オレオサイエンス
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選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
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特集序言
特集総説論文
  • 木原 章雄
    2025 年25 巻9 号 p. 369-378
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    セラミドは体表面に存在する表皮角質層に多量に存在し,感染防御と水分損失の防止を担う皮膚バリア形成において極めて重要な役割を果たす。ヒトの表皮角質層には多様なセラミドが存在し,23クラスと1,500を超える分子種が存在する。セラミドは遊離型セラミドと結合型セラミドに大別され,遊離型セラミドは角質細胞間に存在する脂質多層構造体(脂質ラメラ),結合型セラミドは角質細胞脂質エンベロープの成分である。遊離型セラミドはさらに非アシル化セラミドとアシルセラミドに分類される。セラミドの中でも結合型セラミドとアシルセラミドは皮膚バリア形成において特に重要であり,それらの合成に関わる遺伝子の変異は先天性魚鱗癬を引き起こす。本総説ではセラミドの多様性を生み出す分子機構,セラミドクラスごとの皮膚バリア形成における役割,皮膚疾患との関連についての最新の知見を紹介する。

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  • 城市 大勢
    2025 年25 巻9 号 p. 379-387
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    敏感肌とは,外部からの要因に対して,不快な感覚が生じやすい肌であり,角層バリア機能の脆弱性や神経の過敏性を有する傾向にあると言われている。しかしながら,敏感肌意識者の中には,心理的な思い込み等による敏感肌のように,客観的皮膚状態が正常な方から,皮膚疾患のように病的な方まで,様々な方が含まれると考えられており,敏感肌の皮膚生理に関してはいまだ系統的な見解が少ない現状にある。このことは,香粧品科学の分野において長年の課題とされてきた。近年,我々は皮膚生理の中でも,角層バリア機能に焦点を当て,その中心的な役割を担っているセラミドと,皮膚の刺激感受性を主とした敏感肌特有の皮膚性状との関係性について,重点的に研究を進めてきた。そこで本稿では,敏感肌とセラミドの関係性について,研究対象者が皮膚疾患を伴うか否かで分類し,先行研究を概説した後,我々が取り組んだ最新研究に関して紹介する。

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  • 菅原 達也
    2025 年25 巻9 号 p. 389-396
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    スフィンゴ脂質は,真核生物の細胞膜構成成分であり,細胞の分化,増殖,アポトーシスなどの生命現象に関与するシグナル分子として働くことが知られている。しかしながら,食品成分としての知見は限定的であり,その栄養学的意義については注目されてこなかった。近年,スフィンゴ脂質の健康機能性が明らかにされてきており,脂質代謝調節を介した生活習慣病に対する効果,下部消化管のがんや炎症に対する効果,認知や運動機能に対する効果などが報告されている。現在,食品に含まれるスフィンゴ脂質を素材化したものが,「食品セラミド」として注目されてきており,とくに皮膚への効果が期待され,特定保健用食品や機能性表示食品にも応用されている。一方で,スフィンゴ脂質の化学構造やその組成は,生物種によって大きく異なるため,我々は様々な化学構造のスフィンゴ脂質を日常的に食品から摂取していることになる。したがって,食品成分としてのスフィンゴ脂質のさらなる理解のためには,その詳細な分子構造と含有量や組成,消化管吸収機構,食品機能性とその作用メカニズムなどを包括的に理解することが必要である。

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  • 田中 保
    2025 年25 巻9 号 p. 397-404
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    グリコシルイノシトールホスホセラミド(GIPC)は植物スフィンゴ脂質の中で,最も豊富な脂質クラスであり,植物の細胞膜を構成する主要脂質の1つである。GIPCの構造が決定されてから,既に60年を経ているが,GIPCの代謝経路や生理的役割は未解明な点が多く,産業的にも利用されていない。GIPC研究の難しさは,GIPCが脂質でありながら,水溶性であることにあり,一般的な脂質抽出法が適用できない。また,標準品も存在しないため,GIPCの単離は簡単ではない。この総説では,GIPCの単離精製法とGIPCをDポジションで分解するホスホリパーゼDについて解説する。

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総説論文
  • 山本 幸弘
    2025 年25 巻9 号 p. 405-413
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    油脂の酸化を抑えることは,特に油脂含有食品を取り扱う食品産業において,重要な課題と言える。油脂の酸化は,基本的には構成脂肪酸の酸化安定性に従うが,トリアシルグリセロール分子種や脂質クラスの影響も受ける。油脂の酸化は,不飽和脂肪酸から水素が引き抜かれて開始されるが,その後の過程は複雑で,また,様々なラジカル種が生成され,これら自身も酸化の促進に関与する。抗酸化剤はこれらの過程において効率的に反応を抑制できるよう,種々のものが存在する。これら抗酸化剤の効果は,バルク系油脂なのか,エマルション系油脂なのかによっても異なる。本稿では,これら基本的な事柄について,最近の知見も交えて紹介する。

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