院時老人様顔貌,低身長,強皮症様皮膚変化,嗄声を認めた.入院後検査で,糖代謝異常,アキレス腱部石灰化が認められWerner症候群と診断された.冠動脈造影検査では,左冠動脈主幹部に90%狭窄が存在したが,他の冠動脈にはさしたる動脈硬化性病変は認められなかった. その後本例は, A - Cbypass術を受け,安静時心電図は正常化し狭心痛も消失,そして運動負荷試験も陰性となった.本症は,皮膚病変や白内障のため,皮膚科や眼科で加療されることが多い.また内科でも内分泌学的検索にとどまることが多い.しかし死因として,心筋梗塞が重要な疾患であり,また剖検でも冠動脈に異常を認め,心筋梗塞を合併した比率は高い.したがって内科的に心臓カテーテル検査や,冠動脈造影を行うことが予後を決定する上で重要と考えられる.しかし十分に検索された症例は少なく,さらにそれに基づいてA-C bypass術を行った症例の報告はない.われわれの症例は,Werner症候群で狭心症あるいはそれを疑われる症例では,積極的な循環器科検索が必要であることを示唆するものである.
  • 丸山 啓子, 秋元 かつみ, 西本 啓, 岩原 正純, 井埜 利博, 高橋 寛, 金子 堅一郎
    1986 年 18 巻 2 号 p. 210-217
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎に脳動脈瘤を合併し,瘤の破裂により,頭蓋内出血をおこした2症例を経験した.症例1は3歳女児.僧帽弁閉鎖不全症に感染性心内膜炎を合併,治療経過中に突然痙攣をおこした.頭部CTスキャンにより頭蓋内出血と診断,頭部血管造影にて,右中大脳動脈末梢部に,動脈瘤を認めた.症例2は14歳女児.6歳時に心室中隔欠損症の根治手術をうけている.術後8年後に,頭痛,視力障害を訴え,意識障害を呈した.CTスキャン・脳血管造影にて後大脳動脈瘤の破裂による頭蓋内出血と診断した.2症例とも動脈血培養にて,Streptcoccus sanguisが陽性であった.強力な抗生物質の大量療法の後,血腫除去術および動脈瘤結紮術を施行し,救命しえた.
    感染性心内膜炎の合併症として脳動脈瘤の頻度は少ないが,致命率はきわめて高い.治療法については,一定の見解はないが,本症例のように積極的な脳外科手術により救命しうるものと考え,文献的な考察を加えて報告した.
  • 運動負荷法との対比
    金谷 透, 殿岡 一郎, 佐藤 聡, 山口 佳子, 星 光, 池田 こずえ, 立木 楷, 安井 昭二, 駒谷 昭夫
    1986 年 18 巻 2 号 p. 218-224
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    虚血心におけるジピリダモール(D)負荷radionuclideventriculography(RNV)の診断的意義を明らかにする目的で正常群5名,虚血性心疾患々者33名を対象として,D負荷RNVを施行し,従来からの運動負荷RNV,D負荷体表面電位図(MAP)と比較検討した.
    正常群においては全例,D負荷時ならびに運動負荷時に左室駆出率(EF)は増加した.一方,多枝病変例,側副血行路の発達している群ではD負荷時にEFは安静時に比し有意に低下した.D負荷時に惹起された壁運動異常部位と運動負荷時のそれらはよく一致した.運動負荷時のpressure rate productはD負荷時のそれに比し有意に高く,運動負荷とは異なる機序で壁運動異常が生ずると考えられた.虚血性心疾患々者25名において,D負荷と運動負荷による虚血反応の出現頻度はD負荷時の方が高い傾向を示した(各々25例中20例,17例).またD負荷MAPでのST低下の広がりと安静時に対するD負荷時のE F の変化分(ΔEF) は有意の負の相関を示した. 本法は運動負荷法の短所を補い,冠動脈病変重症度評価ならびに左室予備能評価に有用な検査であると考えられた.
  • 鯵坂 隆一, 飯田 要, 松本 龍馬, 藤田 享宣, 飯田 啓治, 杉下 靖郎, 伊藤 巖, 武田 徹, 畠山 六郎, 外山 比南子, 秋貞 ...
    1986 年 18 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    イソプロテレノール(ISP)負荷心プールシンチグラフィー(RI)の虚血性心疾患診断上の有用性につき,運動負荷RIと対比して検討し左.
    対象は,冠動脈造影上,有意(≧75%)狭窄を認めた冠動脈疾患(CAD)10例,冠動脈に有意狭窄を認めない狭心症例(VA)9例(うち5例は冠攣縮性狭心症,4例はX症候群)および非定型的胸痛例(NC)7例の計26例であった.運動負荷は臥位エルゴメータを用い,ISP負荷はISPを漸増静注し,原則として自覚的最大負荷を行い, 負荷前後で心R I法により各種心機能指標を測定した.
    結果:運動負荷においては,CAD例とVA例では左室拡張終期容量(EDV)は増加し,左室駆出分画(EF)は不変であったが,NC例ではEDVは不変であり,EFは増加した.一方,ISP負荷においては,CAD例では運動負荷と同様,EDVが増加し,EFは不変であったが,VA例はNC例と同様,EDVは不変で,左室収縮終期容量(ESV)は減少し,EFは増加した.局所壁運動異常はCAD例では両負荷とも同様に発現したが,VA例では運動負荷において一部の症例で発現したが,ISP負荷では全例,正常壁運動を呈した.
    以上より,イソプロテレノール負荷心プールシンチグラフィーは,1)運動負荷の施行困難な虚血性心疾患の左心機能評価法として,2)冠攣縮の関与する虚血性心疾患の診断法の1つとして,臨床的に有用であると考えられた.
  • 千田 道雄, 米倉 義晴, 小出 治敏, 佐治 英郎, 玉木 長良, 野原 隆司, 神原 啓文, 河合 忠一, 小西 裕, 伴 敏彦, 鳥塚 ...
    1986 年 18 巻 2 号 p. 233-240
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    13N-アンモニア(13NH3)を用いて安静時および運動負荷時の心筋血流分布を評価し,18F-フルオロデオキシグルコース(18FDG)を用いてブドウ糖代謝の分布を評価した.心筋梗塞の症例では,血流の低下している梗塞域の中に,運動負荷によって血流がさらに低下し,しかも18FDGの強い集積を認める部分があり,viableな心筋細胞の残存が示唆された.ACバイパス手術後は,運動負荷による血流低下がなく,18FDGの集積も軽減し,同時に心機能の改善もみられ,虚血の改善を示していると考えられた.本法は心筋の虚血の状態を血流のみならずエネルギー代謝の面からも評価することができ,虚血性心疾患の精査と病態生理の研究にきわめて有用であると考えられた.
  • 野原 隆司, 神原 啓文, 河合 忠一, 米倉 義晴, 千田 道雄, 佐治 英郎, 鳥塚 莞爾
    1986 年 18 巻 2 号 p. 241-248
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    13NH3-positron emission computed tomography (PET) の臨床的意義について, 201T1 - single photon emission computed tomography(SPECT)と対比し,検討した.PETを正常人6名,SPECT 10名を対象に,運動負荷および安静時のcircumferential profile curve(CPC)を描き,平均値±2SDを出し,それ以下の領域を異常域とした.正常者では,運動時および安静時とも,PETがSPECTよりも平滑なnoiseの少ない深部減衰の少ないCPCとして描き出された.前下行枝病変を含む狭心症患者9名につき,上記の判定法でCPCから虚血域の広さ(%C)と,領域を検討した.%CはPETとSPECTはr=0.79の相関を得たが,PETがつねに大きく描出された.これは,負荷時の終点におけるダブルプロダクトで補正しても同様であった.また虚血領域の検討では,PETがより冠動脈灌流域に一致した虚血域を示し,特に中隔基部を含む前下行枝近位部の冠動脈病変検出のaccuracyは高かったが,SPECTとの有意差は出なかった.アンモニアPETは,虚血域の正確な同定,評価により有用であると考えられた.
  • 西川 潤一, 吉川 宏起, 大嶽 達, 飯尾 正宏, 吉本 信雄, 杉本 恒明
    1986 年 18 巻 2 号 p. 249-256
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    正常5名,心筋梗塞症13名,肥大型心筋症8名の心電図同期MRIを撮影した.正常例では,左心室壁は均一な厚みをもち,T2緩和時間は,平均45.8±10.2msecであった.心筋梗塞症では,陳旧性梗塞巣は壁の菲薄像として描出され,T2緩和時間は平均42.9±11.1msecであり,新鮮な梗塞巣は壁厚の異常はみられずT2緩和時間は平均61.7±20.1msecであった.肥大型心筋症では,壁の肥厚は横断・矢状・冠状断層像で盲点なく描出されたが,T2緩和時間は,同一症例でも8例の平均でも左心室壁の各部位の差はみられず,心室壁の平均のT2緩和時間は4L7±10.2msecであった.
    心電図同期MRIでは,心筋梗塞症では新鮮な梗塞巣と陳旧性梗塞巣との鑑別が可能であり,肥大型心筋症では,T2緩和時間が正常心筋と差異はみられないものの肥厚部の立体的な把握が容易であり,MRIは,両疾患に対し有用な画像診断法と考えられる.
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