心臓
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26 巻, 9 号
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  • 心エコー図を用いた解析法
    田淵 弘孝, 川井 信義, 沢山 俊民
    1994 年 26 巻 9 号 p. 931-938
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心エコー図を用いて孤立性心房細動10例,および器質的心疾患のない心室期外収縮10例(計20例)を対象に,心房細動における心拍ごとのpotentiationの機序についてpost-extrasystolic potentiation(PESP)と比較の上で検討した.
    その結果心房細動の場合,先行R-R間隔が短い心拍では,左室拡張末期径(Dd)および内径短縮率(FS)は共に先行R-R間隔と正相関を示し,Frank-Starling機構の関与が示された.しかし先行R-R間隔が0.8~1.1秒を超えるとDdはplateauに達するのに対して,FSは引き続き先行R-R間隔と正相関を示した.このことはPESPの場合と同様の前負荷に依存しない収縮増強機序が示唆された.一方,先先行R-R間隔とFSとの間には有意な相関関係は見られなかったが,長い拡張期後の心拍間の比較では,先先行R-R間隔が短く先行収縮の拍出量が少ないほどFSが大となった.
    またPESPの場合,全10例ともDdの増大は見られずFSのみが有意に(p<0.005)増大した.
    以上Mモード心エコー図を用いることにより,心房細動における左室収縮強度を規定するFrank-Starlillg機構,先行および先先行R-R間隔に起因するpotentiationなどの因子の関与について解析可能であることが示された.
  • 特に拡張型心筋症との関わりについて
    久保 奈津子, 森本 紳一郎, 平光 伸也, 山田 健二, 植村 晃久, 木村 勝智, 大槻 真嗣, 鳥飼 勝隆, 渡邉 佳彦, 寺沢 正恭 ...
    1994 年 26 巻 9 号 p. 939-947
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    好酸球増多性心疾患9例を臨床病理学的に分析し,拡張型心筋症との関わりについて検討した.
    9例の原疾患は特発性4例,アレルギー性3例,寄生虫性1例,不明1例であった.9例中4例(44.4%)が,遠隔期に心エコー上び漫性の心機能低下を後遺し,拡張型心筋症類似の病態を示した.軽微な好酸球増多のみで,あるいは末梢血の好酸球増多が全く認められないにもかかわらず,本症が発症した症例が1例ずつみられた.また臨床上,拡張型心筋症と考えられた例の剖検組織標本で,心筋に有意な好酸球浸潤がみられ,好酸球増多性心疾患であることが明らかとなった症例も1例認められた.好酸球増多性心疾患は,臨床的に認知されない症例が存在し,拡張型心筋症と臨床診断されている症例の中に,本疾患が混在している可能性が示された.また拡張型心筋症がmultifactorial diseaseであるとの観点からみれば,今後この好酸球を拡張型心筋症の病因の一つとして検討する必要があると考えられた.
  • 岡田 了三
    1994 年 26 巻 9 号 p. 948-949
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 宿輪 昌宏, 大村 浩之, 松下 哲朗, 浅井 貞宏, 波多 史朗, 山佐 稔彦, 宮原 嘉之, 原 耕平, 西島 教治, 藤原 英樹
    1994 年 26 巻 9 号 p. 950-955
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:t-PAを用いて血栓溶解療法を行った急性肺動脈血栓塞栓症7例について,診断および治療効果判定について検討した.
    対象および方法:急性肺動脈血栓塞栓症7例中2例に肺血流シンチ,5例に右心カテーテル施行後DSAによる肺動脈造影を行った.診断後全例1,000~4,000万単位のt-PAを投与した.DSAを試行した例は,翌日に再造影を行い血栓溶解が不十分と考えられた例には,t-PAの再投与を行った.
    結果および考察:全例血栓溶解療法のみで改善し,悪化例は認めなかった.血栓溶解療法前の診断や治療効果の判定において,肺血流シンチとDSAによる肺動脈造影では,DSAの方が肺動脈本幹にみられる塊状血栓を観察することが可能であった.また,翌日に再造影を行うことにより血栓溶解が不十分な例には,t-PAの追加投与を考慮できると思われた.
  • 池田 士郎, 福島 裕美, 大山 良雄, 長沼 文雄, 羽鳥 幹子, 飯塚 利夫, 長谷川 昭, 村田 和彦, 鈴木 忠, 許 俊鋭, 尾本 ...
    1994 年 26 巻 9 号 p. 956-961
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の女性.58歳の時に心雑音精査のため当科に入院した.胸骨左縁第4肋間に3度の連続性雑音を聴取し,心臓超音波検査で,右冠状動脈の著明な拡張と主肺動脈に連続性乱流パターンが認められた.大動脈造影では,著明に拡張した右冠状動脈より側副血行路を介して逆行性に左冠状動脈が造影され,最後に肺動脈が造影された.以上より左冠状動脈肺動脈起始症と診断された.左→右短絡率は48%と高く,労作時息切れや心拡大もみられたため,左冠状動脈肺動脈開口部閉鎖術および左前下行枝への大伏在静脈によるバイパス術を施行した.9カ月後の冠状動脈造影では右冠状動脈は若干細くなり,バイパスグラフトは50%狭窄していた.1992年9月術後4年の冠状動脈造影では,バイパスグラフトは閉塞していたが,TI-201運動負荷心筋シンチグラフィーでは虚血は認められず,自覚症状もないため,経過観察を続けることにした.
    左冠状動脈肺動脈起始症はまれな先天性心疾患であり,成人に達する例は少ない.我々の知る限り,本例より高齢の症例はこれまで3例の報告があるのみである.また,根治手術を行った症例としては本例が最高齢である.
  • 島田 弘英, 治田 精一, 山本 一也, 原田 健志, 長田 和裕, 唐沢 光治, 庄司 進一, 柳澤 信夫
    1994 年 26 巻 9 号 p. 962-967
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.早朝の胸部絞扼感の発作が頻発,近医受診し冠攣縮性狭心症を疑われ,硝酸薬を投与されたが約1カ月後ショック状態で近医受診.心電図上心房細動,V1~6でST低下と心室性期外収縮を認めた.冠動脈造影では有意狭窄を認めず,アセチルコリン(Ach)負荷で陰性だったが,エルゴノビン(EM)負荷で左回旋枝に冠攣縮が誘発され,胸痛および心電図上II,III,aVFのST上昇,V1~5,のST低下を認めた.Ach,EMいずれも冠攣縮の誘発率は90%以上といわれ,通常いずれか一方が使用されるが,二薬剤の攣縮誘発機序は異なり,本例のごとくEMのみで誘発される症例もあり,二薬剤の攣縮誘発の診断精度に関して今後検討を要する症例を経験したので報告する.
  • 片岡 一
    1994 年 26 巻 9 号 p. 968-971
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    前胸部右側誘導で特異な形態の遷延性ST上昇(late R'に引き続いて漸次下降するST上昇-cove-shaped ST上昇)を呈した症例において,心電図形態の成因を明らかにするため,過換気負荷,運動負荷,イソプロテレノール(ISP)負荷を施行した.
    症例は胸痛症候群にて治療中の64歳,女性で,心電図上,V1~V3誘導にてcove-shaped ST上昇を呈した.経過中,肺腫瘍を合併し,術前検査として心臓カテーテル検査を施行したが,冠動脈には異常所見はなかった.このST上昇は,術後に行った運動負荷で軽減し,ISP負荷心電図において,ほとんど消失した.ISP負荷の心電図所見より,この特異な心電図形態の成因として自律神経関与の早期再分極の存在が示唆された.しかしながら,V1誘導にて1ate R'は出現せず,右室内伝導障害の合併はなかった.ただV2誘導にて,late R'が見られ,ST上昇との関連において留意すべき所見と考えられた.
    最近,ここに報告した心電図形態と悪性不整脈との関連が指摘されているが,病態解明の緒として心電図所見の成因を明らかにすることが必要である.その手段としてISP負荷は,早期再分極の関与やST上昇に隠蔽された伝導障害の有無を明らかにする上で有用と思われた.
  • 神原 啓文
    1994 年 26 巻 9 号 p. 972-974
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 平山 智也, 小川 裕二, 石井 良直, 松橋 浩伸, 飛世 克之, 小野寺 壮吉, 菊池 健次郎
    1994 年 26 巻 9 号 p. 975-980
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    高齢で発症した心サルコイドーシス症例を経験した.生来健康であったが74歳で眼病変,75歳で皮膚病変を発症した.75歳で完全房室ブロックが出現したため当科に精査目的で入院した.ツ反陰性,血中ACEは26.1 IU/l,Iysozymeは23.5μg/mlと高値であった.胸部X線では肺野の線状・小粒状影を認め,心電図では心拍数40/分で,完全房室ブロックと前胸部誘導でのR波の減高を認めた.201TI心筋シンチグラムでは心室中隔および心尖部の一部に灌流欠損像を認めた.冠動脈造影で左右冠動脈に異常所見なく,右室心尖部の心筋生検にて,間質へのリンパ球浸潤と巨細胞を伴った類上皮細胞肉芽腫を認めたため,心サルコイドーシスと診断した.本症例は高齢になり活動性を示し,洞調律から完全房室ブロックへの移行を確認でき,心筋生検にて確定した,本邦における最高齢者である.老年者完全房室ブロックの鑑別診断において本症も念頭におくべき疾患の1つと考えられた.
  • 乳児期発症の心筋炎の臨床的特徴についての考察
    成宮 正朗, 中川 雅生, 奥野 昌彦, 岡川 浩人, 近藤 雅典, 島田 司巳
    1994 年 26 巻 9 号 p. 981-986
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ポンプ失調による心不全で発病した乳児の急性心筋炎を2例経験した.症例1は8カ月の女児で,著明な多呼吸と哺乳困難を呈した.来院時の心エコーで左室拡大(LVDd34mm)と駆出率の低下(EF0.36)を認めた.多呼吸や哺乳困難等の臨床症状は10日以内に改善したが,心エコー上心機能の正常化には8カ月を要した.症例2は1カ月の女児で,多呼吸と呼吸困難から全身状態の悪化をきたし来院した.この時の心エコーでEFが0.26と明らかなポンプ失調を認めた.その後発作性の頻拍を繰り返し呼吸管理を必要としたが,1カ月の経過で心機能や不整脈は正常化した.
    これらの2例はいずれも心不全に基づく重篤な呼吸障害で発病しており,急激な呼吸不全を呈した乳児には常に本疾患を考慮し,心不全に対する適切な処置が必要と考えられる.また,これまでの報告をあわせると,乳児期の心筋炎はポンプ失調に基づく心不全で発病することが1つの特徴であると推測された.
  • 宮脇 貴裕, 白石 裕比湖, 市橋 光, 岡部 一郎, 小林 繁一, 桃井 真里子, 柳澤 正義
    1994 年 26 巻 9 号 p. 987-994
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    筋緊張性ジストロフィーはミオトニアを主徴として,心病変,眼病変,内分泌異常など多彩な症候を呈する疾患である.我々は,学校心臓検診で心房粗動を指摘され,その基礎疾患を筋緊張性ジストロフィーと診断した2例を経験したので報告する.第1例は13歳女子,心房粗動で心拍数75~125/分であった.当初,基礎疾患のない心房粗動として治療するも再発を繰り返した.経過中に父が筋緊張性ジストロフィーと診断され,患児にもミオトニアを認め,同じく本症と診断した.合計3 回の電気的除粗動により洞調律に戻した後,プロパフェノン450mgを内服し,洞調律を維持している.第2例は13歳女子,心房粗動で心拍数80~160/分であったが,身体所見上ミオトニアがあり,両親ともミオトニアを認め,親子3人すべて筋緊張性ジストロフィーと診断したまれな症例であった.電気的除粗動により洞調律に戻した後,プロパフェノン300mgを内服し,洞調律を維持している.学校心臓検診で偶然発見される心房粗動の基礎疾患の1つとして,筋緊張性ジストロフィーを念頭に置く必要がある.
  • 笹岡 大史, 佐藤 徹, 楠原 正俊, 茅野 真男, 小島 勝, 大島 孝一, 木村 正之
    1994 年 26 巻 9 号 p. 995-999
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本例はEBウイルス性心膜炎の診断に分子生物学的手法が有用であった最初の症例と思われたので報告する.アルコール性肝障害の既往のある42歳の男性が浮腫・呼吸困難を主訴に平成2年11月来院した.胸腹水・心嚢液が多量に貯留し,EBウイルスviral capsid antigen IgG抗体価5,120倍と高値であった.右房圧17mmHg・肺動脈模入圧20mmHg・右房圧y波の急峻な下降・右心室波でdip and plateauを認め,心室拡張障害の所見であり,CTの心膜肥厚所見と合わせ,浸出性収縮性心膜炎と診断した.心嚢ドレーンによる排液と利尿薬により胸腹水・心嚢液は消失したが,右房圧の高値が続くため平成3年5月心膜剥離術を施行した.摘出心膜標本にSouthern blot法・in situ hybridizationを適用してEBウイルスゲノムを検出し,EBウイルス性心膜炎と診断した.
  • 土岡 由紀子, 岡本 光師, 松浦 秀夫, 梶山 梧朗
    1994 年 26 巻 9 号 p. 1000-1004
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    オウム病が原因として疑われた収縮性心外膜炎の1例を経験した.症例は16歳の女性で,腹部膨満感を主訴に入院した.約2年前,オウム病に罹患した友達から病気のインコをもらい飼っていた.その直後より軽度の胸部不快感があり,徐々に右心不全症状が出現し,入院時には肝腫大と腹水を認めた.心電図は洞調律で,左房負荷,右軸偏位,右室負荷を呈した.胸部X線およびCTでは左側心膜の石灰化を,心エコー図では左室後側壁にエコー輝度の増強を認めた.心臓カテーテル検査では右房圧はM型を,右室圧はdip and plateau波形を呈した.以上より収縮性心外膜炎と診断し,心外膜切除術をした.本例における収縮性心外膜炎の原因は特発性の可能性は否定できないが,病歴よりオウム病による可能性が最も疑われた.オウム病に収縮性心外膜炎を合併した報告は我々の調べた範囲内では見当たらない.
  • 鈴木 順, 山本 博昭, 甲田 隆, 池田 隆好
    1994 年 26 巻 9 号 p. 1005-1009
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    感染性大動脈瘤は比較的まれな疾患であり,梅毒・結核によるものを除くと,本邦の報告例は数少ない.今回我々は,staphylococcus epidermidisとガス産生菌の混合感染が疑われ腹部大動脈瘤を経験したので報告する.
    症例は78歳の女性で,1カ月問持続する発熱と背部痛を主訴に当院を受診した.CTにて腹部大動脈周囲にair density spotsを含む,50×31mmの腫瘤を認め,血管造影にてceliac artery直上部に,腹側に突出する嚢状動脈瘤を認めた.経過および画像所見より感染性大動脈瘤と診断.血液培養から,表皮ブドウ球菌が検出されたが,本菌はガス産生菌ではないため,他の細菌の混合感染を疑って各種抗生剤を使用した.炎症反応は徐々に改善傾向を示したが,経過中に重篤な脳梗塞を合併したため手術適応とならず,入院62日目に死亡した.保存的に経過を観察し得ためずらしい症例としてここに報告する.
  • 井上 一郎, 井上 敏明, 田中 幸一, 山内 亮, 児玉 宣哉, 寺田 満和, 高梨 敦, 小根森 元, 末永 健二, 若本 敦雄, 濱 ...
    1994 年 26 巻 9 号 p. 1010-1014
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    脳出血術後急性期の急性広範囲肺塞栓症にガイドワイヤーによる機械的血栓破砕術と下大静脈フィルター挿入により救命できた1例を経験した.症例は63歳の男性で急性脳出血(左被殻出血)による右片麻痺のため当院脳神経外科に入院した.脳出血血腫除去術後にリハビリを開始した直後,ショックとなったため,当科に救命要請がなされた.心電図にてIII,aVFのST上昇とQ波ならびにI,aVL,V4~6のST低下,心エコーにて右心室拡大と低収縮を認めたことより急性肺塞栓症を疑い,ただちに肺動脈造影を施行した.右主肺動脈および左下葉動脈に充盈欠損像を認めたことより急性広範囲肺塞栓症によるショックと診断した.脳出血急性期かっ開頭術後5日目であることより血栓溶解薬は禁忌と考えられたため,ガイドワイヤーによる血栓破砕を行い,ショックからの回復をみた.しかし,5日後に肺塞栓症の再発をみたため,下大静脈フィルターの留置を行った.血栓溶解薬の使用が禁忌である症例において,発症直後のガイドワイヤーによる血栓破砕および発症早期の下大静脈フィルター留置が急性広範囲肺塞栓症の治療に有効と考えられたので報告する.
  • 芳賀 厚子, 石光 敏行, 渡辺 重行, 飯田 要, 榎本 強志, 小関 迪, 杉下 靖郎
    1994 年 26 巻 9 号 p. 1015-1020
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    リポ蛋白の一種であるlipoprotein(a)[Lp(a)]は動脈硬化症の危険因子として注目されている.近年,その構造がプラスミノゲンに類似していることが明らかにされ,その結果Lp(a)がt-PAの作用を競合的に阻害する可能性に関心がもたれている.我々はPTCR(経皮経管冠動脈再疎通術)成功例13例を対象にして,血中Lp(a)値およびその他の血中t-PA(組織プラスミノゲンアクチベーター)阻害物質を測定し,これらのPTCRに与える影響につき検当した. 13例中,Lp(a)値は0.1から73.1mg/dlと幅広く分布し平均値は17.9mg/dlで,2例の高Lp(a)血症例を含んでいた.その他の阻害物質では1例で低α2プラスミンインヒビター血症が認められた.また血中プラスミノゲン活性では1例に55%と明らかに低下を示すものが認められた.これらの4例のPTCR施行時の血栓溶解薬の使用量および4週後の冠動脈造影時の狭窄度は,残りの症例との間には差異を認めなかった.以上より血中Lp(a)値,α2プラスミンインヒビターおよび低プラスミノゲン活性がPTCRに与える影響は少ないと思われた.例数が少ないため本説の確認には,PTCR不成功例を含む多数例での検討が必要である.
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