オレオサイエンス
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25 巻, 4 号
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特集序言
特集総説論文
  • 田中 賢
    2025 年25 巻4 号 p. 133-143
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/04
    ジャーナル フリー

    水分子は,タンパク質の吸着/脱離,細胞接着挙動を含むバイオ界面現象に重要な働きを示す。このバイオ界面における水の役割を理解するためには,水和した材料および水和水の物理化学物性を理解することが必要である。水の状態は,各種熱分析法および分光法により解析した。材料と中間的な相互作用をしている水が生体親和性の指標になることを明らかにした。また,原子間力顕微鏡法により,面内相分離による材料/水界面のナノ構造形成を観測した。材料の密度が低く,水の密度が高い領域は生体親和性が高いことがわかった。材料/水界面における材料の密度が重要な因子であることが明らかになった。周波数変調型原子間力顕微鏡による解析の結果,材料/水界面における材料の密度が低く水の密度が高い領域(中間水)は,斥力を生じることがわかった。中間水に着眼した考え方は,材料の設計や材料/医療機器表面のタンパク質吸着/細胞接着を理解するための新しい分析ツールの開発に有効であると考えられる。

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  • 山田 真爾
    2025 年25 巻4 号 p. 145-150
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/04
    ジャーナル フリー

    シャンプー処方が洗髪中の毛髪の絡まりを除去する性能を評価する目的で,濡れた毛髪単繊維間の摩擦特性を評価した。毛髪の絡まり点における接触状態を考慮し,引っ張られた状態にある毛髪単繊維間の高荷重条件下での摩擦特性を計測する方法を新たに考案した。その方法を用いて,様々な溶液で処理した毛髪単繊維について,特に絡まりに重要な役割を果たす静摩擦(スティック・スリップ)特性に着目した評価を実施した。その結果,水溶性シリコーン(bis-isobutyl polyethylene glycol (PEG)-14/amodimethicone copolymer, BIPA)の水溶液が静摩擦を効果的に抑制すること,BIPAを配合したシャンプー処方が静摩擦を抑えて洗髪時の絡まり除去に優れることを確認した。BIPAの高い絡まり除去能の機構を解明する目的で,表面力測定装置を用いた分子スケールの摩擦計測を実施した。平滑な雲母表面間にBIPA水溶液を注入して垂直荷重により押し付け,その摩擦係数を測定したところ,10-5オーダーと極めて小さい値が得られた。この超低摩擦は「水和潤滑」という機構によるものである。BIPAは水中でアミノ基の解離により正に帯電しており,負に帯電する雲母表面に吸着膜を形成する(毛髪表面も水中で負に帯電する)。BIPA吸着膜の最表面には高い流動性を有する水和水の層があり,それが優れた潤滑性と巨視的な静摩擦の低減に寄与したと考えられる。

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