心臓
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26 巻, 5 号
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  • ジギタリスとカテコールアミンの対比
    中村 節, 鼠尾 祥三, 沢山 俊民, 河原 洋介, 長谷川 浩一, 井上 省三, 田中 淳二, 田村 敬二
    1994 年 26 巻 5 号 p. 479-486
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈弁閉鎖不全(AR)に対する強心薬の効果についての報告はまれであり,一定心拍数下で検討した報告はみられない.今回,一定心拍数下でDeslanoside(DES)とDobutamine(DOB)の心血行動態に及ぼす影響を検討した.雑種成犬19頭を用いて,麻酔開胸後,バスケット型カテーテルにて重症AR(平均逆流率:67.5%)を作成した.洞結節破壊後,右房ペーシングにて心拍数を毎分120に固定した.10頭にDES 25μg/kgを経静脈的に投与,9頭にDOB2~12μg/kg/minを経静脈的に持続投与し,血行動態諸指標を測定した.
    DES投与により全末梢血管抵抗(TSR)は有意に増加し,左室拡張末期径と末期圧は有意に増加した.全心拍出量は有意に増加したが,前方心拍出量は不変で,逆流率は有意に増加悪化した.TSR増加率と逆流率の増加率は良好な正相関を示し,ジギタリスはTSR増加を介して逆流率を増加させ心血行動態を悪化させることが示された.
    低容量のDOB 投与(5μg/kg/min)により,TSRは有意に減少し,全心拍出量と前方心拍出量は有意に増加し,逆流率は有意に減少改善した.したがって,低容量DOBはTSR減少を介して逆流率を減少させ,心血行動態を改善させることが示された.一方,高容量のDOB投与(12μg/kg/min)により,全心拍出量は有意に増加したが,TSRが増加し,前方心拍出量は不変で,逆流率は有意に増加悪化した.
    したがって,ARに対する強心薬の効果は,末梢血管への反応の差によって決まることが明らかになった.
  • 中村 芳郎
    1994 年 26 巻 5 号 p. 487-488
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 山本 健, 片山 和裕, 大井 和敏, 市岡 隆志, 佐藤 信一, 原口 正彦, 古谷 雄司, 三浦 俊郎, 河野 通裕, 藤井 崇史, 尾 ...
    1994 年 26 巻 5 号 p. 489-493
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動時の心拍出量の変化と運動耐容能および,体液性因子との関係について検討した.慢性心不全患者を対象とし,スワンガンツカテーテル挿入下に15W3分という軽労作を行わせ,安静時からの心拍数の変化と心拍出量の変化を測定し,心拍数の変化に対する心拍出量の変化(ΔCO/ΔHR)を算出した.さらに,安静時におけるレニン,アンギオテンシンI,アンギオテンシンII,ノルアドレナリンを測定した.一部の患者にて,2週間以内に,呼気ガス分析法により嫌気性代謝閾値(AT)を測定した.ΔCO/AHRは,安静時レニン(r=-0.76,p≦0.005),アンギオテンシンI(r=-0.84,p≦0.001),アンギオテンシンII(r=-0.62,p<0.05),血漿ノルアドレナリン(r=-0.81,p<0.002)との間に有意な負の相関を認めた. また,ΔCO/ΔHRとATとの間にr=0.76(p<0.05)なる有意な正の相関を認めた.
    慢性心不全患者では心拍数の変化に対する心拍出量の増加の不良が運動耐容能低下の重要な要因と考えられた.さらに,運動時心拍数の変化に対する心拍出量の増加が不良な患者ほど安静時の液性因子が高値であり,運動時心拍数の変化に対する心拍出量の増加の程度と,慢性心不全の重症度との関係が示された.
  • 東京都CCUネットワークの集計成績における'82年と最近3年間('89~'91年)との比較
    高野 照夫, 内田 拓実, 家所 哲夫, 子島 潤, 高山 守正, 田中 啓治, 田村 勤, 本江 純子, 山口 洋, 横井 尚, 山口 徹 ...
    1994 年 26 巻 5 号 p. 494-502
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞の初期治療の実態を,CCUネットワークにおける過去10年間の成績をもとに分析した.また本制度の創世期の'82年と各種冠動脈再建療法が確立しつつある最近3年間('89~'91年)との成績も比較した.過去10年間にCCUに収容された急性心筋梗塞は7,543例で,年度別死亡率は'82年19.5%であったが徐々に低下傾向を示し,'91年10.7%と最も低値を示した.また発症からCCU収容までの時間は著しい短縮を示し,'82年が平均16時間11分を要したのに対し, 最近3年間では発症→医療機関→CCU収容(decision timeとphysician delayを含む)は平均6時間16分,発症→直接救急車要請(decision timeのみ)では平均3時間25分に短縮した.発症後6時間以内収容率は62.5%から70.6%へと改善し,死亡率も減少した.Killip分類別死亡率の分析でI群は有意に低下したが,ポンプ不全群では十分な減少をみたが有意差はなかった.I・II群は'82年に比べ発症後6時間,とくに2時間以内の患者収容例は増加し,軽症例の死亡率が有意に低下した.一方III・IV群は早期収容の割合も'82年に比し早く収容されたが,死亡率は依然として高値を示した.ゆえに重症ポンプ不全の対策が必要である.なお本論文は血栓溶解薬が日常用いられる,また救急救命士が本制度に参入する前の成績であるので'92年以降の初期治療の分析も必要である.
  • 梅林 雄介, 有川 和宏, 森山 由紀則, 福田 茂, 西元寺 秀明, 下川 新二, 湯田 敏行, 平 明
    1994 年 26 巻 5 号 p. 503-507
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1979年以降経験した先天性心疾患に合併する感染性心内膜炎(IE)手術例につき検討した.症例は11例(男5例,女6例,6歳~57歳,平均26.9歳)で,基礎心疾患は心室中隔欠損症5例,心房中隔欠損症,動脈管開存症各2例,左室右房交通症,右室二腔症各1例であった.起炎菌は8例で検出され連鎖球菌が7例,多剤耐性ぶどう球菌が1例であった.感染の活動期手術が5例,非活動期手術が6例で,それぞれ2例(40%),1例(17%)を失った.活動期死亡の2例はNew York Heart Association(NYHA)心機能分類の4度で,術前の乳酸脱水素酵素,血中尿素窒素値が生存例に比して有意に高値であった.右心系の心内膜炎が5例(45%)にみられた.起炎菌の64%が連鎖球菌でペニシリンGを第一選択とすべきものであった.
  • 池田 聡司, 今村 俊之, 内藤 達二, 浜辺 定徳, 山佐 稔彦, 松永 和雄, 原 耕平, 福島 卓也, 朝永 万左男, 貞松 篤
    1994 年 26 巻 5 号 p. 508-513
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性.生来,健康であったが,1991年12月に全身倦怠感,全身浮腫が出現し,近医を受診.胸部X線にて胸水貯留を認め,心不全の診断にて同院に入院.入院時の血液検査にて白血球増多,特に好酸球の増多を認めた.以後,浮腫等は軽快し,一度退院したが,再び浮腫や白血球増多を認めたため,当院に入院.心臓超音波検査,心臓カテーテル検査所見等より,Ebstein奇形の診断を得た.また好酸球増多も認めており,心内膜心筋生検では心内膜や心筋への好酸球の浸潤等は明らかではないが,内皮に覆われ,その内皮下に好酸球・リンパ球を伴う血栓が採取されたことや経過等より好酸球心疾患の合併も疑われた.
    本症例はEbstein奇形に好酸球心疾患の合併が疑われたまれな症例と思われた.
  • 高橋 文彦, 平沢 邦彦, 鎌田 晋輔, 竹内 克呂, 木原 一, 舘田 邦彦
    1994 年 26 巻 5 号 p. 514-519
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    64歳,男性.持続する前胸部痛のため近医に発症3時間後に入院.心電図はII・III・aVF・V5,6のST上昇を示し,後下側壁急性心筋梗塞と診断され,経静脈的血栓溶解療法が施行された.慢性期冠動脈造影では左Valsalva洞に開口部を持つ左単冠状動脈症(Lipton分類のL II-A型)で,右冠動脈は左前下行枝第1中隔枝分岐後のseg.7から起始していた.また左回旋枝seg.11に梗塞責任病変の90%狭窄部を認め,左室造影ではposterobasal segmentが収縮低下を示したが,posterolateral segmentの収縮異常はなかった.Seg.11の狭窄部は待期的PTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty)ののち25%狭窄に改善された.本症例は右冠動脈の起始部がseg.7と比較的遠位なことがまれであったが,心筋シンチグラム,心エコー図,冠動脈造影の結果を総合すると,心筋梗塞の発症に右冠動脈は関与しておらず,左回旋枝のseg.11が梗塞責任病変であると考えられた.本症例では走行異常の右冠動脈が低形成で後下壁の灌流の左回旋枝への依存度が高く,seg.11の冠動脈病変が広範梗塞の責任病巣となった.
  • 田畠 慎哉, 藤田 勉, 平間 元博, 高橋 由美子, 佐藤 俊也
    1994 年 26 巻 5 号 p. 520-523
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:49歳男性.1991年7月8日午前10時地下鉄工事現場で作業中,ブルドーザと杭の間に胸部を挟まれ,前胸部痛のため,当院に救急搬送される.胸部X線写真にて右第5,6,7肋骨・左6,7肋骨骨折を認めた.心電図上,完全房室ブロックを呈しII,III,aVF,V1~V3ST上昇,右胸部誘導にてV4RのST上昇を認め,右室梗塞を伴う急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影施行.左冠動脈に有意狭窄なく左回旋枝より右冠動脈へ#4PDへの側副血行路を認め,大動脈造影にて右冠動脈は造影されず,右冠動脈起始部の完全閉塞と診断した.第3病日,血圧低下に引き続き心肺停止となり,心肺蘇生術施行するも効なく永眠した.剖検所見:右冠動脈起始部近くの血管壁は一部で完全に断裂し,血管周囲の脂肪組織へ出血していた.隣接する末梢部では外弾性板が極一部に残存するのみで大部分は内・外弾性板とも消失し血管壁の原形が不明瞭であった.内腔は血栓によりほぼ完全に閉塞していた.心割面では左室後壁・心室中隔後部・右室後壁に比較的新しい心筋梗塞がみられた.
  • 心嚢・中心静脈バイパスドレナージの有用性について
    五十嵐 秀樹, 三浦 民夫, 荒木 隆夫, 後藤 敏和, 矢作 友保, 川島 祐彦, 小沢 竹俊, 岡田 恒弘, 阿部 茂, 小林 孝史, ...
    1994 年 26 巻 5 号 p. 524-528
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併したblowout型左室自由壁破裂の長期救命例を経験した.症例は73歳男性.平成3年4月21日初回梗塞(広範囲前壁梗塞)にて来院した.発症4時間後より緊急心臓カテーテル検査を行った.冠動脈造影にて左前下行枝近位部(AHA分類#7)の完全閉塞を認めた.直ちにPTCR・PTCAを施行したが,再開通は得られなかった.心臓カテーテル終了直後,突然意識消失,脈拍触知不能,呼吸停止をきたした.心エコー検査にてblowout型左室自由壁破裂による心タンポナーデ状態と診断した.直ちに呼吸管理を行うと共に,pigtail catheterを心外膜腔に挿入し,心嚢・中心静脈バイパスドレナージにて心拍の再開に成功した.最終的には開胸・破裂創を含めた梗塞巣全体のパッチ閉鎖術で救命しえた.約1年半を経過した現在でも元気に生存中である.
    現在でもなおblowout型左室自由壁破裂の救命は極めて困難であり,またその初期治療に心嚢・中心静脈バイパスドレナージが有効と考えられたので報告した.
  • 長井 英夫, 山田 素宏, 勝木 達夫, 臼田 和生, 中村 由紀夫, 高田 重男, 小林 健一, 三崎 拓郎, 藤田 信一
    1994 年 26 巻 5 号 p. 529-533
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換術と抗真菌薬fluconazole(FCZ)の併用により完治し得た,僧帽弁狭窄症に合併したカンジダ性心内膜炎の1例を経験した.症例は53歳,女性.20年前より呼吸困難を認め心臓弁膜症として近医にて加療されていた.平成2年11月脳梗塞を発症し,その加療中に中心静脈カテーテルと尿道カテーテルを留置し,併発した尿路感染症に対して広域抗生物質が投与された.当科へ心精査目的に入院したが,入院後より発熱,心不全の増悪があり,静脈血培養でCandidaparapsilosisが検出されたため,FCZ100mg/日の点滴を開始した.心エコー図で僧帽弁後尖に疣贅エコーを認め,同菌による感染性心内膜炎と診断した.そこでFCZを300mg/日に増量し,7日後に僧帽弁置換術を施行した.術後経過は良好でFCZ300mg/日の点滴投与を8週間継続した.治療効果判定にはCRP,血中カンジダ抗原,真菌代謝産物であるD-arabinitolの測定を経時的に行ったが,炎症反応の改善に先行し,血中カンジダ抗原,D-arabinitolの低下がみられた.本例では早期の弁置換術とFCZの長期投与が奏効し,カンジダ抗原,D-arabinitolの定量が治療効果判定に有用であった.
  • 三須 一彦, 中島 敏明, 武山 博之, 松井 浩, 田宮 栄治, 羽田 勝征, 瀬川 和彦, 松尾 博司
    1994 年 26 巻 5 号 p. 534-539
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    音刺激が誘因となり,頻回に頻脈性心室性不整脈による失神発作をきたした特発性QT延長症候群の1例を報告する.症例は,生来健康であった35歳の女性である.入院時の心電図では,QT延長およびV1~V4にT波逆転を認めたが,遺伝歴はなく,心エコー,冠状動脈にも異常はなかった.失神発作は,torsades de pointes型の心室頻拍,心室粗細動により起こったが,うち3回は電気的除細動により停止した.発作は夜間入眠時および早朝覚醒時に好発し,その17回中9回において音刺激が誘因になっていた.一方非発作時の24時間心電図では,QTc間隔の日内変動がみられているが,心室性不整脈の出現は認めなかった.患者は,β遮断薬,Ca拮抗薬,mexiletinで治療されたが,β遮断薬の増量が有効であった.以上より,音刺激が本症の心室性不整脈の誘因と成りうること,および発作出現に自律神経系の関与が示唆された.
  • 北條 行弘, 山澤 正則, 市田 勝, 江畑 均, 池田 宇一, 中山 敏夫, 島田 和幸
    1994 年 26 巻 5 号 p. 540-545
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例32歳男性.1978年意識消失発作で当院受診.来院時の心電図上心室頻拍を認め,除細動後,緊急入院となった.洞調律時の心電図でQRS波後方にノッチ状のR'波を認めた.入院中主に早朝時にR'波が増高したのち,QTc延長を伴わない多形性心室頻拍を繰り返した.R'波は,運動負荷isoproterenol, orciprenalin, procaterolで減高,propranololで増高した.心臓超音波検査,冠動脈造影検査では異常なく,冠攣縮の所見も得られなかった.右室心筋生検では心筋の線維化を認めた.多形性心室頻拍の予防にlidocaine, disopyramide, verapamilは無効であった.交感神経β刺激薬であるorciprenalin, procaterolの内服で心室頻拍の発生は抑制され,同時にR'波高も減高した.本症例は心室頻拍の惹起に自律神経の関与が疑われ,交感神経β刺激薬で長期観察できた興味深い1例と思われた.
  • 横手 秀行, 友渕 佳明, 松谷 良清, 大鹿 裕之, 前田 浩, 伊良波 浩, 後藤 融平, 広岡 紀之, 田中 陽一, 篠崎 正博, 佐 ...
    1994 年 26 巻 5 号 p. 546-552
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.極めて不規則な食生活とアルコール多量摂取の既往があり,下腿浮腫,呼吸困難が出現しショックに陥り入院した.入院時,ショック状態に加え,著明なアシドーシス,右心不全を認めたが,肺動脈拡張期圧の上昇はなく,末梢血管抵抗は低値,心係数は高値を示し,高拍出状態であった.心エコーでも左室収縮能は保たれていた.衝心脚気を疑い大量のカテコールアミンとビタミンB1を投与し,末梢血管抵抗上昇に伴いショック状態を離脱した.後日,入院時の血中ビタミンB濃度の著明な低値が確認された.しかし,第3病日に末梢血管抵抗の上昇に伴い心係数の低下,肺動脈拡張期圧の上昇を認め,心エコーでも左室の収縮能の低下を認めた.高拍出性心不全から低拍出性心不全に病態が変化し,多臓器不全も合併し,重篤な状態となったが救命し得た.
    衝心脚気では迅速な診断と治療が大切である.さらに,その治療中,末梢血管抵抗の上昇により高拍出性心不全から低拍出性心不全に病態が変化した衝心脚気の1例を経験したので報告する.
  • 大井 和敏, 山本 健, 藤井 崇史, 高橋 哲三, 佐伯 泰彦, 友近 康明, 田中 伸明, 古谷 雄司, 三浦 俊郎, 松崎 益徳
    1994 年 26 巻 5 号 p. 553-558
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈弁単独に疣贅を認める感染性心内膜炎を合併した内臓逆位,心室中隔欠損症の1例を経験したので報告する.症例は41歳女性.幼少時から心室中隔欠損症,内臓逆位を指摘されていたが放置.1992年1月頃より発熱が持続し同年3月当科に入院.入院時血液培養ではStreptococcus Sanguisが検出された.心エコーでは,肺動脈弁のみに疣贅と思われる異常エコーを認め肺動脈弁が単独に侵された感染性心内膜炎と診断された.入院後,抗生物質による治療を開始したが,入院第21病日,疣贅の遊離による肺塞栓を発症した.そのため,翌日当院外科にて心室中隔欠損孔閉鎖術および肺動脈弁切除術を施行した.術後の経過は順調であり,術後第53日目,肺動脈弁切除が運動耐容能に与える影響を検討するため,血行動態をモニターしつつ運動負荷呼気ガス分析を行った. その結果, 肺動脈楔入圧は安静時6mmHgから最大運動時16mmHgへ上昇し,それに伴い心拍出量は4.7l/分から7.9/分へ増加した.この肺動脈楔入圧の上昇に対する心拍出量の増加比はほぼ正常と考えられた.また,最大酸素摂取量は18.4ml/kg/分で運動耐容能も正常であり,肺動脈弁切除が運動耐容能に与える影響は少ないと考えられた.
  • 経食道心エコー図法(TEE)による左房内血行動態の検討
    加藤 雅也, 服部 宜裕, 鎌田 智有, 河本 邦彦, 浜田 雅典, 宮本 真樹, 堂上 慎也, 舛田 一成, 中島 浩一郎, 迫 勝博
    1994 年 26 巻 5 号 p. 559-563
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    腎梗塞は腎動脈の閉塞によって起こるまれな疾患であるが,外傷性以外の多くは心疾患を有するといわれる.我々は,急性腎梗塞2例と陳旧性腎梗塞1例を経験し,経食道心エコー図法(TEE)にて興味ある所見を得たので報告する.症例1は61歳の男性で,以前VVIペースメーカー植え込み術を受けていた.腹痛で受診し,腹部超音波検査・腹部造影CT等から急性腎梗塞と診断した.抗凝固療法を行い,慢性期にTEEを施行したところ,高度の左房内モヤモヤエコーと左心耳内微小血栓を認めた.症例2は71歳の男性で約20年前から心房細動があった.狭心症の疑いで心臓カテーテル検査を行い,検査30時間後より突然臍周囲の疼痛が出現した.腹部造影CTにて急性腎梗塞と診断し,血栓溶解・抗凝固療法を行っで慢性期にTEEを施行したところ,高度の左房内モヤモヤエコーを認めた.症例3は55歳の男性で心房中隔閉鎖術・僧帽弁置換術後の患者である.右視床出血を発症し,ワーファリンを減量してリハビリを行っていたが,経胸壁心エコー図法で左房内血栓を認め,TEEで左房内に3個の血栓と高度のモヤモヤエコーを認めた.その後,腹部超音波検査および腹部造影CTで,左腎に楔状の高エコー領域およびLDAを認めたために陳旧性腎梗塞と診断した.我々は腎梗塞の3例を経験し,すべての症例に高度の左房内モヤモヤエコーを認め,うち2例に左房内血栓を認めた.このことは腎梗塞発症の背景因子として左房内血行動態が重要であることを示唆しており,その観察にはTEEが有用であると思われた.また,左房内モヤモヤエコー・血栓を認める症例には,腎梗塞予防としての抗凝固療法の必要性が示唆された.
  • 沼口 靖, 佐々 寛巳, 曽根 孝仁, 坪井 英之, 近藤 潤一郎, 沖 良隆, 今尾 美恵子, 杢野 晋司, 坪根 幹夫
    1994 年 26 巻 5 号 p. 564-568
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    好酸球増多症は数多くの原因から生じ得るが,好酸球の増多に伴って心疾患が随発することが知られている.本例はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の経過中,好酸球増多症を背景にして心機能障害をきたした1例である.症例は59歳男性で,2年前より気管支喘息として近医に通院,加療していたが,突然呼吸困難を訴えて当院CCUへ入院となった.入院時の胸部X線において両肺野にび漫性陰影があり,心エコーでは全周性に壁運動の低下が認められ,ejection fractionは41%であった.白血球分画で好酸球増多(38%)を認めたため,好酸球性心臓病としてプレドニゾロン1日30mgの投与を開始したところ徐々に病状も軽快し,2カ月後に退院できた.血清抗体反応検査にてアスペルギルス抗体価が高値を示し,自宅内3カ所での空中真菌培養にてアスペルギルスの繁殖を認めた.以下の臨床経過からPattersonの診断基準に基づいてABPAと診断した.ABPAに好酸球性心臓病を伴うことは極めてまれであり,本邦でも結核の既往のある患者に同様の症状が発症した例は報告されているものの,全く健康であった人が本症を発症した例の報告は初めてである.
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