心臓
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38 巻, Supplement4 号
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  • 柚須 悟, 池田 隆徳, 中村 健太郎, 三輪 陽介, 宮越 睦, 榊 桂, 阿部 敦子, 石黒 晴久, 塚田 雄大, 米良 尚晃, 四倉 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 3-8
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.主訴は動悸発作. WPW症候群と診断され,薬物療法が行われたが改善しないことより, カテーテルアブレーション目的で当院紹介入院となった. 誘発された頻拍は心房波と心室波が 1:1 に対応し,頻拍中の心室刺激で室房伝導の減衰伝導が認められなかったため,ケント束を介する順行性房室リエントリー性頻拍と診断された. 最終的には異なる4種類の頻拍を呈し, 2種類は正常の幅狭い QRS形態の頻拍で, 一つはQRS後にノッチを認め, もう一つは認めなかった. 残りの2種類は左脚ブロック型または右脚ブロック型の幅広い QRS形態の頻拍であった. 4種類の頻拍を呈した原因は, 複数存在するケント束の乗り換え現象によるものであり, 介するケント束によって QRS形態も変化したと考えられた. 計4本のケント束(後壁2本, 側壁1本, 前側壁1本)に対してアブレーションを行い, 計3箇所のアブレーションで室房伝導の消失と頻拍の根治に成功した. 後壁のケント束に対しては1回の通電で2本同時に焼灼されたことから, ケント束は縦解離を来していたと考えられた.
  • 吉原 弘高, 佐伯 公子, 廣瀬 信, 登根 健太郎, 板倉 靖昌, 飯塚 大介, 久保 隆史, 新田 正光, 芝山 弘, 加納 寛, 倉持 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 9-14
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.右室頻回刺激での心房波最早期は高位右房とヒス束部でほぼ同時に記録されたが,発作性上室性頻拍(PSVT)は右房からのプログラム刺激でjump upを伴いあるいは伴わずに誘発され,頻拍中は心拍ごとに頻拍周期が変動した.心房波最早期も高位右房の場合とヒス束部の場合とが混在した.しかしParahisian pacing法によりケント束の存在を確定し,三尖弁輸に留置したHaloカテーテルの電位からは側壁から後壁,中隔にかけてのケント束は否定され,前壁paraseptalのマッピングにより右側superoparaseptalに最早期心房波を認めた.右室刺激下に同部位で通電し,約3.5秒でケント束の離断に成功した.通電後頻拍の誘発が不能となり,Parahisian pacig法でケント束の離断を確認した.結果的に頻拍周期と心房波最早期部位の変動はケント束と房室結節の二重伝導路の間でfigure 8に旋回したためと考えられた.本症例はケント束がまれなsuperoparaseptalに存在し,また複数の房室間伝導路を複雑に旋回する頻拍機序の同定に苦慮したが,Parahisian pacig法が非常に有用でありカテーテルアブレーションに成功した.
  • 芦野 園子, 渡辺 一郎, 小船 雅義, 川内 千徳, 山田 健史, 小船 達也, 大久保 公恵, 橋本 賢一, 進藤 敦史, 杉村 秀三, ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 15-20
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    上室性不整脈の発生源として,近年,冠静脈洞(coronary sinus;CS)内筋束(CS musculature)の役割が注目されているが,CS musculature電位と左房筋電位の分離が困難な症例が多いため,電気生理学的検討は十分ではない.房室結節回帰性頻拍症例において心房早期刺激法時に単極および双極記録を行い,興味あるCS筋束電位の伝播様式を観察したので報告する.症例は55歳,男性.発作性上室性頻拍に対し電気生理検査を施行.洞調律時のCS musculatureの興奮伝導において, CS入口部(CSos)から遠位側へ向かう反時計方向伝導と,CS5番部位からCSosへ向かう時計方向伝導の二方向伝導を観察した.高位右房(右心耳)から単発早期刺激を行うとCS電位はCSosから遠位側へ向かう一方向性伝導のみとなった.さらに2連早期刺激を加えるとCS5-6電極部位で伝導遅延が生じ,興奮がCS近位部へとUターンする現象がみられた.
  • 市川 理恵, 谷口 和夫, 住友 直方, 福原 淳示, 知念 詩乃, 平野 幹人, 阿部 修, 宮下 理夫, 金丸 浩, 鮎沢 衛, 唐澤 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 21-26
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は15歳,男児.11歳時に運動中に動悸を訴え,カテーテルアブレーション(RF)目的で入院した.トレッドミル運動負荷試験では心拍数240の頻拍が誘発され,narrow QRS(SVT)と右脚ブロック,左軸偏位型のwide QRSの頻拍が交互に移行する所見が得られた.電気生理学的検査ではSVTは右室後側壁副伝導路を逆伝導,房室結節を順伝導する房室回帰性頻拍(AVRT)で, wide QRS頻拍中は2~3:1室房伝導でも頻拍は持続し心室頻拍(VT)と診断した.SVTはVTへと自然に移行した.CARTO systemを用いてAVRTは最早期心房興奮部位である三尖弁7時の位置,VTはPurkinje電位を認める部位の通電で根治した.アブレーション後の検査で,房室結節二重伝導路も認めた.本例はVTとSVTが同時に起こり(double tachycardia),またこれらが相互に移行する稀な症例と思われた.
  • 佐々木 康之, 笠井 俊夫, 高橋 済, 竹内 崇博
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 27-34
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    電気生理学的検査およびカテーテルアブレーションにて確認した6例の左室流出路近傍起源心室頻拍症例を報告した.1例は,左バルサルバ洞近傍のいわゆる左室流出路心外膜側起源であり,4例は左室流出路心内膜側左線維三角近傍起源であり,残り1例は,心筋内起源と考えられた.心室頻拍の発生起源部位が近い僧帽弁輪起源心室頻拍のanterolateral typeとの異同,類似性,呼称について,考察を加えて,報告した.
  • 中野 恵美, 原田 智雄, 中沢 潔, 長田 圭三, 高木 明彦, 岸 良示, 田中 修, 西尾 智, 松田 央郎, 下郷 卓史, 水野 幸 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 35-40
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.主訴は動悸.高血圧,高脂血症にて近医通院中,健診にて心室性期外収縮(PVC)二段脈を認め当院へ紹介.外来ホルター心電図にて総心拍数131.915拍,PVC 49.243拍/日(最大3連発)認め,2005年8月23日カテーテルアブレーション目的にて入院.体表面心電図上PVC波形は,完全左脚ブロック型,下方軸,移行帯はV4~5で,二段脈を呈した.
    心臓電気生理検査およびカテーテルアブレーション:PVC波形より起源を右室流出路と推定し,リング状20極カテーテル(直径24mm)を右室肺動脈弁境界部に留置した.PVC最早期興奮部位は肺動脈弁上部中隔前壁(5-6双極電位)で,QRS波より30msec先行した.同部位にてperfect pace mapが得られ,1回の高周波通電にてPVCは消失した.カテーテルアブレーション後,外来にてPVCは出現せず,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は99.9から6.6まで減少した.
  • 宮地 晃平, 内藤 滋人, 夛田 浩, 〓野 健一, 田所 寿剛, 山田 実, 橋本 徹, 大島 茂, 谷口 興一
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 42-49
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.2005年10月2日より呼吸苦が出現. 10月5日に近医を受診, 心室頻拍(VT)を認め,加療目的にて当科紹介となった.来院時,著明な低酸素血症を認め,人工呼吸管理とした.VTは右脚ブロック,左軸偏位を呈し,薬剤抵抗性のため電気的除細動(DC)を必要とした.その後はVTの出現は認めず,全身状態は改善を認めた.心エコーにて回旋枝領域の壁運動低下を認め,心筋梗塞が疑われた,人工呼吸より離脱を試みたが,第8病日,再びVTが出現.波形は以前と同様であったが,すぐに血圧が低下した.第9病日よりelectrical stormとなり(計7回DC施行),同日,緊急ablationを施行した.
    VT時は血圧が保てなかったため,CARTOsystemを用いて洞調律下にvoltage mapを行った.左室基部側壁に搬痕(scar) 領域を認め, その周囲にdelayed potential(out of QRS potential)を認めた.scar領域から僧帽弁に向かいliner ablationを施行後,さらにその周囲のdelayed potential が記録される部位にて,pace mapを参考にしながらablationを追加した.心室3連刺激にてVTが誘発されないことを確認し,術終了とした.
    以後,VTの出現なく経過し,人工呼吸よりの離脱が可能となった.ICD植え込み後に,独歩退院した.
  • 荒川 鉄雄, 鈴木 誠, 一原 直昭, 長堀 亘, 大野 正和, 吉川 俊治, 佐藤 俊一, アルゴハリ マグディー, 松村 昭彦, 橋本 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 50-54
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.2001年7月に完全房室ブロックにて,VDDペースメーカー植え込み術を施行され,2004年6月のペースメーカー外来までは異常を認めなかった.同年9月,マンモグラフィ施行後より労作時に脈拍が上昇しないと感じていたが,日常生活に支障がないため経過観察していた.2005年6月21日,定期ペースメーカー外来にて,胸部X線上リードの完全断裂および,リード断端の上大静脈への落ち込みが確認され,加療目的で入院となる.断端リードを抜去する方法に関してはリード挿入後4年ほど経過していたが,経皮的異物除去キット(ニードルズ・アイ・スネアLR-NESOO2)を使用し内科的に行う方針とした.心筋穿孔の危険性を考慮し,心臓血管外科待機の上,右大腿静脈にシースを挿入し,可動性カテーテルを用いてリードをスネアに引き寄せ抜去することができた.今回,経皮的に遺残リードを抜去し得た1例を経験したため報告する.
  • 稲田 慶一, 山根 禎一, 神崎 恭子, 柴山 健理, 松尾 征一郎, 宮永 哲, 伊達 太郎, 宮崎 秀和, 阿部 邦彦, 杉本 健一, ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 55-60
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.2003年より持続性心房細動,高血圧性心筋症による心機能低下(EF=20%)により加療されていた.2004年9月,心不全が増悪し入院.第8病日,意識消失を伴う一過性の多型性心室頻拍が認められたため,第15病日に植込み型除細動器(ICD)植え込み術を施行.初回除細動閾値(DFT)測定では最大31Jで除細動不成功であったため,体外式電気的除細動(360J)を要した.アミオダロンによるDFTの上昇を疑い,2週間の休薬後に再度DFT測定を行うも除細動不成功であった.右室流出路への心室リード移動による3回目のDFT測定でもやはり除細動不成功であり,第28病日胸壁皮下への多分枝型アレーリード挿入術を施行.同日施行したDFT測定においても除細動不成功であったが,5日後のDFT測定では21Jで再現性をもって除細動が可能であった.以上,ICD除細動閾値改善にアレーリード挿入を要したまれな症例を経験をしたため報告する.
  • 柳下 大悟, 庄田 守男, 林 雅道, 谷崎 剛平, 真中 哲之, 江島 浩一郎, 二川 圭介, 松田 直樹, 萩原 誠久, 笠貫 宏, 高 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 61-65
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.2004年2月,出張先で前壁中隔心筋梗塞を発症し左前下行枝近位部に対して冠動脈形成術を施行.また,入院中に持続性心室頻拍(VT)の出現を認めアミオダロンを導入.退院後に帰京し当科を初診,通院加療は近医で行われた.
    2005年5月,心拍数30台の洞性除脈と心不全悪化を認め当科に入院.人工ペースメーカー適応であり,VT発作既往より植込み型除細動器(ICD)の適応と考えられた.Single coil電極を用いて植え込みを行ったが,31JでもVT停止が得られず,上大静脈にコイル電極の留置を行い除細動は2 1 J で成功した. 冠静脈分枝へのコイル電極留置の報告は少なく,その有効性も確立されていない.本症例は,冠静脈分枝へのコイル電極挿入により高除細動閾値(high DFT)症例のトラブルシューティングが可能であった.
  • 阿部 邦彦, 伊達 太郎, 宮崎 秀和, 稲田 慶一, 松尾 征一郎, 柴山 健理, 宮永 哲, 山根 禎一, 杉本 健一, 望月 正武
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 67-73
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【緒言】通常型心房粗動(AFL)のアブレーション時に,粗動波形に変化を認める症例を経験することがあるが,十分に検討されていない.われわれは,右房から左房への伝導時間の差異と粗動波形変化との関係について検討した.
    【方法】対象はAFLに対しカテーテルアブレーションを施行した15例.アブレーションは粗動中に解剖学的峡部の中隔側で施行した.電極1mm,電極間2mmの10極カテーテル(MAP)を三尖弁輪に対し直交するようにして冠状静脈洞入口部直上に留置し,冠状静脈洞(CS)内に留置した10極カテーテルとの間で,粗動波形変化時の電位の関係を記録した.
    【結果】5例で粗動波振幅の減少および粗動波間の平坦化と粗動周期の延長を認めた(225±20→239±22ms).通電前はCS入口部の電位がMAPの電位より19±5.5ms先行していたが,波形変化時にCS入口部の電位は,粗動回路の下流にあるMAP電位より26±4.2ms遅れ,その差は45±3.5msとなった.
    【総括】左房側への興奮伝導の遅れが,粗動波形変化の成因であると推測された.
  • 濱部 晃, 鈴木 文男, 原 幹, 南雲 美也子, 瀬崎 和典, 高瀬 凡平, 野田 誠, 楠原 正俊, 大鈴 文孝
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 74-81
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は63歳男性.2弁置換術後の持続性心房粗動に対し峡部アブレーションを施行.右房造影にて峡部幅は約3cm.心房粗動中に三尖弁側よりポイント毎の通電を開始した.三尖弁より約1.5cmの位置での4回目の通電中に粗動は停止,同一部位(峡部幅の50%の焼灼)での5回目の通電にて両方向性ブロックが完成した.ブロック後の冠静脈洞ペーシングにおいてアブレーションカテーテル遠位双極電極では2峰性電位を認めたが,近位双極電極では明瞭な単峰性電位が記録された.症例2は65歳男性.持続性心房粗動に対し同様に峡部アブレーションを施行.峡部幅は約2cm.1回目の通電中に粗動は停止し2回目の通電(三尖弁より約1.2cm,峡部幅の60%の焼灼)にて両方向性ブロックが完成した.アブレーションカテーテル近位電極には明瞭な単峰性電位が記録された.冠静脈洞ペーシング時の単峰性心房電位の出現時相は,症例1では遠位電極の2峰性電位の前方電位,症例2では後方電位の時相に合致した.
    上記所見は以下の仮説により説明可能と考えられた.下大静脈側峡部の膜性部は線維化組織によって占められるが,その中に盲端を有する心房筋束が進入していることを仮定する(症例1と2では盲端の方向が反対).峡部伝導は,三尖弁側からの焼灼ラインが下大静脈側の線維化組織に結合することにより完全ブロックとなる.他方,刺激インパルスは盲端の反対側より膜性部内の心房筋束に進入可能であるため,膜性部に位置する近位電極で心房筋電位が記録されると考えられた.
  • 荻ノ沢 泰司, 野上 昭彦, 有馬 秀紀, 小和瀬 晋弥, 杉安 愛子, 窪田 彰一, 新井 智恵子, 坂元 敦, 中嶋 直久, 青木 元, ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 82-88
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1:47歳,男性.逆方向性l型心房粗動(AFL).三尖弁一下大静脈間峡部への高周波通電中に頻拍周期は195msec~230msecに延長した.追加通電にてAFLは停止したが,その後も峡部には伝導が残存していた.冠静脈洞入口部ペーシング中に峡部伝導を調べると,三尖弁輪側は完全伝導ブロックパターンであったが,下大静脈側に伝導が残存していた.下大静脈側への通電で両方向性の峡部完全伝導ブロックを得た.
    症例2:58歳,男性.1型AFL.三尖弁輪-下大静脈環境部への高周波通電中に体表面AFL波形が変化した.焼灼部位(三尖弁-下大静脈間峡部の下大静脈側)の心房電位は100msecに大きく分裂したが,AFL周期は不変(220msec)であった.三尖弁輪側には分裂のない心房波が記録され,同部位への通電でAFLは停止し,両方向性峡部完全伝導ブロックが完成した.右心房造影を行うと,三尖弁輪一下大静脈間峡部の中間部に深いpouch-like recessを認めた.AFLに対するカテーテル焼灼術において三尖弁輪一下大静脈間峡部に縦解離が認められた場合,解剖学的・電気生理学的位置関係を把握することが重要と考えられた.
  • 福本 耕太郎, 副島 京子, 谷本 耕司郎, 萩原 陽子, 田中 知子, 佐藤 俊明, 三好 俊一郎, 南雲 美也子, 高月 誠司, 小川 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 89-94
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.僧帽弁閉鎖不全症に対する形成術後,年数回の動悸発作を認めるようになった.心房粗動(AFL)・心房細動の診断でさまざまな抗不整脈薬(AAD)を投与されたが無効で,著明な洞停止を認めた.Bepridil 150mgを処方され,一時改善したが持続せずRF目的で当科に紹介された.心臓電気生理学的検査(EPS)でisthmus-dependentAFLおよび右房後側壁切開痕と心房中隔切開瘢痕の間を回路に含むatriotomy scar reentryが誘発され,三尖弁輪-下大静脈間のisthmus,および2つの瘢痕間の線状焼灼を行い頻拍は誘導されなくなった.翌月に心房頻拍が再発し,2回目のEPSを施行した.心房中隔切開瘢痕・上大静脈のreentranttachycardiaが誘発され,同部位の線状焼灼を行い頻拍は停止し誘発されなくなったが,約40/分の異所性心房調律や接合部補充調律を認めたため,cilostazol 200mg内服を開始した.心拍数が徐々に上昇し,70~80/分程度へ回復し,その後数カ月間でcilostazol漸減中止したが正常洞調律であり,AAD投与なしで頻拍発作も認めていない.
  • 上野 亮, 丸山 光紀, 小林 義典, 宮内 靖史, 林 明聡, 岩崎 雄樹, 平澤 泰宏, 阿部 純子, 谷口 宏史, 堀江 格, 淀川 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 95-102
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.難治性の閉塞性肥大型心筋症に対し経皮的中隔心筋焼灼術を施行.術後一過性に完全房室ブロックとなったが,その後もPR時間延長を伴う右脚ブロックが見られたため電気生理学検査を行った.検査時,洞周期は一定だったが,著明なHV時間の一心拍ごとの交互変化が見られた(90⇔190msec).心房頻回刺激では刺激周期の短縮に伴いHV時間が正常化し,刺激周期350msecでAHブロックが起きるまで1対1房室伝導を示した.洞調律中に心房期外刺激を加えるとH1H2 900msec以上ではH1H2延長に伴いH2V2が延長し,H1H2 550~900msecではH2V2は54msecで一定だったが,H1H2 540msec以下ではH1H2短縮に伴いH2V2は再び進行性に延長した.Overdrive suppressionにより一過性に洞周期を延長させるとHVブロックが出現した.propranolol 2mgを静注したところHV時間は正常化し,またH1H2時間に伴う変化も抑制された.本症例の所見から,ヒトの病的刺激伝導系における第4相ブロックの機序につき考察した.
  • -Disopyramide,cibenzdineならびにaprinidineの比較検討-
    堀内 大輔, 奥村 謙, 小松 隆, 中村 紳, 鈴木 修, 蓬田 邦彦
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 103-110
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:発作性心房細動に対する抗不整脈薬療法が,構造的リモデリング進展に及ぼす影響を,抗不整脈薬の治療効果別に比較検討する.
    対象と方法:2~4週間毎に定期通院している発作性心房細動患者230例(男性158例,女性72例,平均年齢67±11歳)に対し抗不整脈薬を投与し,12カ月以上観察した(平均観察期間45±27カ月).治療効果により,非再発群(78例);再発を認めなかった群,再発群(87例);再発を繰り返すものの洞調律を維持できた群,慢性化群(65例);治療にもかかわらず心房細動(AF)が慢性化した群に分類し,心臓超音波検査の各指標が各抗不整脈薬の投与前後でどのように変化するかを比較検討した,
    結果:Disopyramideならびにcibenzoline投与例においては,再発群で左房径が有意に増加し,慢性化群で左房径の増加ならびに左室駆出率の有意な低下を認めた(p<0.01,p<0.05).しかし,aprindine投与例においては,再発群ならびに慢性化群で左房径が有意に増加したものの,(p<0.01,p<0.05)慢性化群では左室駆出率は低下しなかった.
    結語:抗不整脈薬療法により発作性心房細動が抑制されれば,いずれの抗不整脈薬療法でも構造的モデリングが予防可能である.さらに,aprindine投与例では慢性化群でも左室機能は温存され,陰性変力作用が少ない薬剤であることが示された.
  • 小森谷 将一, 今井 忍, 青山 浩, 池田 敦, 坂井 義貴, 八木 秀樹, 鈴木 輝彦, 永島 正明, 榎本 光信, 鈴木 一隆, 深水 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 111-118
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例69歳,男性.左室緻密化障害による心不全あり.心房粗細動に対してピルジカイニドの内服中,心拍数1 2 0 / 分の右脚ブロック型w i d e Q R S t a c h y -cardiaが出現した.頻拍はverapamil 5mg静注により再現性を持って停止した.心臓電気生理学的検査でwide QRS tachycardiaの誘発を試みたが,心房・心室プログラム刺激では誘発不能であった.pilsicainide 50mg静注後,wide QRS tachycardiaと同波形の非持続性心室頻拍( N S V T ) が自然誘発された.NSVT時には左室後中隔において局所の心室波に先行するpre P potential(P1)およびPurkinjepotential(P2)が再現性を持って記録されたが,洞調律時はP2のみであった.NSVT時のP1は心基部から心尖部へP2は心尖部から心基部方向へ伝播した.P1記録部位で高周波アブレーションを行いNSVTは消失した.
  • 辰本 明子, 小宮山 浩大, 岡崎 英隆, 弓場 隆生, 橋本 祐二, 谷井 博亘, 小泉 章子, 田辺 康宏, 酒井 毅, 山口 博明, ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 119-124
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:65歳,男性.1991年51歳時に再発性失神発作を認め,一過性完全房室ブロックの診断にてDDDペースメーカー植え込み術を施行された.2005年4月,心室リードの被膜損傷による上肢の筋攣縮が出現したため,再移植術目的に入院した.入院時心電図は洞調律,右脚ブロックタイプの自己QRS波を示し,超音波検査上,心機能は正常であった.加算平均心電図における遅延電位RMS40が4.0μVと陽性であり,ピルジカイニド負荷試験を行ったところ右側胸部誘導におけるcoved型ST変化をきたした.心室プログラム刺激にて再現性ある心室細動の誘発を認め,Brugada症候群と診断した.ペースメーカー再移植の予定を変更し,新規に植込み型除細動器移植術を行った.
    結語:一過性完全房室ブロックに対するペースメーカー治療経過中にBrugada症候群と診断し,植込み型除細動器移植術を行った1例を経験した.
  • 田中 泰章, 西崎 光弘, 仁木 沙織, 林 達哉, 宮地 浩太郎, 藤井 洋之, 足利 貴志, 山分 規義, 櫻田 春水, 平岡 昌和
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 125-129
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は生来健康の20歳,女性.2005年10月,前日から友人宅に宿泊していた.朝8時頃に友人とともに一度覚醒したが,再度入眠,9時45分,苦悶様の呼吸から心肺停止となった.救急隊到着時のモニター上,心室細動(VF)を認めたため計8回の電気的除細動を行ったところ洞調律に復し,当院へ救急入院となった.
    入院直後から第4病日まで有意なQT延長および二峰性T波を認めたが,その後徐々に正常化した.エピネフリン負荷で著明な二峰性のT波およびQT延長を認め,経ログルコース負荷試験(75gOGTT)でもほぼ同様に変化した.心臓電気生理学検査では非持続性多形性心室頻拍のみを認め,VFは誘発されなかった.冠攣縮の誘発試験ではアセチルコリンの左冠動脈冠注にてQTが延長し,右冠動脈冠注では90~99%のびまん性攣縮を認めた.
    以上,先天性QT延長症候群に冠攣縮を合併した若年女性例を経験し,貴重な症例と考えられた.
  • -MemCalcを用いて-
    久次米 真吾, 野呂 眞人, 森山 明義, 沼田 綾香, 熊谷 賢太, 酒井 毅, 手塚 尚紀, 中江 武志, 坂田 隆夫, 杉 薫
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 130-136
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室頻拍発症には自律神経の関与が推測されているが,その変化は捉え難く詳細は明らかにされていない.自律神経解析において最大エントロピー法(MemCalc)を用いた場合,従来の高速フーリエ転換法に比べ短時間での自律神経の変動の解析が可能とされている.今回,MemCalcを用い,自律神経の心室頻拍(VT)への関与を検討した.
    【方法】Holter心電図によりVTが記録された7症例(拡張型心筋症3症例,特発性心室頻拍2症例,肥大型心筋症2症例)に対し,VT発症30分前から直前までの自律神経の変動をMemCalcを用い30秒間隔で解析した.なお,HF(high frequency:0.15-0,4Hz)を副交感神経,LF(low frequency:0.04-0.15Hz)/HFを交感神経の指標とした.
    【結果】疾患別に分類した場合,拡張型心筋症の場合は交換神経成分上昇後に副交感神経上昇が,特発性心室頻拍の場合は一過性の副交感神経成分の上昇が,肥大型心筋症の場合は交感神経成分の上昇と下降を交互に繰り返す変化が見られた後にVTへ移行していた.またVTの波形ごとで分類した場合,多形性VTの場合は交感神経成分の上昇後に,単形性VTの場合は副交感神経成分の上昇後にVTへ移行する傾向にあった.
    【結語】VTの発症には自律神経変動が関与しており,また変動形態により誘発されるVTの形態がある程度規定される可能性が示唆された.
  • 浅野 拓, 小貫 龍也, 伊藤 啓之, 三好 史人, 松山 高明, 渡辺 則和, 河村 光晴, 丹野 郁, 小林 洋一, 手取屋 岳夫, 片 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 137-146
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1:27歳,男性.2005年3月開心術と同時に右房および左房にMAZE術を施行した.しかし,術後よりA T 出現し, カテーテルアブレーションを施行した.ATは心房興奮周期30msecで,右房後壁側にカニュレーション後のscar領域とともにMAZEのdouble potentialを広範囲に認めた.CART後O上のactivationマップのtotal activation timeが頻拍周期と同じ300msecであり,右房後壁側のscar領域とdouble potentialの間をcritical isthmusとしたmacroreentryの脈拍と診断した.同部位に対しアブレーションを施行,以後頻拍は誘発されなくなった.
    症例2:54歳,男性.2005年6月僧帽弁置換術を施行,同時に左房および右房に対してMAZE術を施行,その後よりAT出現し,薬物抵抗性であり,カテーテルアブレーション術を施行した.ATは心房興奮周期300msec,右房側壁下方のカニュレーション部位前方にfragment potentia1を認め,頻拍周期300msecに対してCARTOマップのtotal activationtimeが140msecであり,Focalパターンのマップであった.同部位のfragment potentialに対してアブレーションを施行,ATは誘発されなくなった.ATのアブレーション後に三尖弁輪を反時計方向に旋回するAFLが誘発され,TV-IVC間のisthmusに対してアブレーションを追加した.
    結語:右房切開線近傍を起源とする開心術後ATにおいて,CARTOを使用し頻拍の機序が同定できた2症例を経験したので報告する.
  • 勝野 哲也, 蜂谷 仁, 佐々木 毅, 古川 俊行, 岡田 寛之, 川端 美穂子, 畑明 宏, 平尾 見三, 磯部 光章, 畔上 幸司, 脇 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 147-152
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,女性.完全大血管転位症と診断され,8歳時にMustard手術を施行.2005年5月動悸と立ちくらみを主訴に来院.12誘導心電図で周期270ms,II,III,aVF,V1,V6誘導で陽性F波を呈する心房粗動が認められ,心臓電気生理学的検査を行った.粗動中のentrainment mappingでは解剖学的右房峡部周辺でpost-pacing interval(PPI)が粗動周期とほぼ一致し,上大静脈や解剖学的左房側では延長しており,本頻拍は三尖弁輪-下大静脈間峡部依存性心房粗動と診断.右房峡部に術後patchが存在するため,まず経静脈的に下大静脈側峡部に焼灼ラインを作成したが頻拍に影響を与えず,次に経大動脈的に解剖学的右室を経由して三尖弁輪側峡部にアプローチした.Targetとなる弁輪部にカテーテルを留置した瞬間,bump現象で頻拍は停止し同部位の追加焼灼によってブロックライン作成に成功した.その後,心房粗動の再発なく経過している.
  • 鈴木 篤, 山内 康照, 関ロ 幸夫, 樋口 晃司, 大山 明子, 嘉納 寛人, 久佐 茂樹, 大西 健太郎, 宮本 貴庸, 尾林 徹, 丹 ...
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 153-158
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.2000年4月より発作性心房細動(AF)にて抗不整脈薬を内服し洞調律を維持していた.2004年3月より持続性AFとなり洞調律に戻らないため当院へ紹介となった.薬剤抵抗性のAFのため同年7月に電気的肺静脈隔離術(PVI)を施行した.AFの誘発を試みたがAFは誘発されなかった.しかし,右上肺静脈より単発の期外収縮が頻回に出現していた.左右の上下肺静脈同時PVIを施行し退院した,その後,AFの再発は認めなかったが,依然として動悸症状は残存しており,ホルター検査では心房性期外収縮(APC)が14,000/日と頻発していた.動悸発作の原因がAFの再発であることを否定できなかったためPVIの2nd sessionを施行した.左房左肺静脈問伝導が再発していたため伝導ギャップを一箇所追加焼灼し左上下肺静脈を再隔離した.その後もAPCは頻回に繊現しており,このAPCをマップしたところ,僧帽弁輪の前申隔にて局所電位が体表面P波より30msec先行し,単極誘導がQS-patternを呈する部位を同定した.同部位にて高周波通電開始したところ8秒後にはAPCは完全に消失した.その後,ホルター検査でもAPCは11/日のみとなり,自覚症状は完全に消失した.PVI後に生じた症候群のAPCに対するアブレーションの報告は少なく,またその起源も非常に稀な部位であったため報告する.
  • 熊谷 浩司, 若山 裕司, 福田 浩二, 菅井 義尚, 下規 宏明
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 159-165
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    電気的除細動抵抗性の発作性心房細動に対し,左房後壁を含む広範囲同側肺静脈電気的隔離術の施行により心房細動が停止した症例を経験したので報告する.症例は52歳,男性.2年前より発作性心房細動にて近医に通院中であった.3カ月前より症状が強く,抗不整脈薬の多剤併用でも無効のため,当科でカテーテルアブレーションを施行した.除細動が無効であり,心房細動中に広範囲同側肺静脈電気的隔離術を施行した.左房後壁を線状焼灼中,細動周期が延長しオーガナイズされ,左上肺静脈前壁の1回の焼灼で左上肺静脈から左房への伝導がブロックされるとともに心房細動が停止した.その後,冠静脈洞連続刺激下で残存する左上肺静脈後壁のgapを焼灼し,左肺静脈の電気的隔離に成功した.肺静脈細動が粗動化し停止したと同時に心房細動も停止したことより,肺静脈のみならず心房筋も心房細動維持に関与していたと考えられた.左房後壁の線状焼灼に加えて,左房前壁の肺静脈左房接合部への伝導修飾が心房細動に停止に有効であった.
  • 井川 修, 足立 正光, 久留 一郎, 井上 貴央
    2006 年 38 巻 Supplement4 号 p. 166-170
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    不整脈の解析・治療,カテーテルアブレーションでは詳細な解剖学的構造認識が必要とされる.とりわけ,心房細動に対するカテーテルアブレーションではそれに伴う合併症を避ける意味でも焼灼部位およびその周辺の正確な解剖学的情報が重要と考えられる.ここでは電気生理検査・カテーテルアブレーション時,電位解釈あるいは手技上,問題となる心臓および心臓周辺構造について述べる.
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