心臓
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24 巻, 9 号
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  • 谷 正人, 朝倉 靖, 新村 健, 海老原 良典, 半田 俊之介, 中村 芳郎, James R. Neely
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1021-1026
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋傷害発生に重要な役割を有するH+の灌流液の緩衝能増強が再灌流後の心機能回復を促進しうるか否かを検討した.[方法]ラット摘出心をKrebs液を用い37℃でLangendorff手技で灌流した.虚血作成前に100mMのsucrose(C群)を含む標準液または100mMのHepes(H群)で細胞外H+緩衝能増強した液で10分間灌流後30分間完全虚血を作成し30分間再灌流した.さらに低酸素化液による虚血前灌流で心筋glycogenを涸渇し虚血中の解糖を抑制しH+産生を低下させた群でHとの併用効果も検討した.[結果]H群とC群で虚血前・同終了時のエネルギー代謝に差はなかったが再灌流後のATP・CPの回復はH群で大で(ATP:6.4±O.8vs8.4±0.7,CP:14±2vs23±2μmol/gdwt),左室発生圧の回復を改善(25±5vs49±6mmHg),拡張期圧上昇を軽減(22±3vs6±1mmHg)した.虚血中の45Ca2+摂取量はH群で減少(1.3±O.05vsO.9±0.04μmol/gdwt)した.Hと低酸素化前灌流の併用は再灌流時ATP・CPの回復を逆に著明に低下(ATP:3.4±0.2,CP:9.6±2.6μmol/gdwt)させ,左室発生圧の回復は減少した(11±3mmHg).[総括]Hによる細胞外H+緩衝能増強は再灌流傷害を軽減するが,低酸素化前灌流による細胞内H+産生抑制との併用は心筋傷害を増悪した.
  • 中島 敏明, 三須 一彦, 松井 浩, 田宮 栄治, 杉本 恒明, 羽田 勝征
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1027-1034
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性心房細動の心拍数調節におけるβ1選択性遮断薬酒石酸メトプロロール(me-toprolol)の有用性につき,急性投与および慢性投与下で検討した.
    Metoprolol 40mgを1回経口投与した場合,時間依存的に運動負荷時心拍数の増加を抑制した.その効果は,投与後2,4,6および9時間のうちで投与後2時間で最大となり,以後徐々に減少したが,9時間後においても抑制効果が確認された.また,metoprololの負荷時心拍数抑制効果は,血中濃度と有意な相関がみられた(p<0.05).Metoprolol 40mg1回投与における心拍数抑制効果は,propranolol 20mg 1回投与に比較し,勝っており,長時間継続する傾向がみられた.
    Metoprolol 80mg/日の慢性投与下では,日中および夜間心拍数とも抑制がみられたが,その効果は日中に顕著であり,自覚的にも全例に改善が確認された.
    以上より,metoprololは慢性心房細動患者の心拍数調節に,極めて有用であると考えられた.
  • 冠動脈造影所見の重症度との関連およびその臨床的意義
    中込 晃, 斉藤 崇, 門脇 謙, 佐藤 匡也, 阿部 芳久, 木村 裕, 熊谷 正之, 松岡 一志, 三浦 傳
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1035-1040
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    経皮的冠動脈形成術はバルン拡張により一過性ではあるが標的冠動脈支配領域の心筋に虚血を生ずることから虚血程度の判定は重要である.しかし体表面心電図では鋭敏性に問題があり,虚血早期の変化を捉えきれない可能性がある.そこで,本研究では冠動脈内心電図を記録し,梗塞既往のない左冠動脈近位部に標的病変を有する狭心症患者を対象に,バルン拡張中のR波高変動から心筋虚血の評価を試みた.その結果,全例の集計では60秒のバルン拡張によるR波高変動は体表面心電図,冠動脈内心電図とも有意な変動を認めなかった.しかし,造影遅延を伴わない90%以下狭窄群と造影遅延を有する高度狭窄群に分けて検討した結果,非造影遅延群では60秒のバルン拡張中のR波高に一過性減高の後増高に転じる2相性変動を認めた.一方,造影遅延群では初回バルン拡張時には直後よりR波増高を示し,2回目のバルン拡張時に2相性変動を認めた.したがって,PTCAにおけるR波高の2相性変動には,冠狭窄度とバルンによる冠血流減少が影響を及ぼすことが推測され,バルン拡張直後よりR波が増高する例ではバルン挿入により既に灌流域心筋に虚血が生じていることが推測された.すなわち,PTCA時一過性R波減高相の有無は副血行路の発達程度を含めた冠動脈病変の重症度の評価の臨床的指標となりうることが示唆された.さらに,R波高の減高相はST上昇に先立って認められたことより,急性心筋虚血の評価に対してより鋭敏な指標となる可能性が推測された.
  • 合併症および術前静脈造影の意義について
    河野 博之, 深江 宏治, 梅末 正芳, 内田 孝之, 篠崎 啓一, 安藤 廣美, 真弓 久則, 松井 完治
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1041-1044
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    鎖骨下静脈穿刺法により124例に173本のペースメーカーリードを植え込んだ.静脈穿刺法に起因する合併症として気胸4例,血胸1例,神経損傷(一時的横隔神経麻痺)1例を認めた.静脈穿刺不能例はなかったが,1例においてガイドワイヤーが内頸静脈にしか進まないため右側からの挿入に変更を要した.これら合併症は穿刺に難渋した高齢者に発生し,その発生頻度は5.6%(7例/124例)であった.124例中49例に術前静脈造影を施行したが,これら症例においても気胸2例,神経損傷1例の発生を認めており,静脈造影は穿刺に伴う合併症を減少させる手段とはならなかった.他方,静脈造影の経験より,拡大した大動脈弓によって無名静脈が前下方に圧排されている症例があることが明らかとなり,このような症例では大動脈穿孔等の防止のためにより慎重な挿入操作が必要と考えられた.鎖骨下静脈穿刺法に特有な遠隔期合併症として肋鎖靱帯部でのリード被覆損傷と断線があるが,2カ月から7年11カ月,平均3年10カ月の経過観察中その発生を認めなかった.
    以上の結果から,鎖骨下静脈穿刺法によるペースメーカーリード植え込み手術における合併症の発生は決して高頻度ではなく,本法は今後とも推奨されるべき手術法であると考えられる.合併症発生防止のためには,高齢者,とくに動脈硬化の高度な症例において,より注意深い手術操作を行うことが重要である.
  • 渡辺 真一郎, 榊原 哲夫, 丹 志城, 正井 崇史, 明渡 寛, 古谷 保博, 西田 和彦, 山本 一博, 児玉 和久, 辻本 正彦
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1045-1049
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    交通口を心室中隔膜様部中隔に認めない,特異な形の左室右房交通症を経験した.症例は64歳男性で,心筋梗塞後に発症した偽性左心室瘤の冠静脈洞穿孔と診断し,開心術を施行した.手術所見では瘤は左心室後面心基部に5×7cm大に認め,これを切開すると左室下壁と直径3mmの交通口を認め,一方,瘤切開口から右心房に指が挿入可能な大きさの交通口を確認した.手術は左心室との交通口の直接閉鎖およびsaphenous veinを用いて,A-Cバイパス術をLADに施行した.術後3カ月目に急性気道閉塞をきたし呼吸不全にて死亡した.剖検にてVSD等の合併心奇形は認めず,右心房後下部の冠状静脈開口部と近接する部位より右心房が左心室下壁に瘤状構造物となって付着し,これと左心室内腔との交通を認めた.交通口の内膜側の弾性線維は左心室内膜,交通口内膜および瘤壁内膜と連続性を認めた.また瘤壁の心筋層は左室横紋筋と連続した横紋筋で壁の構築は心房壁と同様の構造を示した.したがって先天的に左心室と右心房との間に交通があったものと診断された.
  • 山本 秀也, 林 康彦, 岡 裕三, 住居 晃太郎, 谷口 千恵, 前田 康雄, 花田 尚, 渡辺 光章, 土谷 太郎
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1050-1055
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.梗塞発症3時間後に左回旋枝(Seg.13)の閉塞に対してウロキナーゼを急速静注後,PTCAを施行し再開通に成功した.しかし,翌日から発熱,胸部誘導で広範なST上昇,心エコー図で中等量の心嚢水を認めた.切迫心破裂,心不全の徴候は認めず,心膜炎と考えプレドニゾロンを投与し解熱したが,心嚢水は減少しなかった.第17病日頃から空咳と共に再び発熱,遷延性心膜炎,胸膜炎が出現した.アスピリンを投与したところ症状は軽快した.
    梗塞早期の心嚢水貯留は切迫心破裂,心不全,心膜炎とその鑑別は重要である.さらに,近年,血栓溶解療法が盛んに行われ,血性心嚢水貯留を生じることも報じられている.
    一方,Dressler症候群は心筋梗塞後2~10週後に発熱,心膜炎,胸膜炎などを生じ,しばしば再発することで,梗塞早期心膜炎とは異なるものとして知られている.しかし,Dressler症候群について一定の見解は得られてなく,その存在を疑問視する説も多くみられる.
    本症例は後壁梗塞例であり,血栓溶解療法後からこのように発熱,胸部誘導上広範なST上昇,著明な心嚢水貯留を伴う心膜炎を呈したこと,心不全の合併なく慢性期に胸水貯留をきたした点で興味深く,比較的まれであると考えられた.そこで,Dressler症候群や血栓溶解療法に関する文献的考察を加え報告した.
  • 田中 正人, 副島 洋行, 土肥 まゆみ, 新田 政男, 丹羽 明博, 神谷 敬三, 三宅 祥三, 廣江 道昭, 丸茂 文昭
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1056-1061
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後極めて早期に形成が確認され,剖検にて特異な形態をみた仮性心室瘤の1例を経験したので報告する.症例は57歳の男性.前立腺癌および骨転移のため平成元年12月に除睾術を施行され,その後外来通院していた.平成2年2月16日に胸痛が出現.2月18日に当科を受診し,下壁の急性心筋梗塞の診断で入院となった.入院時心エコー図では左室下壁の壁運動低下と少量の心嚢水貯留を認めたのみであったが,入院4日目には後壁から側壁にかけての心室瘤および左室後壁外側にecho freespaceがみられた.胸部CT,RI所見を総合して仮性心室瘤が疑われたが,進行した悪性腫瘍があるため保存的に経過を観察し,平成2年7月に癌の肺転移による呼吸不全のため死亡した.剖検にて左室後壁に約1mmの菲薄化した壁を有する心室瘤を認め,その一部よりさらに側壁側に心室瘤内腔が突出していた.顕微鏡所見で第1,第2の心室瘤壁ともに,心内膜および残存心筋細胞を全く認めず仮性心室瘤と診断した.本症例は心筋梗塞第6病日に心エコー図にて仮性心室瘤が確認されており,従来の報告に比し極めて早期の形成であった.また左心室との交通口が大きく二腔を有するという形態学上の特徴を認め,さらに心室瘤切除術を施行せずに経過を観察しえたまれな症例と考えられた.
  • 野田 宜輝, 織田 勝敬, 渡辺 健, 高山 泰雄, 清水 陽一, 若林 亮, 石塚 幹夫, 矢崎 吉純
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1062-1066
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本邦における若年女性の心筋梗塞は極めてまれであるといわれている.今回我々は,冠危険因子として高脂血症,喫煙歴を有し,経口避妊薬を常用していた21歳女性の心筋梗塞症例を経験した.症例は21歳女性.労作時胸痛を主訴にて入院.冠動脈造影上,左前下行枝(#6)に75%の狭窄を認めたが,内服薬治療にて狭心症発作は消失したため,以後外来通院.しかし,4カ月後,急性心筋梗塞を発症し冠動脈造影を施行.同部に完全閉塞を認め,血栓溶解療法にて99%狭窄へ改善.術中血圧低下をきたしたため,大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入.同日当院へ転院し,経皮的冠動脈形成術(PTCA)を施行.25%以下への拡張が得られた.その後,特に問題なく軽快退院した.本症例は,冠危険因子として,高脂血症,喫煙歴を認めたが,若年での心筋梗塞発症の因子のひとつとして,経口避妊薬の服用による,血小板凝集能亢進,凝固能亢進が考えられた.経口避妊薬服用婦人における心筋梗塞発生率は,服用期間,年齢,喫煙量と強い相関があり,今後若年女性の冠危険因子を考察する上で,経口避妊薬服用歴も考慮すべきであると思われ,報告した.
  • 長尾 月夫, 金谷 透, 小林 公, 小田 純士, 近内 利明, 友池 仁暢
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1067-1072
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.急激な労作や飲酒後の動悸,前胸部から左胸部にかけての痛みと重苦感を主訴に当院を受診した.安静時心電図,胸部X線写真,心エコーの検査では異常が認められなかったが,トレッドミルテストにて負荷1分30秒後に胸痛が出現すると同時に著明な虚血型ST低下(II,III,aVF,V4~V6)が認められた.冠動脈造影では左前下行枝#7の完全閉塞.左回旋枝の本幹は認められず高位側壁枝が非常に発達していたが,その近位部に90%狭窄部位を有していた.右冠動脈では#2に99%の高度狭窄部位がありこれから末梢より左前下行枝,左回旋枝への側副血行路が認められた.本症例は若年であり,冠危険因子としては喫煙のみで,冠動脈造影上も拡張性病変が特に右冠動脈に認められ通常の動脈硬化による病変とは考えにくい点があった.A-Cバイパス術時の所見と動脈壁の病理組織学的所見より川崎病後遺症が否定し得なかった.本症例は30歳になって始めて症状が出現してきた川崎病もしくは,非特異的炎症による冠動脈炎を基礎に有する狭心症と考えられるが,上記のような所見を有し30歳でA-Cバイパス術を施行した報告はまれであると考えられ,文献的考察を加えて報告した.
  • 原川 伊寿, 川副 浩平, 中谷 充, 笹子 佳門, 小坂井 喜夫, 小原 邦義, 鬼頭 義次
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1073-1075
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎(以下IEと略す)は抗生剤投与中止後も発熱等の症状がなく,白血球数増多,血沈値の促進,CRP陽性等の血液学的炎症反応が陰性であれば,内科的に治癒と判定されるのが一般的である.
    今回我々はIEに対して,抗生剤の投与で感染が治癒と判定され,当センターに転院後,手術を施行したところ,疣贅の中に病理組織学的に起因菌が証明された1例を経験したので報告する.
    症例は50歳男性,主訴は発熱.現病歴は43歳時心雑音を指摘されたが放置した.平成元年3月から38℃以上の発熱が生じ,某院で3/4度の三尖弁閉鎖不全,大動脈・右房間交通のバルサルバ洞破裂と診断され,血液培養で連鎖球菌が検出された.抗生剤投与5週間後,治癒期IEとしてさらに数カ月後,当センターへ紹介された.手術はバルサルバ洞破裂閉鎖術,大動脈弁瘤閉鎖術,三尖弁形成術を施行した.ところが手術時採取した疣贅に,病理組織学的検索でグラム陽性球菌の集落が認められた.
    臨床的に治癒期IEと考えられたが,病理組織学的には明らかに活動期にあったまれな症例と考えられたので報告した.
  • 久保 雅宏, 松岡 優, 田口 義行, 秋田 裕司, 石原 哲也, 橋本 俊顕, 黒田 泰弘
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1076-1081
    発行日: 1992年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    反復する失神発作をきたし,洞機能不全が疑われた男児2例を経験した.2例の運動を含めた日常生活の24時間ホルター心電図検査では4秒以上の洞停止を認めなかった.しかし,心電図モニター下に1例では疼痛刺激を,もう1例では顔面潜水テストを施行したところ,それぞれ7秒および5秒の心停止が出現した.疼痛刺激例では失神を伴った.
    心臓電気生理学検査では,2例とも洞結節回復時間および洞房伝導時間の軽度の延長を認めた.また迷走神経刺激試験が陽性であり,副交感神経遮断薬で洞停止時間や洞結節回復時間が改することより,発作には主として迷走神経緊張亢進が関与していると考えられた.
  • 村山 正博
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1082-1084
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 岡本 名央子, 井上 智夫, 大西 祥男, 吉田 明弘, 尾家 伸之, 土井 智文, 林 義彦, 竹内 素志, 秋田 穂束, 横山 光宏
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1085-1090
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    失神発作で発症したAHブロックによる発作性高度房室ブロック(PAVB)の1例を経験した.症例は57歳女性.25年前より2度の失神発作と頻回のめまいがあり近医受診.ホルター心電図にて一過性の高度房室ブロックを頻回に認め当科紹介入院となった.安静時は正常洞調律で原因となる心疾患は認めなかった.ブロックはWenckebach型から最長R-R間隔7.6秒に及ぶPAVBが認められた.電気生理学的検査上,洞結節,His束以下に異常はなく房室結節に軽度伝導障害およびdual pathwayを認めた.バルサルバ手技,頸動脈洞マッサージによる迷走神経刺激,プロプラノロール,メトキサミン,プロプラノロールとアトロビン,プロカインアミド投与等によって房室ブロックは誘発されなかった.ブロックの原因は明らかではなかったが,心内に電極カテーテルを留置し長時間His束心電図モニターにて,AHブロックによるPAVBの自然発作が捕らえられた.房室ブロックはテオフィリンでは抑制されず,硫酸アトロピンにより抑制されたが,症状が重篤であったためVVIペースメーカーを植え込み,以後自覚症状は消失した.PAVBはAHブロックによるものはまれであり器質的障害も明らかな誘因もなしに高度の心停止をきたすPAVBはほとんど報告がなく,迷走神経の関与が原因として考えられたまれな1例として報告した.
  • 小田 勇司, 渡部 透, 真田 えい, 大西 昌之, 青木 定夫, 笠原 紳, 相沢 義房, 柴田 昭
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1091-1096
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Wolff-Parkinson-White症候群における突然死の機序として,心房細動の出現時に早い心室応答から心室細動へ移行する事が知られている.心室細動の発生の危険性は副伝導路の有効不応期(250msec以下)や,心房細動時の副伝導路を介する心室波の最短間隔(200msec以下)により評価されるが,前者は後者より長いとされている.しかし,我々は逆に,心房細動時の所見からは最短RR間隔は310msecと長いが,期外刺激法で決めた副伝導路の有効不応期は心房の機能的不応期が250msecであり従ってそれ以下であった例で,外来観察中に受診を中断し,3年6カ月後に突然死した症例を経験した.本例は,心房細動時の副伝導路を介する最短RR間隔より不応期の方が短く,本症の危険群の決定に際し留意すべき点を示していると考えられた.
  • 下村 克朗, 鎌倉 史郎
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1097-1099
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 心拍数の関与について
    清水 渉, 田中 幸一, 吹野 陽一, 溝岡 雅文, 町野 英之, 小根 森元, 末永 健二, 若本 敦雄
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1100-1105
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右室流出路起源の特発性心室期外収縮(VPC)の頻発を認め,その出現が交感神経刺激や副交感神経刺激でなく主に心拍数に依存していると考えられた症例を経験した.症例は42歳の女性で,明らかな基礎心疾患を認めず,VPCは左脚ブロック型,正常軸であった.洞調律時のペースマッピングとVPC時の心内膜マッピングよりVPCは右室流出路(右室中部中隔側)起源であり,心内異常電位は認めなかった.各種薬剤負荷試験では,1)イソプロテレノール1μg静注で一過性にVPCの増加を認めたが,1~3μg/分の持続点滴で心拍数を75/分以上に保つとVPCは完全に消失した.2)フェニレフリン0.2mg静注で血圧上昇に続き心拍数が55/分以下になるとVPCは完全に消失した.3)バルサルバ手技2相で心拍数が75/分以上になるとVPCは完全に消失し,副交感神経刺激状態となる4相で再び75/分以下になるとVPCが再出現し,さらに55/分以下に低下すると再びVPCは消失した.以上より,本例のVPCの出現は,交感神経刺激や副交感神経刺激でなく,主に心拍数(55~75/分)に依存している可能性が示唆された.
  • 坂巻 文雄, 楠原 正俊, 大山 真, 佐藤 徹, 草野 正一, 川辺 志津子, 柴田 三千夫, 茅野 真男
    1992 年 24 巻 9 号 p. 1106-1110
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    25歳女性.乳児期より成長遅延,肝腫大,低血糖があり,他院にて糖原病と診断された.23歳頃より動悸・労作時の息切れが出現.動悸・頻脈が続くため1990年6月当科に入院した.高コレステロール血症,高尿酸血症,空腹時低血糖,高乳酸血症,高ピルビン酸血症,およびグルコース負荷時の血糖・乳酸値の変化より糖原病I型と考えられた.心電図では右室肥大,胸部X線で左第2弓の突出を認めた.超音波パルスドップラー法による肺動脈血流速波形から求めた平均肺動脈圧は50mmHgであった.先天性心疾患,肝硬変,慢性閉塞性肺疾患,自己免疫疾患,肺塞栓等の2次性肺高血圧の原因となる疾患は認めなかった.糖原病I型と肺高血圧の合併例の報告は過去に3例のみであり,いずれも予後不良であった.本症例は過去の報告例に比べ,高齢発症で緩徐な経過をとっていた.食事療法の進歩等により糖原病患者の長期予後は改善されつつあり,今後成人症例の合併症として肺高血圧症は注目されるべきであると考えた.また本症例では肺動脈圧の測定に心臓超音波パルスドップラー法を用いた.本法は心臓カテーテル法のリスクが高いといわれる原発性肺高血圧症では安全かつ有用な方法と思われた.
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