心臓
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25 巻, 1 号
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  • 鈴木 雅裕, 半田 俊之介, 岩永 史郎, 吉川 勉, 西川 泰弘, 和井内 由充子, 阿部 純久, 小川 聡, 堀 進悟
    1993 年 25 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】労作性狭心症症例の運動耐容能決定因子についてPTCA時の血行動態を用いて検討した.【対象と方法】PTCA時に冠動脈内圧の測定できた左前下行枝1枝病変の労作性狭心症例26例を対象とした.冠動脈造影で側副血行循環の発達がRentrop分類2度以上の側副血行循環(+)群5例と同分類1度の(±)群11例,同分類0度の(-)群10例に分けた.PTCA時にバルーンカテーテル先端より狭窄末梢圧とバルーンにより冠動脈を一時閉塞した時の閉塞末梢圧を測定した.運動耐容能はトレッドミル運動負荷試験により陽性基準に達した時点のdouble productと終了し得た段階のMETs数で定量化した.【結果】1.責任病変の狭窄度は側副血行循環の発達が良好な症例ほど高度であったが,3群間に運動耐容能の差を認めなかった. 2 . 狭窄末梢圧と運動耐容能は相関し,3群間に狭窄末梢圧の差を認めなかった.3.閉塞末梢圧は側副血行循環(+)群で30mmHg以上,(-)群で30mmHg未満であったが,(±)群はばらつきが大きかった.4.バルーンで冠動脈を閉塞した時の冠動脈圧の低下は側副血行循環(+)群では(±)群(-)群より有意に少なかった(p<0.05).【結論】造影される側副血行循環は狭窄より末梢の冠動脈圧の低下を代償し狭窄末梢圧を維持し運動耐容能を保つよう機能すると考えた.
  • 人間ドック受診者6,163例の性別および年代別分析
    平井 淳一, 河合 邦夫, 青山 隆彦, 若杉 隆伸, 嵯峨 孝, 明石 宜博, 木藤 知佳志, 竹越 忠美, 山崎 義亀與, 斉藤 和哉
    1993 年 25 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥満と高血圧症との関連については数多くの疫学的研究があり,肥満度と血圧値の間に有意な正の相関を有すると報告されている.しかし,性別および年代別の検討は少なく,それらの差異についての言及もほとんどない.今回肥満度と血圧値との相関係数(r)や回帰直線の傾き(a)を男女および年代別に検討した.肥満度と収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MBP)とのrは性・年代で分けたどの群においても「正」の値を示し,男女とも概ね年代ごとに高くなり一部を除き有意性を認めた.またaは概ね男女とも加齢とともに大となり,特に男性のSBPにおいて明らかであった.一方DBP,MBPにおいては男性では60歳代,女性では50歳代で他の年代と比べて小さな値を示した.また各年代ごとに男女間のaを検討すると,50歳代を除き女性の方が高い値を示していたが,有意性は40歳代・50歳代・60歳代のSBPではなく,DBPでは認められ,MBPでは一様でなかった.以上,血圧上昇に及ぼす肥満の影響が性,年代により異なる可能性を示し,肥満と高血圧症との関係をみる場合,男女および年代別に検討すべきと考えられた.
  • Dual SPECT ならびに経時的201TlCl-SPECTによる検討
    梅澤 滋男, 尾林 徹, 足立 博雅, 稲田 美保恵, 是永 正義, 廣江 道昭, 丸茂 文昭
    1993 年 25 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞急性期に認められる側副血行路(coll)の血栓溶解療法に及ぼす効果について核医学的に検討した.対象は発症6時間以内に入院し血栓溶解療法を行った25例で,急性期にcollを認め,再灌流に成功したA群10例,急性期にcollを認めず,再灌流に成功したB群10例,急性期にcollを認めるものの再灌流しえなかったC群5例とに分類し,病変枝数,治療までの時間,peak CKMB,peak CKMBまでの時間,慢性期左室駆出率(LVEF)を比較した.また,核医学的検討として99mTc-PYPと201TlClによるDual SPECTと,経時的に撮像した201TlClSPECTにおいて梗塞部,境界領域に関心領域を設定し,健常部に対する201TlClのuptakeの割合(%Tluptake)を求めその変化を比較検討した.梗塞部の%Tluptakeの推移は,A群は平均45.7→53.6→56.0%と有意に改善したが,B群は40.1→41.9→42.3%,C群は27→39.8→36%と有意の変化は認めなかった.境界領域においてはA群は平均57.7→62.0→69.1%,B群は62.1→64.8→64.1%と有意の変化は認めなかったが,C群では44→55.2→63.8%と有意の改善を認めた.これに対しLVEFはそれぞれ53.4,54.0,56%で,局所壁運動を示す% Area changeにも梗塞部には差を認めなかった.以上より急性期のcollは虚血性変化に対し防御的作用を持つものの,早期再疎通例では心機能に対する影響は小さいと考えられ,また,急性期collを有する例では,いわゆるlate reperfusionは心機能の保持に有効と考えられた.
  • 主に慢性呼吸器疾患患者および高齢者を対象として
    小西 與承, 上田 英之助, 上村 博幸, 重藤 紀和, 尾藤 慶三
    1993 年 25 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心機能抑制と抗コリン作用の弱いIb的利点と心房筋にも有効な特性を合わせ持つアプリンジン(Apr)を取り上げ,副作用の少ない上室性不整脈治療薬の観点から効果を検討した.対象を上室性不整脈を有する慢性呼吸器疾患患者および高齢者とし,それを取り扱う機会の多い国立療養所18施設の参加を得た.
    抗不整脈薬治験に一般的な観察項目に,対象患者の疾患特徴を観察するため,呼吸機能を加えた.評価対象として採用された症例は男性31,女性36の計67例で,平均年齢68.7歳であった.上室性不整脈の種類と各例数は期外収縮(SVPC)59,発作性心房細動(PAf)9,心房細動(Af)6,発作性房室頻拍(PSVT)9であり,48例に心室性期外収縮の合併を認めた.
    Apr投与により,SVPCは5,655±5,146/日から1,479±2,260/日へ,PAf+PSVT発作回数は3.22±3.51回/日から0.59±2.08回/日へと減少した(各p<0.001).「著明改善」+「改善」を改善度とすると,不整脈改善度79%,全般改善度82%の良好な成績であった.
    血液ガスデータがPO2 46.0mmHgやPCO2 99.8mmHgのごとく極端に悪い症例でも著効が得られ,呼吸機能低下例でも有効性は落ちないことが判明した.著明改善群でのApr血中濃度の多くは0.5μg/ml付近に集中し,この濃度は1日30~40mgの経口投与で十分達せられた.肝機能障害発生率は9%で休薬で回復した.
    アプリンジンは慢性呼吸器疾患患者と高齢者の上室性不整脈にも有効な治療薬である.
  • 藤野 英俊, 瀬口 正史, 安河 内聰, 中澤 誠, 門間 和夫, 高尾 篤良
    1993 年 25 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    当科で経験したStreptococcus viridansによる感染性心内膜炎27例のうち,Benzylpenicillin(以下PCG)を投与されていた23例の臨床経過を検討し,PCGの適切な治療法と副作用について考察した.PCG投与量は,50万単位/kg・日以上と未満では,抗生物質の投与期間,入院期間,CRPの陰性化に要した期間に両者の間で有意差はなく,aminoglycoside系の抗生物質の併用も治療経過に影響を与えなかった.Probenecidの併用例では治療経過が短くなる傾向がみられたが,有意ではなかった.PCGの副作用としてPCG投与による発熱について検討したが,副作用によると確定された5例で91±24万単位/kg・日投与されていたのに対し副作用のみられなかった12例では60±35万単位/kg・日と,副作用群でPCGは過量に投与されている傾向にあった.
    Streptococcus viridans心内膜炎におけるPCG投与は,20~30万単位/kg・日程度の投与量で十分な治療効果が得られ,50万単位/kg・日以上の投与量ではむしろ副作用発現の危険性が大きい.また,PCGに対する薬剤感受性が大きい場合には,aminoglycoside系抗生物質の併用は必要ないと考えられた.
  • 橋口 雅彦, 森下 靖夫, 豊平 均, 下川 新二, 福田 茂, 西田 聖剛, 有川 和宏, 平 明
    1993 年 25 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    典型的Marfan症候群の50歳の姉と38歳の弟に発生したannuloaortic ectasia(AAE)と大動脈弁閉鎖不全に対してBentall手術を行い,良好な結果を得た.症例の兄弟には他に2人Marfan症候群があり,うち1人はAAEとして他院で経過観察中である.Marfan症候群の症例はAAE早期発見のために,より早期に心エコー検査を行うべきと考える.Marfan症候群の同胞のAAEに対するBentall手術の報告例は極めてまれである.
  • 南沢 享, 奥山 さなみ, 小林 博英, 岩本 真理, 柴田 利満, 新村 一郎, 星野 和美, 梶原 博一, 井元 清隆, 近藤 治郎
    1993 年 25 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    無脾症候群に伴う複合心奇形に対し,上大静脈-右肺動脈吻合および心房内トンネルを用いた下大静脈-左肺動脈吻合により血行再建をし得た女児例を経験した. 症例: 5 歳, 女児. 合併心奇形は単心房,完全心内膜床欠損,両大血管右室起始,肺動脈閉鎖,右大動脈弓,左側下大静脈であり,生後15日に左Blalock-Taussig手術変法を,1歳11カ月時に右Blalock-Taussig手術変法を施行した.疲労感の増強,運動量の減少がみられてきたため,5歳11カ月時右心バイパス術を施行した.本症例は肺静脈が右側心房に,下大静脈は左側心房に接合し,上大静脈は右側心房に接合するため,心房内分割が困難と判断された.また左右肺動脈の連続性は中央で狭くなっており,体静脈血を別々に両側肺に流すことが必要と考えられた.そこで上大静脈は右肺動脈と,下大静脈は心房内に隔壁を形成後,左側心耳と左肺動脈を吻合した.術後経過は比較的順調であった.チアノーゼは改善し,退院後運動量は増加した.
  • 江口 進二, 香月 洋一, 尾形 徹, 坂本 俊文, 辻 信介, 徳島 卓, 江口 芳樹, 菅 謙司, 鶴田 満浩, 早野 元信, 松尾 修 ...
    1993 年 25 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は労作時胸痛を主訴とする25歳の女性で22歳時より胸痛を覚え,24歳時精査のため当科に入院した.冠動脈造影で多発性の小動脈瘤を有する3枝病変を認め,陳旧性心筋梗塞および狭心症と診断した.冠危険因子,炎症所見,他臓器障害の所見を欠き,生化学,血清免疫学的諸検査も異常なかった.本例は25歳時に急死し剖検を行ったところ,心臓は左室心筋に多くの線維化巣および小梗塞を認めた.また心,腎,肝,肺,腸間膜,副腎,子宮などの全身の中小動脈にフィブリノイド壊死を認める活動性の全血管炎から陳旧化したものまで多彩な動脈炎像を認め,結節性動脈炎(PN)と診断した.PNにおいて冠動脈病変は決して少なくはないが,冠動脈造影所見の報告は極めてまれで,興味ある症例と考えられる.
  • 中瀬 恵美子, 松村 憲太郎, 芹沢 敬, 久保田 忍
    1993 年 25 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    胸痛を主訴とし,心電図,負荷201Tl心筋シンチグラフィにて右冠状動脈領域に虚血を認めた患者(78歳,女性)に冠状動脈造影を施行した.左右冠状動脈は,び漫性に拡張し,右冠状動脈には限局性に解離を認めた.これら冠状動脈の病態の原因として,喫煙歴,糖尿病,高血圧を危険因子とした中膜栄養血管の動脈硬化による閉塞,あるいは,中膜自体のアテローム性変化による中膜の脆弱化が考えられた.分娩回数が7回と多いことも,分娩時エストロゲン増加により血管壁支持組織が脆弱化された可能性があり,誘因の1つと考えられた.また,これら病態に攣縮の関与も示唆された症例につき報告する.
  • 用語の問題
    岡田 了三
    1993 年 25 巻 1 号 p. 62-63
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 小武 道雄, 竹内 素志, 奥田 正則, 高岡 秀幸, 林 義彦, 秋田 穂束, 川原 康洋, 横山 光宏, 山本 信一郎, 岡田 昌義, ...
    1993 年 25 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左心機能低下に多臓器障害を合併した左主幹部病変に対し経皮的人工心肺(PCPS)使用下に経皮的冠動脈形成術(PTCA)を施行し良好な結果を得た症例を経験した.症例は69歳,男性.狭心症,高血圧,肺気腫,心不全にて約20年前より入退院を繰り返していたが,胸痛の持続時間,程度が憎悪してきたため当科入院.冠動脈造影にて左冠動脈主幹部(LMT),右冠動脈,左前下行枝,左回旋枝にそれぞれ高度狭窄を認めた.左心機能低下および多臓器障害を伴う高度冠動脈病変のためCABGの適応はないと判断され,かつ内科的治療では狭心症のコントロールが困難であったためPCPS下にLMTに対しPTCAを施行した. PCPS(最大流量3.5l/min)にてPTCA balloon拡張中も血圧は80mmHgに保たれ,PTCA後LMTは50%狭窄に改善した.本法はCABGが困難な重症狭心症の症例に対して有用な治療法であると思われる.
  • 清水 明徳, 小松 原一正, 宮池 次郎, 高橋 道也, 鈴木 誠祐, 下江 俊成, 柴田 凡夫, 久慈 敏信, 富野 哲夫
    1993 年 25 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性.25歳より数年間不明熱の既往があるが,入院時には血液生化学検査等には炎症所見は認めなかった.Sellers 4度の大動脈弁逆流と左冠動脈入口部に99%の狭窄を認めたため冠動脈バイパス術および大動脈弁置換術が施行された.術中の肉眼所見および病理組織学所見にて大動脈壁に著明な炎症の既往が考えられた.また,冠動脈入口部,大動脈弁,大血管系を特異的に障害する他の全身疾患が否定的であることから大動脈炎症候群の関与が示唆された.心プール像にて,術前に認められた左室心尖部の壁運動低下が,術後に正常化しておりhibernating myocardiumの所見を呈したと考えられた.また201Tl心筋シンチ像でも術前に認めた左室心尖部の陰影欠損が,術後にほぼ消失した.このように,重症冠動脈病変に大動脈弁閉鎖不全症が合併した場合には局所壁運動低下および201Tl心筋シンチ像の陰影欠損が,冠血流量の低下によりも起こりうるため,心筋のviabilityの評価には十分に注意する必要があると思われた.
  • 祖父江 晃, 桑子 賢司, 坂本 和典, 岩崎 浩, 大越 淳, 木住 野哲, 松本 英洋, 白石 宏志, 古江 尚
    1993 年 25 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は17歳女性.昭和63年12月当院整形外科にて左肋骨Ewing肉腫を手術し,その後アドリアマイシン計600mg(398mg/m2)を中心とする化学療法を施行し,同科外来通院中であった.平成2年1月22日急性左心不全をきたし当科に紹介入院となった.入院時の胸部X線上心胸郭比は68%であった.両側肺うっ血像を認め,心エコー図上著明な左室壁運動の低下,僧帽弁逆流,三尖弁逆流,少量の心嚢水貯留を認め,左室拡張終期径50mm,左室収縮終期径45mm,左室内径短縮率10%,駆出分画22%であった.利尿剤・カテコールアミンを中心とした治療に長期にわたり抵抗性であったが,6カ月後に左室拡張終期径55mm,左室収縮終期径40mm,左室内径短縮率27%,駆出分画52%と改善し,平成2年8月22日退院した.アドリアマイシンの慢性心毒性による重症の心筋障害は予後不良とされており本症例のようにNYHA IV度の重篤な心筋障害患者の経過観察中,NYHA II度,日常生活可能なまでに至る著明な心機能の回復をきたした症例は希少と考え報告した.
  • 宮川 朋久, 大浦 弘之, 南澤 俊郎, 小沢 正人, 中居 賢司, 千葉 直樹, 盛合 直樹, 平盛 勝彦
    1993 年 25 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    体表面加算平均心電図QRS終末部にみられる遅延電位(LP)は,持続性心室頻拍の発生機序および予後との関連から注目されている.今回,遅延電位陽性で突然死をきたした1症例を経験した.症例は64歳男性.病歴は冠動脈に有意狭窄はなく,左室造影でsegment2~4に心室瘤が認められ遅延電位が検出された.右脚ブロックパターンを示す持続性心室頻拍が確認され,それと類似した波形の心室性期外収縮のisointegral mapの極小値は心尖部付近に存在した.LP30 area mapに示されるLPの空間分布は心尖部付近に存在し,心室頻拍の起源と近接していた.経過中不整脈が原因と思われる突然死をきたした.LP陽性は致死性不整脈の予知に有用であり,持続性心室頻拍を有する例では厳重な管理が必要と考えられた.
  • 安田 聡, 木下 修, 山辺 高司, 堀田 大介, 大黒 哲, 斉藤 克己, 大島 秀一, 宮崎 俊一, 後藤 葉一, 野々木 宏, 土師 ...
    1993 年 25 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺血栓塞栓症は胸痛,呼吸困難を主訴とするが,特異的な心電図変化に乏しいため,通常は急性心筋梗塞症との鑑別が容易である.今回我々は,心電図上II,III,aVFのST上昇を伴い,急性心筋梗塞症との鑑別が困難であった肺血栓塞栓症の1例を経験したので報告する.
    症例は81歳,男性.胸痛,呼吸困難を主訴として来院した.収縮期血圧は60mmHgと低下し,心電図でII,III,aVFのST上昇,心エコー図で著明な右室拡大と壁運動異常が認められ,PaO2は56mmHgと著しく低下していた.心原性ショックを合併した急性心筋梗塞症の診断でCCU入院となった.入院後心筋逸脱酵素は上昇せず,心電図変化も回復したが,右室拡大,低酵素血症が持続した.そのため肺血流シンチグラムを施行したところ多発性陰影欠損が認められ,肺血栓塞栓症と診断した.ウロキナーゼ点滴静注による血栓溶解療法後多発性陰影欠損は消失し,低酵素血症も改善した.慢性期の冠動脈造影検査では右冠動脈に有意狭窄は認められず,エルゴメトリン冠注によってもスパスムは誘発されなかった.肺血栓塞栓症に伴う心電図上のII,III,aVFのST上昇という変化はまれであるが,急性心筋梗塞症との鑑別上重要であると思われた.
  • 福田 和代, 大木 崇, 井内 新, 小川 聡, 林 真見子, 影治 好美, 清重 浩一, 藤本 卓, 細井 憲三, 田畑 智継, 真鍋 和 ...
    1993 年 25 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は,経胸壁および経食道ドプラ心エコー法を用い,後負荷の増大を伴う腎血管性高血圧症の1例における僧帽弁口血流速波形と肺静脈血流速波形を記録し,その経時的変化について興味ある知見を得た.症例は43歳,女性.入院時現症では著明な高血圧および血圧の左右差を示し,ESRの充進と血清レニン活性の上昇,腎動脈造影およびシンチグラムでは右腎動脈起始部の狭窄と右腎の描出不良所見がみられ,カラードプラ法にて軽度の大動脈弁逆流所見を得た.右心カテーテル検査では肺動脈楔入圧の著明な上昇を認めたものの,Mモード心エコー図による左室径は正常範囲内であり,左室内径短縮率にも異常を認めず,肺動脈楔入圧増大の要因としては腎血管性高血圧に伴う後負荷増大の影響が考えられた.入院時における僧帽弁口および肺静脈血流速波形は,前者が“一見正常パターン”を示し,後者が拡張期陽性波および心房収縮期陰性波の増高を特徴とした.このような波形を示した原因としては,後負荷増大により左室拡張末期圧,さらには肺動脈楔入圧の上昇を招来したことが重要と考えられ,僧帽弁口および肺静脈血流速波形の経時的観察は,本病態における血行動態異常を把握する一助となりうることが示唆された.
  • 堂山 清, 広瀬 邦彦, 小菅 邦彦, 川上 佳秀, 森川 雅, 冨岡 宣良, 渡辺 裕
    1993 年 25 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    患者は73歳の女性,眼科術前検査の心電図にて2:1房室ブロックを指摘され当科に入院した.特徴的な粘液水腫顔貌を呈し,検査の結果,原発性粘液水腫と診断した.ヒス束心電図では,AH時間が250msecと延長していたが,洞房伝動時間(SACT),補正洞結節回復時間(CSRT)とも正常であった.ジギタリスの影響が消失した後も,房室ブロックの改善はなく,レボチロキシンの投与にて,房室ブロックは消失した.甲状腺機能低下症に伝導障害が合併することは知られているが,実際に経験することはまれである.加齢による皮膚変化などで老人での甲状腺機能低下症の診断は難しいため,老人の房室ブロックの診断に際しては甲状腺機能のチェックが必要である.徐脈に対しては,心不全のない限り,甲状腺ホルモンの補充療法が有効であり,ペースメーカーは二次選択と考えられた.
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