心臓
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21 巻, 1 号
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  • 鬼頭 義次, 小原 邦義, 川副 浩平, 小坂井 嘉夫, 藤井 尚文, 岸本 英文, 安藤 太三, 八木原 俊克, 中島 信之, 藤田 毅
    1989 年 21 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    当センターで摘出術を施行した原発性心臓腫瘍は38例で,良性腫瘍34例,悪性腫瘍4例であった.そこで本症例を中心に文献的考察を加えて報告する。
    良性腫瘍34例についてみると粘液腫33例,線維腫1例であった.良性粘液腫33例の手術時年齢は1歳から73歳,平均49歳で,男性13例,女性20例であった.発生部位は左房30例,右房2例,右室1例で,粘液腫全体の90%は左房粘液腫が占めていた.
    粘液腫に合併した房室弁異常は僧帽弁閉鎖不全13例,三尖弁閉鎖不全1例であった.粘液腫の遊離による脳血栓の合併は6例,18%に認めていたが,術後の予後は良好で遠隔期死亡を認めていない。
    悪性腫瘍についてみるとmalignant lymphoma1例,mahgnant fibrosarcoma 1例, fibroblastosarcoma1例,unclassified sarcoma1例であった.良性心臓腫瘍に比較して悪性腫瘍の予後は不良で,4例中3例は術後30日以内に死亡した.malignantfibrosarcomaの1例は術後6カ月後の現在再発を認めず健在である.
  • 心房ペーシング負荷における誘発虚血についての検討
    藤原 秀臣, 廣江 道昭, 徳永 毅, 高橋 淳, 新田 順一, 城山 暢博, 雨宮 浩, 青沼 和隆, 家坂 義人, 関 延孝, 平井 正 ...
    1989 年 21 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室圧・容積曲線(P-V曲線)は全心周期における圧と容積の関係を連続して表示したもので,左室収縮能と同時に左室拡張機能を二次元の平面上に表現する.そこで,虚血性心疾患患者に心房ペーシングを施行し,心プール法を用いてP-V曲線を求め1虚血誘発による左心機能の変化について検討した.対象は虚血性心疾患10例で,心房ペーシングは刺激頻度を90/分→110/分(control-110)→ 最大ペーシング(max)→110/分(after-110)と連続的に変化させた.誘発虚血の診断は最大ペーシング負荷時に201T1-C1を静注し,心筋断層法を用いて行った。その結果,再分布を認めたものを虚血誘発群,認めなかったものを虚血非誘発群とした.P-V曲線は自動左心室輪郭描出法より求めた左室容積曲線と同一時間内の20心拍より求めた平均左室内圧曲線を心電図R波に同期させて求めた.その結果,いずれのペーシングレベルにおいても駆出特性には両群間で有意差を認めなかった.しかし,虚血誘発群において,最大充満率は低値を,左室拡張終期圧は高値を呈した.拡張期P-V曲線は虚壷非誘発群では左下方へ偏位したが,虚血誘発群では上方ないし右上方への偏位が明らかで,complianceの低下が示唆された.本法は反復施行が容易で,各種負荷試験による心機能の変化を評価するのに有用である.
  • 心機能を中心に
    中沢 誠, 奥田 浩史, 柴田 利満, 高尾 篤良
    1989 年 21 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性完全房室ブロック10例,高度房室ブロック1例を対象に運動負荷に対する反応を調べた.全例でSheffield法によるtreadmill負荷を行い,2例で耐容時間の低下を認めた.このうち1例は心房拍数の上昇に比べ心室拍数の上昇が劣った.5例で心カテ中にエルゴメータ負荷を行った.負荷による心拍出量と酸素消費量の増加の関係は全例正常であった.しかし,肺動脈襖入圧の上昇と一回拍出量の増加量との関係では04例で正常範囲内であったが,1例で肺動脈懊入圧上昇のため正常域を脱した.全例で左室駆出率は上昇したが,その大きさは1例で0.12で,他は0.02~0.03であった.以上より,本症では心室拍数の反応の悪い例の耐容時間が短く,多くの例で潜在的な心機能の低下ないし予備力の不足の存在が示唆された.
  • 大橋 秀隆, 山口 眞弘, 細川 裕平, 大嶋 義博, 鄭 輝男, 三戸 壽, 橘 秀夫, 小川 恭一
    1989 年 21 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性肺動脈弁欠損症候群の外科治療に際しては,その肺動脈逆流の処置方法について種々の意見があり,一定の見解には達していない.我々は肺動脈弁位への人工弁の使用をさけ1弁付心膜パッチによる肺動脈弁輪拡大術を主として行ってきた.手術症例は4例で,手術時年齢は各々5,3,5歳および25日であった.初期の1例では肺動脈弁輪切開拡大術が行われた.生後26日例は体外循環からの離脱は容易で良好な血行動態が得られたが,心房中隔欠損の残存による低酸素症で失った.生存3例は術後良好に経過し,術後5年から14年にわたる観察で,1例で房室ブロックの合併がみられ術後3年半にペースメーカー植え込みが行われた以外経過は良好で,心拡大は経時的に改善し,心電図上も右室負荷の進行はみられなかった.幼児例は全例長期にわたり良好な経過が得られ,また失った新生児例においても肺動脈弁輪部再建は良好であると推測され,本症に対する1弁付パッチによる肺動脈弁輪部再建法は極めて有用な術式であると考えられた.
  • 磁気共鳴画像法(MRI)による検討
    中藤 秀明, 村上 暎二, 竹越 襄, 松井 忍, 江本 二郎, 的場 宗敏, 福岡 卓実, 円山 寛人, 青山 隆彦
    1989 年 21 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心電図同期MRIを用い心筋梗塞患者41例を対象に梗塞発症からMRI施行までの時間で,I群:1カ月以内・II群:2~3カ月・III群:4~12カ月・IV群:1年以上の4群に分類し,各群のT2緩和時間,1/Nratioを用い梗塞巣の治癒過程を評価し,かつ形態的に左室瘤の判定を試みた.その結果梗塞部T2緩和時間はIII,IV群ならびに各群の非梗塞部位に比して1,II群で有意に延長しており,1からIV群と徐々に低値を示した.一方III,IV群では非梗塞部と差は認められなかった.I/Nratioは1群に比しII,III,工V群で低値を示し,特にIV群で著しかった.MRI上形態的に左室瘤の判定は比較的容易でその診断精度は70%であった.またI/Nratioが0.6以下の例に左室瘤が認められる傾向にあった.MRI上,急性期梗塞部位は高信号領域として描出され,かつ同部のT2緩和時間は延長を示した.これらは浮腫によるプロトンの増加に起因する可能性が高いと考えられた.これらの変化は梗塞発症2~3カ月後には正常化する一方で,梗塞壁の菲薄化が進行してゆく.これらのMRI所見は梗塞部の治癒過程を表すものと考えられた.また左室瘤を有する症例では同部位に形態的に著明な壁の菲薄化を認め,その機序として梗塞壁張力の増加による過伸展の影響が大きいと考えられた.
  • 伊賀 幹二, 玄 博充, 玉村 年健, 松村 忠史, 友 永轟, 堀健 次郎, 上田 裕一, 三木 成仁
    1989 年 21 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室瘤の原因は虚血性心疾患,川崎病,冠動脈起始異常によるもの,外傷後,心筋炎後,および先天性が考えられる.今回我々は塞栓症による脳血管障害で発症した33歳の男性の先天性心室瘤と考えられた1例を経験したので報告する.心室瘤の内部には異常なtrabeculationがあり,先天性心室瘤の特徴と考えた.心室瘤が大きければ血栓塞栓症の予防のために手術の適応があると考えられる.
  • 松橋 浩伸, 長谷部 直幸, 小川 裕二, 幸村 近, 丸山 純一, 川村 祐一郎, 今本 哲郎, 加藤 淳一, 山下 裕久, 飛世 克之, ...
    1989 年 21 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈弁狭窄症および右一左短絡を伴う卵円孔開存に合併した冠動脈一気管支動脈異常交通症の38歳,男性例を経験した.冠動脈造影上,左回旋枝の起始部(segrnent11)より分岐して右上後方へ走行する太い異常血管が認められ,右気管支動脈造影にて両者の交通が確認された.また,気管支動脈と肺動脈の吻合もみられ,血流は冠動脈,気管支動脈,肺動脈の方向であった.本症例においては,狭心痛はなく,運動負荷心電図,運動負荷201Tl心筋SPECTによってもcoronarystea1現象による心筋虚血は証明されなかった.しかし,根治術後の運動耐容能の増加によって虚血が出現する可能性も否定しきれないため,肺動脈弁交連切開および卵円孔閉鎖と同時に異常交通枝の結紮術を行った.
  • 佐藤 尚, 鈴木 康之, 八巻 重雄, 浜田 幸夫, 三浦 誠, 秋野 能之, 渡辺 孝, 毛利 平, 仁田 新一, 香川 謙, 堀内 藤吾
    1989 年 21 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に伴う心室中隔穿孔に対し緊急手術を施行,術後重篤な心不全に陥ったため左心補助人工心臓を使用して,心不全状態から脱却せしめた症例を報告する.症例は65歳,女性,心室中隔穿孔発症後,心原性ショックに陥り薬物療法,IABP等も無効で緊急手術により心室中隔穿孔部位をパッチ閉鎖した.術後体外循環離脱不能となり,左心補助人工心臓を使用した.本症例では両心不全の血行動態であったため,大量のカテコールアミンを使用しつつ左房-大動脈バイパスの形での左心補助人工心臓の駆動を行ったが,心機能は徐々に回復し,20日後に補助心臓からの離脱に成功した.心機能はその後も回復を続け,一切の強心剤による補助も必要としないまでに至った.しかし閉塞性呼吸障害が残存し,人工呼吸から離脱できないまま,術後123日,多臓器不全にて死亡した.剖検にて梗塞領域は心室中隔の50%,左室自由壁の30%を占める,広範なものと判明し,かかる重症の心筋障害例をも補助人工心臓使用により救命できる可能性が示唆された.
  • 川筋 道雄, 手取屋 岳夫, 榊原 直樹, 松永 康弘, 岩 喬, 松下 重人
    1989 年 21 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    不安定狭心症の一機序として,冠動脈内血栓が考えられている.不安定狭心症を呈した冠動脈3枝病変の1症例において,A-Cバイパス術中に右冠動脈内に長さ2cmの新鮮血栓を発見し,これを摘出した後,右冠動脈を含む2枝にバイパス術を行った.術前冠動脈造影では右冠動脈の血栓像は見られなかった,本症例では術前まで下壁の急性心筋梗塞所見は認めなかった.不安定狭心症において抗血小板薬,抗凝固薬を中止する際には注意を要する.
  • 庭野 慎一, 相沢 義房, 中川 理, 江部 克也, 横山 明裕, 田村 雄介, 宮島 静一, 船崎 俊一, 鈴木 薫, 佐藤 政仁, 小島 ...
    1989 年 21 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右室起源の心室頻拍(VT)に対し,直流通電によるelectricalcatheterablation(ECA)を試みた.症例は,54歳男性.持続性VTの心拍数は180-240/minで,発作時意識は保たれていた.VTは,プロカインアミドの静注にて停止した.VT自然発作時の12誘導心電図波形が2種類あることより,VTは複数の起源ないしexitを有すると考えられた.電気生理学的検査上,フレケナイドのみがVTの予防に有効であった.本剤は現在入手困難である事から,ECAを治療手段として選択した.ECAは,VT誘発下に心内膜マッピングを行い,心腔内電位の早期興奮部位を同定して行った.最初の40J,2回の放電は不成功であったが,2回目の60J,2回の放電により,臨床的VTのうちの一方は誘発されなくなり,もう一方のVTに対して,1週間後同様にECAを施行し,VTは全く誘発されなくなった事を確認した.
  • 川原 健彦, 茂原 治, 星屋 博信, 中村 秀也, 松谷 良清, 友渕 佳明, 西尾 一郎, 増山 善明, 辻 求, 大島 章
    1989 年 21 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.2日間持続する胸痛を主訴に入院.血圧110/70mmHg,脈拍数62/分,不整.意識は清明で,頸静脈怒張なく,心雑音,ラ音も聴取しなかった.白血球数5800,CRP3(+),赤沈1時間値9mm,GOT241U/l,LDH1,073U/l,CPK1,291U/l,CKMB141U/l.心電図上完全房室プロツク,V1-V4でQSパターン,V1-V5で著しいST上昇が,心エコー図では前壁中隔から心尖部にかけて壁運動異常が認められ,急性前壁梗塞が疑われた.入院後直ちに一時ペーシングを試みるも閾値が異常に高く,肺動脈圧20/6mmHg,右房圧10mmHg,心拍出量1.7/l分であった.輸液およびカテコールアミン投与を行うも低心拍出状態は改善せず,心筋逸脱酵素の漸増とともに心エコー図で壁運動異常の範囲が徐々に拡大し,急速にペーシング不全に陥り入院後3日目に死亡した.剖検にて両心室筋全層にわたり著明なリンパ球浸潤を認め,心筋細胞は壊死に陥り,一部に多核巨細胞を認めた.本例は,急性心筋梗塞と紛らわしい臨床所見を示した激症型心筋炎であり,組織所見より巨細胞性心筋炎と考えられた.なお,本例は,ペーシングに急速に反応しなくなったこと,心エコー図上,壁運動異常の範囲が拡大し両心不全を呈したことより,心筋逸脱酵素の漸増所見とともに,心筋細胞壊死が進行したと考えられた.急性心筋梗塞とは異なった病像を呈しており,その鑑別上も貴重な症例と考えられた.
  • 齊藤 寛文, 岡部 英男, 関口 昭彦, 古瀬 彰, 渋谷 功, 長谷川 吉則
    1989 年 21 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性で,14歳の時にリウマチ熱に罹患し,その後僧帽弁閉鎖不全症と診断されていた.1986年11月より発熱,咳漱出現,1987年2月の血液培養でstreptococcus viridansによるIEと診断された.内科的治療にて感染は制御され,心不全もみられなかったが,顕微鏡的血尿を伴う右腰部痛,右大腿部痛,Osler結節,Rothspot等の塞栓症状を呈し,心エコー上経時的にみられた涜贅の他に,棍棒状疵贅を認めたため,致命的塞栓症予防の目的で僧帽弁置換術を施行した,心エコーにて疵贅の認められた症例では塞栓症の発生する頻度が高いので,弁置換術の手術成績が向上した現在では,基礎心疾患を有する症例では,致命的な塞栓症の発生する前に,早期に手術を考慮すべきであると考えている.
  • 木下 博史, 松永 尚文, 伊東 昌子, 大坪 まゆみ, 林 邦昭, 本保 善一郎, 岩野 文彦, 佐京 俊明
    1989 年 21 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    従来より血栓の診断はもっぱら血管造影による欠損像の検出やCTによってなされてきたが,血栓の存在部位は把握できるものの器質化の有無などは判らなかった.
    Thrornbectomy適応の決定や,血栓のdistalembolizationの危険性を予測する上で血栓の新鮮さに関する情報はきわめて重要な意味を持つ.
    従来から新鮮な血栓の画像化としては放射性沃度標識(131Iや125I)フィブリノーゲンなどが利用されていたが,満足すべき画像は得られなかった.これに対しThakurらの開発した111Indium-8-HydroxyQuinoline血小板シンチグラフィーは血小板の凝集を的確に表現し,さらに半定量画像では抗凝固療法の指標にもなりうるものと期待されている.そこで我々はThakurらの方法に若干の工夫を加え新鮮な血栓の画像化を試みた.
    血管造影のため大腿動脈を穿刺された症例について検討したところ穿刺から3日後までの全例で血小板の異常集積を認めたが,7日以降では集積は見られなかった.比較的新鮮と思われる心腔内血栓で血小板の異常集積と同一部に冠状動脈造影においてsmoking signを呈した1症例を経験した.血小板シンチは血栓部位の検査および血栓の新鮮度判定に有用と思われた.
  • 滝 淳一, 分校 久志, 谷口 充, 村守 朗, 利波 紀久, 久田 欣一
    1989 年 21 巻 1 号 p. 90-97
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心電図同期SPECTによる左右心室容積測定の基礎的ならびに臨床的検討を行い,さらに逆流性心疾患の定量的評価への応用を試みた.ファントム実験において心室輪郭決定のための最適カット値(C)を決定する要因を検討した結果,Cはバックグラウンド(BG)により変化し両者の間には,C=0.47BG+44(%),r=0.99(BGは再構成画像上の心室内最高カウントに対するBGカウントの%で表わした)の良好な相関を認めた.臨床例26例において上記式に基づいたカット値を用いてSPECTより求めた左室容積(Y)と左室造影による容積(X)はよく一致した(Y=0.96X十6.6(m'),r=0.98,n=51).左室逆流性疾患の定量評緬として右室側に逆流のない大動脈弁閉鎖不全または僧房弁閉鎖不全患者20例を対象として逆流率(RF)を求めた.逆流率は,RF=(LVSV-RVSV)/LVSVの式より求めた(LVSV=左室一回拍出量,RVSV=右室一回拍出量).非逆流群のRFは22±9.1%(n=20)に対して逆流群のそれは41±16%(n=22)であり,I~II度の逆流群のRFは33±14%(n=8),III度のRFは50±14%(n=7)といずれも対照群に比して有意に高値を示した(pく0.001).また,1~II,III度の間でも有意差を認めた(p<0.05).以上SPECTは心室容積算出,逆流の定量評価に有用な方法と結論された.
  • 経時的観察による再狭窄診断の有用性
    千葉 博, 西村 匡彦, 植原 敏勇, 林田 孝平, 三谷 勇雄, 松尾 剛志, 住吉 徹哉, 土師 一夫
    1989 年 21 巻 1 号 p. 98-106
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    経皮的冠動脈形成術(PTCA)施行後の再狭窄診断に肺野T1C1-201集積の変化が有用な指標となり得るかを検討した.対象は労作性狭心症47例,狭心症を有する心筋梗塞38例の計85例で全例に確認造影で再狭窄の有無を確認し,37例が再狭窄例であった.運動負荷心筋スキャンはPTCA前,PTCA後1カ月以内(早期),3カ月以降(晩期)に行い,胸痛,心電図ST変化,一過性欠損の有無および肺野T1C1-201集積の変化を検討した.肺野TIC1-201集積は非再狭窄例ではPTCA後早期に低下し,晩期にはやや上昇するもののPTCA前よりは低値であった,再狭窄例ではPTCA後早期には低下するものの晩期には再度上昇しPTCA前の値に戻った.胸痛,ST変化,一過性欠損所見の変化も同様に,PTCA後早期には再狭窄の有無にかかわらずいったん改善し,晩期には再狭窄例で悪化した.PTCA後早期における再狭窄のsensitivityはいずれの指標も低く,再狭窄が早期から晩期の間に出現する事を示唆した.speci痘cityは早期では肺野TICI-201集積の変化所見が89%と最も良好であった.PTCA後晩期における再狭窄の検出感度は,胸痛50%,ST変化68%,一過性欠損所見78%,肺野T1C1-201集積の変化所見52%であり,肺野TICI-201集積の変化所見を一過性欠損所見に加えると83%と向上した.また肺野T1C1-201集積の変化所見は1枝病変よりも多枝病変で有効で,特に不完全血行再建例では一過性欠損所見に加えることにより,検出感度は71%から86%へと向上した.
  • Wall thickeningとPETによる心筋血流・代謝画像との対比検討
    山下 敬司, 玉木 長良, 米倉 義晴, 南 俊介, 左合 直, 柴田 登志也, 奥村 亮介, 野間 恵之, 藤澤 一朗, 富樫 かおり, ...
    1989 年 21 巻 1 号 p. 107-115
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室局所壁運動は左心機能の指標として重要であり従来よりX線左室造影やエコーが汎用されてきたが,最近ではMRIの応用も試みられるようになってきた.我々は虚庇性心疾患(心筋梗塞雛人,狭心症3人)において心電図同期MRIにより左室横断面断層像を撮影し収縮末期の左室壁厚を計測し左室局所機能を評価することを試みた.同時にPETを施行し13N-NH3を用いた安静時および運動負荷時の心筋血流像と18F-FDGを用いた心筋糖代謝像と比較しその意義を検討した.MRIによる収縮末期壁厚は正常例9人の検討より10mm以上でかつ拡張末期と比べ明らかに厚くなっているものを収縮十群(WT+)とした.安静時血流との比較では正常群ではWT+72%膨中等度虚血群では20%,高度虚血群では4%と虚血が高度になるほど低下した.運動負荷時血流との比較では正常群ではWT+75%,運動負荷虚血群では44%,恒常虚血群では10%と重症度を増すにつれて低下した.安静時高度虚血群におけるFDG集積との関係はFDG集積群ではWT+9%,非集積群では0%であり高度虚血であってもFDGの集積があれば局所心機能が残存している可能性があることが示された.MRIによる局所左心機能とPETによる血流・代謝情報との対比は梗塞域における残存心機能の解析に有用と思われる.
  • ポジトロンCTを用いて
    不藤 哲郎, 神原 啓文, 橋本 哲男, 林 正隆, IH Mohiuddin, 玉木 長良, 米倉 義晴, 山下 敬司, 小西 淳二, 河 ...
    1989 年 21 巻 1 号 p. 116-122
    発行日: 1989/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞部におけるviabilityの評価法について従来から用いられている心電図法,左室造影およびT1心筋シンチグラフィーと新手法であるポジトロンCT(PET)と対比検討した.PETは13NH3を心筋血流,F-18デオキシグルコース(FDG)を糖代謝のトレーサーとして用い,NH3は安静時および運動負荷時の2回,FDGは安静空腹時に撮像した.30例の前壁梗塞例で運動負荷T1-201心筋シンチグラム上 fixed defectを示す例が17例みられたがこのうち7例では同量負荷時のNH3-PETにより梗塞辺縁部での一過性虚血がみられた.また同様17例中6例にfixed defectの領域にFDGがPET上取り込まれ代謝活性の存在を示した.一方左室造影上asynergyを認めた例が20例(67%)みられたが,うち12例でPET上運動負荷時に辺縁部の一過性虚血がみられ,また7例でasynergyの領域に糖代謝が充進している所見が得られた.心電図上nonQ波梗塞12例では10例に梗塞部の代謝活性がみられたが,Q波梗塞18例では6例に梗塞部領域の代謝活生がみられるにすぎなかった.以上のように従来からの臨床的なパラメーターは梗塞部のviabilityを過小評価することが示された.今後はviabilityの定量的評価が期待される.
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