心臓
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44 巻, 11 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
Open HEART
HEART’s Selection(成人期に達した小児期発症心疾患)
HEART’s Original
基礎研究
  • 田中 千陽, 池谷 義守, 静間 徹, 福山 直人, 小林 昭, 上田 敏彦, 盛 英三
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1372-1377
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    近年,血管病変の治療法が進化するにつれ,微小血管評価法の検討が必要になってきている.今回は3つの病院設置型微小血管造影装置について概説する.
    最初の装置としてコンピュータ断層撮影法(computed tomography;CT)用X線源と高精細超高感度検出器を用いた造影装置を開発した.しかし,金属フィルターにより大幅なX線の低線量化を伴ったため,対象は下肢などの体厚の薄い部位に限定された.
    そこで,セリウムを用いた微小血管造影法の開発を試みた.通常用いられているタングステンに比較し,セリウムの特性X線は造影剤の主成分であるヨードのK吸収端に近く,微量ヨードの造影を可能にすると考えられたためである.
    まずセリウムプラズマを用いて,その特性X線を多く含むX線を放出する装置を開発した.イヌ心臓冠動脈に高濃度ヨードを充塡したファントムを作成し,このセリウムプラズマX線造影装置にて撮影した.結果,冠動脈の第3分枝までの可視化が可能であった.しかし,X線フォトン数の限界から,心臓などの体厚の厚い部位の臓器には応用が困難であった.
    次にセリウム陽極を回転させることで高輝度を可能とする回転セリウム陽極X線装置を試作した.本試作装置では200KHU(kilo heat unit)のX線発生装置を用いた.本装置でも直径50μmほどの冠動脈第3分枝までの可視化が可能であったが,やはり体厚15cmの部位の臓器までの造影に限定された.しかし,回転セリウム陽極X線装置は,X線発生装置を高熱容量のものと置換することで,容易に高輝度化が可能である.今後,臨床応用可能な微小血管造影装置の開発が期待できる.
Editorial Comment
症例
  • 槇田 俊生, 川島 理, 阿部 秀樹, 出羽 和
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1380-1386
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.2008年11月より,左上肢挙上位における跛行症状を自覚していた.かかりつけ医を受診し左鎖骨近傍の血管性雑音を指摘され,精査目的に2011年10月当院へ紹介となった.来院時は,左上肢でwright testが陽性であり,上肢挙上位においては,左側のみ1分間以上の連続した手指開閉運動が困難であった.造影CTでは,左鎖骨下動脈の血流障害は認めず,鎖骨,第1肋骨など骨格系の異常も認めなかった.選択的左鎖骨下動脈造影を行ったところ,左肩関節過外転位における撮影にて,肋鎖間隙部で左鎖骨下動脈が完全閉塞となる所見が得られた.動脈性胸郭出口症候群の診断で,本人,家族と治療方針について検討し,血管内治療の方針で承諾を得た.左橈骨動脈よりアプローチし,左鎖骨下動脈に対して肋鎖間隙部をまたぐようにナイチノール性自己拡張型ステントを留置したところ,左肩関節過外転位においても左鎖骨下動脈の血流を維持することに成功した.術後は,上肢挙上位における左上肢の跛行症状は消失し,アスピリン,クロピドグレルを継続として術後第4病日に退院した.今回われわれは,骨格系に異常のない中年男性に発症した動脈性胸郭出口症候群に対し,橈骨動脈アプローチによる低侵襲な血管内治療が有効であったので報告する.
症例
  • 杉山 裕章, 今井 靖, 藤生 克仁, 小室 一成, 永井 良三
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1387-1392
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    71歳,男性.30歳ごろより糖尿病(diabetes mellitus;DM)として加療中であり,感音性難聴の出現時に精査されミトコンドリア遺伝子異常を指摘された.心エコーでは,当初左室肥大を示すのみであったが,2009年ごろより左室駆出分画率(left ventricular ejection fraction;LVEF)低下も出現し,薬物治療が開始された.冠動脈病変はなく,心筋生検はミトコンドリア心筋症に矛盾しない所見であった.うっ血性心不全による入退院を繰り返し,2011年初頭にはβ遮断薬増量のためと考えられる洞機能障害が顕在化した.薬剤抵抗性のNYHA(New York Heart Association)クラスⅢの心不全であり,QRS幅160ms(完全右脚ブロック),LVEF 27%であったことから心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy;CRT)適応ありと判断した.経静脈的リード留置術後,著明な自覚症状改善に加えて左室腔の縮小,LVEFの改善を認めた.現在までに難聴・糖尿病を呈するミトコンドリア病(maternally inherited deafness and diabetes;MIDD)に対するCRT適用の報告は見当たらず,一連の臨床経過に文献的考察を加えて報告する.
症例
  • 小林 一士, 大谷 拓史, 立花 恵子, 鯨岡 健, 村本 容崇, 大西 隆行, 中村 浩章, 永田 恭敏, 大西 祐子, 梅澤 滋男, 丹 ...
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1393-1398
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.2001年に不安定狭心症(unstable angina pectoris;UAP)で入院.左前下行枝(left coronary artery;LAD)#6と右冠動脈(right coronary artery;RCA)#2-3に経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行し,金属ステント(bare metal stent;BMS)を留置した.その後#6のBMS内再狭窄を繰り返すため,2003年4月にオフポンプ冠動脈バイパス術〔左内胸動脈グラフト−LAD,大伏在静脈グラフト(saphenous vein graft;SVG)−RCA #4PD〕を施行,2006年の造影でグラフトの開存を確認していた.2010年9月下旬,UAPにて再度入院.SVGの近位部に,造影上血栓性病変を認めた.末梢塞栓を起こす可能性を考慮し,固有冠動脈に対してPCIを施行し,経過良好で退院したが,11月上旬,急性下壁心筋梗塞を発症して入院した.緊急造影でRCA #4PDのSVG吻合部に血栓を認め,血栓吸引とバルーン拡張を繰り返すことにより,末梢の血流が改善したため,SVGの血栓が移動して塞栓症を発症したと考えた.末梢に残存した血栓は,亜急性期には消失した.変性したSVGの血栓が固有冠動脈に塞栓を起こした症例報告はなく,貴重な症例と考えられ,ここに報告する.
症例
  • 古賀 俊輔, 長谷川 洋, 康田 典鷹, 李 光浩, 上田 希彦, 船橋 伸禎, 有村 卓, 木村 彰方, 永井 敏雄, 小林 欣夫
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1399-1404
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.幼少時より心電図異常を指摘されていた.某年6月某日,自宅安静時に突然意識を消失し,家族により心肺蘇生が施行され,救急隊により自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)で除細動され洞調律に復帰し,前医へ搬送された.第9病日に心室細動(ventricular fibrillation;VF)に対する植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)植え込み目的で当院転院となり,心エコー,心臓CTにて,瘤内血栓を伴う左室心尖部瘤と心室中部閉塞性肥大型心筋症を認め,第12病日にICD植え込み術を施行した.心室内血栓はヘパリンとワルファリンにて消失し,経過良好にて退院となった.心尖部瘤を合併した肥大型心筋症では,文献的にも心室頻拍やVFといった致死的不整脈の出現する危険性が高く,心室中部閉塞性肥大型心筋症に心尖部瘤を伴う症例では突然死や致死性不整脈のリスクが有意に上昇することが知られている.したがって,本症例においてもハイリスクとして管理する必要があり,心尖部瘤を合併した心室中部閉塞性肥大型心筋症では突然死の予防としてICDを積極的に考慮する必要があると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 松添 弘樹, 姜 臣鎬, 平 和樹, 石田 明彦
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1406-1411
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は,37歳,女性.3回経妊3回経産,某院産婦人科にて妊娠管理中36週より血圧上昇と尿蛋白を認め,重症妊娠高血圧症候群と診断された.38週4日に分娩誘発中,胎児心拍低下し緊急帝王切開で女児出産,産褥後,高血圧は改善した.産褥18日目より夜間呼吸困難が出現,産褥36日目に増悪を認め救急搬送され,胸部X線写真で肺うっ血と心胸郭比拡大と,心エコー図上,左室駆出率24%と高度低下を認め,心不全の診断で入院となった.入院後,通常の心不全治療とともに抗プロラクチン療法併用により心不全は改善し,左室壁運動の改善が得られた.妊娠関連の心筋症は本邦においてはいまだ実態が把握されておらず,確立された治療法がない.従来の心不全加療に加え,抗プロラクチン療法の有効性が少数例ながら報告されており,今後症例数を増やした検討が待たれる.
症例
  • 日浅 謙一, 高吉 琴絵, 井出 友美, 肥後 太基, 井口 孝介, 戸高 浩司, 中島 淳博, 富永 隆治, 下田 慎治, 砂川 賢二
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1412-1418
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    40歳代,男性.冠危険因子,血栓性素因は認めない.これまで脳動脈瘤に対するコイル塞栓術,2度の脳梗塞,両下腿難治性皮膚潰瘍にて入院加療の既往がある.
    今回,肺うっ血による呼吸苦で前医入院となる.エコー上,左室壁運動は高度低下をきたしており,冠動脈造影の結果,その原因は3枝病変であることが判明した.バイパス術の適応と考えられたため,当院へ紹介となる.しかし,右鎖骨下動脈,左内胸動脈をはじめとする中小血管の狭窄,閉塞所見を認めたことから,基礎疾患として血管炎の存在が疑われた.血清学的検査では,C反応性蛋白(C-reactive protein;CRP),血沈の軽度高値を認めるほかは異常所見は認めず,抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody;ANCA),クリオグロブリンはいずれも陰性であった.下腿皮膚潰瘍の精査時の生検にてlivedo血管炎を,また,結腸の輪状多発潰瘍や多発単神経炎を認めること,中,小血管の狭窄,閉塞所見が多発していることから,結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa;PN)と考えた.HBsAg,HBeAg陽性であり,HBV関連PNも疑ったが,各組織生検で動脈炎の所見を得ることはできなかったため,確定診断にはいたらなかった.術後のPNに対するステロイド導入に備え,抗ウイルス薬(エンテカビル)を開始し,HBVウイルス量の低下を確認のうえ,手術に臨んだ.術中迅速検査にて静脈炎のないことを確認したうえで,大伏在静脈グラフトを用いたバイパスを行った.その後ステロイド導入を行ったところ,CRP,血沈は速やかに正常化した.現在,ステロイド漸減中だが,グラフトの閉塞所見は認めていない.血管炎症例への冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)では,術後早期のグラフト閉塞のリスクがあるため,グラフトの選択や基礎疾患への配慮が重要と考えられた.
症例
  • 佐藤 修司, 上野 耕嗣, 市川 晋也, 千葉 圭二郎, 小山田 和弘, 永見 圭一
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1419-1425
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    われわれは,2010年3月から2011年10月の期間に5例の腹部内臓動脈解離の症例を経験し,いずれも保存的治療で改善を認めた.
    症例1:49歳,男性.背部痛のため救急外来を受診した.腹部造影CTで腹腔動脈起始部から総肝動脈,脾動脈に及ぶ解離を認めた.禁食,血圧と疼痛コントロールで症状は改善を認め,解離も増悪なく経過した.
    症例2:63歳,男性.胸痛・心窩部痛のため当院を受診した.諸検査で胸腔内に異常を認めなかったが,造影CTで上腸間膜動脈の起始部から約3cm末梢側に限局した解離を認めた.アスピリンの投与を行い外来で経過を観察した.10カ月後に解離腔は消失した.
    症例3:59歳,男性.不安定狭心症で入院した.第5病日に激烈な腰背部痛を訴え,腹部造影CTで上腸間膜動脈と下腸間膜動脈に解離を認めた.腸管虚血の所見はなく,禁食,へパリンによる抗血栓療法を行った.症状の再燃を認めず,解離腔も縮小した.
    症例45:いずれも中年男性.腹痛のため救急外来を受診し,腹部造影CTで上腸間膜動脈に解離を認めた.瘤化や腸管虚血所見は認めず,血圧と疼痛コントロール,抗血栓療法などで軽快した.
    近年の画像診断の発達に伴い,腹部内臓動脈解離の報告数は増加傾向にある.腹痛,背部痛の原因として鑑別すべき疾患となっている.本疾患は一般的に保存的治療で軽快することが多いが,広範な腸管壊死や動脈瘤破裂に陥った場合の予後は不良である.さらなる症例の蓄積と治療法の確立が望まれる.
Editorial Comment
症例
  • 藤田 智之, 桑木 賢次, 稲葉 博隆, 森田 照正, 山本 平, 松下 訓, 川﨑 志保理, 土肥 静之, 松村 武史, 嶋田 晶江, 大 ...
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1427-1431
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    軽度の大動脈弁狭窄症を有する患者に冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)が施行される際の同時大動脈弁置換の適応については,日本循環器学会のガイドラインではクラスⅡbに分類されておりその有効性は確立されていない.しかし,単独冠動脈バイパス術を施行した場合,術後中期から遠隔期に大動脈弁狭窄病変が進行し弁置換が必要となった際の再手術リスクが有意に高いことが報告されている.われわれは,冠動脈バイパス手術時に軽度の大動脈弁狭窄を有する症例に対し,超音波破砕による石灰除去を施行し良好な結果を得たので報告する.超音波破砕による大動脈弁の石灰化病変除去は,大動脈弁狭窄症の重症度や石灰化病変の局在を適切に判断することで十分に狭窄を解除し得る方法であり,弁狭窄病変悪化の抑制が期待できる方法である.ただし,その適応症例は慎重に選定されるべきであり弁置換にとって代わる方法ではないことに留意したい.また,術後の大動脈弁閉鎖不全の発症や狭窄の再発などの問題点もあり,長期的な経過観察が必要である.
症例
  • 菅原 里恵, 堀中 繁夫, 八木 博, 石村 公彦, 小口 渉, 矢野 秀樹, 石光 俊彦
    2012 年 44 巻 11 号 p. 1432-1436
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2014/04/03
    ジャーナル フリー
    脱水と溢水を繰り返し,心不全加療に難渋し全身性毛細血管漏出症候群と診断した症例を報告する.症例は66歳,男性.入院時の主訴は意識障害でBP 85/63mmHgと低血圧,血液検査ではHt上昇ならびに低アルブミン血症が認められたため,大量補液にて血圧は改善するも溢水となる.その翌日から急に5,000mL/日以上の多尿が認められ脱水となることを繰り返した.各種ホルモン検査および負荷試験はいずれも異常は認められなかった.しかし,尿中Na排泄量が多いため食塩負荷およびフルドロコルチゾンの投与を開始し増量したところ,再び溢水に伴う体重増加や心拡大,胸水貯留が認められたが用量の調整にて上記発作を出現することなく安定した状態で約2年間,外来通院内服加療した.再度心不全発症し,入院治療するも死亡.全身性毛細血管漏出症候群は,非常に稀な疾患であるが通常の加療に反応しないうっ血性心不全には,当疾患も鑑別疾患の1つとして念頭におくべきと考えられる.
研究会(第29回 関東川崎病研究会)
特別講演
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