心臓
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[症例]
  • 五味 遥, 関 満, 森田 裕介, 鈴木 峻, 古井 貞浩, 岡 健介, 松原 大輔, 佐藤 智幸, 田島 敏広
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 249-255
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     心房中隔欠損症(atrial septal defect;ASD)では肺高血圧症を合併する症例が存在するが,小児例での報告は少なく,治療方針の決定に苦慮することが多い.症例は10歳男児.小学4年の学校心臓検診で不完全右脚ブロックを指摘され二次孔型ASDと診断された.欠損孔径は23×16 mm,肺高血圧症の合併が判明し,心臓カテーテル検査を施行した.肺体血流比(Qp/Qs)1.6,肺血管抵抗値(Rp) 6.1 um2,平均肺動脈圧(mPAP)38 mmHgと特発性肺動脈性肺高血圧症の合併を否定できず,一期的ASD閉鎖はリスクが高いと判断,外科的ASD部分閉鎖術および肺生検を行った.術後からマシテンタンとタダラフィルを開始した.

     術後6カ月の心臓カテーテル検査でQp/Qs 1.3,Rp 3.4 um2,mPAP 22 mmHgと肺高血圧症の所見は改善していたが,心臓超音波検査でASD欠損孔の短絡血流は両方向性であり,2分間の歩行でSpO2が86%まで低下したため,ASD閉鎖の判断に苦慮した.肺生検ではHeath-Edwards分類Ⅲ度,Index of pulmonary vascular diseaseは1.5と算出され,進んだ肺血管病変ではあるが可逆的であり,ASD閉鎖可能な状態と判断した.術後10カ月に経皮的ASD閉鎖術を施行,閉鎖術後1年の心臓カテーテル検査ではRp 2.5 um2,mPAP 18 mmHgと肺高血圧症の所見は改善し,現在,マシテンタンとタダラフィルを内服継続中である.肺高血圧症合併ASD小児例の治療方針は定まっておらず,ASD閉鎖時期の判断に迷うことも多い.本症例のように肺血管拡張薬への反応性に加え,肺生検による組織学的診断は治療時期決定の一助となりうる.

  • 松繁 玄曉, 宮原 克徳, 山口 聡美, 遠藤 豊宏, 諸國 元太郎, 西本 隆史, 森本 芳正, 山中 俊明, 井田 潤, 柚木 佳, 岡 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 256-260
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     症例は40歳代女性.6時間続く胸腹部痛を主訴に当院に救急搬送された.来院時はやや不穏状態であり,頻呼吸と低血圧を認めた.心臓超音波・心電図検査にて,心機能低下と房室伝導障害を認めたがST-T変化はなく,血液検査でも心筋逸脱酵素・トロポニンTは陰性であった.単純CTにて膵腫大と周囲の脂肪織濃度上昇を認め,膵炎の疑いにてICU入室とした.高用量のカテコラミン投与と補液を行うも低血圧が遷延し,動脈血ガス分析にて循環不全の増悪を認め,心臓超音波検査でもさらなる心機能低下と房室伝導障害を認めた.本人・家族に繰り返し問診を行ったところ,カルシウム拮抗薬を大量服薬したことを聴取し,塩化カルシウムとインスリン持続静注を開始したところ,血行動態の安定化と末梢循環の改善を得た.今回,診断と治療に難渋したカルシウム拮抗薬中毒の1例を経験したので報告する.

  • 渡部 真吾, 太田 栄一, 川勝 紗樹, 河本 梓帆, 山川 祐馬, 雨宮 未季, 増田 怜, 村上 輔, 山本 康人, 吉川 俊治, 鈴木 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     背景:SGLT2阻害薬は心房リモデリングを抑制しミトコンドリア機能を改善させることで心房細動の発症を抑制することが動物実験で示されている.過去の大規模試験ではSGLT2阻害薬が心房細動の新規発症を19%抑制すると報告されている.一方で肺静脈隔離術後に再発した心房細動に対するSGLT2阻害薬の有効性を示した研究はない.我々は肺静脈隔離術後に再発した発作性心房細動患者に対して糖尿病コントロールのために処方されたSGLT2阻害薬によって心房細動が抑制された症例を経験したため,ここに報告する.

     症例:75歳男性,7年前より動悸症状を認めていた.動悸時の心電図は心房細動を示しており発作性心房細動と診断された.5年前に発作性心房細動に対して肺静脈隔離術が施行されたが,4年前より動悸症状を伴う発作性心房細動が再発した.ベプリジル100 mg/日の内服を行うも症状は月に2~3回程度みられていた.2年前より糖尿病に対してエンパグリフロジン10 mg/日の内服が開始された.以降,動悸症状は消失,エンパグリフロジン開始後2年間心房細動の再発は認めていない.

     結語:肺静脈隔離術後に再発した抗不整脈薬抵抗性の発作性心房細動に対してSGLT2阻害薬が有効であった症例を経験した.

Editorial Comment
[症例]
  • 大井 正臣, 立岡 修治, 松本 和久, 村山 剛大, 吉重 祐介, 川畑 和代, 鹿島 克郎, 中村 一彦, 曽我 欣治
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 268-273
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     症例は77歳,女性.定期の経胸壁心エコー検査で左室内腫瘍を指摘されたが,腫瘍摘出術は本人が拒否したため未施行で経過観察となった.その後も無症状で経過したが,4年後の経胸壁心エコー検査で左室内腫瘍の増大傾向を認めたため,塞栓症のリスク増大を考慮し腫瘍摘出術を施行した.術前の心エコー検査では粘液腫や脂肪腫との鑑別は困難であり,病理組織診断で乳頭状線維弾性腫の診断にいたった.乳頭状線維弾性腫の発生部位は大動脈弁上が最も多く,僧帽弁も含め弁付着例が約8割を占め,左心室内発生例では左室流出路が最も多く,左室乳頭筋に発生した例は乳頭状線維弾性腫の中でも特に少ないといえる.

     本例は左室乳頭状線維弾性腫の自然経過を観察できた貴重な症例といえるが,経過中腫瘍増大がみられ,手術所見から腫瘍塞栓のリスクが高い可能性が示唆されたため,心臓腫瘍を発見した時点での早期手術の必要性を再確認した症例と考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • 蔵下 元気, 石澤 真, 宮井 翔平, 石原 優, 本条 崇行, 松永 圭司, 三宅 祐一, 大原 美奈子, 石川 かおり, 村上 和司, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     症例は70代,男性.12年前に不整脈原性右室心筋症と診断され,8年前に両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器を移植された.2週間前からの全身倦怠感を主訴に当院を紹介受診し,慢性心不全の増悪の診断で入院となった.入院時はNYHA Ⅳ度で,低心拍出症候群を呈していたことから同日よりドブタミン持続投与を開始したところ,次第に症状の改善が得られた.内服強心薬などを導入しながら慎重にドブタミンの減量を図ったが,減量過程で2度心不全が再増悪し,強心薬依存・離脱困難と判断した.患者本人が自宅療養を希望されたことから在宅強心薬持続投与へ移行することとし,一定量のドブタミン投与下では運動耐容能が保たれることから,活動範囲を維持するため携帯型輸液ポンプを使用した.病院・在宅チーム間で病状や緊急時対応,在宅環境などを十分に共有し,第116病日に自宅退院を実現し,退院後100日間で有意な症状増悪なく在宅療養を継続している.

     在宅強心薬持続投与は強心薬離脱困難な心不全患者における生活の質を維持する上で重要な選択肢となるが,実際に導入するにあたっては費用や使用薬剤において課題があった.また,全国的なニーズに対して応需できる医療機関が乏しく,今後末期心不全患者の在宅医療が普及していくためには,より充実した公的支援や地域連携体制の構築が望まれる.

Editorial Comment
[症例]
  • 大下 祐也, 入田 純, 森 弥華, 中村 真胤, 宮崎 慈大, 阿部 亜里紗, 森 英城, 太宰 康伸, 高田 泰治, 二宮 克彦, 風谷 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 282-288
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     感染性大動脈炎は稀な疾患ではあるが,進行すると大動脈瘤を形成し,死亡率が高い.症例は67歳男性,2週間続く発熱を主訴に来院した.血液検査でCRPが8.8 mg/dLと炎症反応の上昇を認めた以外,特に異常を認めなかった.CT検査では大動脈弓部周囲の脂肪織濃度上昇を認め,何らかの炎症性疾患が疑われたため,MRI検査を実施したところ,低b値MRI拡散強調画像(low-b DWI)で上行大動脈から大動脈弓部血管壁の高信号を認めた.血液培養検査にてペニシリン感受性Streptococcus mitisを検出したことから,画像所見を踏まえて,感染性大動脈炎と診断した.抗菌薬による治療開始後,炎症反応およびMRI画像所見は軽快した.感染性大動脈炎の症状は非特異的であり,早期診断は困難である.そのため,発見が遅れ感染性大動脈瘤の状態で発見されることが多い.今回,low-b DWIが,感染性大動脈炎の早期診断と,その後の治療効果判定に有用であった1例を経験した.

  • 脇山 英丘, 高橋 亮太, 加藤 大樹, 坂本 敏仁, 中井 秀和, 田中 陽介, 圓尾 文子, 大保 英文, 金田 邦彦, 横山 邦雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     症例は73歳女性.僧帽弁逆流症,三尖弁逆流症,慢性心房細動に対して僧帽弁形成術,三尖弁輪縫縮術,Maze手術が行われた.右室前面および右房に心外膜リードが装着された.退院前に心外膜リードの抜去を試みたが抵抗が強く両者とも皮膚の部位で切断した.術後17日で退院となったが2カ月後に結腸憩室炎で入院となった.その際のCTで偶然に残存右室心外膜リードが横隔膜を貫き肝外側区域に迷入していることが判明した.保存的加療後に軽快退院したが,その後のCTでリードがさらに深く肝に迷入していた.開心術後5カ月目に腹腔鏡下に肝に迷入しているリードを確認し全抜去した.術後2日目に軽快退院した.切断されたリード先端が心拍動や呼吸運動により横隔膜を穿通し肝迷入に至ったと推察された.開心術後の残存心外膜リードは近接臓器への迷入の可能性があり注意深い経過観察が必要である.

Editorial Comment
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