症例は2歳, 男. 出生前に左心低形成症候群 (HLHS) を疑い, 出生後に確診. 日齢4で両側肺動脈絞扼術, 1カ月で三尖弁形成術 (TVP) を行ったが, 重症三尖弁逆流 (TR) による心不全のため, 人工呼吸管理, プロスタグランジンE1, カテコラミン, フロセミド, 抗生物質投与, 中心静脈栄養を継続した. 7カ月でNorwood-Glenn術, TVPを行い, 症状は改善し, 集中治療から離脱した. 一方, 4カ月ごろまで肝機能障害, 高ビリルビン血症を合併し, 胆嚢結石をCTで3カ月, X線写真では11カ月で認めた. 2歳6カ月で嘔吐, 白色便, 肝機能障害, 高ビリルビン血症で発症. CTで総胆管結石を認め, それによる閉塞性黄疸と診断した. 嘔吐出現後20日で自然排石されたが, 閉塞性黄疸既往のHLHS例であり, 総胆管結石再発や胆嚢炎, 膵炎のリスクを考え, 嘔吐出現後27日で胆嚢摘出術を行った. 先天性心疾患 (CHD) の胆石形成危険因子にはチアノーゼ, 人工心肺使用, Fontan計画例, 薬剤, 中心静脈栄養などがあり, 本症例もこれらと胆石症発症の関係を考えた. CHDの合併症として胆石症は重要で, 重症CHDはより注意が必要である. 胆石症症候化は, 胆嚢炎, 膵炎から肝不全やDICを合併する可能性があり, 胆石症手術のリスクは高くなる. 胆石陰影増強やサイズ増大などの変化に注意し, 全身状態を加味して胆石症の手術適応を熟慮することが重要と思われた.
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