The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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ISSN-L : 0368-2781
バーチャルイシュー
76 巻, 3 号
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原著
  • 原田 紗希, 羽田野 励次, 麻生 裕規雄, 山﨑 悠, 菅田 哲治
    2023 年76 巻3 号 p. 109-119
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2024/06/13
    ジャーナル フリー

    バンコマイシンは,2022年のTDMガイドライン改訂により,腎障害の観点からトラフ値ではなく,AUCに基づいた投与設計が推奨された。AUCの算出には,トラフ値に加えてピーク値の採血が必要であり,採血ポイントの増加に伴う負担が生じる。先行研究では,1点採血から算出したAUCに基づいた投与設計の有用性が示されているが,後期高齢者を対象とした報告はない。そこで,本研究では,後期高齢者における1点採血によるAUCの有用性を後方視的に検討した。対象は61名であり,そのうち腎障害が発現した患者は7名であった。腎障害リスク因子およびヘモグロビンを共変量として傾向スコアを算出し,マッチングを行った結果,腎障害発症群7例,非発症群7例であった。1点採血によるAUC(>600 μg·hr/mL,および>450 μg·hr/mL)は,推定定常状態トラフ値(≥ 15 μg/mL)と比較して,感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率のいずれも有意な差は認められなかった。推定定常状態トラフ値と1点採血によるAUCのAKI予測におけるROC曲線下面積にも,有意差は認められなかった(0.714[95%信頼区間0.409–1.000]vs 0.735[95%信頼区間0.443–1.000],P =0.480)。結論として,75歳以上の後期高齢者においては,1点採血から算出したAUCに基づいた投与設計は,トラフ値に基づいた投与設計と比較して,AKI予測性能に差がなく,有用とはいえない可能性が示唆された。

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