心臓
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31 巻, Supplement5 号
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  • 柴田 仁太郎, 松本 貴子, 長谷 充康
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 3-7
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動(PAF)の予防は心不全・血栓・塞栓などを避けるために行われ,通常1群抗不整脈薬が用いられている.1群薬には多種類の薬剤があり,各種の薬剤はNaチャネル抑制作用以外の電気生理学的作用を併せ持っている.本検討ではPAF42例(男性71%,年齢39~92歳,平均66.4±11.3歳)に対し,ジソピラミド(DI),フレカイニド(FL),ピルジカイニド(PI)の3種類を無作為に選択使用しPAF予防効果,理学的所見,心電図,胸部X線検査や副作用を比較した.〈結果〉PAF予防有効率はDIで25.9%,FLで33.3%,PIで28.1%とFLが有効率が最も高かったが,それでも2/3の例では臨床的に有用でなかった.薬剤使用前後での心電図RR,P-Q,QRS幅,およびQT間隔は3群とも軽度に延長した.特にDI群のQTは0.05秒と著明な延長をした.胸部X線上は心胸比が拡大し,その程度はFL群,PI群ともに1%に比し,DI群で平均3.4%と大きい傾向にあった.副作用はDI群は抗コリン作用,FL群およびPI群は循環器系の副作用が主で,ことに伝導障害が著明であった.有効例と無効例の間に年齢や高血圧の合併の有無,心電図所見とその変化,胸部X線上の心胸比などに大きな差は認められず,どの薬剤はどの例に用いるとよいかの予測は困難であった.
  • 深水 誠二, 八木 洋, 杉野 敬一, 渡辺 高祥, 高橋 直之, 上西 壮, 今井 忍, 高世 秀仁, 青山 浩, 木村 卓郎, 石川 和 ...
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 8-13
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Phosphodiesterase(PDE)3A阻害薬であるCilostazol, Adenosine受容体拮抗薬であるAminophyllineは洞不全症候群(SSS)の洞機能を改善することが知られている.今回,薬理学的自律神経遮断(TAB)下のOverdrive suppression(OS)およびTAB下にATPを投与し,洞房ブロックが再現性をもって誘発された症例を経験した.同症例にCilostazo1, Aminophyllineを投与し洞機能に及ぼす影響について検討した.
    Cilostazol 200mg経口投与1時間後にOSおよびATP投与を行った.Cilostazolは洞房ブロックの程度を軽減したが,完全に阻止することはできなかった.Aminophylline 100mg静注投与はATP投与による洞房ブロックの出現を完全に阻止した.
  • 11回 臨床不整脈研究会
    重政 朝彦, 石川 利之, 住田 晋一, 菊地 美也子, 猿渡 力, 菅野 晃靖, 小林 泉, 木村 一雄, 栃久保 修, 梅村 敏
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 14-21
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女性.主訴は胸部圧迫感,動悸.平成6年5月頃より時々,胸部圧迫感,動悸が出現.心電図上,発作性心房粗動・細動(PAF・PAf)を認め,ジゴキシン,ジソピラミド,シベンゾリン等が投薬されるも発作を起こし,急患外来受診,入院を繰り返した.このため,本人,家族の同意の下,PAF・PAfに対して,高周波カテーテルアブレーション(RFCA)による房室ブロック作製,ならびに永久ペースメーカー植え込み術目的にて,平成10年9月14日当科入院となる.9月16日,まず,三尖弁輪・下大静脈間のRFCAを施行し,電気的ブロックラインを作製.引き続き,房室接合部に対してRFCAを施行し,AHブロックによる完全房室ブロックの作製に成功し,安定した41回/分,narrow QRSの接合部補充調律が得られた.その後,DDDR型永久ペースメーカー植え込み術を施行して終了とした.術後は良好に経過し,9月24日退院.以後外来にて経過良好である.本症例のように,RFCAによる房室ブロック作製と永久ペースメーカー植え込みの併用は,症例によっては高齢者においてもPAF・PAfに対する有用な治療法と思われ,ここに報告する.
  • 佐藤 督忠, 東 祐圭, 全田 直子, 佐藤 真紀子, 井出 肇, 浅野 冬樹, 鈴木 孝雄, 清水 寛, 近藤 政彦, 笠間 正文, 江波 ...
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 22-29
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は38歳兄と36歳妹で両者ともに主訴は動悸であった.兄は24歳時に筋緊張性ジストロフィー(MyD)と診断され,以後発作性心房粗動(AFL),非持続性心室頻拍(VT)を認めていたが,今回Holter ECGの際持続VTを認め入院した.電気生理学的検査(EPS)では洞調律時にはAH時間,HV時間の延長がみられた.VTは,心拍数160/分,QRSは正常軸左脚ブロック型を示し,右室流出路起源で,同部においてカテーテルアブレーション(ABL)を行い,消失した.その後のEPSでは通常型AFLが誘発され,三尖弁輪-下大静脈間にブロックラインを形成し,以後AFLの出現は認めていない.妹は22歳時,MyDと診断され,今回発作性上室頻拍(PSVT)が頻発するようになったため入院した.EPSでは洞調律時は,HH時間,HV時間の延長を認めた.PSVTは房室結節下位共通路の伝導障害を伴うuncommon-AVNRTであり,心房の最早期興奮部位の冠静脈洞入口部にABLを行い,以後PSVTは誘発されなかった.
    MyDに頻脈性不整脈の合併は比較的稀とされており,今回我々はいずれも頻脈性不整脈を合併した一兄妹例を経験し,報告した.MyDの頻脈性不整脈は,突然死との関連が示唆されており,MyDの経過観察上重要と考えられた.
  • 山分 規義, 西崎 光弘, 足利 貴志, 有田 匡孝, 桜田 春水, 沼野 藤夫, 平岡 昌和
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 30-35
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年neurally mediated syncope(NMS)は注目されているが,失神例において明らかな脳血管障害や徐脈性不整脈を認めた場合,その鑑別は治療上きわめて重要となる.
    症例は69歳男性で10年前より心房細動を指摘されている.30年前採血時および抜歯時に失神が出現しており5年前にも立位で会話中胸部不快感に伴い失神が出現している.今回,平成10年6月,夕食時に飲酒しながら会話中に胸部不快感に伴い失神が出現した.近医にて徐脈性心房細動が認められ,Holter ECG上,最大RR間隔3.9秒を示し,また,頸部MRIにて右内頸部動脈閉塞が認められた.失神の原因として脳塞栓が疑われたため当院脳神経外科に紹介されたが,病歴上NMS疑いにて当科併診となった.当科におけるHolter ECG上,総QRS数79,031,最大RR間隔4.8秒と延長が認められた.またhead-up tilt testにて病歴と一致した前駆症状に伴い失神が誘発され,mixed type vasovagal syncopeと診断された.以上本例は失神の原因となる上記3疾患を合併したきわめて稀な症例と考えられた.
  • 安達 太郎, 小林 洋一, 勝又 亮, 河村 光晴, 劉 俊昌, 浅野 拓, 品川 丈太郎, 小原 千明, 中川 陽之, 宮田 彰, 丹野 ...
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 36-46
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    55歳,男性.主訴:徐脈.現病歴:昭和63年に完全房室ブロックで入院したがI 度房室ブロックへ改善しペースメーカーは移植せず退院.心筋生検で心筋炎が疑われた.平成10年8月,心拍数40/分の徐脈性心房粗動(AFL)を認め入院.AFLは自然停止しI度房室ブロックで経過.EPSで非通常型AFLが誘発され,冠状静脈洞入口部からのpacingでconcealed entrainmentを認め,またpost-pacing intervalがAA interva1に一致し,同部位はreentry回路に位置すると考えられた.三尖弁-冠状静脈洞間に線上焼灼を施行しA F L は停止. アブレーション(AB)前で心房期外刺激によるjump-up現象を認めたがA B 後は消失した. F a s t p a t h w a y のERPはAB前後で560msと変化はなかったが,AB7日後完全房室ブロックとなり持続したため永久式ペースメーカーを移植した.結語:非通常型AFLの回路がslow pathwayを含み,ABより誘発されたAFLは消失し臨床でみられたAFLも消失した. I 度房室ブロックを伴う症例にはfast pathwayが障害されている場合があり,解剖学的峡部に対するABの際には注意が必要である.
  • 正林 浩高, 五十嵐 正樹, 岡野 喜史, 内藤 勝敏, 高田 美貴, 宇野 成明, 武藤 浩, 中野 元, 山崎 純一, 桜田 春水
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 47-53
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は二重房室結節伝導路(以下DAVNP)を有し,Double ventricular response(以下DVR)を機序とした,非リエントリー性上室性頻拍の1例を経験したので報告する.症例は74歳男性.動悸を伴う毎分140の頻拍を繰り返すため入院となった.ホルター心電図では,毎分140~150の上室性二段脈様の波形とR-R間隔が不規則な波形が大部分を占めていた.電気生理学的検査では,心房単一刺激で洞調律時と等しいHV時間を示す二つのV波がみられ,DAVNPを介するDVRと考えられた.心室単一刺激と心室頻回刺激では室房伝導はみられなかった.塩酸イソプロテレノール負荷下に,非持続的であったがDVRによる非リエントリー性頻拍が認められ,ホルター心電図で記録された頻拍と同一であった.心房単一刺激法による房室伝導曲線では,広範囲でfast pathwayとslow pathwayのover1apが認められ,fast pathwayとslow pathwayを介する伝導時間の差は心室筋の不応期よりも長く,室房伝導が存在しなかったことがDVRの成立を容易にしたと考えられた.本症例では,ジソピラミドの静注および経口投与が頻拍の停止および予防に有効であったが,ヒス束以下心室筋の不応期が延長したため,fast pathwayとslow pathwayの伝導時間の差が短縮したため,あるいはslow pathwayの伝導が抑制されたためと考えられた.DVRによる非リエントリー性頻拍が1日中持続した報告はなく,非常に稀な症例であると考えられた.
  • 鈴木 順, 山崎 恭平, 上小澤 護
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 54-60
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳女性.動悸発作を主訴に当院を受診.心電図にてlong RP頻拍(rate 176bpm)を認めアプリンジン100mgにて洞調律に復帰した.頻拍は心房からのプログラム刺激にて誘発され,頻拍中の最早期のA波はHis側の位置で記録された.頻拍中にAV blockを認め, ATP 60mgにて停止.VA伝導では,冠状静脈洞入口部の位置が最早期であった.心房でnappingし,His下1.5cmに最早期A波を認め,同部位の通電にて頻拍は停止した.ATと希有型AVNRTとの鑑別が困難であると考えられた.
  • 宮内 靖史, 小林 義典, 相澤 瑞穂, 阿部 純子, 岩崎 雄樹, 森田 典成, 林 明総, 大野 則彦, 高山 英男, 八島 正明, 斎 ...
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 61-70
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.10年来自覚する動悸発作に対する精査目的で入院.入院時12誘導心電図に異常なし.心臓電気生理学的検査を施行.心室刺激では,冠静脈洞(CS)左側側壁を最早期興奮部位(EAS)とし軽度の減衰伝導特性を有する室房伝導を認め,EASにおけるVA間隔は右室基部後壁ペーシングに比し右室流出路刺激で大であった.イソプロテレノール持続静注下の心室頻回刺激で同様の逆行伝導を介する房室回帰性頻拍が誘発された.洞調律中の僧帽弁下部のマッピングでは,EASでは単一の心房波(A波)を認めたが,冠静脈洞近位方向に移動すると,A波に引き続く副伝導路電位(KP)が記録され,近位ほど両者の間隔が増大した.また,CS先端ペーシングではいずれの部位でも単一のA波を認めるのみであった.EASの2.5cm近位において,心室刺激で局所心室波の直後に逆行性KP,その40msec後に逆行性A波が記録され,同部位での通電開始1.8秒後に副伝導路を介する逆行伝導が途絶した.
    斜走副伝導路の潜伏性順行伝導の電位が記録された潜在性WPW症候群を報告する.
  • 近藤 直樹, 杉 薫, 池田 隆徳, 坂田 隆夫, 高見 光央, 手塚 尚紀, 中江 武志, 野呂 眞人, 円城寺 由久, 出口 嘉昭, 笠 ...
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 71-77
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は35歳男性.主訴は動悸.12誘導心電図より,顕性A型WPW症候群と診断し,電気生理学的検査を施行した.頻拍は誘発されなかったが,室房伝導時の最早期興奮部位およびマッピングにより副伝導路は左側壁に存在すると考え,同部位への高周波通電により,副伝導路の離断に成功した.通電後の心電図でV1誘導でQSパターンを示すデルタ波が出現した.この副伝導路は室房伝導がなく,順行性の減衰伝導を有することよりMahaim線維束と考えられた.冠静脈洞近位部で房室伝導は最短となったため,左弁下部アプローチにより左後中隔での通電を行い,一過性にデルタ波は消失した.さらに右後中隔の弁上部で通電したところ,完全な副伝導路の焼灼に成功した.以上よりこのMahaim線維束は斜走していると考えられ興味深い1例と思われた.
  • 藤森 完一, 庄田 守男, 篠田 尚克, 木村 暢孝, 布田 有司, 杉浦 亮, 石田 実雅, 笠貫 宏
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 78-84
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.主訴は動悸・呼吸困難.生下時よりFallot四徴症と診断された.47歳時に他院でBlalock-Taussig手術が施行され,これまで根治術なしで経過した.1996年4月,同院の廃院に伴い,当院を初診した.同年9月,発作性心房性頻拍(AT)が出現し,心不全を併発した.以後,多源性ATに伴う心不全を繰り返したため,各種抗不整脈薬の投与を試みたが,停止効果・予防効果ともに認めず,不整脈発作時には,その都度電気的除細動を要した.また,心不全で近医入院中,ATに対してdisopyramide静注後に心室頻拍を認めた.今回,薬物治療抵抗性のATに対する加療目的で当院入院となった.心臓電気生理学的検査を施行し,ATを誘発した.誘発直後興奮伝導様式が変化して心房細動様であったが,途中安定した頻拍に移行した.同頻拍中に磁気を用いた新しい三次元マッピングシステム(electro-anatomicalマッピング法)を用いて右房内マッピングを行った.その結果,右房高位側壁を最早期興奮部位とし8の字状に興奮が旋回するマクロリエントリーと思われる像が描かれた.頻拍中に最早期興奮部位に高周波通電を施行したところ,ATは消失し,その後誘発不能となった.本症例は,本邦でもFallot四徴症姑息術後の最高齢生存例と考えられ,新たな心内マッピング法が不整脈の機序解明とATの根治に有効であったので報告する.
  • バスケットカテーテルによる検討
    長沢 秀彦, 藤木 明, 碓井 雅博, 水牧 功一, 井上 博, 湖東 慶樹, 渡辺 剛, 三崎 拓郎, 新田 隆
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 85-91
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.僧房弁閉鎖不全症,慢性心房細動に対して人工弁置換術およびradialapproach(洞結節を中心にして放射状に房室弁輪部まで心房を切開縫合する術式)を施行された.術後は洞調律が持続していた.Radialapproach術後24日目に臨床電気生理検査を行った.洞調律時および右心耳,下位右房,心房中隔前下方,右房後壁下方への電気刺激時に右房内のバスケットカテーテルで電位記録を行い心房内興奮伝導様式を検討した.Radial approachの切開線に沿った伝導ブロックの存在を示唆する所見として1)右房自由壁での伝導方向の反転,2)下大静脈と三尖弁の峡部への伝導遅延,3)右房後壁上部と下部の間のブロックと伝導方向の反転が認められた。右房の各部位で測定した不応期は210から250msで延長は認めなかった.心房早期刺激に対する心房筋の受攻性は低かった.洞機能回復時間は2.45秒と延長していた.
    以上の結果よりradial approach術後の洞調律維持の機序として興奮領域の狭小化が最も重要と考えられた.
  • 高月 誠司, 三田村 秀雄, 神吉 秀明, 佐藤 俊明, 品川 香, 小川 聡
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 92-98
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.3年前から動悸発作を自覚していたが,発作が頻回になったため他院を受診,発作性上室性頻拍の診断で当院に紹介入院となった.頻拍発作時の心電図ではQRSの後に逆行性P波を認め,ベラパミルおよびアデノシンで頻拍は停止した.電気生理学的検査を施行したところ,房室伝導のjump upを認めた.
    Isoprotereno1負荷下心房早期期外刺激で150bpmの上室性頻拍が誘発され,心房最早期興奮部位はdistal Hisであった.頻拍中心房単発刺激により一過性に室房ブロック(HAブロック)を生じたが,ブロック中もHH間隔は不変であった.頻拍は心室からの高頻度刺激により停止した.Upper commonpathwayを有するAVNRTを考え,Asp電位を指標にアブレーションを施行したが,その後も頻拍が誘発された.徐々にアブレーション部位をHis束近傍に寄せ,計10回のアブレーションを行い,頻拍は誘発されなくなった.現在まで頻拍の再発を認めていない.
  • 小松 隆, 中村 紳, 斎藤 栄太, 熊谷 浩司, 朴沢 英成, 西岡 修, 田巻 健治, 奥村 謙
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 99
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,女性.主訴は動悸.12誘導心電図にて右室後中隔伝導路の存在が示唆される△波,ならびに発作性上室性頻拍(PSVT)を認め,臨床心臓電気生理学的検査による検討では房室結節を順行伝導し,副伝導路を逆行伝導する房室リエントリー性頻拍が示唆された.右側後中隔マッピングでは最短AV間隔60msecと至適部位を選択できず,左側後中隔マッピングではAV間隔35msecならびに連続波の出現があり,ここで高周波通電を施行したが,副伝導路の恒久的途絶は得られなかった.その後,冠静脈洞内単極誘導電位同時記録を指標にして,さらに詳細なマッピングを施行したところ,中心静脈分岐部の約12mm心室側でAV間隔40msec,A/V比約0.8,△波先行度12msec,単極電位がPQS型波形を認める部位が得られた.左冠動脈造影の冠静脈相を併用することにより,電極先端を中心静脈内の心臓側壁に安定した固定が得られるのを確認後,厳密な抵抗値モニタリング下の低エネルギー通電にて,急性期合併症なく副伝導路の恒久的遮断が可能であった.以後,現在まで12カ月間無投薬下にて頻拍発作の再発を認めていない.
    本例のごとく,より心外膜側に存在する副伝導路であれば心内膜アプローチによる恒久的離断が困難な場合もあり,造影所見を併用しつつ中心静脈内アプローチによる恒久的離断も可能であることが示唆された.
  • 馬場 彰泰, 藤井 効, 吉川 勉, 三田村 秀雄, 小川 聡
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 100-104
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    非持続性心室頻拍(NSVT)を合併する左室機能不全例に対し,ICDの予防的使用が有効であるか注目されている.我々はすでに,約3割の拡張型心筋症(DCM)患者に細胞膜Na-K-ATPaseに対する自己抗体が存在すること,および本自己抗体を有する症例ではNSVTを高率に合併することを報告した.本検討ではさらに,抗Na-K-ATPase自己抗体と合併するNSVTの特徴とに関連がないか検討を加えた.【方法と結果】3連発以上の心室性期外収縮をNSVTとし,抗Na-K-ATPase自己抗体の有無をELISAにより検査した.NSVTを合併するDCM患者48例を自己抗体の有無により2群に分け,そのNSVTの特徴(総数,最大連発数,最速度)を比較した.服用薬剤,自覚症状(NYHA分類),血漿ノルエピネフリン値,心室性期外収縮総数に2群間で差はなかったが,抗体陽性群(n=21)で左室駆出率は高値を示した(32±10%v.s.25±8%,p<0.03).NSVT最速度には差を認めなかったが,NSVT総数および最大連発数は抗体陽性群で陰性群に比べ有意に高値であった(45±13v.s.52±39*,7±5v.s.11±8**,*p<0.05,**p<0.03).自己抗体の有無につき他の臨床指標により多変量解析したところ,左室駆出率とNSVT最大連発数が独立の予測因子であった.【結論】抗Na-K-ATPase自己抗体を有するDCM患者は,突然死のハイリスク群である可能性が示唆された.
  • 臼田 和生, 森田 裕子, 竹森 一司, 井内 和幸, 石川 忠夫, 畑崎 喜芳
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 105-111
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室頻拍(VT)波形がほぼ同型であったにもかかわらず,異なる大血管内でのカテーテルアブレーションが有効であった左脚ブロック型,下方軸を示すVT症例を経験した.症例1;12歳,男児.VT波形は右軸偏位+下方軸を呈し,V1V2誘導でrS型,V3誘導でR/S<1であった.右室流出路からは早期電位が認められず,肺動脈内で体表面心電図R波の立ち上がりに30ms先行する電位が記録され,ペースマッピングも一致した.この部位で高周波通電を開始したところ,VTと同一波形の心室調律が出現した後,VTは完全に消失した.症例2;12歳,男児.VT波形は症例1と同型でV1,V2誘導でrS型,V3誘導はR/S<1であった.心内マッピングでは,右室流出路からは早期電位が認められず,肺動脈内でVTのR波の立ち上がりに30ms先行する電位が記録されたが高周波通電は無効であった.カテーテルを大動脈内に挿入しバルサルバ洞周辺をマッピングしたところ,左冠尖内でR波の立ち上がりに50ms先行する電位が記録され,同部位でVT中に高周波通電を行ったところ約3秒でVTが停止した.V1,V2誘導でrS型,V3誘導でR/S<1を呈する下方軸型特発性VTの中に肺動脈や大動脈の起始部でのアブレーションが有効である場合があり,通電部位の決定には細心の注意が必要である.
  • 上山 剛, 桜田 春水, 岡崎 英隆, 杉本 武史, 高橋 玉奈, 西崎 光弘, 手島 保, 野村 周三, 柳瀬 治, 本宮 武司, 平岡 ...
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 112-117
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は21歳男性.中学生時に持続性心室頻拍(VT)を指摘され,精査加療目的で入院となった.心電図は,比較的QRS幅の狭い右脚ブロック型左軸偏位のVTで心拍数110/分を呈していた.本頻拍はベラパミルによる抑制効果を認めたが,リドカイン,プロプラノロール,ATPは無効であった.EPSではペーシングによる再現性のある誘発・停止は不可能で,entrainmen現象は認めなかった.また,明らかなoverdrive suppressionやwarm up現象もみられなかった.マッピング中にbump現象がみられた左室中隔基部寄りの左脚後枝に相当する部位でのペーシングでVTに極めて類似した波形が得られ,同部位での通電後VTは出現しなくなった.以後7カ月VTの再発を認めていない.本頻拍は,その薬理学的特徴およびEPS所見から左脚後枝付近を起源とし比較的膜電位の浅い細胞群から生じた自動能が機序として考えられた.
  • 吉澤 直人, 庭野 慎一, 犬尾 公厚, 原 英幸, 森口 昌彦, 山岸 高宏, 北野 義和, 和泉 徹
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 118-126
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は心筋梗塞既往のある67歳男性.平成10年8月動悸にて近医を受診し,心電図上160/分の右脚ブロック型の持続性心室頻拍(VT)を認めた.VTはプロカインアミド600mg静注により心拍数が120/分まで低下した後停止した.
    心臓電気生理検査において,心室単発早期刺激ではどの刺激部位からもVTのresetはできなかった.右室心尖部頻回刺激では長い周期長からfu1lpacing波形を呈し融合波形は認められなかったが,刺激後の復元周期は刺激周期長の短縮に応じて短くなり刺激周期長+20~60msであった. 高周波焼灼においてbest pace-map部位(10/12誘導)のVT中の電位は体表面QRSに25ms先行していたが同部への通電ではVTは停止せず,局所電位とは分離した先行電位(-50ms)のある部位での通電でVTは停止した.有効通電部位はbest map部から約1.5cm離れており,同部の刺激波形はVT波形とは異なっていた.以上の所見より周辺心筋から電気的に保護されたリエントリー回路が,限定された比較的長い連絡路のみで他部と連結している起源の存在が示唆された.
  • 浅川 哲也, 望月 淳, 松村 国佳, 望月 弘人, 斉藤 順一, 青沼 和隆, 家坂 義人
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 127-132
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:36歳,女性.数カ月前より労作時の動悸発作が出現するようになり当科受診,安静時心電図にてB型WPW波形を示し,ホルター心電図にて運動中,253/分のwide QRS tachycardiaと200-250/分のnarrow QRS tachycardiaを認めた.電気生理学検査では,心室刺激にて冠静脈洞入口部を最早期とし,減衰伝導特性を示す伝導時間の長い室房伝導を認め,またPara-Hisian pacingにてS-A時間はwide QRS>narrow QRSであった.心室刺激にて比較的容易にlong PR′型のnarrow QRS tachycardiaが誘発され,その際の心房波の心房内興奮順位は心室刺激時と同一であった.以上より本頻拍を非通常型房室結節回帰性頻拍と診断した.心室刺激にて心房最早期興奮部位をマッピング中,洞調律時A-V=50msec, V-delta=20msec,ケント電位を認める部位を認め, 同部位にて25W, 55℃で通電を始したところ,2.9秒でデルタ波が消失し,60秒間通電した.その直後からイソプロテレノール負荷を含めいかなる心室刺激にても室房伝導は認めず,1回の通電にてケント束の順伝導とslow pathwayの逆伝導が焼灼されたものと思われた.
  • 林 淳一郎, 阿部 邦彦, 本田 陽一, 茂木 純一, 山根 禎一, 杉本 健一, 立石 修, 望月 正武
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 133-138
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    小児期より不整脈を指摘されていた23歳男性.安静時心電図では,毎分心拍数35回の洞徐脈とPQ延長を認め,ホルター心電図より,昼夜とも数秒から数分にわたる,incessant typeの上室性頻拍であった.洞調律時のAH時間は380msと延長し,また,頻拍中のAH,HA時間はそれぞれ,410ms,180msであった. 電気生理学的検査で左房後中隔の潜在性ケント束を上行する房室回帰性頻拍と診断し,1回の高周波通電でケント束焼灼に成功し,頻拍は根治された. 高位右房頻回刺激後の洞結節回復時間(SRT)を焼灼前に調べると,毎分140拍,160拍でそれぞれ4,500ms,4.450msであった.焼灼後のSRTは,2,250ms,2,260msと短縮し,さらに,atropille 1mg負荷後は,1,150ms,900msと著明に短縮した.また,atropine負荷後の心拍数は,毎分50拍から74拍へ増加した.焼灼2日後と3カ月後を比較した平均心拍数は,毎分53拍から62拍へ増加し,心拍変動解析は,0.15-0.40Hzの高周波成分で,平均3,165.0msec2 から867.6msec2 へ変動した.
    外因性のSRT延長から,焼灼後,SRT短縮が認められた.よく知られたことに,後中隔焼灼後の副交感神経活動は一過性に抑制される.しかし,今回,術後の副交感神経活動は亢進していた.その理由は,頻拍抑制のために過緊張していた副交感神経活動の緊張緩和による結果と推察された.
  • 塩田 邦朗, 中沢 潔, 松本 直樹, 桜井 庸晴, 高木 明彦, 戸兵 雄子, 長田 尚彦, 三宅 良彦, 村山 正博
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 139-146
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Burgada症候群は安静時多形性心室頻拍(poly VT)が臨床的特徴の一つである.今回,運動誘発型の単形性VT(mono VT)を認めたBrugada症候群を経験した.
    【症例】36歳男性.睡眠不足や過労回復期に前失神を伴う動悸を繰り返し,mono VTが確認された.通常の検査およびカテーテル検査にて器質的心疾患は否定された.トレッドミル試験で負荷終了後約1.5分に,右脚ブロック+ST上昇のBrugada型波形を呈し,高頻拍mono VTが発現した.VTの心拍数は徐々に低下し自然停止した.器質的心疾患は証明できなかった.加算平均心電図で心室遅延電位(LP)は陰性であったが,isoproterenol(ISP)投与時,陽性となった.電気生理学的検査では,poly VTのみ誘発が可能,ISP投与下では右室流出路(RVOT)起源のmono VTのみ誘発可能で,一部はmono VTからpoly VTに移行した.誘発パターンはリエントリーが疑われた.右室流出路に拡張期fragment電位が出現した.【まとめ】Brugada症候群と特発性VTが合併したと思われる一例を経験した.注目すべき所見として,ISP誘発LP陽性化とRVOTのISP誘発fragment電位の出現があり,特発性VT,Brugada症候群との関連が疑われた.また,ISP誘発LP陽性化は特異な所見と考えられ,機序についての検討が必要と思われた.
  • 川村 正樹, 副島 洋行, 柚本 和彦, 嶋田 一成, 玉木 利幸, 加藤 健一, 西村 重敬, 河村 俊治
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 147-152
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳女性.感冒症状に引き続き失神発作出現.心電図上QT延長とTorsades de Pointes (TdP)を認めた.超音波検査では左室内腔拡大・び漫性の壁運動低下・心筋肥厚を認め臨床経過より急性心筋炎と診断した.一時的心房オーバードライブペーシングによりTdPは抑制された.enalaprilの内服を開始し,約2週間の安静臥床後ペーシングを中止したがTdPは認めなかった.さらにcarvedilolを開始・漸増し,4週間後には左室内腔拡大と壁運動の改善を認め,QT間隔も正常化し,心室性期外収縮も減少した.冠動脈造影では狭窄を認めず,また心筋生検では非特異的な変性所見を認めた.4カ月後には左室駆出率はほぼ正常化した.急性心筋炎の心電図異常には伝導障害や心室性不整脈等があるが,本症例はQT延長とTdPを主徴とし,良好な経過をたどった稀な症例であり有意義と考え報告した.
  • Activation recovery intervalを用いた検討
    南家 俊彦, 中沢 潔, 桜井 庸晴, 新井 まり子, 松本 直樹, 塩田 邦朗, 木村 みどり, 龍 祥之助, 村山 正博
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 153-158
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:特発性心室細動(IVf)の発現要因として一過性自律神経緊張の関与が推定されている.本研究では,運動負荷時の自律神経緊張の一過性変化がIVfの心室再分極過程にどのような影響を与えるのかを検討した.対象:器質的心疾患を否定したIVf群9例と健常者群13例.方法:再分極の指標として,Activation recovery interval(ARI)を用いた.健常者とIVfの非発作時にマスター二階段試験を施行し,通常のV4誘導心電図を運動負荷前,直後,1,3分後に各10秒間,ディジタル記録した.パソコンでRR間隔およびQRS波の最小微分値(dV/dt)とT波の最大dV/dtからARIを求め,先行RR間隔とARIとの関係をIVf群と健常者群で比較した.結果:(1)RR聞隔(X軸)とARI(Y軸)の関係はいずれも有意な一次回帰直線を示し,健常者群:Y=(0.18±0.04)X+(41.0±39.8),r=0.89±0.07,IVf群:Y=(0.14±0.03)X+(69.4±14.6),r=0.83±0.07であった.IVf群の一次回帰直線の傾きは健常者群に比し有意に小さかった.(2)RR間隔は健常者群:826±142msecとIVf群:888±72msecで有意差はなかった.総括:IVfでは運動負荷時の先行RR間隔とARIの一次回帰直線の傾きは,健常者に比して有意に低値であった.これはQT延長症候群の運動負荷時に心拍増加に伴うQT間隔の減少がみられない現象に類似しており,IVfにおける一過性の自律神経緊張不均衡に起因する再分極過程の異常を示唆する所見と考えられた.
  • 清水 渉
    1999 年 31 巻 Supplement5 号 p. 159-174
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性QT延長症候群は,QT時間の延長とTorsades de Pointes(TdP)を主徴とする疾患で,現在までにイオンチャネル機能を司る5つの遺伝子異常が報告されている.一方,イヌ心室筋において,心内膜,心外膜細胞とは異なる性質を有するM細胞の存在が1991年に報告されて以来,種々の心電現象や不整脈発生におけるM細胞の役割が注目されている.M細胞,心外膜,心内膜細胞の活動電位と,貫壁性双極心電図(ECG)の同時記録が可能な動脈灌流左室心筋切片を用いた検討によれば,ECG上のT波終末点は最長のM細胞の再分極点に,T波頂点は心外膜細胞の再分極点に一致し,心内膜細胞の再分極点は,M細胞と心外膜細胞の中間となることが明らかとなった.また,イオンチャネルを修飾する薬剤を用いたQT延長症候群モデルにより,本症候群の各遺伝型(LQT1,LQT2,LQT3)に特徴的な異常T波の成因には,貫壁性,すなわち心外膜細胞- M細胞-心内膜細胞間の電位勾配が密接に関与することが明らかとなった.TdPの機序としては,1発目の心室期外収縮は,M細胞または心内膜側プルキンエ細胞を起源とする早期後脱分極からの撃発活動,2発目以降は,M細胞活動電位持続時間の著明な延長に基づく貫壁性再分極時間のバラツキ(transmural dispersion of repolarization)の増大による,リエントリーが示唆された.さらに,各遺伝型におけるペーシング治療の有効性や,β 遮断薬,Na+遮断薬,IK-ATP開口薬などの各種抗不整脈薬の特異的有効性も明らかとなった.
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