心臓
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21 巻, 2 号
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  • 清水 進
    1989 年 21 巻 2 号 p. 129-141
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ヒト心臓を用いて実体顕微鏡下の微細解剖により房室伝導系各部の局所関係を再検討した.いくつかの問題点を指摘するとともに,ステレオ写真を呈示し従来の図説を補足した.1)田原結節は心筋外面(epi-myocardial)の構造であり,右心房と右線維三角との間に扇状に平べったくひろがった組織塊である.その所在はKochの三角の尖端(前端)にあり,房室中隔の後縁と三尖弁線維輪を指標としてより狭い範囲に限定できる.結節の位置は局所解剖的に一定であり個体による変動はない.冠状洞開口部はある程度個体により変動するので,結節局在の指標としては不適当である.2)ヒス束は原則として膜性部下縁ないし筋性部上縁を走る.通常,多少の違いはあるが右室中隔筋に覆われている.3)右脚は三尖弁の前尖および中間尖に所属する乳頭筋・腱索の起始列と中隔尖所属のそれとの作る逆V字状の領域を中隔尖の起始列に寄って走る.また,Lancisi筋との関係ではその直下ではなく後方を少し離れて走る.右脚の走向は比較的正確に推定できる.4)左脚はヒス束幹の全長より薄膜状に分岐し,左室中隔面の心内膜下というよりもむしろ心内膜内を走る.分束型は必ずしも一定ではなく個体差がある.
  • 藤関 義樹, 角野 文彦, 藤野 英俊, 西島 節, 島田 司巳, 杉山 俊明, 西川 僚一
    1989 年 21 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    小児のWPW症候群21例に対し,副伝導路に対するprocainamideの臨床電気生理学的影響を検討した.その結果,小児においてもprocainamideは用量依存性に副伝導路を抑制した.しかし発作性上室性頻拍症を有する症例では発作の誘発を完全に抑制することは,ほとんどできなかったが,頻拍周期の延長と頻拍中のVA時間による室房伝導,ならびにAV時間による房室伝導の延長が認められた.頻拍は全例正常房室結節を順行し,副伝導路を逆行する回帰性頻拍のため,頻拍申の室房伝導の延長は副伝導路の逆行性伝導が抑制されていることを示すと考えられた.しかしprocainamideを静注し,デルタ波の消失した時点の投与量からWPW症候群における高リスク群を選択するのは洞周期が変化に富み,副伝導路特性の経年的変化が不明な小児では限界を有していると考えられた。
  • 頻度と自然歴
    門間 和夫, 高尾 篤良, 中沢 誠, 柴田 利満, 安藤 正彦
    1989 年 21 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    多脾症候群50例の心電図を平均7年の経過をおって検討した.各種の房室ブロックの頻度は0歳では30%であるが,年齢の進むにつれて増加し,7歳以上では65%になった.2度房室ブロックは6例に認められ,3例がWenckebach型,3例がMobitzII型であった.この6例以外にAdvancedblockが3例,完全房室ブロックが4例に認められた.経過をおうと,房室ブロックの進行が13例で認められた.なかには一過性に1度,または2度の房室ブロックを生じた例もあった.
    以上の観察から多脾症候群の進行性の房室ブロックを生じる傾向が明らかであった.したがって多脾症候群の治療にあたっても以上の事を念頭に置く必要がある.
  • 対照における自然閉鎖との対比
    園田 徹, 大堂 庄三, 政所 治道, 大庭 健一, 沖島 寳洋, 先成 英一, 松岡 裕二, 早川 国男
    1989 年 21 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 1989年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    昭和52年11月から昭和62年12月までに宮崎医科大学小児科を受診したDown症候群に合併した心室中隔欠損31例(男子13例,女子18例)と初診時年齢が1歳未満の合併症を伴わない心室中隔欠損447例(男子217例,女子230例)の自然閉鎖について比較・検討した,Down症候群の初診時平均年齢は22カ月と高く,平均観察期間は合併症を伴わない患者の34カ月に比べ26カ月と短いにもかかわらず,自然閉鎖率は32.3%であり,合併症を伴わない患者の26.2%より高い傾向がみられた.閉鎖時の年齢分布は両群で類似していた.
  • Dipyridamole負荷心筋シンチグラフィの有用性
    小田原 弘明, 浜重 直久, 土居 義典, 楠目 修, 米沢 嘉啓, 近森 大志郎, 小澤 利男, 赤木 直樹, 吉田 祥二, 前田 知穂
    1989 年 21 巻 2 号 p. 160-168
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ST上昇または可逆性冠性T波を検出した安静狭心症38例について,有意冠狭窄(18例)の非侵襲的診断の可能性について検討した.
    狭心症の期間や,労作性狭心症・不安定狭心症・CPK上昇の有無などの臨床所見と,冠動脈病変との間には関連はみられなかった.Treadmill負荷心電図では,15例で陽性(1mm以上のST偏位)であったが,2例の偽陽性と5例の偽陰性を認め,感受性72%・特異性90%であった.これに対して,dipyridamole負荷Thallim-201心筋シンチグラフィは,16例で陽性(可逆性欠損像)であり,1枝50-75%狭窄の2例で偽陰性を示したが,感受性89%・特異性100%と良好であった.後に血行再建術を施行した6例中,treadmill負荷心電図では5例,dipyridamole負荷心筋シンチグラフィでは6例が陽性であった.
    以上,dipyridamole負荷心筋シンチグラフィは,treadmill負荷心電図に比し,負荷誘発冠攣縮(偽陽性)や負荷不十分例(偽陰性)がまれであり,安静狭心症における有意冠狭窄の非侵襲的診断に有用である.
  • 湯田 敏行, 上原 景光, 佐藤 雄一, 森下 靖雄
    1989 年 21 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は軽度の発育遅延を主訴とする3歳7カ月の男児で,翼状頸,耳介低位附着,低身長,停留睾丸などの身体的特徴と,性染色体異常を伴わないことからNoonan症候群と診断した.弁性肺動脈狭窄症兼卵円孔開存の診断下に開心術を施行したところ,下大静脈の右房開口部にEustachius弁の異常遺残と二次ロタイプの心房中隔欠損症を認めた.Eustachius弁をその辺縁付着部から切除し,心房中隔欠損孔の閉鎖,肺動脈弁交連部切開を施行し良好な結果を得た.
  • 臨床例と本症の予後に関する考察
    本田 幸治, 高比良 拓重, 竹下 聡, 岩本 啓二, 岩崎 義博, 片山 知之, 厨 平
    1989 年 21 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右冠動脈肺動脈起始異常症はBland-White-Gar.land症候群に比しさらにまれな疾患で,本邦ではこれまで数例の報告をみるのみである.症例は53歳女性.全身倦怠感を主訴に来院。胸写CTR53%,心電図は高電位差を認めた.断層心エコー図では短軸像で拡張した左冠動脈と,大動脈前方に肺動脈主幹部へ連続する右冠動脈と思われる内径8mmの管腔像が描出された.パルスドップラー法では,肺動脈主幹部で収縮期,拡張期を通じて広帯域スペクトルのエコーが記録され乱流が疑われた.
    心臓カテーテル検査では,肺動脈圧32/16mmHgと軽度上昇にとどまり,左室拡張終期圧は5mmHgと正常値であった,酸素飽和度は主肺動脈でste唐upを認めシャント率34%,肺体血流量比1,54であった.右冠動脈は,拡張した左冠動脈から多数の側副血行路を介して逆行性に造影された.この右冠動脈は著明な拡張,舵行を示しながら心臓の前側面を上行し,血流は収縮期から拡張期にかけ連続性に肺動脈基部にて噴出していた.
    本奇形では,成長に伴う肺動脈圧の変化,側副血行路の発達などにより,左冠動脈,右冠動脈相互間の血行動態も変遷する.このような成長に伴って出現する狭心症や心不全などの合併症とともに,生命予後などについても文献的考察を行った.
  • 望月 弘人, 前田 達朗, 斉藤 勇三, 小森 貞嘉, 吉崎 哲世, 田村 康二
    1989 年 21 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,35歳,女性.19歳の時心陰影異常精査にて初回心臓カテーテル法および右室造影法検査を受け,右室の著明な拡大,右室壁の菲薄化を認め,三尖弁逆流,心腔内短絡はなく,圧波形に異常はなかった.その後,16年間の経過で徐々に右心不全徴候著明となり,頻拍発作も出現.胸部X線写真で著明な心陰影拡大,心電図で心室性頻拍を認めた.再施行した心臓カテーテル法検査では,右房でa波の著明な増高とそのa波の右室,肺動脈への伝播を認めた.右室造影所見では,右房,右室の著明な拡大,右室壁の菲薄化と収縮不全および三尖弁逆流を認め,三尖弁付着位置には異常はなかった,左室造彰,選択的冠動脈造影所見に異常なく,左室機能はほぼ正常であった.また,心室性頻拍については,心室性頻拍誘発試験よりリエントリー現象によるものと思われた.以上より本症例は,16年前より右室は菲薄で拡大著明で,16年間の経過で右心不全,心室性頻拍等の症状出現に至ったUhl病の成人例と考えられ,本疾患の早期の病態を知る上で貴重と思われ,若干の考察を加えて報告した.
  • 山里 有男, 西脇 登, 青嶋 實, 西村 和修, 松本 雅彦, 岡林 均
    1989 年 21 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞患者に対してPTCAが施行され再開通した後出血性梗塞により心タンポナーデに陥った症例を経験した.
    症例は73歳,女性で昭和62年2月17日,前胸部痛をきたし某院受診.心電図上著変なく経過観察入院するも,翌日CPKなどの酵素値の上昇を認め,急性心筋梗塞を疑われ冠動脈造影を施行.左回旋枝seg.13の完全閉塞に対してPTCAを行い狭窄は75%に拡張した.PTCA後低心拍出症候群に陥り,さらに2月19日より超音波検査にて心のう液の貯留を認めるようになり,心のう穿刺で血性心のう液を検出した.2月21日本院へ緊急搬入され,心タンポナーデ解除術を行うと同時に左室後壁の径約4cmの出血性梗塞部をoxycelluloseを充填した心膜パッチにて閉鎖し,さらに左前下行枝,第1対角枝,左回旋枝鈍縁枝にバイパス術を行い救命しえた.
    PTCA後の合併症としての心タンポナーデはまれで,冠動脈穿孔による報告があるのみである.我々の症例は心筋梗塞発症後PTCAまで少なくとも24時間経過しており,既に不可逆的な心筋壊死が完成されていたと考えられる.PTCA後明らかな合併症,すなわち急性冠血管閉塞,梗塞心電図,胸痛持続に対しては迅速な対応が容易であるが,PTCAにより再開通後心のう液貯留と低心拍出症候群の持続するものは本症の発生を念頭におき適切なる処置が必要である.
  • 神谷 康隆, 中川 雅生, 浜岡 建城, 福持 裕, 黒田 啓史, 白石 公, 糸井 利幸, 高永 煥, 市川 澄子, 藤田 克寿, 小西 ...
    1989 年 21 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は14歳の男児.主訴は咳漱および胸痛.昭和61年1月下旬より感冒症状を認め,2月2日より咳漱の増強と胸痛を訴え翌3日入院となった.胸部X線写真で心拡大と胸水貯留を認め,心エコーでも左室腔の拡大と左室駆出率(LVET)の低下を認めた.また入院時より異所性自動能充進による慢性心房頻拍(chronicatrialtachycardia,CAT)が認められた.digitalis,disopyramideおよび利尿剤の投与により約1カ月半の経過でCATは消失し,心不全症状も改善した.臨床経過と6カ月後の右室心筋生検所見より,基礎疾患として心筋炎の存在が確認された.
    小児におけるCATはまれな疾患で,その病因が明らかにされた症例は少なく,これまでに心筋炎や心筋症がわずかに報告されているのみである.治療はdigitalis,propranorolが有効で洞調律に復しやすく予後良好とされているが,基礎疾患の有無によって大きく左右される.今後CATのなかでも心不全症状の強い症例では心筋炎などの基礎疾患の有無に十分注意する必要があると考えられた.
  • 江森 俊明, 馬場 良, 白井 隆則, 丹羽 明博, 神谷 敬三, 三宅 祥三, 谷口 興一
    1989 年 21 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肘部動脈に細菌性動脈瘤を合併した感染性心内膜炎の1例を経験した.症例は55歳の生来健康な男性.歯科治療後,夜間高熱と呼吸困難を自覚.大動脈弁逆流も認められたため入院.血液培養にてStreptococcus α-hemolyticusを検出.Penicillin G投与にて感染症状は改善したが,治療開始後1週間目に突然右肘部の疹痛・腫張が出現し諸検査の結果,右上腕動脈末梢分岐部の細菌性動脈瘤と右尺骨動脈の完全閉塞を認めた.抗凝血薬療法にて右肘部の症状は消失したが,動脈瘤は残存した.炎症所見の消失後,動脈瘤の切除と大動脈弁置換を施行し,術後経過良好にて退院した.
    上肢動脈に発生した細菌性動脈瘤の報省はきわめてまれで,調べ得た範囲では本邦における救命例としては本症例が第1例目であり,また細菌性動脈瘤の発生機序を考察するうえでも貴重な症例と考えられ,その臨床像を報告した.
  • 宮腰 重三郎, 西川 英郎, 西村 重敬, 関 顕, 本田 一穂, 原 満
    1989 年 21 巻 2 号 p. 208-216
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本邦ではいまだ報告のない大動脈原発腫瘍の1剖検例を経験したので報告する.本報告例は我々が検索しえた報告のうち,36例目の大動脈原発腫瘍に相当する.
    症例は50歳男性で,高血圧,腰痛,両下肢の塞栓症状にて発症し,この塞栓除去術後,急速に進行した肝梗塞,腎梗塞,消化管出血のため死亡した.
    剖検にて,肉眼的には腹部大動脈を中心に内腔に突出する,表面にフィブリン血栓が付着した長径21cmの粘液腫様腫瘍を認めた.この腫瘍は,大動脈内膜表層を大動脈起始部まで這うように発育していたが,中膜,外膜への浸潤は認めなかった.胸椎,肺,腎,脾転移および大動脈主要分枝の腫瘍塞栓を認めた.光顕的には,細胞間質に粘液様物質,あるいは線維成分が豊富に見られタその細胞間基質の中に大型で核異型性を有する紡錘形,あるいは多角形細胞の散在が見られた.これらの腫瘍細胞は,免疫組織学的にはfactorVlll陰性,factorXIIIaが陽性で,細胞間基質はウシ精巣ピアルロニダーゼで消化された.電顕的検討では,腫瘍細胞内には粗面小胞体が発達していたが,myofilamentの形成は認めなかった.病理組織学的に飾romyxosarcomaと診断した.
    本例は大動脈内膜に限局し,大動脈内腔を閉塞するように,一部内膜を這うように発育し,多臓器腫瘍塞栓をきたした大動脈原発内膜肉腫である.
  • 林 育生, 屋宮 和哉, 鬼丸 円, 馬渡 浩介, 川平 正純, 真田 純一, 黒岩 義文, 中村 一彦, 橋本 修治, 西元寺 秀明, 森 ...
    1989 年 21 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    著明な石灰化を伴った左房内粘液腫の報告はまれである.今回,著者らは血液透析患者に著明な石灰化を伴った左房内粘液腫の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.
    症例は48歳,女性,透析開始後4年目頃より全身倦怠感,労作時の息切れなどの心不全症状が出現し入院となった.血液生化学検査では続発性副甲状腺機能充進の所見を示した.心エコー法,CTスキャン,心血管造影により,著明な石灰化を伴った左房内粘液腫と診断した.手術時所見では,粘液腫は左房上壁より発生しており,付着部周囲の左房上壁には小さな石灰沈着が多数認められた.また,粘液腫の表面は,凹凸不整で硬く多数の石灰沈着がみられ,特に粘液腫基部はカリフラワー状に著明な石灰化を認めた.さらに罰面像にて内部にも著明な石灰化を認めた.大きさは5×3×3cm,重量は32gであった.組織学的にも著明な石灰化を伴った左房内粘液腫と診断された.本症例の粘液腫における著明な石灰化機転として,長期透析に合併したCa・Pの代謝異常,および続発性副甲状腺機能充進の出現による異所性石灰沈着が示唆された.
  • 有田 眞, 清末 達人
    1989 年 21 巻 2 号 p. 224-233
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1981年Halnilらにより“lmprovedpatchclarnptechnique”が導入されて以来,その心筋細胞への応用には目覚ましいものがある.すでに少なくとも10種のイオンチャネルが同定されているが,本稿では心筋細胞(cell-attachedmode)におけるsingle channel current測定の原理を解説し,心筋の興奮伝導にとって重要なK+電流とくに内向き整流K電流(iK,rec)とNa+電流(iNa)の基本的な性質について述べる.
    iK,recは静止電位の形成にとって最も重要な外向き電流であるが,脱分極方向には電流を通しがたい性質がある,その一要因として細胞内Mg2+によるK+チャネルへの干渉が考えられる.Lysophosphatidylcholineは,iK,recchannelの開確率を減少させるCs+ やBa2+と異なりそのsigle echannel conductanceを減少させることにより,内向き整流K+電流をブロックし心筋膜を脱分極させた.iNaについては,脱分極が強いと最初のchannel openingまでの時間(潜時)が短縮し,channelcpeningの同期性は良好であるが,開く回数は一回限りである.一方弱い脱分極では,チャネルの複数回の開閉(reopening)現象がしぼしばみられる.また1個のパッチ膜当り,500回の脱分極(持続500msec,1Hz)に1回の割合で,脱分極の期間中継続して開閉を繰り返すNa+channe1活動(バースト型)がみられた.このチャネル活動により心室筋細胞は,1回の活動電位当り約20pAの電流を運んでおり,これは活動電位持続時間の約10%に相当する.すなわちこの電流は“windowcurrent”の本態と考えられる.
  • 亀山 正樹, 貝原 宗重
    1989 年 21 巻 2 号 p. 234-241
    発行日: 1989/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋細胞膜のCaチャネルは,心筋の自発的興奮や興奮収縮連関において重要な役割を演じ,その活動は自律神経系の伝達物質や血中ホルモンにより調節されている.心筋のC獄チャネルにはL型とT型の2種類がある.L型は筋では多数を占め,膜電位が-40mVより正になると開口し,Ca拮抗剤で阻害される.これに対し,T型はより負の電位で活性化され一過性に開口するが,Ca拮抗剤では阻害されない.β 受容体刺激によるCa電流の増加は,L型チャネルがAキナーゼによってリン酸化され,チャネルの開口確率が増大する事によりもたらされると考えられる.ムスカリン受容体刺激によるCa電流の減少は,アデニル酸シクラーゼの抑制により細胞内のcAMPレベルが低下するためによると考えられる.また,L型Caチャネルの活性維持に細胞質の蛋白が必要である事が最近の研究によって示唆された.
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