HMG-CoA還元酵素阻害薬(以下,スタチン)の発作性心房細動予防効果に関する実験研究は散見するが,ヒトを対象とした臨床研究は少ない.本研究では,スタチンの発作性心房細動に対する予防効果を臨床例において検討した.
方法:有症候性の発作性心房細動が心電図上で確認され,基礎心疾患がなく,脂質代謝異常がありHMG-CoA還元酵素阻害薬未投与の31例(61±11歳,男性17例,女性14例)を対象とし,スタチンの投与前,投与6週間後および20週間後の,ホルター心電図上の平均心拍数(heart rate;HR),心房期外収縮総数(premature atrial contraction;PAC),総コレステロール(total cholesterol;TCHO),低比重リポ蛋白コレステロール(low density lipoprotein;LDL),高感度CRP(C-reactive protein),BNP,また投与後より6週間および,14~20週間までの6週間の発作性心房細動と考えられる胸部症状のイベント数(EV)を一元配置分散分析検定を用いて比較した.
結果:TCHOおよびLDLは投与前に比較し,6週後,20週後に有意に低下した.HR,PAC,BNPはいずれも変化を認めなかったが,CRPは,投与前に比較して,投与6週間後,20週間後では低値を示した(投与前:0.210±0.192mg/dl,6週間後:0.058±0.056mg/dL,P<0.05,20週間後:0.062±0.059mg/dL,P<0.05).またEVは投与前に比較し,6週間後,および20週間後にかけて有意に減少を認めた(投与前:2.9±1.5回,6週間後:2.1±1.2回,P<0.05,20週間後:1.6±1.8回,P<0.05).投与前および6週間後のEVの変動(△EV)は,BNP,HR,PAC,TCHO,LDLのいずれの6週間後変動(△BNP,△HR,△PAC,△TCHO,△LDL)とも,相関関係を認めなかったが,6週間後のCRPの変動(△CRP)との間には正の相関関係を認めた(R=0.446,P=0.043).
結論:スタチン投与により,TCHO,LDL,CRPおよびEVは減少を認めた.△EVは△CRPとの間に相関関係があり,スタチンはその抗炎症作用を介して発作性心房細動に対する予防効果を有する可能性が示唆された.
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