心臓
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21 巻, 11 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 森近 直子, 岡本 光師, 本藤 達也, 河越 卓司, 中川 博, 網岡 英世, 土岡 由紀子, 松浦 秀夫, 坪倉 篤雄, 梶山 梧朗
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1275-1280
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,超音波パルス・ドプラー法によって弁膜疾患の逆流度評価を非侵襲的に行う試みがなされている.今回,我々は大動脈弁閉鎖不全症においてカラー・ドプラー法にて認められた弁上部吸い込み流れ血流(suction signal)を検索し他の重症度評価との対応について検討した.Suctionsignalはカラー・ドプラー法にて大動脈弁逆流シグナルの認められた47例中20例に検出された.S秘ctionsigna1の検出によって,III/IV以上の大動脈弁逆流を診断するsensitivityは100%, speciflcityは64%, predictive accuracyは67%であった.また,逆流点に向かうV字状のsuctionsignalは,逆流口の同定に有用と考えられた.長軸像で計測されたsuctionsignalの面積は,左室内逆流血流シグナルの面積と有意な相関を示し,大動脈造影およびパルス・ドプラー法での腹部大動脈血流パターンによる重症度に準じて大となる傾向を認めた.suctionsignalの面積が40mm2以上でIII/IV以上の高度逆流を診断するsensitivity88%, specificity91%, predictiveaccuracy88%であった.すなわち,suctionsignalの広がりは大動脈弁閉鎖不全症重症度評価の一指標になり得ると考えられた.
  • 西村 恒彦, 山田 直明, 永田 正毅
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1281-1286
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症における心筋組織性状の評価が磁気共鳴画像(MRI)を用いて行えるか,特に肥大心筋の心内膜側を中心として出現する高信号領域の臨床的意義,およびMRI造影剤であるGd-DTPAを用いて肥大心筋に造影効果が認められるか検討した.用いた装置はMagnetom H15 (1.5 Tesla,超電導型)で心電図同期スピンエコー法(SE600~1000/30, 70)を使用した.対象は肥大型心筋症32例および高血圧心30例である.肥大型心筋症12例(38%),高血圧心5例(17%)に肥厚部位およびその心内膜側に高信号領域の出現を,明瞭に認めた.心エコー図諸値と対比すると心筋壁厚の厚い症例に頻度が高かった.次に肥大型心筋症8例,高血圧心8例にてGd-DTPAO.1mM/kg静注後,16例中10例(63%)に造影効果を認めた.肥大心筋の心内膜側を中心とする高信号領域の出現は,MRI造影剤による造影効果と併せ考察すると,麗大型心筋症に特徴的といえないが心筋肥大に伴う心筋変性を表現している可能性が示唆された.現時点でMRIを用いて肥大型心筋症と高血圧心の心筋性状の鑑別は明瞭でないが,肥大心筋の性状について他の検査法とは異なった診断情報を提供する可能性が示唆された.
  • 小池 明郎, 宮城 裕, 野村 雅則, 水野 康, 宮下 泉, 中野 由起子, 山本 紘子, 近藤 武
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1287-1292
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    対照18名(対照群)と,安定期の狭心症15名(AP群)と慢性期の心筋梗塞症19名(OMI群)およびこの両群からなる34名の虚血性心疾患(IHD)群の血液粘度,ヌクリポアフィルター法による全血および赤血球自己漿浮遊液の通過時間,さらにこれらに影響を及ぼす末構血液成分を測定し,比較検討した.
    AP群,OMI群およびIHD群の平均赤血球血色素量と平均赤血球血色素濃度が対照群よりも高値であった.OMI群とIHD群の総蛋白濃度は,対照群より高値であった.AP群,OMI群およびIHD群の全血および赤血球自己漿浮遊液の通過時間が対照群より有意に延長していた.これらよりIHD群では対照群よりも,赤血球の変形能の低下,微小循環での血流の障害があると推定された.
  • 大和 真史, 武田 昌慶, 桜山 千恵子, 島倉 唯行, 朝倉 貞二, 吉戒 勝, 星野 和夫, 治田 精一
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1293-1299
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    傾斜型disc弁Bicer-Va1弁を用いて僧帽弁置換を行った25例のうち4例が,2年から3年半後に,弁輪の組織増殖による人工弁開放障害によって,めまいや失神を起こしたため,再弁置換を行った(4.2%/患者・年).
    初発症状は,弁置換後7~29カ月後に生じた,動悸,めまいであった.心房細動の3例が,弁置換後22~38カ月後に失神を起こした.失神をきたさなかった1例のみ洞調律であった.明らかな心不全症状を呈した例はなかった.断層心エコー図では,容易に人工弁が開放しない心周期のあることを認め,人工弁周辺の異常エコー像を認めなかった.再弁置換術の麻酔導入時に,2例の人工弁が全く開かなくなった.うち1例は低心拍出量症候群のため死亡した.
    摘出人工弁の左室側縫着部に弁輪からわずかにはみ出した組織増殖があり,discが開く際の抵抗になっていた.当院で他の傾斜型disc弁を使用した19例中17例の経過観察では,組織増殖による弁機能不全がなかった.僧帽弁位Bicer-Val弁は,
    弁輪増殖によって弁開放障害を起こしやすいことが疑われる.組織増殖は軽微であるため,人工弁の弁輪の高さが十分であれば,discの回転する軌跡を守れたと考えられた.
  • 糖尿病患者と非糖尿病患者での対比
    前野 孝治, 高田 重男, 広野 正明, 横井 宏佳, 広田 悟志, 久保田 幸次, 池田 孝之, 服部 信
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1300-1304
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,無症候性心筋虚血が話題となっている.そこで今回,トレッドミル運動負荷試験陽性の胸部症状を認めない非糖尿病患者38例,糖尿病患者44例に運動負荷心筋シンチグラフィー,冠動脈造影を施行し,無痛性ST低下の臨床的意義,および糖尿病のそれに与える影響について検討した.非糖尿病群では,トレッドミル運動負荷試験が陽性でも,運動負荷心筋シンチグラフィー陽性者はその15.8%にみられるのみであり,冠動脈造影では9例中8例が正常冠動脈であり,運動負荷心電図の偽陽性率が高かった.糖尿病群ではうトレッドミル運動負荷試験が陽性の場合,運動負荷心筋シンチグラフィーで高頻度にtransient defect(38.6%)を認めた.冠動脈造影では,正常冠動脈を示す症例が13例中8例(61.6%)にみられた.以上から胸部症状のない糖尿病患者では非糖尿病患者に比し高頻度に運動負荷にて心筋虚血がみられ,その原因として可視的冠動脈病変以外の異常が疑われた.
  • 遠藤 秀樹, 五十嵐 浩, 市橋 光, 倉松 俊弘, 白石 裕比湖, 谷野 定之, 松井 陽, 山本 佳史, 柳沢 正義
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1305-1308
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    DiGeorge症候群は,第3,4鯉弓に由来する器官の発生異常により,テタニー,易感染性,心大血管系奇形,および特異な顔貌を呈する.今回,総動脈幹遺残を伴うDiGorge症候群とFallot四徴および脊髄髄膜瘤を伴った一卵性双胎を経験した.第一子は,総動脈幹遺残で低カルシウム血症性テタニーを呈し細胞性免疫の低下を示した.顔貌は正常であった.肺動脈絞拒術を施行したが,生後81日に死亡した.剖検では,胸腺・副甲状腺は認められなかった.第二子は,Fallot四徴と脊髄髄膜瘤を伴っていたが低カルシウム血症や細胞性免疫の低下は示さなかった.現在,心臓外来で経過観察中である.
    本症例は,DiGeorge症候群の発生を考える上で興味あるものと思われた.
  • 定永 恒明, 佐伯 公子, 吉川 勉, 赤石 誠, 和井内 由充子, 小川 聡, 半田 俊之介, 中村 芳郎, 藤井 効
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1309-1313
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈弁狭窄症の臨床症状は胸痛,失神,心不全で代表される.この時の心不全は左室不全が主たる病像を形成するとされる.我々は52歳まで無症状で経過した後うっ血性心不全を2年間繰り返しているdiscrete型大動脈弁下部狭窄症の1例を経験し,その心不全の病態生理につき考察を加えた.症例は54歳女性.主訴は下腿浮腫である.小児期より心雑音を指摘されていたが動悸,胸痛,失神などの自覚症状はなかった.52歳頃より徐々に労作時呼吸困難および下腿浮腫を認めた.利尿剤の投与により一時軽快するも同症状を繰り返すため当院に転院した.身体所見では血圧160/80mmHg,脈拍70/分,整頸動脈の立ち上がりは遅く,心基部にthrillを触知した.第3肋問胸骨左縁を中心とする収縮期および拡張期雑音を聴取した.肝を1横指触知し,下腿浮腫を認めた.心電図は左室肥大を示した.胸部X線像では両側胸水の貯留を認砂た.心エコー図では大動脈弁下部に膜様物が認められた.心臓カテーテル検査では左室流出路に45mmHgの圧較差を有するsubchamberの存在が確認された.幼少期より大動脈弁口領域に駆出性雑音のある症例で中高年で明らかに右心不全徴候の強いうっ血性心不全を呈する場合,軽度ないし中等度の圧較差を有するdiscrete型大動脈弁下部狭窄症も考慮に入れる必要がある.
  • 柴田 雅士, 三浦 秀悦, 荒川 直志, 大浦 弘之, 那須 雅孝, 瀬川 郁夫, 鈴木 智之, 加藤 政孝, 高橋 明, 久保 直彦, 金 ...
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1314-1318
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は7歳男児.昭和62年10月26日に3回目の第四脳室上衣腫摘出術を受けた.翌日より心電図上I, aVL, V1~V4のST上昇が認められ,CPK, GOT, LDHも経蒔的に上昇し,心エコーで左室前壁・中隔のhypokinesisを呈した。約1カ月後に施行した心臓カテーテル検査では両心の各内圧は正常で,左室造影所見には異常がなく,また,冠状動脈造影所見にも有意な狭窄や閉塞を認めなかった.症例は約2カ月後,肺炎により死亡した.剖検心において,組織学的に左右の冠状動脈内模の線維性肥厚による狭窄を認め,左心室心筋の一部に,心筋梗塞の搬痕を思わせる散在性の線維化巣を認めた.脳血管障害や脳手術後に種々の心電図変化が発現することは知られている.その原因はいまだ不明であるが,本症例の場合,脳腫瘍摘出術が視床下部周辺を刺激した可能性が推測される.その結果,交感神経系が過緊張状態になり冠状動脈攣縮を起こし,急性心筋梗塞を呈したと考えられた.
  • 松山 裕宇, 菱田 仁, 森本 紳一郎, 近松 均, 安井 直, 石黒 良明, 野場 万司, 水野 康
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1319-1325
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞に心室瘤を合併した症例の予後は,一般に非合併例に比して悪いとされている.これはうっ血性心不全を始め心室性不整脈などの合併症を伴う頻度が高くなるためであり,特に心不全に限れば80%以上の極めて高い合併率である.
    本症例は心室瘤を合併した心筋梗塞に罹患後,壁の石灰沈着を伴いながら13年聞生存し突然死した剖検例である.本例では,生存中明瞭な心腔内fragmented electrogram(FE)および,持続時間の長い体表面心室遅延電位(LP)が認められた.また,剖検上新たな心筋梗塞を疑わせる所見はなく肺うっ血,脳血管障害を示唆する所見も観察されなかったことから突然死の原因が不整脈であった可能性が極めて高い.
    Robertsらは心筋梗塞後心室瘤を合併した患者が5年以上生存した場合,心室瘤を中心とした梗塞部に石灰沈着を生ずる可能性が高くなると報告しているが,本邦では現在まで同様の報告は少ない.そこで我々は本症例に対し生前施行した冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査やCT検査,種々の心電学的検査の所見を中心に心筋の石灰沈着,突然死に対し若干の考察を加えて報告する.
  • 樋口 治之, 藤岡 博道, 竹内 正喜, 田中 俊幸, 塩崎 明洋, 福井 淳, 川平 悟, 浜口 浩一, 保田 憲基, 中野 赳
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1326-1330
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1:61歳,男,心電図にてI,aVL,V1~6にSTの上昇,V1~4に異常Q波を認めた.心係数2.4l/min/m2,肺動脈襖入圧15mmHg. UK96万単位を冠注し胸痛出現後4時間30分にて完全閉塞していた責任冠動脈(Segment 6)の再開通を認めた.発症後,11時間でPeakCK4,4.010 U/l.発症から16時間後心破裂のため急激な血圧低下をきたしたと考えられた.
    症例2:70歳,男,心電図にて1,aVL,V2~6にSTの上昇,V1~6に異常Q波を認めた.心拍出量2.7l/min,肺動脈襖入圧28mmHg.UK96万単位を静注.発症後6時間でPeak CK372U/l.発症から8時間後心破裂にて突然死した.
    症例3:71歳,男,心電図にて1,aVL,V捕にSTの上昇,V2~5に異常Q波を認めた.心係数3.4l/min/m2,肺動脈模入圧11mmHg.UK72万単位使用し,胸痛出現後4時間にて責任冠動脈(Segment 9)の自然開通を認めた.発症後7時間でPeakCK800U/l.発症から27時間後心破裂にて突然死した.3例とも,心エコーにて心嚢液の貯留を認め,穿刺により血液を吸引し心破裂が確認された.いずれも,発症後6時聞以内に冠動脈血栓溶解療法が施行されたが,来院時,すでに心電図にて異常Q波を認め,貫壁性の心筋壊死を起こしていた可能性があり,urokinaseを用いた冠動脈廠栓溶解療法の時間的な適応について今後検討する必要があると思われる.
  • 御厨 美昭, 立川 洋一, 油布 文枝, 財前 博文, 若山 勝弘, 松本 悠輝, 矢野 庄司, 片岡 一, 那須 勝, 門田 政富, 田村 ...
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1331-1337
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は44歳,男.喫煙以外のrisk factorはなく,胸痛発作も発症前3週間の間に2回認めるのみであった。梗塞発症1.5時間後に入院した.心電図所見,血液,生化学検査所見は典型的な前壁梗塞の所見であった.発症2時間後の冠動脈造影では右冠動脈に軽度の狭窄を認めるのみであった.発症4週後の冠動脈造影でも左冠動脈には全く冠狭窄を認めなかったが,エルゴノヴィン負荷にて3枝にdiffusenarrowingを認めた.左室造影でも前壁領域にhypokinesisを認めた.
    症例2も44歳,男.過去に胸痛発作は1度も認めなかった.胸痛発症後3.5時間後に我々の病院に入院した.種々の検査成績は典型的な前壁梗塞であった.発症4時間後の冠動脈造影では前下行枝は造彰遅延を認めるものの器質的冠狭窄は全くなく右冠動脈,左回旋枝も正常であった.慢性期造影では,ニトログリセリン投与前のcontrol造影にて3枝にdiffuse narrowingを認めた.
    急性期造影にて正常冠動脈を呈する心筋梗塞は極めて少なく,さらにこのような症例でcoronary spasmの関与が示唆された例はほとんどみられない.我々の2症例は器質的冠狭窄が全くなくてもcoronary spasmの強い発作によって急性心筋梗塞となりうる事を示唆する興味ある症例と思われるので若干の考察を加えて報告する.
  • 貴田岡 成憲, 興野 春樹, 本良 いよ子, 渡辺 坦, 佐治 公明, 大内 将弘, 柴崎 貴久
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1338-1344
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    A型WPW症候群症例において心房の電気刺激により,右脚ブロック波形(RBBB)と左脚ブロック波形(LBBB)の頻披が誘発された.両者の室房伝導時間の差から副伝導路の局在を推定し,外科的副伝導路切断術により確認した.症例は53歳男性で,20歳より胸痛を伴う頻拍発作を生じ,52歳より頻拍時に血圧低下を伴うようになった.頻拍に対し種々の抗不整脈剤を試みたが,十分な予防ないし停止効果が得られず,頻回のカルディオバージョンを施行した.デルタ波はI,aVL,V16,誘導で陽性;III,aVF誘導で陰性で,左側後部の副伝導路が示唆された.頻拍中に正常QRS波形からLBBBに移行した際心拍数は219/分から203/分に減少し,LBBBからRBBBに移行した際には200/分から210/分に増加した.高位右房電気刺激によりRBBBとLBBBの頻拍が誘発されたが,両者の心房内興奮順序は右室刺激時と等しく,また後者の室房伝導時間は前者に比べて約25msec延長していた.この延長の程度から後部中隔あるいは左側後部傍中隔自由壁の副伝導路が示唆された.手術中に施行した右室刺激時の心内膜マッピングの結果,心房最早期興奮部位は冠静脈洞右房開口部の直下にあった.
    Sealyらの方法により外科的副伝導路切断術を施行し室房伝導の消失をみた.RBBBとLBBBの頻拍が誘発されることはまれであり,両者の室房伝導時間の差が副伝導路の部位診断の参考になったので,ここに若干の考察を加え報告する.
  • 瀬部 俊彦, 久保 克之, 橋口 修二, 小島 章裕, 小阪 昌明, 川井 尚臣, 斎藤 史郎
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1345-1350
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性.労作時の呼吸困難,顔面・下肢の浮腫および両下肢にしびれが出現し,昭和63年1月当科に入院した.血清蛋白のβ2-gl分画に単クローン性1gG(λ)を認めた.骨髄に異常所見はみられなかった.直腸生検組織のコンゴーレッド染色にて過マンガン酸カリウムに抵抗性のアミロイド沈着が証明された.胸部X線像で氷嚢型の心拡大,右側の胸水貯留,心電図でV1.2のQSパターン,心エコー図では,中等量の心膜液貯留,肥大型心筋症の形態に類似し,その壁エコーはgranula rsparklingを呈した.また,僧帽弁および三尖弁からの逆流がみられたが,連続波ドプラー法での流速はそれぞれ1.25m/sec,0.86m/secと低値であった.心プールスキャンでは左室の拡張および収縮障害を認め,99mmTc-PYP心筋シンチではWizenbergらのGrade 3(+)の取り込みを認めた.右房ペーシング負荷により,α-hANPの前値に対する直後の値の増加率は262%と著増を示したが,その頂値76ng/mlとむしろ低値であり,α-hANPの分泌不全が疑われた.ino・tropicagentであるdenopamineにより心係数は1.33l/min/m2より2.01l/min/m2へと増加したが,平均肺動脈櫻入圧も7.2mmHgより15mmHgへと増加し,血行動態の悪化がみられた.以上,心房ペーシング負荷によりα-hANPの分泌不全が見いだされ,denopamine投与により血行動態の悪化が認められた唖性房室弁閉鎖不全を伴う原発性アミロイドーシスの1例を報告した.
  • 秋津 壽男, 有田 幹雄, 松谷 良清, 上野 雄二, 西尾 一郎, 増山 善明, 川副 浩平
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1351-1355
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:59歳,男性.55歳時口腔内アフタ,外陰部潰瘍,ブドウ膜炎にてBehg就病と診断された.57歳時意識消失発作にて当科入院.III度房室ブロックのため,人工ペースメーカーを埋め込んだ.心エコー図,大動脈造影ではValsalva洞動脈瘤,大動脈弁閉鎖不全を認めたが,内科的に治療を行った.昭和62年12月より安静時呼吸困難をきたすようになり入院した.心拍数92/分整,血圧112/50mmHg拡張期雑音(V/VI)を聴取.肺うっ血,肝腫大も見られた,大動脈弁閉鎖不全による急性心不全と考え,Saint Jude Medical人工弁を用いたBentall変法による緊急手術を施行した.
    手術所見では無冠尖のValsalva洞動脈瘤に2個の小孔が認められ,左房との交通を認めた.組織所見では大動脈の内,中,外膜はいずれも高度の線維性肥厚を示し外膜には血管周囲に軽度のリンパ球および形質細胞の浸潤を認め,Behget病に適合する所見であった.術後経過は縫合不全もなく良好であったBehget病に合併したValsava洞動脈瘤はまれであり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 伊藤 重範, 高田 善介, 尾関 規重, 田中 明隆, 矢崎 裕, 中沢 貴宏, 佐藤 泰正, 武内 俊彦, 武田 佳秀, 鈴木 克昌
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1356-1360
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁膜症に伴った肺静脈瘤を経験し,診断上CTが有用でMVR前後の経過を観察し得たので,本邦報告例の集計を加えて報告した.症例は43歳時にリウマチ性僧帽弁閉鎖不全症に対し僧帽弁形成術を受けた56歳の女性.今回,僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症による心不全で入院し,胸部X線上,右中および下肺野に心陰影に接する2個の鷲卵大の腫瘤影が認められた.胸部造影CTおよび肺動脈造影静脈相において右上および下肺静脈幹に瘤様拡張がみられた.末檎肺静脈,瘤,左房の連続性の確認にはむしろCTの方が有用であった.左室造影上,Sellers 3度の僧帽弁逆流があり,入院後も心不全を繰り返すため,MVRを施行した.術申所見では右上および下肺静脈幹に肺静脈瘤が認められ,瘤,左房内に血栓を認めなかった.徳後1カ月で肺静脈瘤は著明に縮小した.一時下肺静脈瘤内に壁在血栓が出現したが,抗凝固剤増量により消失した.肺静脈瘤症例におけるMVR後,瘤内に壁在血栓が出現した報告は本例が初めてであるが,術後経過をみる上で注意すべき病態であると思われた.
  • 乾 あやの, 日比生 秀一, 藤沢 知雄, 有泉 基水, 岡田 知雄
    1989 年 21 巻 11 号 p. 1361-1366
    発行日: 1989/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    川崎病に合併する心臓病変として大動脈弁閉鎖不全症の報告はいまだ少数であり,その発現時期および転帰も様々である.今回我々は生後2カ月の男児で川崎病発症後,20日目に心雑音に気づかれ,カラードップラー心エコー検査にて大動脈弁逆流を証明し得た1例を経験したので過去の報告例と共に若干の考察を加えて報告した.これによると大動脈弁閉鎖不全症が川崎病発症後1カ月以内に起こるearlyonsetの症例は病初期のpancarditisが大動脈弁膜にまで波及することによって発症すると考えられた.また本症例では病初期の一過性の血小板減少および低補体血症が認められ,その発生機序を文献的に考察した.なお,川騎病に合併した大動脈弁逆流をカラードップラー心エコー図で記録した報告は,我々の知るところこの報告が最初と思われる.
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