症例は55歳, 女性. 2010年6月, 心不全により入院し, 尿中ベンズジョーンズ蛋白陽性, 心筋生検によるコンゴレッド染色陽性より, 心アミロイドーシスと診断した. その後, 6カ月間, 外来に定期通院していた. 徐々に呼吸困難が増悪し, 両側胸水も増量し, 2010年12月, 入院加療とした. 入院後, 利尿薬, 強心薬, 血管拡張薬の通常治療に反応を示さず, 下腿浮腫, 胸水は残存していた. 第15病日に, トルバプタン(7.5mg/日)を開始し, 7日間同量で投与後, 投与終了した. トルバプタン内服投与中に, 血圧, 脈拍, 血液電解質に副作用はみられなかった. 比較的速やかに胸水は減少し, 下腿浮腫も軽減し, 腹部膨満感, 食欲・便秘の改善など, 自覚症状は速やかに改善した. 体重は, 入院時62kgから退院時53kgまで減量し, その後, 体重増加なく, 第34病日退院した. 心アミロイドーシスという重篤な基礎心疾患を有し, 従来のループ利尿薬を中心とした治療では十分な反応がみられなかった症例に対し, トルバプタンにより, 速やかに下腿浮腫, 胸水を呈した右心不全が改善した1例を経験したので, 文献的考察を加えてここに報告する.
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