症例は68歳女性.労作時息切れを認め,近医より僧帽弁閉鎖不全症の精査のため当科を紹介され,入院となった.心尖部にLevine IV度の全収縮期雑音を聴取した.連続性雑音は聴取しなかった.胸部X線検査では,CTR61%,肺動脈拡張,両心房および左室の拡大,大動脈の石灰化を認めた.心電図では,心房細動,左室肥大を認めた.経胸壁心エコー検査,心臓カテーテル検査にて重症僧帽弁閉鎖不全症と診断し,手術適応と判断した.
2003年1月15日僧帽弁形成術を予定し開心術を施行した.人工心肺の作動のため脱血を開始し,上行大動脈を遮断直後,肺動脈の拡張を認めた.直ちに経食道心エコー検査を施行したところ動脈管開存症の合併が認められ,手術は中止された.
再度心臓カテーテル検査を施行したところ,肺/体血流比は1.3で,大動脈造影にて動脈管径は約3mmであった.コイル塞栓術を施行し,3カ月後の大動脈造影で僅かな短絡の残存を認めたが,その後当初予定していた僧帽弁形成術を施行した.その後の経過は順調である.
以上,重症僧帽弁閉鎖不全症合併のため診断が因難であった成人動脈管開存症の1例を報告する.
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