心臓
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20 巻, 1 号
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  • 寺井 勝, 河野 陽一, 幡野 雅彦, 丹羽 公一郎, 中島 博徳, 高尾 篤良
    1988 年 20 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    円錐動脈幹異常顔貌症候群患児の免疫学的検討を行った.末梢血T細胞サブセットでは,正常対照群に比較してOKT3陽性細胞の比率(56±10%,p<0.01)とOKT4陽性細胞の比率(31±7%,p<0.01)の低下を認めた.易感染性を示した円錐動脈幹異常顔貌児のうち,水痘症や帯状胞疹が重症化したり,肺炎を繰り返した症例では,インターロイキン2産生能が正常対照者の6割以下と低下しており,これらの易感染性の原因のひとつの可能性がある.
  • 野田 敏剛, 柳沼 淑夫, 土谷 正雄, 飯野 智也, 小松 裕行, 細田 瑳一
    1988 年 20 巻 1 号 p. 8-21
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は等容収縮期(ICP)および等容拡張期(IRP)における左室形態変化を明らかにすることである.高速シネ撮影(150コマ/秒)で2方向同時左室造影を行い,正常左室収縮群(N群)12例の左室形態変化を明らかにするとともに,前壁心筋梗塞群(A群)8例,下壁心筋梗塞群(1群)8例との対比を行った.またICP,IRPにおける左室形態変化と各種血行動態指標との関係を検討し,以下の結果を得た.(1)左室形態変化:N群はICPにおいて左室の短径方向にRAOで短縮,LAOで拡張し,IRPでは逆に短径方向にRAOで拡張し,LAOでも軽度拡張する傾向を認めた.左室長軸方向へはICPではRAO,LAOともわずかに短縮し,IRPでは軽度延長した.これは心室筋への刺激興奮伝播様式あるいは心筋構築上の特徴による変化と考えられた.A群,I群では各々虚血領域はICP,IRPとも面積変化率が減少し,逆に健常領域は変化率増大する傾向を認めた.(2)各種血行動態指標:左室収縮初期の収縮機能を鋭敏に表わす指標とされている大動脈最大血流加速度(MA)は,N群に比しA・I両群で有意に低値であった.また左室障害部位によりMAは異なり,I群よりA群,特に心尖部障害を含む群においてMAは低値を示した.心室弛緩特性を表わすとされている左室圧下降脚の時定数(T)はN群に比し,A・I両群,特にA群で有意に延長した.
  • 榊原 哲夫, 広瀬 一, 中埜 粛, 松田 暉, 白倉 良太, 平中 俊行, 松村 龍一, 桜井 温, 今川 弘, 川島 康生
    1988 年 20 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Spasticanginaに対するA-Cバイパス術の効果を明らかにするために,器質的狭窄を有するspasticangina症例8例のA-Cバイパス術後に,エルゴノビン負荷冠動脈造影を施行して検討した.エルゴノビン負荷陽性例は5例(63%)であった.グラフトがすべて開存しているにもかかわらず,術後狭心痛が残存した症例は2例で,これらは術後エルゴノビン負荷冠動脈造影でグラフトを施行したnative coronary arteryの攣縮を認めた.虚血責任冠動脈へのグラフトが閉塞している症例2例のうち1例で,術後狭心痛が消失した.この症例は,エルゴノビン負荷冠動脈造影試験が術前陽性であったものが,術後陰性化した症例であった.以上の検討により,spasticanginaに対するA-Cバイパス術においてはグラフトが開存しているにもかかわらず,狭心痛が残存する症例や,グラフトが閉塞しているにもかかわらず,狭心痛が消失する症例があり,これらの現象は,グラフトを施行したnative coronaryarteryのspasmの有無に関係していることが推測された.
  • 急性下壁梗塞に合併する右室梗塞の心電図変化について
    岩崎 孝一朗, 吉富 寿美代, 草地 省蔵, 西山 修, 上田 稔, 喜多 利正, 谷口 堯
    1988 年 20 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性下壁梗塞で前胸部誘導(V1~V4)にてST上昇を示した5症例を経験した、4例はPTCRおよびPTCA施行例でうち3例においては次の3つの状況が同一症例において連続して観察された.1)右冠動脈本幹と右室枝が共に閉塞,2)両者が共に開存,3)右室枝のみ閉塞.
    この3例においては右冠動脈本幹が再開通し,右室枝が閉塞した場合にのみ前胸部ST上昇がみられて,右室枝の閉塞に右冠動脈本幹の閉塞が合併するとST上昇は消失していた.したがって前胸部ST上昇は右室枝の閉塞によるものと考えられた.
    一般に下壁梗塞では下壁誘導(II ,III,aVF)で,STが上昇するが,前胸部誘導では下壁ST上昇の鏡面像としてST低下がみられる.したがって下壁梗塞と右室梗塞が合併すると,右室梗塞による前胸部ST上昇は下壁梗塞による前胸部ST低下のため相殺されてST上昇を示さないと考えられる.
    右室梗塞は下壁梗塞に合併する例がほとんどであり,このため右室梗塞合併例でも大部分の症例では前胸部ST上昇がみられないのであろう.下壁ST上昇の軽度な一部の例において前胸部ST上昇が出現すると考えられる.
  • 門間 和夫, 高尾 篤良, 中沢 誠, 里見 元義, 中西 敏雄
    1988 年 20 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    無脾症候群25例と多脾症候群20例のカテーテル・造影検査を行い,肺動脈と肺静脈について次の所見を得た.無脾症候群全例に肺動脈狭窄または閉鎖を合併し,2歳以上の狭窄例では主に大動脈経由で肺動脈にカテーテルを挿入した.肺動脈閉鎖例の動脈管開存には動脈管用カテーテルを挿入した.肺動脈に直接カテーテルを挿入できた無脾症候群の33%に肺高血圧症が合併した.両症候群の正面影像では主肺動脈は正中線上にあり,左右肺動脈は対称性であり,無脾症候群では共に右肺動脈の特徴を,多脾症候群では共に左肺動脈の特徴を示した.側面造影像では左右の肺動脈が無脾症候群では気管支の前下方に,多脾症候群では上後方に位置し,90%で左右肺動脈が重なった.対照群では左右肺動脈が多少とも重なるのは16%のみで,84%は明らかに気管支を挟んで前後に分かれて位置した.総肺静脈還流異常症が無脾症候群の47%に認められた.
  • 高 英成, 中島 昌道, 三隅 寛恭, 早崎 和也, 釘宮 博志, 今井 康晴, 黒沢 博身, 沢渡 和男
    1988 年 20 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は13歳,男子.チアノーゼ,易疲労感を主訴とし,当科に入院.精査の結果,complete levotransposition,VSD,PS,1-PA atresia,PDA,PFOと診断し,左肺動脈パッチ拡大術,Rastelli手術を施行し,良好な結果を得た.心外導管には牛心膜をロール状にしたものを作成し,ブタ心膜の三弁を内蔵させ,使用した.大動脈が肺動脈の左前方に位置するcomplete levotranspositionではVSDはsubarterial VSDであることがほとんどであり,PSを合併した場合,Rastlli手術の最も良い適応になる.
  • 金子 博志, 野田 寛, 森谷 浩四郎, 賀屋 茂
    1988 年 20 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    極めてまれな左冠動脈口閉鎖の10歳男児例を経験した.運動時易疲労性を主訴に受診し,運動負荷心電図(トレッドミル)でST低下,T波陰転をきたし,冠動脈障害を疑われた.大動脈弁上,左冠動脈洞,右冠動脈での造影で左冠動脈は,右冠動脈から側副血行路を介して逆行性に造影され,大動脈直前で盲端になっていた.左冠動脈から逆行性に肺動脈は造影されなかった.以上の所見から左冠動脈口閉鎖と診断した.本症の臨床所見,鑑別診断を中心に報告した.
  • 特に気管狭窄合併例を中心として
    中島 弘道, 宮本 治子, 寺井 勝, 丹羽 公一郎, 中村 常太郎, 松本 博雄, 斉藤 学
    1988 年 20 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血管輪(1例は vascular sling)の気管狭窄合併例と非合併例の臨床像を比較しその問題点および治療について検討した.対象は6例で,気管狭窄合併群2例と非合併群4例であった.狭窄群の発症は新生児期と早く,高度の呼吸困難を伴い早期より呼吸管理を必要としたが,非狭窄群では比較的発症が遅く,4例中1例で呼吸管理を要したのみだった.白血病合併例の1例を除いた5例に血管輪解除術を行った.術後,狭窄群は長期の呼吸管理を必要とし,広範な気管低形成を認めたため,先天性気管狭窄と診断し気管形成術を施行したが1例は死亡した.非狭窄群ではおおむね経過は良好であった.気道圧迫症状の強い血管輪では,器質的な気管狭窄の合併を考慮すべきであり,治療法の確立が待たれる.
  • 山本 真, 石沢 瞭, 高野 良裕, 曽根 良治, 常本 実, 太田 喜義, 島田 宗洋
    1988 年 20 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    PHを伴った学童期ASD3症例(6歳女児,7歳男児,7歳女児)を報告した.いずれも無症状で健康診断で偶然発見された.肺体血流比(Qp/Qs)はそれぞれ1.5,L4,1.3,肺動脈圧は,収縮期88/拡張期50(平均60)mmHg88/48(62),52/20(34),収縮期肺体動脈圧比(Pp/Ps)は,0.96,0.72,0.50だった.術後遠隔期(1年,1年,4カ月)の肺動脈圧は,54/16(32),50/20(32),44/16(30),Pp/Psは0.50,0.49,0.40だった.
    これらの症例に共通する点は,明らかな心不全の病歴がない,年齢的に思春期前である,ASDとしてはQP/Qsが少ない,酸素,Tolazolineなどに反応しないなどで,独立した概念として考えるのが適当と思われた.原因に関して,肺血管床の発達,ASDに伴うPHの病理学的特徴,原発性肺高血圧症類似の病態について考察した.手術適応の決定は,拡張期ランブルの有無,胸部X線所見,左右短絡の優位性など,臨床所見を総合的に判断した.
  • 鎌田 政博, 西村 真一郎, 西 猛, 籠崎 祐次, 岡崎 富男, 林谷 道子, 武内 重樹, 平本 忠憲
    1988 年 20 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    新生児肺高血圧持続症(PPHN)の主因である周産期低酸素血症は,肺血管床のみならず心筋へも影響を与えることが多く,PPHNと心筋虚血は切り離して考え難い.
    我々の症例は生下時より,チアノーゼ,心雑音を認め,心エコーによりPPHN,三尖弁閉鎖不全と診断された.治療として,イミダリン,ドパミンなどを使用したが,低酸素血症,心不全が進行し,頭蓋内出血を伴い死亡した.剖検の結果,三尖弁の前乳頭筋および3本の後乳頭筋群に明瞭な壊死巣を認め,PPHNによる右室負荷により乳頭筋障害(壊死),さらには三尖弁閉鎖不全が発生したものと考えられたが,同時にPPHNにおける三尖弁閉鎖不全は,可逆性で一過性三尖弁閉鎖不全(TTI)とよべるものから不可逆性のものまで,幅広いスペクトラムの中で促える必要があると思われた.
  • 清水 昭彦, 大江 透, 高木 洋, 鎌倉 史郎, 松久 茂久雄, 佐藤 磐男, 下村 克朗
    1988 年 20 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,22歳男性.動悸発作の精査目的にて当センターに入院した.洞調律時の必電図は,PR時間およびQRS幅は正常で,動悸発作時の心電図は,180拍/分前後の房室解離を伴ったnarrow QRS tachycardiaであった.臨床電気生理学的検査では,AH時間の延長に伴い,HV時間は短縮し,QRSは左脚ブロック型を呈した.これよりnodovelltricular fiberの存在が考えられた.頻拍は右室ペーシングにて誘発停止が可能で,さらにATPやverapamilの静注にて停止することより,頻拍の機序はreentryで,その回路内に房室結節を含んでいることが考えられた.以上より,本例の房室解離を伴ったnarrow QR Stachycardiaは,房室結節を順行性にnodovelltricular fiberを逆行性に回旋する頻拍に,HAblockを伴ったものと考えられた.本例は,房室結節内の自動能充進によると考えられる頻拍も生じたが,この際頻拍は,nodovelltricular fiberをbystanderとした左脚ブロック型を呈した.
  • 松岡 優, 西岡 敦子, 倉橋 佳英, 宮尾 益英, 岩河 正典, 古谷 敬三
    1988 年 20 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    5歳時に発熱と皮下結節で発症し,以後再発,寛解を繰り返し,21歳で死亡したWeber-Christian病の1例について報告する.患児は16歳の再発時に胸痛が出現し,皮下結節の生検でWeber-Christian病と確定診断された.この頃より,心電図上軽度のP-Q延長と,時に房室解離を認めた.以後,経過とともにQRS電気軸は左軸に偏位し,P-Q間隔は延長し,左側胸部誘導でのR波高値は低下を示した.20歳時に行った電気生理学的検査では,心房内および心室内刺激伝導遅延を認めた.また心臓カテーテル検査では左室拡張末期容量の増大,左室駆出率の低下を認め,拡張型心筋症の病態と考えられた.21歳時に,心不全が増悪し,急性腎不全で死亡した.剖検では,心重量450gと重く,両心室に帯状の線維化を広範囲に認めた.この線維化は,刺激伝導系にも認められ,房室結節および左脚にも及んでいた.
  • 七条 健, 平井 隆二, 水取 悦生, 名和 清人, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1988 年 20 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    鎖骨下静脈穿刺法にて挿入したカテーテル電極が鎖骨・第1肋骨間で断線し,その原因が狭小な間隙での反復する機械的圧迫によると推測された症例を経験した.症例は70歳の男性で,洞機能不全症候群に対しペースメーカー植え込み術を行った.電極はカテーテル電極を左鎖骨下静脈を穿刺して挿入した.術後6カ月でペーシング不全をきたし,胸部X線写真にて電極断線と診断され電極の交換が行われた.摘出した電極は,鎖骨・第1肋骨間隙に相当する部で外側コイルの断線が認められたが,断線した部に電極の屈曲はなく,胸壁への固定部からも離れており,狭小な間隙での機械的圧迫によるものと推測された.鎖骨下静脈穿刺法は簡便な方法で,最近広く行われているが,静脈切開法に比べて内側のより狭小・強固な間隙を電極が通過するため機械的外力を受けやすく,今後このような断線例が増えてくるものと予想される.
    鎖骨下静脈穿刺法には静脈切開法では起こり得ない合併症も散見される.したがって本法の採用・実施に際しては,局所解剖を熟知し,気胸などの直接的合併症の回避はもとより機能的とも考えられる本症例のごとき合併症の防止のためにできるだけ外側より穿刺するなど慎重を要するものと思われた.
  • 大嶽 達, 渡辺 俊明, 小坂 昇, 百瀬 敏光, 西川 潤一, 飯尾 正宏, 望月 孝俊, 芹澤 剛, 川久 保清, 戸田 為久, 杉本 ...
    1988 年 20 巻 1 号 p. 93-103
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    携帯用RI心機能モニター(VEST)は,樹脂製のジャケット上にRI検出器を左室へ向けて固定し,種々の状態での左室機能変化を連続的にとらえる装置である.VESTを用い,我々は,正常者,虚血性心疾患症例,拡張型心筋症症例を対象とし,トレッドミル運動負荷,回復期,立位,坐位などでの左室機能示標変化,および左心不全患者に亜硝酸剤ISDMおよび強心薬E1020を投与した際の左室機能示標変化を検討した.その結果,立位で坐位に比し拡張終期容積(EDV)が減少し,運動負荷時,立位に比しEDVが増加する結果が得られ,下肢静脈プールの関与が考えられる.運動負荷時の駆出分画(EF)変化については,広範虚血でEFが低下することが示されたが,真のbackgroundに対する慎重な配慮が必要である.薬剤負荷では,ISDNでEDV,収縮終期容積(ESV)が減少し1回拍出容積(SV)が著変なくEFが若干上昇するとの結果であり,E1020ではEDV,ESVが減少,SV上昇,EF著明上昇の結果であった.これは両薬剤の効果をよく反映していた.VESTの信頼性に関しては,EFの絶対値をガンマカメラのデータと比較したが,r=O.938と比較的良好な相関であり,変化の信頼性についても,上記運動負荷や薬剤負荷での変化を合理的にとらえ,負荷前後の同一体位での指標もほぼ同じとなり,検出器のずれや著明な不整脈がなければ,かなり信頼できると考えられる.
  • 中村 正彦, 鈴木 豊, 小林 真, 友田 春夫, 高橋 隆
    1988 年 20 巻 1 号 p. 104-111
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    いくつかの成分曲線が線形に重畳した曲線群から,成分曲線の形を仮定せずにもとの成分曲線を復元する新しい方法,すなわち最大エントロピー原理を基礎とした方法を心RIアンジオグラフィから得られる時間放射能曲線に適用した結果について報告している.まず最初に最大エントロピー原理について概説し,ついで核医学動態画像解析の理論的基礎として本論文で取り扱う問題の定式化を行っている.3番目に,未知混合曲線からもとの成分曲線を復元する方法すなわち最大エントロピー原理を基礎とした新しい方法について概説している.最後に,心RIアンジオグラフィへの適用結果について示している.関心領域としては,心臓全体をカバーするようにしたもの,右心室領域をカバーするようにしたもの,左心室領域をカバーするようにしたものの3種を設定し,これら3種の関心領域から得られる時間放射能曲線群に方法を適用して,成分数を変えた場合の復元結果の違い等について検討している.これらの検討結果より,ここに示した方法は注意深く関心領域を設定することなしに対象臓器の時間放射能曲線を復元することが可能であり,従来核医学動態機能検査の基本的問題点の1つであった対象臓器の時間放射能曲線に重畳する他臓器由来の時間放射能曲線の除去に対する1つの解決法になることが示唆されている.
  • 心機能分類とcomplianceの対比
    鷹津 久登, 後藤 紘司, 鈴木 孝彦, 大角 幸男, 八木 安生, 大島 貞男, 塚本 達夫, 山本 典孝, 飯田 真美, 出口 富美子, ...
    1988 年 20 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 1988/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ヒト容量血管のコンプライアンスを求める目的でradienuclideを用いたplethysmographyを施行した.通常の99mTcによるradionuclide plethysmographyを行い,平衡時相において前腕にROI(region of interest)をもうけて上腕のカブによる静脈閉塞を行った時の,前腕のradioactivityと静脈圧を連続記録した.静脈閉塞によるradioactivityと静脈圧の変化からRNカウントー静脈圧曲線を描き,これに若干の仮定を加えて前腕静脈のspecificcompliance,および体静脈のコンプライアンスを推定した.血行動態的に特に異常を認めず“正常”と考えられる旧NYHA心機能分類Class I群では,体静脈のコンプライアンスは129.8±25.9ml・mmHg-1(mean±SD;n=9)であった.旧NYHA心機能分類により分類した心疾患患者32例において,そのClassと体静脈コンプライアンスを比較検討したところ心不全症状の強い群ほど体静脈のコンプライアンスは有意に低かった.またこれらにニトログリセリンO.6mgの舌下投与を行ったところ体静脈のコンプライアンスは有意に増加した(p<0.01).
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