心臓
Online ISSN : 2186-3016
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47 巻, 5 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(心腎症候群 -Cardiorenal Syndrome-)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 池田 こずえ, 二藤部 丈司, 鈴木 彩, 橘 英明
    2015 年 47 巻 5 号 p. 556-561
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     新規経口抗凝固薬は原則として抗凝固モニターは不要とされるが, 薬物動態を評価し, 薬剤過量による頭蓋内出血や大出血を防止するためには, ある一定の血中濃度モニタリングは必要と思われる. われわれはXa因子阻害薬リバーロキサバンを服用した非弁膜症性心房細動患者を対象に, ヒーモスアイエル ヘパリン リキッド®を用いた抗Xa活性測定によりリバーロキサバンの血中濃度を計測し, その臨床的意義を検討した. 対象は21名 (男性13名, 女性8名), 53~97歳 (平均74.8歳), CCr 33.0~134.3mL/min (70.5±29.3mL/min), 1日服用量15mg 13名, 10mg 8名で, 計35検体のリバーロキサバン血中濃度, PT, APTTを測定した. リバーロキサバン血中濃度は0~783μg/L (249.8±222.6μg/L ; mean±SD), PTは11.1~44.6秒 (16.6±6.6秒), APTTは29.9~69.7秒 (41.5±8.6秒) であった. リバーロキサバン血中濃度は, 3例を除けば, 既報の日本人健康高齢者の血中濃度推移にほぼ一致していた. 高値の2例は超高齢の97歳女性とCCr 33.0mL/minの84歳女性であり, 低値の1例は脳塞栓症後の88歳女性でリバーロキサバン15mgを粉砕し経鼻胃管から投与していた. CCrに基づいた投与量を用いれば, 大多数の症例ではリバーロキサバン血中濃度は想定範囲内であった. 一方, 超高齢者やCCr低値例, 規定外の投与方法の症例では異常高値, 低値となる可能性があり, 血中濃度測定による薬物動態の検討は有用と考えられた.
Editorial Comment
[臨床研究]
  • —3年間の使用経験より—
    戸叶 隆司, 中里 祐二, 加藤 悦郎, 遠藤 裕久, 小田切 史徳, 山瀬 美紀, 柳沼 憲志, 横山 健, 大井川 哲也, 加藤 洋一, ...
    2015 年 47 巻 5 号 p. 563-569
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     背景 : 心房細動 (AF) 例の抗凝固療法として新規抗凝固薬が普及したが, 特に高齢者において重篤な出血性合併も散見される. 今回われわれは, トロンビン直接阻害薬ダビガトランの約3年の使用経験からその有効性・安全性を検証した.  対象と方法 : 対象は, ダビガトランが投与されたAF例150例 (平均年齢68歳, 男性115例, 女性35例). これらにおいて心血管イベント, 出血性合併症等副作用の発生状況と活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) の関係などを検討した.  結果 : ダビガトランの投与量は, 220mg/日が91例 (61%), 300mg/日が59例 (39%) であった. 経過観察期間中, 血栓・塞栓症, 頭蓋内出血の発生は認められなかったが, 消化管出血を10例 (7%) に合併した. 消化器症状は26例 (17%) に認められ, これらのうち12例 (8%) が投与中止に至った. APTTは年齢, 血清クレアチニン (S-Cr) と正相関, クレアチニンクリアランス, 糸球体濾過量 (e-GFR) とは負の相関を示し, 消化管出血の多くは高齢者, 抗血小板薬2剤併用例でAPTTが60秒以上に延長した例であった.  結語 : ダビガトランの3年にわたる使用経験において, 生命予後に影響するような出血性合併症を起こすことなく血栓・塞栓症を予防できた. APTTは, 消化管出血などの大出血の予測に参考にできると考えられ, 特に高齢者や腎機能低下例, 抗血小板薬併用例などでは定期的に検査するべきと思われた.
[症例]
  • 村山 公, 磯部 文隆, 綿貫 博隆, 二村 泰弘
    2015 年 47 巻 5 号 p. 570-574
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は61歳の男性. 持続する胸部不快感を主訴に前医を受診し, 虚血性心疾患疑いにて当院へ救急搬送された. 心電図では陳旧性心筋梗塞の所見を認め, 冠動脈造影検査では左前下行枝 (LAD) seg. 7=75%, seg. 9=100%の狭窄病変を認めた. 心エコー, CT, MRIにて左室前側壁に瘤内血栓を伴う瘤形成を認めたため, 手術目的に当科紹介となった. 手術は左室形成術と冠動脈バイパス術を施行した. 左室瘤径は約5.5cm, 左室との交通孔は約3.5cmであった. 交通孔周囲の壁は白色線維化しており, 広範な側壁の陳旧性心筋梗塞像であった. 病理組織検査では瘤壁は主に硝子化膠原線維で構成されており, 心筋細胞は認めず, 仮性瘤の診断であった. 術後の経過は良好であり, 第17病日に独歩退院となった. 左室仮性瘤は心筋梗塞後の合併症としては極めて稀であるが, 破裂の危険性から手術適応と考えられている. 今回われわれは発症時期不明の心筋梗塞後に発症した左室仮性瘤の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 和田 健作, 湯山 令輔, 奥野 良樹, 岡崎 徹, 松原 恵子, 横江 洋之
    2015 年 47 巻 5 号 p. 577-581
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     57歳女性. 突然の右胸背部痛で救急受診された. 腹部造影CTにて右副腎腫瘍を認めたが心電図で広範囲にST低下を認め, 心筋逸脱酵素も陽性であり急性冠症候群を疑い緊急入院となった. 入院後の心臓超音波検査では左室心基部が全周性に無収縮であったが心尖部は保たれていた. 緊急冠動脈造影では有意狭窄はなく, 左室造影からinverted takotsubo cardiomyopathyと診断した. ヘパリン投与開始後右胸背部痛の増悪を認め, 腹部CTを再撮像したところ右副腎腫瘍からの出血と後腹膜出血を認めた. ヘパリンを中止, 保存的加療を行い血腫は徐々に消失した. 血中カテコラミン, 尿中VMAは正常範囲内, コルチゾールは36.8 μg/dLと上昇しており褐色細胞腫や急性副腎不全は否定的であったため, 最終的に副腎出血と診断した. 保存的加療により背部痛は軽快し第5病日には心臓超音波検査上も壁運動の正常化を認め, 18カ月後のCTで右副腎血腫はほぼ消退していた.  今回われわれは, 特発性右副腎出血にinverted takotsubo cardiomyopathyを合併した稀な症例を経験したため, 文献的考察を交えて報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 星野 真介, 谷口 由紀, 津田 悦子, 北野 正尚, 山田 修, 古川 央樹, 宗村 純平, 中川 雅生, 西島 節子
    2015 年 47 巻 5 号 p. 584-590
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     二次孔心房中隔欠損 (atrial septal defect ; ASD) に合併した僧帽弁逆流 (MR) が急激に進行し, 心不全をきたした症例を経験した. 症例は10歳女児. 5歳時に心雑音を指摘され, 近医を受診してASD, 軽度のMRと診断された. ASDに対してカテーテル治療を希望し, 至適体重まで待機中に, 経済的理由により病院を受診しなかった. 10歳で, 全身倦怠感, 起坐呼吸が出現し, 胸部X線写真では, 心胸郭比が80%と心拡大を認め, 心臓カテーテル検査では, 肺体血流比は5.1で, 重度のMRと肺高血圧を認めた. 外科的にASD閉鎖術および僧帽弁人工弁置換術を施行した. ASD症例で稀ながらMRが進行する場合があり注意が必要である.
[症例]
  • 高木 秀暢, 申 範圭, 森 光晴, 高橋 辰郎, 平野 暁教
    2015 年 47 巻 5 号 p. 591-594
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     急性心筋梗塞後心室中隔穿孔 (ventricular septal perforation ; VSP) に対する修復術後の遺残短絡は生命予後を左右する重要な因子である. 今回, 顕著な遺残短絡に対して保存的に急性期管理を行い, 全身状態および心機能の安定後に遺残短絡の閉鎖を行った症例を報告する. 症例は60歳, 男性. 前立腺癌の手術翌日に急性心筋梗塞 (acute myocardial infarction ; AMI) を発症し, 1週間後にVSPの合併を認め当院へ救急搬送となった. 経胸壁心エコーで前壁中隔梗塞所見とVSPを認め, 緊急心臓カテーテル検査で左前下行枝の完全閉塞とQp/Qs=2.1の左右短絡を確認し, 同日緊急手術を施行した. 手術は静脈グラフトによる左前下行枝へのバイパス術を行い, VSPに対しては牛心膜パッチによるVSPのパッチ閉鎖術とInfarct exclusion法を組み合わせた2重パッチ法で修復した. 術後遺残短絡が経時的に増大したが, 術中所見による前乳頭筋基部を含む広範囲の梗塞心筋の脆弱性から急性期の修復は困難であると判断し, 急性期は大動脈内バルーンパンピングと薬物による血行動態の安定化と心不全コントロールを行い, 初回手術から2カ月後に再手術を行った. 再手術時には心筋梗塞部は瘢痕化しておりVSP閉鎖は容易であった. 術中および術後心エコーで遺残短絡はなく, 患者は合併症なくNYHAⅠ度で再手術後33病日に退院し状態は安定している. VSP術後遺残短絡に対して保存療法で血行動態の安定化が可能な症例では, 早期再手術ではなく梗塞心筋の瘢痕化の時期まで待機することも選択肢になると考えられる.
[症例]
  • 福島 啓介, 山田 崇之, 吉田 純, 鈴木 健一朗, 工藤 敏和, 小菅 玄晴, 中田 耕太郎, 久保田 健之, 宮永 哲, 小武海 公明 ...
    2015 年 47 巻 5 号 p. 595-600
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は45歳男性. 2004年に貧血を契機に腫瘍血液内科で多発性骨髄腫 (BJP-κ型) と診断され, メルファラン・プレドニゾロン (MP) 療法を開始されていた. 2011年3月から労作時呼吸困難を認め, 増悪したため6月に循環器内科受診, 初回心不全の診断で入院となった. 心エコー上, 左室駆出率50%で左室肥大を認めた. 利尿薬の投与などで心不全は改善した. 心臓カテーテル検査にて冠動脈に有意狭窄を認めなかった. 左室心筋生検では, DFS染色でアミロイドの沈着を認め, 過マンガン酸処理でも沈着していたので, AL型心アミロイドーシスと診断した. 第13病日に退院し, その後レナリドマイド・デキサメタゾン (Rd) 療法に変更し, 治療を継続している. 心アミロイドーシスと診断してから3年経過した現在でも心不全の増悪なく生存している症例を経験した.
Editorial Comment
[症例]
  • 高木 俊光, 坂田 憲治, 玉 直人, 寺井 英伸, 居軒 功, 堀田 祐紀, 池田 正寿, 名村 正伸
    2015 年 47 巻 5 号 p. 602-609
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は74歳男性. 胆管癌の治療目的に他院を受診した際に気分不良を訴え, その後心肺停止. 救命処置にて心肺蘇生に成功したが, その後心室頻拍と心室細動を繰り返した. 第3病日に当院搬送となり冠動脈造影検査を施行したが有意狭窄を認めず, 血液検査にて好酸球増多症を認めた. 徐脈を伴う下壁誘導のST-T変化から心室細動を繰り返しており, 冠攣縮性狭心症が原因と判断し, 抗狭心症薬を開始した. その後も心室性期外収縮が多発したためアミオダロンを追加した. しかし間質性肺炎を合併したためアミオダロンを中止し, ステロイドパルス療法を施行した. 悪性腫瘍による好酸球増多症が原因で発症した冠攣縮性狭心症が致死性不整脈の原因と考えられた貴重な症例を経験したので報告する.
[症例]
  • 瀬川 和彦, 小牧 宏文, 森 まどか, 大矢 寧
    2015 年 47 巻 5 号 p. 610-614
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は24歳, 男性. 生下時に心房中隔欠損症, 5歳時にデュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された. 心房中隔欠損症の手術を勧められたが両親が同意せず, 経過観察されていた. ステロイド薬の治療歴はない. 16歳時よりアンジオテンシン変換酵素阻害薬, β遮断薬, 利尿薬による治療を行っている. 24歳時の心エコーで心房中隔欠損症の左右シャントによる右室の拡大, 心室中隔の扁平化を認めたが, 拡張型心筋症は認めなかった. 22歳のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの弟は心エコーで左室の著明な拡大と壁運動低下を認めた. デュシェンヌ型筋ジストロフィーは10歳代で心機能障害が顕在化することが多い. 本症例は心房中隔欠損症を合併したことにより左室の拡張型心筋症を免れた可能性が考えられ, 拡張型心筋症の発症, 進行に左室前負荷が関与することが示唆された. また, 利尿薬を含む心保護治療を早期から開始したことも心筋症発症を抑制した可能性がある. 本症例の経過から, デュシェンヌ型筋ジストロフィーの拡張型心筋症に対し, 早期からの左室前負荷軽減治療が有効である可能性が考えられた.
Editorial Comment
[症例]
  • 角 奈保子, 末成 和義, 岡村 祥央, 新田 和宏, 内田 美央, 佐倉 拓朗, 山里 亮, 渡 雄一郎, 福田 幸弘, 平尾 秀和, 上 ...
    2015 年 47 巻 5 号 p. 616-621
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
     症例は79歳, 女性. 友人と食事中に呂律困難とふらつきを自覚し, 近医脳神経外科病院へ救急搬送された. 頭部MRIにて左前頭葉にスポット状の新鮮梗塞巣を認め, 加療目的で同院へ入院となった. 近医受診時の心電図は, 90bpmの洞調律で, V1−3に著明なQT延長 (QTc 613ms) を伴う巨大陰性T波を認めた. 翌朝に持続性の多形性心室頻拍 (Torsades de pointes ; Tdp) を認め, 電気的除細動にて洞調律に復し当院へ緊急搬送となった. 心エコーにて左室前壁に壁運動低下 (EF 53%) を認め, 一部瘤状であった. 緊急冠動脈造影検査を施行し, 冠動脈に有意狭窄を認めず, 左室造影にて左室基部・心尖部は壁運動低下なく, 中部のみの壁運動低下を認め, 血液検査, 心電図所見とあわせて考慮し, たこつぼ心筋症と診断した. 脳梗塞急性期にたこつぼ心筋症を合併し, 後天性QT延長によってTdpが誘発された症例を経験したため, 文献的考察も含めて報告する.
Editorial Comment
セミナー(心臓財団虚血性心疾患セミナー)
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