Voriconazole(VRCZ)は幅広い抗真菌スペクトルを有するトリアゾール系抗真菌薬であり,注射剤と経口剤の2剤形をもつ。VRCZは添付文書にあるように経口剤と注射剤の用量設定が異なる。本薬剤は負荷投与量が必要であり,静脈内投与において負荷投与量として6mg/kgを1日2回投与,2日目以降は維持療法として3~4mg/kgの1日2回投与が推奨される。経口では投与初日に1回300mgを1日2回,2日目以降は維持量として150~200mgを1日2回食間投与である。経口投与では40kg以上では1回200mgを1日2回,体重が40kg未満では1回100mgを1日2回の食間投与が推奨される。今回,愛知医科大学病院において経口剤VRCZが投与された23症例において初回Therapeutic drug monitoring(TDM)を実施したVRCZ血漿中濃度と用量または用量/体重をSpearmanの相関解析を行った。VRCZ血漿中濃度と用量/体重において良好な相関関係を認めた(r=0.47 p<0.05)。今回の結果からVRCZの経口剤は注射剤と同様に,体重あたりの用量設定が適切である。
BDマックス™全自動核酸増幅検査システムを用いたバンコマイシン耐性遺伝子(van遺伝子)の全自動検出について検討した。同時再現性の検討においては,各van遺伝子のreal-time PCRにおけるCt値の変動係数:CV(%)はvanA 2.09%, vanB 1.72%, vanC1 1.41%, vanC2/C3 1.52%と良好な結果が得られた。腸球菌43株(vanA保有菌4株,vanB保有菌14株,vanBおよびvanC1同時保有菌1株,vanC1保有菌6株,vanC2/C3保有菌4株,全van遺伝子陰性菌14株)を用いた従来のconventional PCR法との比較においては,一致率100%の結果を得た。本システムは従来法でマニュアル操作が必要であったDNAの抽出,template DNAの分注などのPCR前検体処理,ゲル電気泳動やエチジウムブロマイド染色などのAmplicon検出操作がすべて自動化され,業務負担およびコンタミネーションのリスクが大幅に軽減されたうえ測定時間も約半分に短縮されており,検査の迅速化,省力化に大きく貢献できるものと考えられた。
1982年7月から外科感染症分離菌に関する多施設共同研究を行っている。今回は2010年度(2010年4月~2011年3月)の成績を中心にまとめた。
1年間で調査対象となった症例は208例であり,このうちの170例(81.7%)から606株の細菌と25株の真菌が分離された。一次感染から422株,術野感染から184株の細菌が分離された。一次感染では,嫌気性グラム陰性菌の分離頻度が高く,次いで好気性グラム陰性菌であり,術野感染では,好気性グラム陽性菌の分離頻度が高く,次いで嫌気性グラム陰性菌であった。好気性グラム陽性菌については,一次感染においてEnterococcus faecalis, Enterococcus faecium, Enterococcus aviumなどのEnterococcus spp. の分離頻度が最も高く,次いでStreptococcus anginosusなどのStreptococcus spp., Staphylococcus aureusなどのStaphylococcus spp. であった。術野感染からは,E. faecalis やE. faeciumなどのEnterococcus spp. の分離頻度が最も高く,次いでS. aureusなどのStaphylococcus spp.であった。好気性グラム陰性菌では,一次感染からEscherichia coli の分離頻度が最も高く,次いでKlebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Enterobacter cloacae, Pseudomonas aeruginosaなどであり,術野感染からはE. coliとP. aeruginosaの分離頻度が最も高く,次いでE. cloacaeとK. pneumoniaeの分離頻度が高かった。嫌気性グラム陽性菌では,一次感染からParvimonas micra, Eggerthella lenta, Streptococcus constellatus, Gemella morbillorum, Collinsella aerofaciensの分離頻度が高く,術野感染からの分離頻度は全般的に低かった。嫌気性グラム陰性菌では,一次感染からは,Bilophila wadsworthiaの分離頻度が最も高く,次いでBacteroides fragilis, Bacteroides ovatusであり,術野感染からはB. fragilisの分離頻度が最も高く,次いでBacteroides thetaiotaomicronであった。バンコマイシン耐性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やEnterococcus spp.及び多剤耐性緑膿菌(MDRP)は認められなかった。