【背景】心房細動(AF)は慢性心不全例にしばしば合併し心不全を増悪させうるが,その出現の予測は困難である.【目的と方法】慢性心不全例に合併するAFの頻度とその背景囲子を明らかにするため,左室駆出率(EF)≦40%の慢性心不全120例を,虚血性心疾患群(IHD群,51例)と拡張型心筋症群(DCM群,69例)に分け,各群でAFの臨床的指標を比較検討した.【結果】AFは120例中21例18%に認められ,それらは洞調律例と比べ年齢,EF,左室径,ANP,血漿ノルエピネフリン(PNE)などには差を認めなかったが,有意に左房径が大きかった(p<0.01).AF群では基礎疾患の86%がDCMで,またNSVTの合併が多かった(67%).IHD群と比較し,DCM群のEF,左房径,左室径,ANP,PNEは同等であったが,年齢が低いにもかかわらず(58.2歳vs62.6歳,p<0.05),高頻度にAFを認めた(27%vs6%,p<0.01).【結語】慢性心不全例のAF合併はIHD群よりDCM群に多く認められた.その発症は必ずしも心機能低下や神経体液性因子活性化の程度により規定されるものではなく,むしろ基礎病変が,心室筋にもたらした病理学的変化と同様の変化を心房筋にも及ぼした可能性が示唆された.
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