心臓
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18 巻, 5 号
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  • 中田 誠介, 小笠原 定雅, 川越 康博, 菅原 基晃, 林 久恵, 橋本 明政, 小柳 仁, 今井 康晴
    1986 年 18 巻 5 号 p. 485-490
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    重症大動脈弁狭窄症でカテーテルを左室に挿入できないような症例は,術前に左心機能および弁圧較差に関する基本的情報がまったく得られない.しかし,術前に左心機能および弁圧較差を正しく評価することは,手術適応決定には不可欠で手術成績にも直接影響する.このような症例に対し左室にカテーテルを挿入することなく大動脈弁狭窄の重症度を測定する方法を開発し,これを6例に応用した.われわれの方法は,流れの総圧は狭窄下流のジェットのlaminar core内ではほとんど低下しないという事実に基づき,この部分の総圧を測定することにより弁圧較差のみならず左室圧そのものを直接測定しようというものである.この方法にとって最も重要な点は, カテーテル先端をいかにlaminar core 内に導くかであるが,われわれはこの目的に合ったカテーテルを考案した.
  • 佐藤 ノリ子, 田中 元直, 十河 寛, 山本 厚子, 大川井 宏明, 仁田 新一, 仁田 桂子, 片平 美明
    1986 年 18 巻 5 号 p. 491-500
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    超音波心臓断層法とパルス・ドプラ法とを用いて全く非侵襲的非観血的に狭窄弁弁口面積を測定する方法についてモデル流路を用いて実験的に検討するとともに,僧帽弁狭窄症を対象として臨床的に検討した.狭窄弁モデルを設置したモデル流路による実験から,弁輪近傍には横断面上,流速分布が平坦となる部分が生じ,弁口面積の測定には質量保存則が適用でき,パルス・ドプラ法により測定した弁口部および弁輪部近傍中心部の流速値と,心断層法により測定した同一部位の断面積とから算出できることが示された.この実験結果は臨床例でも適用できることが確認された.そこで僧帽弁狭窄症の拡張中期左房内血流を対象として,僧帽弁口部および弁輪部流速値を測定し,これと心断層図から求めた弁輪部断面積の値とから実効断面積を求めた.この結果を理論的信頼性が高いと考えられる心カテーテル法によるrevised Gorlin formulaから算出した弁口面積値と比較したところ良好な相関(r=0.986)が得られた.この事実から本法は非侵襲的非観血的かつ簡便な弁口面積測定法として,肺動脈弁および大動脈弁狭窄時にも適用可能な方法であり臨床的有用性は高いと判断された.また本研究結果から弁口流量の絶対値的計測も本法により可能であることが示唆された.
  • 新谷 冨士雄, 小堀 悦孝, 長谷川 淡, 田中 政
    1986 年 18 巻 5 号 p. 501-509
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    色素希釈法で求められる心拍出量と平均循環時間との積は色素注入・検出両部位間の容積を表し,中心血液量と呼ばれる.歴史的には古くから用いられた指標であるが,その臨床的意義は必ずしも確立されていなかった.筆者らは循環時間を身長補正で標準化する手法により,中心血液量を標準化した量(補正中心血液量係数,CBVI')に置き換え,心係数との相互関係を検討し,次の結論を得た.(1)正常者のCBVI'は心係数と有意な正相関を保ちながら変動する量である.この所見は多数例における統計,同一症例の経過観察の結果のいずれにおいても共通して見られた.(2)CBVI' と心係数の関係はFrank Starling機構によく似ていることから,CBVI'は前負荷の意味をもつ臨床指標と考えられた.しかしながらCBVI'の正常範囲は幅広く,単独の値としては有用な臨床指標にはならなかった.(3)CBVI'の実測値と心係数から予測されるCBVI'との比(=パーセント中心血液量)は心機能状態を反映する良好な臨床指標となることが示され,診断と治療面での有用性が示唆された.
  • 土岡 由紀子, 横手 祐司, 佐倉 英一郎, 藤井 秀昭, 橋本 正樹, 湯浅 明, 岡本 光師, 松浦 秀夫, 梶山 梧朗
    1986 年 18 巻 5 号 p. 510-517
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    verapamilの有効であった発作性心室性頻拍症の3症例を報告した.症例は動悸を主訴とした13歳女性,24歳男性および27歳男性と若年者であった.非発作時の心電図は1例に1度房室ブロックを認めた以外異常なく,器質的心疾患の存在は認めなかった.頻拍発作時の心電図は心拍数160-190/分で,全例右脚ブロック+左軸偏位型を呈していた.電気生理学的検査では,心室刺激により全例心室性頻拍が誘発され,1例では心房早期刺激にても頻拍が誘発された.心室性頻拍はverapami15-10mg静注投与にて全例停止し,verapamil 静注後, 心室性頻拍を誘発し得なかった.13歳女性の頻拍発作はverapamil経口投与にて予防できた.心室性頻拍の原因はリエントリーあるいはtriggered antomaticityによると考えられた.
  • 加賀谷 茂, 山口 一郎, 小松 栄一, 宮沢 光瑞, 小田 純士
    1986 年 18 巻 5 号 p. 518-523
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    自拍出現のないVVI型ペーシング患者(CAVB群)は運動中の変時作用が除外されるため,心循環系の調節機構を探索する格好のモデルとなる.本文ではこのような10症例を対象として,自転車エルゴメーターを用い自覚的最大レベルまで臥位多段階負荷を加え,同年代健常者(N群)と比較し,運動時心循環動態の特徴を検討した.CAVB群の体重当り酸素摂取量は男がN群の68%,女が52%であった.この運動耐容能の低下は,負荷中の心拍出量増加度が小なることと対応した.運動時,後負荷が増大,拡張末期径が不変であったにもかかわらず,CAVB群の一回拍出量はN群と同程度の増加を示し,運動負荷中収縮末期径が減少,駆出率,平均左室内周短縮速度が増加したことから,心筋収縮能亢進によると解された.最大負荷時収縮期圧は両群同程度に上昇したが,CAVB群の平均左室内周短縮速度はN群に比し低く,収縮末期径は大であり,心収縮予備能は低下していると判定された.また,CAVB群の運動能,心予備能には大なる個体差が認められ,この原因としてはペーシング自体による影響よりも基礎疾患の重症度に左右されると考えられた.
  • 入沢 敬夫, 島崎 朋司, 河野 道夫, 青山 克彦, 永江 宣明, 島貫 隆夫, 白田 保夫, 渡辺 隆夫, 今井 高二, 佐藤 徹, 片 ...
    1986 年 18 巻 5 号 p. 524-531
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    吸収性縫合糸(Dexon)を応用したB-T手術施行の21例について短絡の開存性を中心に検討した.手術死亡は脳塞栓症を合併した1例であり,縫合糸に起因する合併症は発生しなかった.短絡の閉塞は術後早期および遠隔期においても発生しなかった.心血管造影法による検討から,短絡吻合部の限局性狭窄はみられなかったが,鎖骨下動脈から吻合部に及ぶ狭小を2例/7例に認めた.吻合部内径の増大は3例/7例にみられ,吻合部が成長し得る可能性が推測された.このことは病理組織学的に吻合部の内膜の肥厚は軽度で,鎖骨下動脈と肺動脈の癒合は少量の瘢痕組織で完成するとの所見から裏付けられた.遠隔期の自然死亡は本来の心奇形に起因する5例で,二期的手術死亡は3例であった.著者らはDexon糸を使用するB-T手術は縫合手技が単純化され,短絡の開存性が良好であるなどの利点を持つことから推奨し得るものと考える.
  • 吉原 隆夫, 岡本 力, 石原 義紀, 浜岡 建城
    1986 年 18 巻 5 号 p. 532-538
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Ebstein奇形,肺動脈閉鎖などの先天性心奇形を持つ生後20日の新生児にaccelerated idioventricular rhythm(AIVR)の合併を認めた.AIVRは繰り返し出現し,自然に,または体動などにより洞調律に復した.またAIVR発作時においても,チアノーゼの増悪など症状の悪化はみられなかった.
    今までの小児の報告例を集計し,AIVRを生下時より持続していると思われるcongenital typeと心筋梗塞などの基礎疾患により新たに出現するsecondarytypeとに分類し文献的考察を加えた.その結果,小児のAIVRはきわめてまれであり,そのほとんどはcongenital AIVRと思われること,先天性心奇形との合併は本例が最初であること,すべての症例は無症状で経過していること,予後は良好で運動制限,治療を必要としないこと,さらには多くは数年の観察期間で自然に消失するが,一部は成人に達するまで持続する可能性があることなどがわかった.
  • 中田 浩一, 永元 康夫, 早川 知宏, 花岡 陽一, 黒岩 昭夫
    1986 年 18 巻 5 号 p. 539-545
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,15歳の女子高校生.学校検診の心電図で,2度Wenckebach型房室ブロックを伴う上室性頻拍症を指摘され,精査のため当科に入院した.上室性頻拍は持続性で房室ブロックを伴い,I,aVL誘導のP波は陰性であった.propranolol 60mg経口投与,digoxin O.25mgおよびdiltiazem O.2mg/kgの静注は,いずれも頻拍の停止に無効であった.電気生理学的検査の結果,(1)左房内に異所性自動能を有する心房性頻拍が確認され,(2)この心房性頻拍に対してaprindineの静注(100mg/10分)が有効であった.このためaprindine 60mg/日(分3)の内服投与を開始したところ,投与10日目より洞調律となった.以後,約5カ月間経過観察しているが,薬剤60mg服用中は頻拍の再発を見ず,副作用も認めていない.
    左房内に異所性自動能を有する持続性心房性頻拍症はきわめてまれであり,電気生理学的に確認された症例は本例が5例目である.
    このような症例に新しい抗不整脈剤であるaprindineの投与を行い,電気生理学的に頻拍の停止を確認し,臨床的に頻拍の再発を予防しえたことは非常に興味深い.
  • 秋吉 龍二, 弓削 順子, 佐藤 保生, 金 衡仁, 相澤 忠範, 藤井 諄一, 小山 信弥, 小松 壽
    1986 年 18 巻 5 号 p. 546-553
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳男性.動悸,呼吸困難および腹部膨満感を主訴に昭和58年6月7日当院へ入院.入院時の心エコー図で大量の心膜液貯留を認め,心タンポナーデと診断した.心膜穿刺により約800mlの心膜液を排除,同心膜液より培養4週目で結核菌が検出された.6月11日には断層心エコー図で心膜腔内にフィブリンネットを思わせる網状エコーとフィブリン塊を思わせる棍棒状エコーを認め,Mモード心エコー図では心膜腔内に細かなエコーを認めた.6月29日の断層心エコー図では左室後壁の一部に心膜と心外膜の癒合所見を認めた.ステロイド剤と抗結核剤の治療により症状は改善したが,炎症所見の改善は不十分であった.7月26日より右心不全症状が再び出現,心エコー図で心外膜の肥厚,心膜と心外膜の癒合, 心室の拡張制限および心室中隔の拡張早期異常運動を認めた.右心カテーテル検査により収縮性心膜炎と診断し,8月29日心膜切除術を施行した.術中,右房室間溝の心筋切開部に膿瘍の形成を認めた.術後,心外膜エコーの輝度増強と心室の拡張制限の所見は残存したが,炎症所見および全身状態の改善が得られた.この間の経過を頻回に記録した心エコー図により詳細に観察することができ,結核性心膜炎の急性期の治療を考慮するうえで,心エコー図,特に断層心エコー図による経時的観察の有用性を示唆する症例と考えられた.
  • 曽我 直子, 黒岩 靖, 本郷 実, 松岡 健, 山田 博美, 大久保 信一, 草間 昌三
    1986 年 18 巻 5 号 p. 554-560
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男.心電図異常の精査のため入院.心尖部にLevine3度の収縮中期雑音を聴取し,亜硝酸アミル負荷で増強,メトキサミン負荷で減弱した,胸部X線写真では心胸郭比55%で,心電図上左側胸部誘導でQRS高電位差と巨大陰性T波が見られた.超音波心断層図で心室中隔の著明な肥大を認め,これと肥大した乳頭筋により左室内腔が著しく狭小化していることが判明し,また左室造影では心室中部は収縮期にほぼ完全に閉塞し,心尖部はakinesisを示していた.
    本例はFalicovらの報告した心室中部閉塞性肥大型心筋症と思われたが,心電図上巨大陰性T波と,心尖部akinesisを示した点で興味深い.
  • 重松 裕二, 浜田 希臣, 土井内 純治, 井上 義一, 藤原 康史, 越智 隆明, 伊藤 武俊, 国府 達郎
    1986 年 18 巻 5 号 p. 561-566
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症の心電図変化は多彩であるが,ST上昇を示す症例の報告はまれである.われわれは持続性ST上昇を示した家族性肥大型心筋症2症例を経験した.
    症例1は41歳,男性.主訴;前胸部痛およびフラツキ感.血圧108/74mmHg.心電図所見;V1-4誘導でST上昇およびI,II,III,aVF,V5,6誘導で陰性T波を認めた.症例2は36歳,男性.主訴;労作時の動悸およびフラツキ感.症例1の従兄弟である.心電図所見;I, V5誘導でST およびII, III, aVF ,V3,4,6誘導で陰性T波を認めた.2症例とも,心エコー図でASH , 左室流出路狭窄所見を示した. また,症例1では主要冠動脈に有意狭窄を認めず,左室造影で著明な心室中隔肥厚を示した.家族歴も濃厚であり,肥大型心筋症と診断した.
    主要冠動脈が正常な肥大型心筋症に心筋梗塞の合併することはすでに報告されている.われわれの2症例においても心電図上持続性ST上昇が認められ,心筋障害の関与が示唆された.肥大型心筋症の心電図を評価する際,心筋肥厚に加え心筋障害による変化を考慮する必要があると思われた.
  • 平中 俊行, 広瀬 一, 中埜 粛, 松田 暉, 榊原 哲夫, 岸本 英文, 谷口 和博, 松村 龍一, 今川 弘, 小川 實, 佐野 哲也 ...
    1986 年 18 巻 5 号 p. 567-572
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は3歳9カ月男子.2歳6カ月時に川崎病に罹患し,1年後に突然心筋梗塞を生じた.選択的冠動脈造影で,右冠動脈はsegment1で完全閉塞を認め,左冠動脈には軽度の拡張を認めた.
    造影後,心室性期外収縮(PVC)が頻発し,薬剤治療に抵抗性であったため,右冠動脈後下行枝に大動脈冠動脈バイパス手術(A-Cバイパス術)を行った.
    術後7年7カ月目にグラフト造影を行い,グラフトの良好な開存を認めた.Holter24時間心電図でもPVCを認めず,患児は元気に学校生活を送っている.
    本症例は手術時年齢5歳未満で,遠隔期にバイパスグラフトの開存が認められた初めての報告例である.
  • 稲葉 美徳, 野嵜 善郎, 杉内 孝謙, 石川 自然, 奥山 和男
    1986 年 18 巻 5 号 p. 573-580
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    交通外傷後に心雑音に気づかれ,無症候性急性僧帽弁閉鎖不全症をきたした,7歳症例を経験したので報告する.経過中,交通外傷の翌日に軽度の心拡大を認めたが,急性期以降は改善を示しており,日常生活においても特に著変を認めていない.聴診にて心尖部に最強点を有し,心基部方向に放散する逆流性雑音と3音,4音を認め,血清逸脱酵素の上昇とともに,心電図では左側胸部成分の減弱と,左側T波の平低化を認めた.Mモード心エコー図にて,僧帽弁後尖の拡張早期異常前方運動と,収縮期多重エコーを認め,Bモードにて僧帽弁後尖の左房内逸脱と,拡張早期に,周辺組織とは異なった求心性運動を認めた.病日2カ月に逆行性左室造影を施行してSellers分類3度の逆流を認め,心臓カテーテル法検査にて肺動脈楔入圧V波の増高を認めた.病日8カ月に肺動脈楔入圧V波の正常化傾向とともに,左室拡張末期圧,左房・大動脈比の増大や,心尖部の拡張期雑音の増強を認め,慢性型への移行が示唆されたが,心胸郭比は軽度に減少傾向を示すのみで,相反するような所見を呈していた.心胸郭比は,原疾患に伴う心機能の変化をも現わすが,左房・大動脈比は左房径の形態表現であるためと思われた.その後の経過観察にて,心不全徴候を認めていないが,今後の遠隔期における重症化の可能性も考えられ,左房・大動脈比は心胸郭比とともに,重要な指標になるものと思われた.
  • 飯塚 昌彦, 中島 克彦
    1986 年 18 巻 5 号 p. 584-596
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 藤正 巖, 井街 宏, 中島 正治, 渥美 和彦
    1986 年 18 巻 5 号 p. 597-610
    発行日: 1986/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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