メロペネム水和物(MEPM;メロペン®,以下本剤と略す。)の一般感染症の重症・難治例に対する1日投与量の上限変更(2gから3g)が,2011年3月に承認された。そこで,使用実態下における一般感染症の重症・難治例に対する1日2gを超える投与(以下,2g/日超投与)での適正使用状況の把握とともに,2g/日超投与時の副作用の内容と発現頻度,及び2g/日超投与患者におけるメロペンの安全性と有効性に影響を与える要因を検討する目的で,メロペン特定使用成績調査(一般感染症2g/日超投与例)を2011年8月から2013年6月の期間で実施した。全国87施設より399例の調査票を収集し,安全性は382例,有効性は322例で集計,検討した。
安全性に関して,副作用発現症例率は19.1% (73/382例)であり,主な副作用は,肝機能異常,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加,アラニンアミノトランスフェラーゼ増加,肝障害及び下痢であった。発熱性好中球減少症(febrile neutropenia; FN)の効能の追加承認のために国内で実施した開発治験やこれまでに実施した特定使用成績調査(FN)を含む製造販売後調査の成績と同様の傾向であった。また,患者背景要因別の副作用発現状況で特に問題となる差異は認められなかった。
有効性に関して,有効率は73.6% (237/322例)であり,直接比較はできないが初回承認の際に実施したメロペンの一般感染症に対する成人2g/日までの使用成績調査での有効率71.4% (3214/4504例)と同程度であった。また,患者背景要因別の有効率で特に問題となる差異は認められなかった。
以上より,使用実態下において,本剤は,重症・難治性感染症に対して臨床的に有用な抗菌薬であることが確認できた。
今回我々は,埼玉県内の8施設において検出されたStreptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenes, Haemophilus influenzaeおよびMoraxella catarrhalisの計789株を対象とし,2007年から2010年までを3つの期間に分けて各種抗菌薬に対する薬剤感受性を測定した。S. pneumoniaeにおいてはpenicillin感性率が43.5%から55.8へ上昇していた。S. pyogenesにおいてはerythromycin感性率が100%から29.4%へ低下し,azithromycin感性率も65.5%から29.4%へ低下していた。H. influenzaeにおいてはβ-lactamase-nonproducing ampicillin-resistant(BLNAR)株の割合が34.9%から17.1%へ減少していたものの,β-lactamase-nonproducing ampicillin-intermediate(BLNAI)株の割合が19.8%から29.3%へ増加していた。M. catarrhalisの薬剤感受性は良好で大きな変化は認めなかった。いずれの菌種においてもキノロン系7薬剤に対する経年的な感受性低下は認めなかった。