心臓
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28 巻, 9 号
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  • 木村 彰男, 石川 欽司, 山本 健太郎, 小柳津 美樹, 中井 章至, 山本 忠彦, 鎌田 勲昭, 内藤 武夫, 竹中 俊彦, 小川 巌, ...
    1996 年 28 巻 9 号 p. 719-725
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    抗不整脈薬の心筋梗塞の予後に及ぼす影響を知る目的で,昭和61年から平成6年まで当科にて加療した陳旧性心筋梗塞1,129例をI群抗不整脈薬服用群(ジソピラマイド,アプリンジン,メキシレチン,プロパフェノン)119例と非服用群1,010例に分け,心臓死の頻度をretrospectiveに集計した.心臓死は服用群では13例(10.9%)にみられたが非服用群では36例(3.6%)のみで,服用群で有意に多かった(p<0.01).心室性不整脈がLown IV度以上の症例のみについて集計すると,服用群では55例中9例(16.4%)に心臓死がみられたが非服用群105例では8例(7.6%)のみであり,服用群で心臓死が多い傾向があった.また多変量解析の結果,抗不整脈薬服用は心臓死に対して独立した有意な危険因子であり,心臓死の内訳では突然死に対する独立した有意な危険因子であった.この結果は欧米でのprospectiveな成績と同様であった.陳旧性心筋梗塞に対する本薬剤の使用は十分注意して行わなければならないと結論された.
  • 心プール法を用いて・PFR/TPFR(平均充満加速度)算出の試み
    荒尾 正人, 櫻井 薫, 宮武 佳子, 中込 明裕, 丸山 二郎, 鈴木 謙三, 土持 英嗣
    1996 年 28 巻 9 号 p. 726-731
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】高血圧性心疾患(HHD)と肥大型心筋症(HCM)の鑑別が心プール法を用いて可能か否かを検討すること.
    【方法】対象は正常(C)20例(男11例,女9例,平均58±11歳),HHD21例(男9例,女12例,平均64±8歳),およびHCM19例(男11例,女8例,平均62±8歳).心プールシンチにて左室駆出率(LVEF),1/3LVEE,peak filling rate(PFR),time to peak filling rate(TPFR),およびPFR/TPFR(左室平均充満加速度)を3群間で検討.
    【結果】LVEFおよび1/3LVEFは3群間で有意差なし.PFRはHCM群で低値(C群:425±102,HHD群:422±65,HCM:297±66SV%/sec,以下同様;p<0.001),TPFRはHCM群にて有意に延長(146±32,146±21,230±67msec;p<0.001).PFR/TPFRはHHD群にて有意に高値(3.1±1.3,3.0±0.8,1.4±0.5;p<0.001)で散布図上ほとんど重なりを認めず,C群の下限値である2.0が各群間を分ける指標値となり得た.
    【総括】HCM群はHHD群に比し,症状の軽微な時期から早期左室拡張能の低下を認めるが,PFR/TPFRは診断のより鋭敏な1指標として有用である.
  • 林 一郎, 幕内 晴朗, 成瀬 好洋, 小林 俊也, 山本 平, 針谷 明房, 関 顕, 石綿 清雄, 古井 滋, 松永 仁
    1996 年 28 巻 9 号 p. 732-735
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.ファロー四徴痙と診断し外来フォロー中,発熱と咳嗽を契機に著明な低酸素血症を認め入院.術前の右室造影にてmajor aortopulmonary collateral arteries(MAPCA)からの側副血行路を認めたため,術中の視野の確保と術後の心不全を考慮し,根治術直前にMAPCA塞栓術を行った.まずバルーンカテーテルによる試験閉塞で安全を確認した後,MAPCAをゼルフォームとコイルを用いて塞栓術を行った.塞栓術施行中,血行動態の変化や脊髄虚血症状の出現,および血中酸素分圧の悪化は認めなかった.塞栓術終了後ただちに全身麻酔下にファロー四徴症根治術を行ったが,術中の視野は良好で,術後もhigh out Put failureと思われる異常は認めなかった.側副血行路の発達したファロー四徴症例では,術前のMAPCA塞栓術が有効と考えられる.
  • 門間 和夫
    1996 年 28 巻 9 号 p. 736-737
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 小松 隆, 蓬田 邦彦, 中村 紳, 三国 谷淳, 加藤 武, 奥村 謙, 高橋 健, 中山 寛
    1996 年 28 巻 9 号 p. 738-744
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,男性.前胸部不快感が出現約1時間30分後に当院受診.心電図ではII,III,aVF誘導のST上昇,V1~6誘導のST上昇ならびにT波増大を伴う完全房室ブロックを認め,一時心室細動も出現したため除細動を要した.来院時血圧66/44mmHgとショック状態であり,心原性ショックを合併した急性心筋梗塞の診断で,大動脈内バルーンパンピングならびに一時的ペーシング挿入後,血行再建目的にて緊急冠動脈造影を施行した.造影所見では左前下行枝seg.7,左回旋枝seg.13ならびに右冠動脈seg.1の完全閉塞を認め,各閉塞末梢部には側副血行路を認めず,血栓の存在を示唆する陰影欠損を認めた.各閉塞部に対して,direct-PTCAを施行したところ再疎通が得られ,第3病日には血行動態がほぼ安定した.以後,臨床経過は良好であったが,第18病日に突然消化管出血を合併し,出血性ショックならびに心不全にて死亡した.
    多枝急性閉塞の機序として,冠痙攣や塞栓症,発症時にみられる血液凝固能亢進などが推察されるものの,明確な発症機序は不明であった.現在まで2枝急性閉塞による心筋梗塞の報告は認めるものの,我々が調べ得た限りでは3枝急性閉塞による心筋梗塞の報告はないので報告する.
  • 手嶋 泰之, 吉村 彰, 丹羽 裕子, 高倉 健, 前田 利裕, 犀川 哲典, 坂田 利家, 葉玉 哲生, 古荘 洋三
    1996 年 28 巻 9 号 p. 745-748
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は,重症三尖弁閉鎖不全症を伴った特発性右房拡張症の1例を経験したので報告する.症例は67歳の男性で,息切れ,両下腿浮腫,体重増加の右心不全症状が出現し当科入院となった.入院時,NYHA分類のclass3であり,胸骨左縁にLevine III/VIの収縮早期雑音が聴取された.胸部X線写真にて右第2弓の突出を認めた.経食道心エコー,心臓カテーテル検査の結果,重症三尖弁逆流,中等度僧帽弁逆流と著明な右房の拡大を認めたが,右室,左心系の拡大は認めなかった.三尖弁には石灰化や腱索断裂などの器質的病変を認めなかった.右房圧が正常であり,右室の拡大を認めず,また組織所見も二次性の右房拡張は否定的であった.これらの理由より,本症例における三尖弁閉鎖不全は特発性右房拡張症による弁輪拡大のためと考えた.本症例に対しCarpentier's ring.を用いた三尖弁形成術を施行したところ,術後症状の改善が認められNYHA分類のclass1となった.
  • 松本 健吾, 川本 俊治, 大屋 健, 栗山 洋, 吉野 孝司, 石川 勝憲, 藤原 政治, 小野 浩
    1996 年 28 巻 9 号 p. 749-754
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    30歳頃より高血圧の既往のある53歳女性.左心不全にて救急入院し,心エコー検査にて左室壁運動のび慢性低下を認めた.利尿薬,強心薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬投与にて心不全症状は軽快したが,左室駆出率(EF)の改善は認められなかった.入院中に発作性血圧上昇,頻脈,発汗過多があり,血中・尿中catecholamineの異常高値と画像診断から左副腎に直径6cmの腫瘤を形成する褐色細胞腫と診断した.右室心筋生検にて心筋細胞の変性,消失,線維芽細胞の増生を認め,左心不全の原因は褐色細胞腫によるcatecholamine cardiomyopathyと考えられた.洞性頻脈ならびにEF25%と左室機能の著しい低下に対し,第27病日よりβ1遮断薬の少量漸増投与,さらに第129病日よりα1遮断薬の併用投与にてEFは51%にまで改善し,左室壁運動は回復を認めた.第183病日に褐色細胞腫摘出術を施行し,術後には発作性血圧上昇は一時軽快した.しかし第4,5胸椎に転移巣を認め,第240病日に同部位の人工錐体置換術ならびに腫瘍摘出術を施行し,さらに残存腫瘍に対し放射線療法を施行し,軽快退院となった.
  • 古寺 邦夫, 宮北 靖, 貝沼 知男
    1996 年 28 巻 9 号 p. 755-761
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症を合併したvon Recklinghausen病のまれな1例を経験した.症例は70歳の女性で,幼少時よりカフェ・オ・レ斑があり,20歳頃より多発性神経線維腫が出現してきた.60歳頃より検診で心電図異常を指摘されていたが,63歳時に精査のため来院し当時の心エコー図で肥大型心筋症と診断された.症状はなく,Ca拮抗薬とβ 遮断薬で治療が行われていたが,今回病態の再評価を目的に心精査を施行した.断層およびMモード心エコー図では非対称性中隔肥大と僧帽弁前尖の収縮期前方運動を認めた.連続波ドップラーによる左室流出路の最高血流速度は約6m/秒に達し,140mmHg前後の著明な圧較差が推定され閉塞性肥大型心筋症と診断した.合併機序の1つにカテコールアミン代謝異常が想定されているが,尿中カテコールアミン3分画中アドレナリンが軽度増加していた以外は123I-MIBG心筋SPECTおよび131I-MIBGシンチグラムでも明らかな異常を指摘できなかった.肥大型心筋症とvon Recklinghausen病の病因上の関連や正確な合併頻度はいまだに不明である.臨床的には肥大型心筋症の無症状例が問題となるため,常にその合併を念頭に置きvon Recklinghausen病患者の診療に当たることが重要と思われる.
  • 心拍変動解析の試み
    吉村 彰, 犀川 哲典, 福田 園子, 丹羽 裕子, 高倉 健, 前田 利裕, 坂田 利家
    1996 年 28 巻 9 号 p. 762-767
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で,呼吸困難を主訴に近医を受診,心電図異常を指摘されて当科に入院した.入院時脈拍40/分,心電図上P波は消失し,胸部X線写真で心胸郭比68%であった.右房造影では心房の能動的な収縮はみられず,右房圧波形でa波を認めなかった.電気生理学的検査で右房電位を認めず,右房刺激に対し興奮電位の出現はなかった.以上よりatrial standstillと診断した.本症例の24時間の心拍変動のFFT解析を行ったところ,1日を通してHF成分が少なく,LF/HFは変動が大きいものの高値を示した.これは徐脈に対しで恒常的に副交感神経の抑制および交感神経の緊張が生じていることを示しており,生体の合目的的な反応の結果と考えられた.
  • 津島 健司, 溝上 哲朗, 林 元則, 竹中 寛彰, 小島 昌治, 磯部 光章, 関口 守衛
    1996 年 28 巻 9 号 p. 768-772
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,女性.15歳の時に易疲労感を訴え近医を受診し,高血圧180/110mmHgを初めて指摘された.入院時は高血圧症以外に自他覚所見がなく,安静時血漿レニン活性は正常範囲内にあり,父方に高血圧症の家族歴があったため本態性高血圧症が疑われた.アンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与したところ,著効を示したことから腎血管性高血圧症を疑った.カプトプリル負荷試験でMullerの診断基準を満たしたため,腎血管造影,分腎採血を施行し,腎血管性高血圧症と診断した.以上,安静時血漿レニン活性が正常範囲の症例に対して,カプトプリル負荷試験が簡便なスクリーニング法として診断に有用であったので報告する.
  • 安東 克之, 藤田 敏郎
    1996 年 28 巻 9 号 p. 773-775
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 上嶋 健治, 近藤 雄史, 小野寺 正輝, 荻生 直徳, 石川 元子, 平盛 勝彦
    1996 年 28 巻 9 号 p. 776-780
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アンジオテンシンII(AT II)受容体拮抗薬であるTCV-116の内服により,心不全症状の改善を認めたうっ血性心不全例を経験したので報告する.
    症例は46歳の女性で,前壁の心筋梗塞症に心房細動を合併し,心不全症状を主訴に入院した.フロセミド,メチルジゴキシン,エナラプリルなどの内服治療と電気的除細動による洞調律への復帰により,症状は軽快し退院した.しかし夜間就寝中に空咳の出現を認めたため,エナラプリルを休薬したところ再び心不全症状が出現した.そこで,TCV-116を1mg/日の用量で内服開始し,4mg/日まで増量したところ,投与前後の自覚的な身体活動能力指数は,4から6METsに改善した.また,TCV-116投与前,投与1カ月,6カ月,1年後の嫌気性代謝閾値は各々14.8,15.7,16.4,15.7ml/分/kgで,最高酸素摂取量は各々20.8,23.2,23,1,23.3ml/分/kgと,いずれも投与後は投与前に比べて改善した.さらに,断層心エコー図上の左室駆出分画も,投与前,6カ月後,1年後が各々59,64,75%と改善した.
    咳嗽出現のために,ACE阻害薬の服薬が困難となった心不全症例の慢性期に,AT II受容体拮抗薬を用い,副作用なく自覚的および他覚的運動耐容能とQOLの改善を認めた.AT II受容体拮抗薬はACE阻害薬同様,心不全症例に対して有用と考えられた.
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