Collaboration between Institute of Microbial Chemistry and Meiji Seika Pharma has a long history in the field of research and development of novel aminoglycoside antibiotics. In this review article, summary of selected output from the above collaboration is disclosed and discovery and biological activities of a novel aminoglycoside antibiotic generated from the collaboration, TS2037, are described. TS2037 exhibited stronger in vitro antibacterial activities against methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) and Pseudomonas aeruginosa compared with all clinically useful aminoglycoside antibiotics. Moreover the clinical efficacy of TS2037 against MRSA or P. aeruginosa infection was estimated by evaluation in application of clinical isolates. Strong protective effects of TS2037 against systemic infections in mice caused by MRSA or P. aeruginosa are also reported.
低体温療法は虚血に伴う脳への障害を抑制可能な数少ない治療法の一つである。低体温療法中には原疾患の治療の他にも合併症の予防・治療目的で数多くの薬物が投与される。
低体温療法中に薬物の血漿中濃度の上昇など薬物の体内動態が変化するとの報告があるが,その詳細なメカニズムは解明されておらず,薬物の投与最適化のためには薬物動態変動要因の解明が必要となる。筆者らは低体温モデルラットを用いた実験系より低体温時における薬物の体内動態を評価してきた。また,各種in vitroおよびin situ実験系より低体温が薬物の体内動態に及ぼす影響を分離評価している。本稿では,低体温時における薬物の体内動態変動要因についてこれまでに解明された部分を概説する。
2012年に全国17医療施設で分離されたPseudomonas aeruginosa, Acinetobacter spp., Enterobacteriaceaeのカルバペネム系薬に対する感受性を比較した。P. aeruginosa 123株のmeropenem, doripenem, imipenemに対する感性率はそれぞれ79.7, 83.7, 72.4%, Enterobacteriaceae 968株のそれぞれに対する感性率は99.6, 99.5, 75.4%であり,imipenemの感性率は他の2剤と比べて低かった。一方,Acinetobacter spp. 91株の感性率はいずれも97.8%であった。過去21年間におけるカルバペネム耐性P. aeruginosa分離率は,imipenem耐性またはmeropenem耐性の分離率が2002年と2010年に,doripenem耐性の分離率が2010年に一過的に増加していたが,2012年には2002年,2010年以外と同水準を示した。また,カルバペネム系薬3剤において,耐性株分離率はdoripenemが常に低かった。2002年から2012年の多剤耐性P. aeruginosaの分離率は1.1 ~5.8%,カルバペネム耐性Enterobacteriaceaeは0.0 ~0.7%であり,2002年から2012年の間に増加傾向は認められなかった。多剤耐性P. aeruginosa からはblaIMPやblaVIMが検出された。多剤耐性Acinetobacter spp. は2010年のみで分離(4.7%)され,blaOXA-58 が検出された。
平成26年4月から平成27年1月までに健康な検査系学生の便検体を用いて,薬剤耐性腸内細菌科の保菌状況を調査した。期間中に40名50検体から86株の腸内細菌科が検出され,Escherichia coliが54株(63%)と最も多かった。第3世代セファロスポリン系薬剤またはキノロン系薬剤に耐性が認められたのはE. coliのみであり,他の菌種では認められなかった。また病院実習前後で新たな薬剤耐性菌が検出された学生はいなかった。キノロン耐性E. coliは14株( 26%)で,非感受性株2株を含めるとE. coli全体の30%であった。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生E. coliは4名から5株検出され,全菌株中の5.8%, E. coli全体の9.3%,全学生中の10.0%(4/40)であった。いずれもCefotaxime(CTX)に耐性を示し,塩基配列を決定したところ,CTX-M-14が4株,CTX-M-27が1株であった。5株のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)パターンは同一患者由来株を含め,いずれも全く異なるパターンを示し関連性は認められなかった。今回の結果より,キノロン耐性E. coliおよびESBL産生E. coliはすでに健康成人にも広がっていることが示された。このような耐性菌保菌調査を行い,結果を公表することは,学生に薬剤耐性菌に対する共通認識を持たせるとともに,自分がいつ何時でも保菌者・感染者に成り得ることを自覚させることができるため重要であると考える。
化学を多用して新しい生物学の発見をするケミカルバイオロジーの手法は現在,広く用いられている。一方,カナマイシン(Kanamycin;KM )耐性機構は約50年前に解明された。それからまもなく,ジベカシン(Dibekacin;D K B)が耐田幾構に基づいてデザイン・化学合成され,有用な抗生物質になった。この展開は,有用な化合物の開発をひとつの目標にする現代のケミカルバイオロジーの考え方に合致する。これらのことについて,カナマイシン発見60年を機に所感を述べたい。
カナマイシン(KM)は昭和33(1958)年に臨床導入されると瞬く間に国内外において広く使用され、結核や薬剤耐性ブドウ球菌感染症など広範な感染症の治療薬として驚異的な威力を発揮した。それからの10年間に臨床ではKMの有効性評価や使用法、副作用などに関して多くの経験と新たな知見が蓄積された。それらについて臨床家が学び、発表し討論する場が日本医師会と日本医学会の主催により「カナマイシン10周年学術講演会門として東京と大阪で企画・実施された。本稿では、その学術講演会の抄録を基にカナマイシンの臨床応用を推し進めてきた先生方が、KMをどのように評価し、感じてきたかについて僭越ながら要約して紹介してみたい。