心臓
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35 巻, 3 号
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  • 長田 克則, 今泉 勉
    2003 年 35 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 半田 暁司, 羽野 卓三, 西尾 一郎, 武内 崇, 上村 茂, 麦谷 憂子, 寺坂 雅子, 守田 瑠璃子
    2003 年 35 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】心房中隔欠損症(ASD)の治療方針の決定には肺体血流比(Qp/Qs)が重要で,通常侵襲的なoximetry(oxi)法で舞出される.MRIではphasecontrast(PC)法を用いると,非侵襲的に血流量を評価できる.PC法で左室,右室の心拍出量を測定し,oxi法と比較した.また,ASDシャント血流量を直接PC法で評価した.
    【対象と方法】他の先天性心疾患の合併のないASD21例を対象に,MRIでspin echo法,左室長軸および四腔断面のシネ画像を含む通常の撮像を行った後,PC法で上行大動脈,主肺動脈を撮像し,それぞれ左室,右室の1回拍出量(SV)を測定した.この比をQp/Qsとし,oxi法の値と比較した.また,ASD部においてPC法で撮像し,シャント血流量を測定した.この値と右室と左室のSVの差を比較した.
    【結果】PC法による左室SVは,左室長軸のシネ画像によるSVと良い相関を示した(r=0.94).PC法によるQP/Qsとoxi法によるQP/Qsの回帰直線は,勾配が1.05,相関係数が0.76と有意な相関を認めた.右室と左室のSVの差とPC法によるシャント血流量も有意な相関を示した(r=0.89,勾配1.36).
    【考按】PC法は対象とする血管の断面内の平均の血流速度を測定しており,正確に評価できる.PC法により非侵襲的に左室,右室のSV,短絡血流量,肺体血流比の正確な評価が可能である.
  • 九鬼 新太郎, 木村 桂三, 和中 佳生, 久保 隆史, 財田 滋穂, 森脇 千都, 濱田 昌範, 馬場 章, 津田 和志, 友渕 佳明, ...
    2003 年 35 巻 3 号 p. 164-169
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳男性.2001年4月初旬に嘔気,嘔吐を伴う発熱が出現していた.その後,嘔気は消失していたが,微熱は持続していた.5月初旬心窩部痛が出現し,入院した.心電図,I,II,III,aVF,V3~V6でのST上昇を認め,心エコー図で後壁から側壁にかけての壁の肥厚と同部位の収縮低下を認めた.入院時の血液検査ではCPK439IU/l,好酸球は1700/mm3であった.右室心内膜下心筋生検では間質主体の好酸球浸潤を,電顕では好酸球からの脱顆粒を認め,好酸球増多性心筋炎と診断した.入院後,末梢好酸球は著増し8300/mm3となったが,心エコー図での壁の肥厚および収縮低下は急速に改善した.副腎皮質ステロイドは使用せずに経過を観察したが,約6カ月後末梢好酸球は正常となった.
    本疾患のなかには本例のようにステロイド未使用で,末梢好酸球が著増するにもかかわらず,心機能が急速に緩解する例もあると考えられる.
  • 村上 智明, 八鍬 聡, 上野 倫彦, 南雲 淳, 小田川 泰久
    2003 年 35 巻 3 号 p. 170-174
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    両方向性グレン手術・共通房室弁置換術後,重症心不全の乳児に対するべ一タ遮断薬導入経過について報告する. 症例は5 カ月の女児. 診断は{ A ( I ) ,D,D}無脾症,完全型心内膜床欠損(C型),両大血管右室起始,肺動脈狭窄,心房中隔欠損,右大動脈弓.3カ月時より共通房室弁逆流が増悪し,5カ月時両方向性グレン手術・共通房室弁置換手術を施行した.術後重篤な心不全を呈し,アンジオテンシン変換酵素阻害薬の導入のみでは静注薬から離脱できなかったため,べータ遮断薬を導入することとした.カルベジロールを0.1mg/kgから開始し,1週間ごとに0.1mg/kgずつ増量した.1.0mg/kgを目標としたが,塩酸オルプリノン,カルペリチドを併用することにより予定通り導入し得た.塩酸オルプリノン減量時に心不全の増悪を認めたため,ピモペンダンを併用し,塩酸オルプリノンから離脱し得た.
    このような複雑な血行動態の重症心不全においてもべータ遮断薬が有効であり,その導入においてフォスフォジエステラーゼ阻害薬,心房性ナトリウム利尿ペプチドなどによるサポートは有用であると考えられた.症例の集積により,小児における複雑な血行動態に対するべータ遮断薬療法を確立していく必要がある.
  • 古寺 邦夫, 桑原 治, 川端 英博, 森山 裕之, 小舘 満太郎, 榛沢 和彦
    2003 年 35 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,男性.咳嗽,喀痰,右腰背部痛を主訴に当科受診. 胸部X 線写真では特記すべき所見はなかったが,肺癌の精査を希望し胸部CTを施行,左横隔膜部に3.5×2.0cmの腫瘤を認め呼吸器外科に紹介された.胸部MRIでは心尖部に心室瘤を疑わせる所見があり縦隔腫瘍も含めた精査目的で同科入院,心精査のため当科紹介受診となった.
    心エコーでは前壁心尖部に径約1 c m の瘤を認め,カラードップラーでは収縮期に一致して入口部より左室内腔に向かう異常血流を認めた.エルゴメーター負荷201Tl心筋SPECTでは心尖部より指状に突出する201Tl集積を認めた.確定診断のため心臓カテーテル検査を施行,左室造影では前壁心尖部より左側方へ指状の内腔突出(最大径1.3cm,全長約6cm)を認め,その特異な形態より筋性の先天性左室憩室症と診断した.冠動脈造影では器質的狭窄を認めなかった.
    先天性左室憩室症はまれな心奇形で,他の合併奇形により生後早期に診断されることが多く,本症例のように無症状で成人期に診断される例は極めてまれとされる.時に破裂,血栓塞栓症などの重篤な合併症が報告されているが,孤立性の本症の自然予後は不明であり,手術適応も確立されたものはない.本症例では患者の希望もあり慎重に経過観察の方針とした.日常診療のなかで成人の未診断例が存在している可能性を示唆する症例と思われ報告する.
  • 廣 高史
    2003 年 35 巻 3 号 p. 185-203
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈粥状プラークの中には破裂しやすい不安定なもの(不安定プラーク:vulnerable plaque)と,破裂しにくい安定プラークがあるとされている.それを臨床的に破裂する前に同定しようという試みが近年勢力的に行われている.冠動脈壁を生体で観察することのできる方法のひとつに血管内エコー法(IVUS)がある.IVUSでは低輝度プラークに不安定プラークが多いとされているが,その所見だけではオーバーラップが大きく,どのプラークが今にも破綻しやすい不安定なプラークかを決定するには限界がある.そこで最近IVUS信号から得られた各組織のIB値,減退定数,超音波入射角度依存性などをカラーマッピングして,プラークの線維性被膜や脂質コアをビジュアルに同定する手法が開発されるようになったが,いずれも汎用されるには至っていない.しかしながら信頼できる方法が開発されプラークの不安定性の評価が可能となれば,高度狭窄を有さない病変であっても強力な内科治療とともに早期の冠動脈インターベンションを考慮すると言った新しい冠動脈疾患の治療戦略の選択が可能となるだけでなく,その治療の有効性を客観的に評価することができるようになる点において,臨床的意義は大きいと考えられる.
  • 竹中 克
    2003 年 35 巻 3 号 p. 204-214
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Strainとは,局所心筋の変形度で,超音波によりヒトの心筋でも計測可能となった.となりの局所の影響や心臓全体の動きの影響をうけない指標である.臨床応用の試みについて解説する.
  • 伊藤 浩
    2003 年 35 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症例の中に,冠動脈インターベンション(PCI)により冠狭窄を解除したにもかかわらずslow flow(TIMI-2)を示す症例が存在し,以下の二つの機序が考えられている.
    (1) 末梢動脈の栓塞: 不安定プラークに対してPCIを行うことにより血栓やプラーク内容物で末梢塞栓を起こし,心筋障害や灌流不全を増悪する可能性が指摘されている.Doppler guidewireで冠動脈血流を観察すると緩徐な血流を認める.血栓吸引療法による血栓負荷の軽減,抗血小板療法,薬剤による抵抗血管の拡張が治療として有効である.
    (2) 毛細血管障害: 心筋梗塞領域に認められるnoreflow現象は毛細血管レベルでの循環不全を指す.心筋コントラストエコーでは染影欠損を示す,そのサイズは心筋壊死に陥った領域とほぼ一致する.Doppler guidewireで冠動脈血流を観察すると,収縮期逆流波と拡張期順行性血流の急峻な減速が特徴的なto-and-fro波形を示す.治療としてはアデノシン(ATP)の冠注やKATP開口薬であるニコランジルの持続静脈投与が有効である.
    急性心筋梗塞に対するPCI後に認められる微小循環障害の機序は症例により異なり,病態に合わせた治療戦略の決定が重要である.
  • 穂積 健之, 吉川 純一
    2003 年 35 巻 3 号 p. 224-232
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年の経胸壁カラー・ドプラ法を用いれば,左前下行枝(LAD)の冠血流シグナル描出が可能となった.このため,冠血流上へのサンプル・ボリュームの設定が容易となり,ベッドサイドでの冠血流評価が可能となった.
    経胸壁ドプラ法により計測されるLAD近位部以遠での冠血流速・冠予備能は,ドプラ・ガイド・ワイヤーによる計測値と良好に一致し,カテーテル室でされるのと同様の冠血流速・冠予備能評価が非侵襲的に可能である.
    経胸壁ドプラ法にてLADの冠予備能を計測すると,有意狭窄例での冠予備能は1.5±0.2であり,有意狭窄のない例での冠予備能(2.6±0.4)と比べ有意に低値であった.冠予備能2.0以下であれば,感度92%・特異度86%と,精度高く有意狭窄の診断が可能であった.また,LADにおけるPTCA施行部位において,カラー・ドプラ法での折り返し部位(狭窄部)での血流速と,その手前の非狭窄部血流速を計測すると,非狭窄部/狭窄部の血流速比が0.45以下であれば,感度86%・特異度93%と精度高く再狭窄診断が可能であった.
    経胸壁ドプラ法を用いた冠予備能計測から,冠微小循環の評価も可能である.健常例での高脂肪食摂取前後の冠予備能を計測すると, 平均4.02 から3.30と有意な低下がみられた.また,閉経前女性で血中エストロゲン濃度の周期と冠予備能の関係を検討すると,エストロゲン濃度の低い時期には冠予備能は3.7±0.8であるのに対して,エストロゲン濃度の高い時期には4.8±0.4と有意な上昇がみられた.
    経胸壁心エコー・ドプラ法による冠血流評価は,これからのベッドサイドでの重要な検査のひとつとなっていくと期待される.
  • 別府 慎太郎
    2003 年 35 巻 3 号 p. 233-242
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋コントラストエコー法は,冠注法から発達し,現在では経静脈法が可能となっている.しかし,超音波による気泡からの反射と超音波による気泡崩壊は相容れないところであり,その普及の妨げとなっている.しかし,微小気泡が超音波で破砕されることを逆手にとって利用すれば,非常に新しい知見に遭遇する.
    低音圧を利用したリアルタイム心筋コントラストエコー法では,一瞬の高音圧照射が心筋染影をリセットでき,その後の輝度回復速度が微小循環の血流速度にほかならない.冠動脈狭窄の診断には冠拡張薬によって生じる健常部と狭窄血管領域での血流速度の増加程度の差を画像処理すると簡便に心筋シンチと近似した画像になり,臨床への応用が期待できる.心筋染影がリセットできる利点は,微小循環レベルでの側副血行路を明確に表示できる点にも活かされる.イヌ冠動脈を結紮直後に心筋染影をリセットすると,その後の新たな心筋染影が即ち側副血行路の存在を意味する.これは微小側副血行路と考えるべきもので,この血流速度は遅く,また体血圧に依存することも明らかとなった.
    気泡の超音波に対する脆弱性は別の方法にも利用される.中音圧での照射では,毛細血管レベルでの血流速より速い気泡は壊れない.これを利用すると心筋細動脈叢の映像化が可能となった.
    このように,これからの心筋コントラストエコー法は心筋灌流の病態生理の解明に大きな力を発揮するものと期待される.
  • ポップ リチャード L
    2003 年 35 巻 3 号 p. 243-251
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心血管疾患の概要を,スタンフォード大学生体工学プログラムの一員として述べる.今日,冠動脈内腔と冠動脈壁の動脈硬化を描出する技術を開発中である.今後,冠動脈インターベンション後の再狭窄の問題は解決し,冠循環に酸素や栄養分を供給する新しい方法や心筋梗塞の進展を抑制する新しい方法が実現されるであろう.さらに,左室リモデリングを制御する方法,不整脈を予防する方法,経皮的に弁修復および弁置換する方法や,障害心筋を再生する方法を開発中である.
    心エコー図は心血行動態を把握するための高度な方法として使い続けられるだけでなく,新しい治療法の効果を評価する主要な手段として重要になるであろう.また,心エコー図は心内腔でのさまざまな処置の理想的な誘導方法として,また,治療の手段としても使われるようになるであろう.
    冠動脈疾患に対する心エコー図の明確な役割は, 局所壁運動異常の定量化,局所および心筋内灌流の測定,冠動脈狭窄や再狭窄の正確な機能的重症度評価,動脈硬化性変化の病態生理学的観点に立った詳細な画像化などである.うっ血性心不全を治療する医師は,収縮能および拡張能を正確に測定し,その結果を連続的にわかりやすく閲覧できることを望んでいる.両室ペーシング,心室形状とサイズの制御, 多剤の効果を評価するといった新しい試みでも,その治療効果を包括的に理解するためには,このような情報が必要とされている.これを容易にするためには,画像情報も非画像情報も,分析,遠隔操作および統合可能な形でデジタル化し,患者の個人記録に還元されなければならない.
    すでに明らかなように,現在行われているほとんどの心臓外科手術は,完全に経皮的な修復術および置換術に取って代わられることになる.弁置換,弁修復,人工物挿入および不整脈起源の修正治療などにおいて,いくつかの革新的方法が臨床的に検討されている.さらに,部位特異的ペーシングのためのペースメーカリード挿入,血管内デバイス挿入や幹細胞を含む治療用化合物の心内膜心筋への導入により,より優れた誘導方法が求められている.
    心エコー図では,これらの目的に合致した新しいアプローチが必要である.連続的監視のための小型経食道心エコー図と"subxyphoid epicardial"画像のための胸腔チューブの開発は,そのための進歩である.現在の心腔内エコー装置は,カテーテルやそのほかのデバイスを心腔内の特定の位置に留置するために役立っている.超音波イメージングの有用性と今後の重要性は,革新的な製品化,そのほかの方法と比べた低コスト性の保持および心エコー図に不慣れな医師への教育方法の改善にかかっている.
    すべての画像技術がこれから直面する課題は,経費削減,携帯性,画像の三次元化,画像を障害する人工デバイスの増加であろう.我々の領域,すなわち心疾患の診断と治療と,それ以外の領域の双方で今後の革新が期待されている.超音波画像はコンピュータの技術的進歩による恩恵を間違いなく受けるであろう.光学および光通信学,ナノテクノロジーにおける進歩は,これまで想像の領域であった新たな課題と解決策をもたらすであろう.
    生体工学とは,一連の科学技術の知識を利用して異なる科学分野の問題に取り組む学問である.例えば,材料科学の新しい技術は心臓内外科手術と組織再生の問題に関わっている.また,ナノテクノロジーの利用は,これまで考えも及ばなかった植み込み型センサーの製作を可能にするかもしれない.我々は,大幅に進歩したコンピュータの威力が,三次元画像技術,ロボット工学や組織内における力学的解析に,多大な影響を与えうることを理解している. 我々は,組織の石灰化や脱石灰化のような生物学上のプロセスを理解するため,最新の科学的方法の有用性に注目している.また,生命の全システムを制御している遺伝子プロセスの解読が,心血管疾患の深い理解に対して驚くべき影響力を持つことも理解している.我々は,心血管領域で発見と革新の劇的な時代にいるのである.
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