固体と液体の界面に対する吸着現象の解明は,学術的のみならず産業的にも極めて重要な課題である。この課題にアプローチできる機器分析法の一つに,エネルギー散逸値の測定機能を付与した水晶振動子マイクロバランス(quartz crystal microbalance with dissipation monitoring, QCM-D)法がある。QCM-D法では,吸着物質の質量(振動数の変化量)や吸着膜の粘弾性(エネルギー散逸値の変化量)に関する情報を高感度かつ優れた時間分解能で獲得できる。さらに,各種材料で表面修飾したセンサを用いて評価できること,液相に着色や濁りのあるサンプルでも評価できることなど,適切なモデル系を構築すればQCM-D法は幅広い応用分野に活用可能である。本稿では,QCM-D法の基本原理と測定上の留意点を解説する。また,QCM-D法を洗浄分野およびトライボロジー分野に活用した検討事例も紹介する。
固液界面で起きている物質間の相互作用をリアルタイムに追跡し,定量的に測定が可能なQCM-Dはこれまで主に基礎研究現場における実験に用いられる科学支援機器として認知度を高めてきたが,近年においては産業界への導入応用が増え,開発研究現場での悩みを解決する実践的な評価機器としての運用が多くみられるようになった。QCM-Dの応用実例を紹介し,QCM-Dの持つ分析ソリューションの実力を示したい。
2年前の日本油化学会年会にて「混錬機を用いたαゲルの挙動」の研究結果を発表した。効率的に大きな2分子膜間距離を持ったαゲルが調製できることを見出したが,出来上がったゲルがなぜ透明感を持ったものになるのかなど,構造解析の部分が完結していなかった。
今回は,これまで行ってこなかった観察・解析ツールを用いたこの構造解析の報告とαゲル形成効率の定量的な測定方法について紹介する。