心臓
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46 巻, 5 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(災害時の循環器疾患対応-災害時に循環器医師が心得ておくべきこと-)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 河野 健一, 森沢 知之, 湯口 聡
    2014 年 46 巻 5 号 p. 574-579
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     目的 : 開心術後の心臓リハビリテーションのパス逸脱に関連する術前, 術中要因を明らかにし, 血液透析がパス逸脱要因かどうかを明らかにする.  方法 : 対象は開心術の前後に歩行が自立していた155例である. 年齢, 性別, BMI, 透析の有無, 基礎疾患の有無, 併存疾患の有無, 術前の心機能, 緊急手術の有無, 手術情報から, まずは単変量解析にてパス逸脱との関連を調べ, 有意な関連が認められた調査項目を独立変数, パス逸脱の有無を従属変数とし, 多重ロジスティック解析にてパス逸脱に関連する要因を検討した.  結果 : 維持透析患者 (OR 1.36~6.831, p=0.007), 女性 (OR 2.348~14.47, p<0.001), 年齢 (OR 1.01~1.091, p=0.014), 脳卒中の既往 (OR 1.239~35.01, p=6.586), 手術時間 (OR 1.001~1.011, p=0.028) が有意なパス逸脱要因として抽出された.  結語 : 透析の有無に加えて, 高齢女性, 脳卒中の既往者, 手術時間の長い症例は, 心リハのパス逸脱に関連する要因となることが明らかとなった. これら関連要因をスクリーニングしておくことは, パス逸脱や進行の予測に有用であることが示唆された.
Editorial Comment
[症例]
  • 古山 輝將, 林田 晃寛, 福原 健三, 玉田 智子, 今井 孝一郎, 久米 輝善, 根石 陽二, 川元 隆弘, 大倉 宏之, 吉田 清
    2014 年 46 巻 5 号 p. 582-589
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     症例は60歳代, 男性. 畑仕事中, 胸痛が出現し近医受診するも異常を指摘されなかった. その後も労作時呼吸困難はみられていたが, 発症11日後に安静時にも呼吸困難が出現したため再診したところ, 胸部X線にて肺水腫を認め入院した. 利尿薬等で改善したが, 経胸壁心エコー図で僧帽弁逆流がみられ精査加療目的で当院に紹介入院となった. 経食道心エコー図で重症僧帽弁逆流症を認め, 僧帽弁前尖 (A1) と前交連が逸脱し, その弁尖には可動性のある疣腫様構造物が存在していた. 3D経食道心エコー図でも僧帽弁前尖 (A1) の外側の一部から前交連部領域の逸脱が明瞭に観察できた. 冠動脈造影では高位側壁枝が高度に狭窄しており, 支配域と思われる領域に壁運動異常を認めた. 心不全の加療後僧帽弁形成術を施行したところ, 逸脱した僧帽弁前尖には腱索と断裂した乳頭筋を認めた. 高位側壁枝病変の急性心筋梗塞に合併した前乳頭筋の部分断裂のため重症僧帽弁逆流症を呈したと考えられ, 約1カ月半の保存的治療の後に待機的に僧帽弁形成術が可能であった.
Editorial Comment
[症例]
  • 岡田 武規, 岡谷 健史, 麻奥 英毅
    2014 年 46 巻 5 号 p. 592-597
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     肥大型心筋症は, 高率に心房細動から血栓塞栓症をきたす疾患であり, 発作性, 永続性心房細動にかかわらず, 心房細動を伴う肥大型心筋症では, 抗凝固療法の適応である. 従来, 抗凝固療法としては, ワルファリンの投与が行われていたが, 最近では新規抗凝固薬であるダビガトラン, リバーロキサバンも血栓塞栓症の予防に有効であることが報告されている. さらには, 左房内血栓に対しても, 新規抗凝固薬が有効であったという症例報告もある. 今回われわれは, 永続性心房細動を有する肥大型心筋症に左房内血栓を合併し, ダビガトランの投与で血栓の縮小を認めた症例を経験したので報告する. 症例は81歳, 女性, 永続性心房細動を有する肥大型心筋症に対して, ワルファリン, カルベジロール内服中であったが, 悪性リンパ腫を発症し, 当院血液内科に入院した. 化学療法中に著明な血小板数の減少あり, ワルファリンは休薬された. 悪性リンパ腫の治療経過評価目的で躯幹部造影CT検査を行ったところ, 偶発的に左房内血栓を認め, 循環器内科を紹介受診した. 難治性真菌感染症に対して, ボリコナゾール内服中であり, ワルファリンの投与を再開したところ, 2日後には著明なPT-INRの延長を認めた. 薬剤の相互作用により, ワルファリンによる抗凝固療法は困難と考え, ダビガトランへの切り替えを行った. ダビガトラン投与開始6週間後の造影CT検査では, 左房内血栓の縮小を認めた.
Editorial Comment
[症例]
  • 根岸 紘子, 佐藤 彰彦, 泉田 次郎, 斎藤 恒儀, 齋藤 富善, 前原 和平, 竹石 恭知
    2014 年 46 巻 5 号 p. 600-605
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     症例は71歳男性. 潰瘍性大腸炎, 右変形性膝関節症を有し当院消化器内科と整形外科に通院中であった. 3日前より右下肢の疼痛・腫脹を自覚していた. 経過をみていたが改善しないため整形外科を受診したところ, 内科的疾患を疑われ当科へ紹介された. 当科外来にて施行された血液検査にてD-dimer等の凝固系異常, 造影CT検査にて右大腿から膝窩にかけての深部静脈血栓と両肺動脈の塞栓像が認められた. 右下肢深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症の診断にて同日当科に入院となった. 入院後, ヘパリン, ウロキナーゼ, ワルファリンによる抗凝固, 血栓溶解療法を開始した. 原疾患による血便増悪のため両療法が中断される可能性も考慮し肺塞栓の予防のため一時留置型下大静脈フィルターを留置した. 以後, 右下肢の疼痛軽減し腫脹も改善がみられた. 画像診断上も肺動脈血栓の消失が確認され, D-dimerも正常化したため第14病日に同フィルターを抜去した. 今回の血栓形成は潰瘍性大腸炎という炎症性疾患を基盤に有し, さらに右変形性膝関節症により右下肢の運動が制限されていた影響により血栓形成にいたったと考えられた. 入院前から潰瘍性大腸炎による粘血便を認めており, 今回の抗凝固, 抗血栓溶解療法により粘血便の軽度増加がみられるもヘパリンとウロキナーゼを減量することなく加療をすることができた.
[症例]
  • 古賀 将史, 石井 なお, 草川 由佳, 加藤 真吾, 草間 郁好, 仲地 達哉, 中川 毅, 岡本 浩直, 松木 佑介, 安田 章沢, 徳 ...
    2014 年 46 巻 5 号 p. 606-612
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     65歳男性. 29歳時に交通外傷 (ハンドル外傷) で入院, 30歳時に収縮性心膜炎で手術歴がある. 術後心不全なく経過していた. 2週間前よりの浮腫, 労作時呼吸苦を主訴に当科受診. 肝腫大, 全身浮腫, Kussmaul兆候を認め, 右心不全で入院となる. CT上心尖部を除き広範に約1cmの心膜石灰化を認め, エコーでは高度の左室収縮障害を認めた. 心臓カテーテル検査で両心室の拡張期圧はほぼ同等であり, 右室圧はDip and plateauパターンを呈していた. 心臓MRIで遅延造影は陰性であった. 再発性収縮性心膜炎と診断し, 心膜切除術を施行した. 術後全身状態と血行動態の改善を認め, 左室駆出率で26%から56%と著明に改善した. 本症例のように長期的な経過で収縮性心膜炎は再発することは稀である. 文献上再手術までの期間が長いことや, 収縮障害をきたすと予後不良とされるが, 心臓MRIでviabilityが保たれていると判断された症例では, 収縮能が改善する可能性があり, 積極的な手術が望ましいと考えられた.
[症例]
  • 芳賀 智顕, 村元 恵美子
    2014 年 46 巻 5 号 p. 613-619
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     患者は78歳男性. 脳室炎・細菌性髄膜炎のため当院脳神経外科に入院となった. 抗生剤投与によって経過良好だったが, チアノーゼを認め当科紹介となった. 呼吸困難などの症状はなく, また肺炎や心不全なども否定的であった. しかし, 酸素投与下で臥位ではSPO2 96%でも, 座位になるとSPO2 60%まで低下した. 精査の結果, 右—左シャントを伴う卵円孔開存を認め, 座位になるとシャント量が増加してSPO2が低下した. このため, 卵円孔開存の関連したplatypnea orthodeoxia syndrome (以下POS) と診断した. 典型的な卵円孔開存は, バルサルバ負荷などによって右房圧が左房圧を凌駕することで開口する. 本症例は延長・拡張した上行大動脈による心臓圧排によって, 心房中隔が変形し卵円孔が開口した. そして, 座位になると上行大動脈による心臓圧排が強くなり卵円孔が開大, シャント量が増加した. また, 正常右房圧でも右—左シャントを生じさせるユースタキウス弁が存在した. POSは極めて稀な症候群である. このため, 心内シャントによるPOSの機序はいまだ解明されていない. 本症例は, 卵円孔開存によるPOSの機序を解明する一助になると考え報告する.
[症例]
  • 山崎 真敬, 蜂谷 貴, 山城 理仁, 花井 信, 田口 真吾, 小野口 勝久
    2014 年 46 巻 5 号 p. 620-626
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     われわれは胸腔内型右鎖骨下動脈瘤の2例を経験した. 症例1は71歳の女性で嗄声, 咳嗽を主訴に来院され, 胸部CT検査にて70mm大の右鎖骨下動脈瘤と診断された. 症例2は64歳の男性で胸部異常陰影の精査目的で来院され, 胸部CT検査にて45mm大の右鎖骨下動脈瘤と診断された. いずれの症例も胸骨正中切開に右鎖骨上切開を加えて視野を確保し, 人工血管置換術を施行した. 術前に頭頸部のmagnetic resonance angiography検査を施行し, Willis動脈輪を介する側副血行路を十分把握したうえで, 術中脳灌流の確保を目的に外シャントチューブを用意していたが, 中枢側遮断は右鎖骨下動脈で行うことができたこと, 右椎骨動脈が瘤内から起始していないこと, また右浅側頭動脈圧が十分に保たれていることを確認したため, 右総頸動脈, 右鎖骨下動脈末梢への選択的灌流は行わなかった. 経過は良好で術後の胸部CT検査でも問題を認めなかった. 右鎖骨下動脈瘤は近位側に発生するものが多く, 術中に腕頭動脈が遮断される可能性を常に念頭に置き, 外科的治療においては術前の頭頸部精査に加え術中の脳血流確保には十分な注意を払う必要がある.
Editorial Comment
[症例]
  • 高木 泰, 鈴木 健吾, 黄 世捷, 高井 学, 足利 光平, 木田 圭亮, 明石 嘉浩
    2014 年 46 巻 5 号 p. 629-636
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     症例は35歳男性. 2005年 (29歳時) に意識消失, 痙攣重積発作のため他院入院となった. 2008年 (33歳時) 12月に痙攣発作が再度出現し, ウイルス性脳炎を疑われ, 他院再入院. 頭部MRIにて血管支配領域に一致しない広範な梗塞巣を認め, 血清乳酸値が異常高値を示したことから, ミトコンドリア脳筋症が疑われた. 2009年 (34歳時) 2月に精査目的で当院神経内科に紹介受診となり, 来院時の血液検査による遺伝子検査においてミトコンドリア遺伝子3243点変異を認め, Mitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic acidosis and Stroke-like episodes (MELAS) の診断にいたった. 2010年 (35歳時) 10月, 神経内科入院中にモニター心電図にて非持続性心室頻拍出現し, 当科にて各種心臓精査施行した. 心臓超音波検査で左室収縮能の低下はなく, 心臓MRIでも遅延造影を認めなかったが, 99mTc-sestamibi安静心筋シンチグラフィでは, 99mTc-sestamibiの洗い出し率が49%と, 明らかに亢進していた. 心臓核医学検査では, 心臓超音波検査や心臓造影MRIなどで捉えることのできない心筋の細胞レベルでの機能異常を反映すると考えられた.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 安藤 友孝, 廣谷 信一, 森澤 大祐, 奥原 祥貴, 福井 美保, 菅原 政貴, 藤原 昌平, 内藤 由朗, 駒村 和雄, 増山 理
    2014 年 46 巻 5 号 p. 641-647
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     症例 : 71歳, 女性. 2005年に高血圧を指摘され, 以後診療所で外来加療されていた. 2011年6月ごろより労作時の倦怠感および息切れを自覚するようになった. その後, 症状が増悪したため, 8月に総合病院を紹介され, 左室収縮不全および僧帽弁逆流症による心不全の診断にて入院となった. 利尿薬の投与により軽快退院となったが, 退院後に肺炎を発症したことで心不全が増悪し, 同院に再入院となった. 血管拡張薬および利尿薬の投与を受けたが, 改善不十分であったため当院へ転院となった. ドブタミンの併用で症状が改善した後に, 僧帽弁逆流に対して弁置換術が施行されたが, 慢性期に薬物抵抗性の状態となった. このため, 補助療法として和温療法の導入を試みたが, 全身倦怠感が強く, 和温療法器内 (器内) での座位保持が困難であったため導入できなかった. 代替法として足浴を施行したところ, 全身状態の改善を認め, 器内での座位保持が可能となり, 和温療法を導入することができた. 和温療法は日本循環器学会の慢性心不全診療ガイドラインで, 心不全に対する薬物療法の補助療法としてClass Iに位置づけられている1) . しかしながら, 器内での座位保持が困難なために施行できない症例が存在する. 今回, 和温療法の施行が困難であった重症心不全に対して, 足浴を施行することで和温療法を導入できた症例を経験した. 足浴は重症心不全症例において, 和温療法の導入に有効であると考えられた.
Editorial Comment
[症例]
  • 榊 美奈子, 鬼木 秀幸, 高吉 琴絵, 清原 嘉奈子, 荒川 仁香, 内野 慶太, 土橋 卓也
    2014 年 46 巻 5 号 p. 650-657
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/15
    ジャーナル フリー
     症例は35歳男性. 20歳ごろより高血圧を指摘され, 36歳時には頭痛を伴う230/120mmHg程度の高血圧を認めるようになった. 腹部CTで右後腹膜腫瘍を認め, 血中・尿中ノルアドレナリン高値, 尿中ノルメタネフリン高値, クロニジン試験陽性であり, MIBGシンチグラフィで腫瘤に一致する集積を認めたため, パラガングリオーマと診断した. 後腹膜腫瘍・右腎摘出術を施行し, 血圧, 血中・尿中カテコラミンともに正常化したが, 術後4カ月ごろより発作性の血圧上昇, カテコラミン上昇を認めるようになったため, パラガングリオーマ術後再発を疑い転移巣の検索を行った. MIBGシンチグラフィでは左肺尖部, 右肺外側部, 胸椎中位部, 腹部背側に淡い集積を認め, FDG-PETでは腹部大動脈周囲リンパ節, 左鎖骨下リンパ節, 第3頸椎, 第6, 11, 12胸椎, 第4腰椎, 第1仙椎, 右骨盤, 肝S5領域に集積を認めた. 椎体MRIでも同部位はパラガングリオーマに矛盾しない所見であった. 術後1年以内に非クロム親和性組織に転移を認めたことから, 悪性パラガングリオーマと診断した. 転移巣はMIBGシンチグラフィ陰性・陽性の部位が混在していたため化学療法 (CVD療法 : シクロフォスファミド, ビンクリスチン, ダカルバジン) を行った. CVD療法6クール終了時点で, α遮断薬の十分な投与によりクリーゼをきたすことなく経過し, 腫瘍反応性・内分泌学的反応性ともに治療効果を認めた.
研究会(第32回  関東川崎病研究会)
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