米ぬかは,かつて未利用資源であったが,実は非常に多くの機能性成分が含まれており,現在ではそれぞれの成分が,食品や化粧品だけでなく,医薬品にも利用されている。本稿では,特にコメに特徴的な成分とされるγ-オリザノールに注目し,それを摂取することで生じる肌や心身,女性にとって良い効果や,成人病など健康維持にも効果を有することなど,多岐にわたるその機能性について紹介する。
γ-オリザノールは,米糠および米糠の抽出物を精製して製造されるこめ油に豊富に含まれており,多くの有益な機能を有する生理活性成分としてよく知られている。γ-オリザノールはトリテルペンアルコールまたは植物ステロールのフェルラ酸エステル体の混合物であるため,これまで混合物として研究されており,γ-オリザノール分子種に着目した研究はほとんどなかった。近年の研究により,γ-オリザノール分子種はそれぞれ特有の機能性を示すことが明らかになってきたことから,分子種の分析法の開発や,分子種の化学構造と生理活性の関係を明らかにすることが重要である。近年,特定保健用食品制度や機能性表示食品制度を背景に機能性食品への関心が高まる中,これらのγ-オリザノール分子種に着目した研究の進展が期待されている。本総説では,食品中のγ-オリザノール分子種の最新の分析技術を中心に紹介する。また,その応用例(γ-オリザノール分子種の吸収・代謝評価)についても触れたい。
コメはでんぷんだけでなく,ビタミンE類やフェルラ酸,γ-オリザノール類などの抗酸化物質の優れた供給源としても機能する。これらの抗酸化物質は米糠層と胚芽部分に多く含まれるため,玄米の方が白米よりも生理活性が高いと考えられてきた。しかし,化学的あるいは生物学的な抗酸化作用について,玄米と白米との間で質や量的にどれほど異なるのかについては不明な点が多い。我々は,抽出物のレベルでは白米も玄米と同等の化学的または生物学的抗酸化作用を示すことを明らかにしてきた。また,コメの生物学的抗酸化作用にはビタミンE類よりもγ-オリザノール類の主要な分子種であるフェルラ酸シクロアルテニル(CAF)の貢献度がより高いことを明らかにしている。本総説では,これら成果を基に,CAFの抗酸化作用を基盤とした健康機能に関する潜在能力を紹介する。