目的:小児期での受動喫煙は種々の健康障害を引き起こす可能性を含んでいるが,本邦における科学的なエビデンスは極めて少ない.筆者らは生活習慣病検診および喫煙検診を行い,食生活,運動その他の生活習慣と受動喫煙との関係を横断的に調査した.
方法:対象は小学校4年生526名(男女比は267:259,年齢は9.5±2.3歳).方法は生活習慣病検診に付け加えて生活習慣に関する調査20項目および両親の喫煙に関する調査19項目を行い,さらに受動喫煙の生体指標として尿中コチニンを測定した.統計は多重ロジスティック分析を用い,受動喫煙の危険因子を調整したオッズ比〔OR,95%信頼区域(confidence interval;CI)〕で表した.
成績:尿中コチニン値に影響する危険因子は両親喫煙の項目では母親の喫煙の有無(OR:11.9,CI:1.2~122),母親の喫煙本数(OR:1.2,CI:1.0~1.3)が最も高く,生活習慣の項目ではTVを見ている時間(OR:1.8,CI:1.3~5.3),学校以外でのスポーツ時間(OR:2.7,CI:1.2~6.5)などが高かった.また尿中コチニン値は父親の喫煙本数(r=0.35,p<0.01)より母親の喫煙本数(r=0.46,p<0.001)と有意に相関したが,相関係数は低かった.
結論:子どもの受動喫煙を防止するには母親の禁煙が必須である.また,両親のいずれかが喫煙する家庭では家での生活習慣が受動喫煙に影響を及ぼす.
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